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健達ねっと>認知症を学ぶ>認知症の方への虐待とは?増えている背景や対応方法を解説します

認知症の方への虐待とは?増えている背景や対応方法を解説します

認知症になり、自宅や施設で介護を受けながら生活する高齢者が増えています。
そうした社会背景の中で、認知症の方への虐待が問題になっています。

実際に介護されている方は「虐待になってしまうかも」と不安に思ったことはありませんか?
今回は認知症と虐待について、以下の点を中心に解説します。

  • 認知症の方が受ける虐待の種類と特徴
  • 認知症の方が虐待される背景
  • 認知症の方に虐待してしまった時の対応
  • 認知症の方への虐待を見つけた場合の対処法

認知症と虐待について理解を深めるためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

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認知症と虐待

認知症と虐待

※画像はイメージです


高齢化が進む日本では、高齢者が安心して暮らす事が課題になっています。
その中で大きな問題となっているのが、家族や介助者による虐待です。

高齢者への虐待の内、相談件数や虐待と判断された大部分が認知症の方への虐待です。
在宅介護が増えるにつれ、家族や親族など一緒に暮らす人からの虐待件数が増加しています。

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まずは認知症への正しい理解を

まずは認知症への正しい理解を

※画像はイメージです


認知症患者への虐待を減らすには、介護者の認知症への正しい理解が必要です。
まずは、認知症の種類、中核症状と周辺症状の違いについて見ていきましょう。

認知症の種類

認知症には、さまざまなパターンが存在しています。
ここからは、3種類の認知症について解説していきますので参考にしてください。

アルツハイマー型認知症

 アルツハイマーは、アミロイドβという物質が沈着して、神経細胞の障害が起きています。

 脳の外観は、空間把握や記憶を司る海馬の萎縮が見られることも特徴です。
症状が進行していると、以下のような症状が見られます。

  • 進行管理ができない
  • 物を探していても思い出せない
  • 金銭管理が難しい

 現状では、根治療法はなく症状を遅延させるしかありません。
また、治療法には薬物療法・非薬物療法が用いられます。

レビー小体型認知症

αシヌクレインという物質の沈着が原因で、神経細胞の障害を引き起こします。
レビー小体型認知症の症状は、以下の通りです。 

  • 存在しないのに虫や人が見える(幻視)
  • 睡眠中の異常行動
  • パーキンソン病(動作が鈍い・小刻み歩行)

 アルツハイマーと同じく、根治療法はなく進行を遅らせる治療法しかないのが現状です。

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前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、性格や行動が変化する認知症です。

  • 万引きを躊躇なくする
  • 毎日同じものを食べる
  • 言葉が出なくなる
  • 言葉の意味が理解できない

などさまざまな症状が見られます。

 いずれも、認知症が長期化すれば認知能力の低下や寝たきりのリスクがあります。
そのため、かかりつけの医師に相談して早めの受診をしましょう。

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認知症の症状

認知症の症状は、中核症状と周辺症状に大別されます。
ここからは、それぞれの認知症について見ていきましょう。

中核症状

中核症状は、脳内神経細胞の障害が原因の認知症です。
初期段階から、下記のような症状が見られます。

  • 新しいことが覚えられない
  • 日付を覚えていない
  • 段取り、計画ができない

 これらの行為は、悪化すると周辺症状へと発展していきます。

周辺情報

周辺症状は、中核症状からの不安定な行動や環境的・身体的・心理的要因が互いに作用して、精神症状や行動の逸脱を引き起こします。

 そのため、症状が深刻化して不可解な行動が目立つと、介護者が精神的に不安定になります。
結果として虐待に至る可能性があるため注意が必要です。

認知症の原因

認知症の原因は、単なるもの忘れとは違い脳機能の低下・病気から起こります。
脳神経が変化して、脳が部分的に萎縮したり、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって起こる認知症も存在しています。

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虐待の種類と特徴

虐待の種類と特徴

※画像はイメージです


虐待は心身にダメージを与え、人としての尊厳が奪われるすべての行為が当てはまります。
高齢者への虐待を以下の5つに分類し、それぞれの内容を解説します。

身体的虐待

虐待と聞くとイメージされ、周りから見ても虐待が行われていると判断しやすい虐待です。
具体的には、殴る・蹴る・やけどを負わせるなどの、体に痣や傷をつける暴力行為があります。

直接的な暴力行為以外には、外部との接触を極端に遮断する行為もこの分類に当てはまります。
例えば、手足をベッドに縛る、薬を飲ませて動けなくするなどです。

認知症の方は混乱や興奮で動きを止める事が出来ない為、行動を制限される事がたびたび見られます。
直接的な暴力の有無に限らず、身体的に影響が出る虐待が身体的虐待です。

