認知症の方に薬を飲んでもらおうと思っても、飲まない場合があります。
では、認知症の方が薬を飲まないときは一体どうしたら良いのでしょうか。
今回は認知症の方が薬を飲まないときの対応をご紹介した上で薬を飲むメリット・デメリットや飲まない理由をご紹介します。
- 認知症の方が薬を飲まないときの対応
- 薬を飲むメリット・デメリットと飲まない理由
この記事をご覧いただき、認知症の方が薬を飲まないときの参考にしてください。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症の薬とは
認知症の治療方法には薬を使う「薬物療法」と反対に薬を使わない「非薬物療法」があります。
薬物療法は認知症を完治させることはできませんが、症状の進行を遅らせるという効果があります。
そのため、認知症にとっては非常に大切な治療方法の1つだと言えます。
皆様もご存じの通り、日本では少子高齢化の影響で、高齢者の数が増加しています。少子高齢化に伴って、認知症の患者数も急増しています。認知症は自分だけでなく、家族など周りの人も巻き込んでしまう病気です。そのため、「認知症になってしまったら[…]
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認知症の方が薬を飲まない時の対応
認知症の方が薬を飲まない場合、家族は非常に困ります。
「症状が悪化するのではないか」「今よりもっと進行したらどうしよう」と不安にもなるでしょう。
ここからは、認知症の方が薬を飲まないときの対応をご紹介します。
本人のペースに合わせる
認知症の症状悪化を防ぐためや、健康維持のためにも薬を飲んでほしい気持ちがあるのは理解できます。
しかし、基本的に薬を飲むことを強要するのは避けるべき行為です。
なぜなら認知症の方にとっての薬は「よく分からないもの」である可能性があるからです。
認知症の方が薬を飲むことに対して納得していなかったり「飲みたくない」と思っていたら、薬を飲まされることは非常にストレスです。
また、介護者が無理に薬を飲ませようとするならば「嫌な人」というレッテルを貼られてしまうかもしれません。
そうなると今後の信頼関係にも関わりますし、余計に薬を飲まなくなる可能性があります。
なので1番は本人のペースに合わせることです。
認知症の方に服薬拒否をされたときは、まずはその気持ちを受け止めることが大切です。
タイミングが原因で飲めないのであれば少し時間を置くことで飲んでもらえる場合もあります。
丁寧に声かけ・説明する
認知症の方は認知機能の低下が原因で、自分が病気であることや薬を飲まなければいけないことを理解するのが難しいです。
自分の状態を理解できていない中、何の説明もないまま薬を飲むよう言われてもただ不安になるだけです。
なので服薬を拒否した場合は優しく丁寧に声をかけたり、説明することが大切です。
たとえば「お医者さんがくれた元気でいるためのお薬です」「あなたが健康でいるために大事なお薬です」などと認知症の方が理解しやすい言葉をかけましょう。
優しく丁寧に、なおかつ分かりやすく説明すれば薬に対しての拒否感が軽減される可能性があります。
体調変化をチェックする
認知症の方が服薬を拒否する理由は「飲みたくない」「納得していない」などの理由だけではありません。
もしかすると、体調の悪さが原因で服薬を拒否している可能性もあります。
薬によって副作用が現われていたり、体調不良で何も受け付けない状態であっても認知症の方は上手く説明することができません。
なので体調が悪そうな様子が伺えた場合は、かかりつけの医師に相談をしましょう。
医師に相談すれば薬の種類や量を変えるなどの対策を取れる可能性があります。
飲みやすい薬に変える
薬の形態や味などが原因で薬を飲めない場合があります。
その場合は飲みやすい薬に変えることで解消することができるでしょう。
薬の中でも、「錠剤」「液体」「顆粒」などいくつか種類があります。
喉を通りにくい錠剤タイプから飲みやすい液体タイプに変えることで無理なく飲めるようになる可能性があります。
