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健達ねっと>マガジン>ツッチーの旅する介護士日記>イギリスで感じた“自然と調和”した生き方

イギリスで感じた“自然と調和”した生き方

介護福祉士の土橋壮之(つちはしまさゆき)と申します。

みんなからは、「ツッチー」とか「ツッチーさん」と呼ばれています。なので、みなさんにも気軽にそう呼んで頂けたらうれしいです!

 

自主性の保たれたレジデンツの歩み

2017年ごろ、私はイギリスロンドン郊外のジェラーズクロスという街の、Leonard Cheshire(レオナルド・チェシャ)という団体の、Chiltern House(チルターンハウス)というイギリスの障がい者施設でボランティアをしていました。

 

この団体はレオナルド伯爵という方が戦後、身寄りのなく、傷ついた人を自宅に泊め、介護を始めたところから、だんだんと広まっていきました。

1960年代には国の支援を受けて、イギリス全土に施設ができたそうです。当時は施設内での差別的な制限などがあり、入居者が自由と自治を施設に求めて争う運動が起こったことでも知られている団体です。

 

当時は入居者(レジデンツ)のことは“患者”と呼ばれていましたが、いち早く「レジデンツ」と呼ぶように変わり、さらに、一時期、レジデンツが施設を自主管理していたこともあったそうです。

なんでも、レジデンツに権限を与えすぎてしまったため、ストライキのような運動が起き、その時の運動が後のイギリスのノーマライゼーションに影響を与えたと言われています。

 

そういう流れもあってか、この施設では、会議をレジデンツとともに行ったり、レジデンツのリーダーがケアワーカーの私たちに指示を出す仕組みがありました。

 

説明が難しいんですけど、学校に生徒がいて、さらに生徒会長(レジデンツのリーダー)がいるみたいな雰囲気です。リーダー自身、意思の疎通が難しい時もあるんですけどね。

でも、私が間違ったことをすると、レジデンツのリーダーは何度も言い直して教えてくれます。

 

天気に合わせた自由を楽しむ

さて、私がいたジェラーズクロスという街は、ロンドンから電車で30分くらい、ウィンザー城からも近いところで、ハリーポッターの世界に迷い込んだような、とてもきれいな街並みです。

施設には、イギリスらしい庭に花が植えられて、古き良き時代のイギリスを感じることができます。私は屋根裏部屋に住みながら、食事介助や、アクティビティ、介護補助などをしながら生活をしていました。

 

サマータイムで日が長い6月ごろ、イギリスでは天気が良い日が続くようになりました。そのころの私の仕事の何割かは”土いじり”でした。

 

野菜の種をまいたり、芝を刈ったり、花を植えたりしていました。

レジデンツは、立って歩いたりはできないため、私が作業しているのを見て楽しんでいる様子で、私にいろいろ花とか木の名前とか、鳥の声などを教えてくれます!

 

発音が難しくて笑われる上に、聞いた端から忘れていきますがね。

しかし、暖かくなってきたから、天気がいいから、

外に出て、お茶飲んだり、土いじりしよう!

今日やっちゃおう!

という、天気に合わせる自由さが、新鮮だなあと感じました。

それと同時に、日本の東京の施設にいたときは、そんなことでも企画書が必要で、ちょっと散歩に行くのも手続きが何個もあって、その前の膨大な量の日々の業務で、全然外に行くことすらできなかったなあ、ということを思い出して、どうしてこんなに違うのだろうと感じたことを覚えています。

 

ある日、土いじりをしていると、レジデンツのリンダさんが来たので、私は散歩に行こうと誘いました。

すると、「あまりいろいろ行きたくないわ。太陽の日を浴びて、ただ、みんなを眺めているだけでいいの」と言われました。最初はせっかく天気がいいから何かいろいろ見せてあげたいと思ったんですが、手をとめて、隣に座り、一緒に日光浴をすることにしました。

 

目を閉じて、日の光を浴びながら呼吸をすると、そよ風を感じ、生活の音、木々が揺れる音、遠くで子どもが遊んでいる音、鳥の声などが聞こえてきます。

 

いま思うと、イギリスは天気が良い時というのが、1年を通してあまりないんです。

日本にいたときの感覚では、自分が何かしなきゃ何かしなきゃと思ってしまっていましたが、この時期の太陽を浴びて、鳥の声を聴きながら、空気を吸う、それだけでリンダさんにとっては貴重な時間だったんだなと気づきました。

 

遠い見知らぬ国に求める理想

イギリスに来て、建物の作りや、環境もそうだけど、生活のリズムも含めて、とにかく、“自然に合わせる”というか、“自然を取り入れる”というか、“自然と調和”して人々が生活しているなあと感じます。

日本のように朝食の時間も決まっているわけではなく、寝たり、起きたりするのも自由でした(その代わり、人によっては遅く起きて朝食を食べた後、すぐに昼ご飯になったりします)。

 

でも、イギリスのケアワーカーは、「日本のほうが自然と調和してるように感じる」って言うんです(日本で介護の仕事をしていたというと、なぜかよく、禅やヒーリングについて質問をされました)。

私から見ると、よっぽどヨーロッパのほうが自然と調和しているのに。

 

いやきっと、日本も“自然と調和”していたんだと思うんです。

日本の“自然との調和”を、こちらの人はありがたがっているのかもしれません。こちらはこちらで、遠い見知らぬ国の日本に、理想を求めているのかなあ、と感じました。

 

庭いじりをしているツッチー

イギリスの施設

イギリスの施設

イギリスの施設

写真は6月ごろ庭いじりをしているときの私と、施設の様子です。

ここにはボランティアコーディネータという職種がありました。

そのコネクションを通じて、さまざまな繋がりがあり、有償無償、地域やシニアの方など、いろんなボランティアの方が来て、DIYや庭や草木の手入れ、送迎などを行っていました!

 

寄付や奉仕活動が日本よりも一般的に感じましたね!

 

土橋 壮之 さん

TVCM業界からひょんなことをきっかけに介護の仕事に転身。日本、イギリス、そしてベトナムへ、世界の介護現場を回る旅に出る。