薬の形態や味が原因だと考えられる場合は、早めに医師や薬剤師に相談しましょう。
ヘルパーや訪問介護
何をしても服薬拒否がなくならない場合は、介護者を変えることも1つの方法です。
1番身近な存在である家族の言うことは聞かなかったとしても、他人の言うことは聞く場合があります。
また、同じ介護者が薬を飲ませようとするよりも、介護者を変えることですんなりと飲んでもらえる可能性があります。
なので、どうしても改善されない場合はヘルパーや訪問介護などの介護サービスを利用することを検討しましょう。
薬を飲むメリット・デメリット
認知症の方が薬を飲まない場合、飲ませない選択をすることも1つの方法です。
しかし、その前にまずは薬のメリットとデメリットを理解することが大切です。
ここからは、薬を飲むメリット・デメリットをそれぞれご紹介していきます。
メリット
薬を飲むメリットは以下の2つです。
進行を遅らせることができる
先ほどもお伝えした通り、薬物治療をしても認知症を完治することはできません。
しかし、薬を飲めば脳の中で残っている神経細胞の活性化や、覚える・考えるなどの働きをある程度保つことが可能です。
その結果、薬を飲んでいなかったときよりも症状の進行を遅らせることができます。
症状の進行を遅らせることができるということは、本人らしく過ごせる時間が長くなるということです。
精神が安定する
認知症には、物忘れや見当識障害などの中核症状があります。
そして、中核症状によって二次的に引き起こされる症状が周辺心理症状です。
周辺心理症状には妄想や幻覚、睡眠障害や抑うつなどがあります。
認知症の治療に使われる薬は周辺心理症状が悪化している場合に有効です。
感情がコントロールできず攻撃的な言動を繰り返したり、反対に無気力状態のときなどに精神を安定させる効果があります。
デメリット
薬を飲むデメリットは以下の2つです。
副作用が出やすい
吐き気や嘔吐、食欲不振など、飲む薬によっては副作用が出やすいことがデメリットの1つです。
また、認知症の治療薬の他に服用している薬がある場合は、飲み合わせの悪さから副作用が出ることもあります。
ストレスになる場合もある
認知症の方が薬を飲むことを嫌がっているのにも関わらず薬の服用を強要するとストレスの原因になります。
薬の服用を強要しストレスを感じると、余計に薬を飲まなくなる可能性があるので注意が必要です。
認知症の方が薬を飲まない理由
認知症の方が薬を飲まないとき「どうして飲んでくれないの?」と思わず言いたくなるかもしれません。
しかし、認知症の方が薬を飲まないのにはいくつかの理由があります。
まずはその理由を知ることが大切です。
ここからは、認知症の方が薬を飲まない理由をご紹介します。
必要性が伝わっていない
認知症の方は、自分が病気である自覚や言われたことの記憶がありません。
薬の必要性がきちんと伝わっておらず、何のために薬を飲むのかを理解できないのです。
薬を飲む理由や必要性を理解できていなければ誰しも薬を飲む気にはなれないはずです。
薬を飲む必要性を伝えるためには、お薬手帳や処方箋の写しなどを見せて服薬の度に何度も説明してあげることも1つの方法です。
また、主治医との関係が良好な場合は「朝と夜の1日2回飲んでください」などと書かれた医師からのメモを見せてあげるのも良いでしょう。
タイミングが悪い
薬を飲んでもらおうとするタイミングが悪いことで、服薬を拒否する場合があります。
介護者からすると、「指示通りの時間に飲ませたい」「食事を終えたらすぐに飲んでほしい」などの理由で焦ることがあるかもしれません。
しかし、介護者の薬を飲んでほしいタイミングと認知症の方のタイミングが合わないこともあります。
そういったときに飲んでもらうことは困難なので少し時間を置くことも1つの方法です。
また、食前・食後などの指示がある場合は医師に相談することでタイミングをズラせる可能性があります。
副作用が出ている
「薬を飲むと体調が悪くなる」と言って薬を飲まない認知症の方がいます。
介護者の中には「飲みたくないから嘘をついているかもしれない」と思う方がいるもしれません。
しかし、本当に副作用が出ている場合があります。
そもそも高齢者の方は代謝の衰えや腎臓機能の低下により副作用が出やすいという特徴があります。
嘘だと思い込んで話を聞かないと本当の体調不良を見逃してしまうので、きちんと話を聞き早めに医師に相談しましょう。
患者との相性が悪い
「相性が悪い」と聞くと「嫌われている」「信頼されていない」と思うかもしれません。
しかしそうではなく、薬を飲む姿を見せることが自分の不健康さや弱さを見せるようで嫌だという方もいます。
薬を飲む姿を見せたくないのは、身近な存在である家族を本当に大切に思っていたり愛する気持ちがあるからです。
家族に対して服薬を拒否する場合は、訪問介護やデイサービスのスタッフなどにお願いすることも1つの方法です。
家族に対して服薬を拒否したとしても他人の指示には従い、薬をすんなり飲んでもらえる可能性があります。
うまく飲み込めない
飲み込む力の低下により、薬に対して飲みづらさを感じている場合があります。
錠剤は大き過ぎても小さ過ぎても飲み込みづらく、顆粒はむせて飲めない可能性があります。
喉や口の中に薬が長く残るとそれだけでも不快な気持ちになります。
なので、飲みづらそうな様子が伺える場合は薬の形態を変える相談を医師にしてみましょう。
病人扱いされたくない
薬を飲まされることに対し「病人扱いをされている」と感じる方がいます。
病人扱いをされているように感じると自尊心が傷ついてしまいます。
その場合は医師にきちんと状況を話し、薬の種類を必要最小限にしてもらうことも1つの方法です。
また、介護者が飴やラムネなどを薬と見立てて一緒に飲むことで自分だけが病気じゃないと安心し飲んでもらえる可能性があります。
認知症の方の服薬管理の注意点
認知症の方の服薬管理をする際に注意しなければならないことがあります。
ここからは、認知症と服薬管理の注意点をご紹介します。
記憶になければ事実ではない
認知症の方の記憶に残っていないことは、本人からすると「事実ではないこと」です。
服薬に「1日3回」「1回3錠」「食前・食後」などと決まりがあったとしても、記憶になければ嘘だと思い込んでしまうでしょう。
そのため「嘘だ」「知らない」と言われたとしてもそのたびに何度も説明してあげる必要があります。
ときには面倒に感じたり、腹が立つことがあるかもしれません。
しかし介護する側が認知症についてより理解を深め、向き合っていかなければならないのです。
感情の記憶は残りやすい
感情中枢である「扁桃体」が動くことで、感情中枢のすぐ隣にある海馬に今起きたことを覚えるよう伝わります。
そのため、感情を伴った出来事の記憶は残りやすいと言えます。
なので、無理に薬を飲ませようとすると不安や怒りなどの感情が記憶に残ってしまいます。
認知症の方は認知機能が低下しても感情だけはずっと残り続けます。
薬を無理に飲ませられたら「怖い」「こんな思いはしたくない」と思い、介護者に対しては「ひどい人」「嫌な人」だと思うでしょう。
感情を伴った記憶は残りやすいからこそ、認知症の方をマイナスな気持ちにさせるような服薬の仕方は避ける必要があります。
薬の管理はサポート環境が大切
認知症の方は記憶力の低下により薬の飲み忘れや反対に飲みすぎることなどが起こる可能性があります。
そのため、自己管理が非常に難しいです。
認知症の方本人だけでは薬の管理ができないので、家族や介護士などの周囲のサポートが大切です。
認知症の方が薬を飲まない場合のまとめ
今回は、認知症と服薬についての情報を中心にお伝えしてきました。
認知症と服薬についての要点を以下にまとめます。
- 認知症の薬は認知症を完治することはできないが、進行を遅らせることはできる
- 認知症の方が服薬を拒否した場合は本人のペースに合わせたり、飲みやすい薬に変えるなどの対応が必要
- 認知症の方が服薬を拒否する理由には薬の必要性が伝わっていなかったり、上手く飲み込めないなどの理由がある
- 認知症の方は薬の自己管理は難しいため、周囲のサポートが大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。