心理的虐待

認知症の方を罵ったり、威圧的な態度で接する事で精神的に苦痛を与える虐待です。

被害者が、「世話になっている」という負い目を感じていると、逆らう事が出来ません。
失敗に対し怒鳴りつけてしまう事も、日々積み重なれば大きなストレスとなります。

逆に無視して相手にしない事も、高齢者を深く傷つけ虐待になります。
心理的虐待は強いトラウマとなり、認知症を悪化させる原因となるため注意が必要です。

介護・世話の放棄

介護を必要とする高齢者に対し、必要な世話をせず劣悪な環境で生活させる虐待です。
一般的に「ネグレクト」という言葉で知られるようになりました。

介護・世話の放棄を受ける高齢者は、入浴出来ない、食事がもらえないなど様々な苦痛を強いられます。
急に受診が必要になった際や、行政の訪問によって発覚するケースが多い虐待です。

経済的虐待

生活に必要な金銭を渡さない、本人に使わせないなど、理由なく金銭を持たせない状況も虐待です。

増えてきているのが、入院中や施設に入所している間に本人の自宅を売却してしまうケースです。
これは本人の財産を無断で売却してしまっているため、虐待に当たります。

金銭の管理が難しくなった認知症の方に代わって、家族が管理しているケースは多いでしょう。
本人の理解力に合わせて説明し、同意を得た上で使用する必要があります。

「どうせ分かっていないから」と無断で財産に手を付ける行為は決して許されません。
いざという時に誰が金銭や財産を管理するかは日ごろから話し合っておくと良いでしょう。

性的虐待

本人との合意がなく行われる性的行為を指します。
体力も低下している高齢者は強く拒否が出来ない場合が多く、被害が減りません。

排泄の失敗に対して下半身を露出したままにしておくなど、羞恥心を伴う行為も性的虐待に含まれます。
羞恥心を伴うケアを行う際は充分な配慮が必要です。

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認知症の方が虐待される背景

認知症の方が虐待される背景

※画像はイメージです


認知症の方への虐待は表面的に見えている問題だけではなく、その背景にある原因に着目する事が重要です。
ここでは、具体的な虐待の原因を解説します。

介護施設

介護施設は、家族が抱える介護負担を軽減する要となります。
しかし、介護職員の不足や教育の難しさから、問題が山積です。

介護施設が抱える問題について、ここでは2つ解説します。

人手不足

介護職には、体力・精神面で大変な仕事という印象があります。
介護施設に就職しても、耐えられない退職者があとを絶ちません。

そのため、介護施設は慢性的な人手不足に陥っています

人手が足りない中、無理なシフトが組まれ、ぎりぎりの人数で対応しています。
最初は優しい気持ちで働いていても、疲労からストレスがたまっていきます。

だんだんと疲弊していく中で高齢者がストレスのはけ口となってしまうのです。

教育不足

認知症の介護では、本来ある程度の医療知識が求められます。
しかし、教育する立場のスタッフが不足していて充分な環境とは言えません。

高齢者への接し方について教育されていないことが原因になります。
マニュアルも充分に整っていない場合があり、介護が自己流になっています。

そのため、高齢者の理解不能な行動がストレスとなり、虐待へと繋がっています。

人間関係

家庭では、介護によってこれまでの立場が逆転してしまいます。
これまで頼ってきた親の面倒を見るというのは、すぐに受け入れる事が出来なくて当然です。

仕事や家事と介護を併用する環境に疲弊し、孤立していきます。
介護のために退職する場合もあるでしょう。

これまでの家族の形がバランスを失い、家庭そのものが不安定な状態になります
更に介護疲れやストレスがたまると、高齢者がはけ口となり虐待へつながっていくのです。

社会環境

介護に追われ、社会との関係性が薄れていくと、外部との交流がなくなります。
介護者が問題を抱えこむと虐待へ繋がっていきます

また、外から虐待を発見することは難しく、よほどの事がなければ通報もされません。
そのため介護者の社会的孤立は、虐待の深刻な原因となっています。

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認知症の方に虐待してしまった時の対応

認知症の方に虐待してしまった時の対応

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全ての虐待に、「虐待している」という自覚があるとは限りません

  • 外にでて事故に巻き込まれたら困ると家の外に出られなくしている。
  • 何度も尿意で起きるのがかわいそうで水分摂取を極端に控えさせてしまう。

以上のような場合、介助者は悪意なく虐待を行っています。
介護が初めての場合、ケアの方法がわからず間違った方法で介護していて虐待になってしまう事もあります。

そのため、少しでも介護に不安を感じた段階で対策が必要です。

周囲に相談する

周囲や社会から孤立していると、介護者は追い詰められてしまいます。
家族や近所の方、かかりつけ医に相談しましょう

問題を解決できなかったとしても、不安を表に出す事で気持ちが楽になります。
また、周囲と関係を持てるという安心感から、虐待を踏みとどまる事に繋がります。

ストレス解消方法を見つける

介護によるストレスを高齢者へ向けて発散すると虐待に繋がります。
そのため、自分なりのストレス解消方法を見つけましょう

気持ちを切り替えて次の日の介護が出来るよう、オンオフをしっかり付ける事が大切です。

介護サービスを利用する 

介護保険で使えるサービスを充分に活用していきましょう
費用が掛かってしまう場合もありますが、疲弊し介護できなくなっては意味がありません。

数時間でも1人になる時間を用意し、気持ちをリセット出来る環境作りが大切です。

認知症の方への虐待を見かけたら?

認知症の方への虐待を見かけたら?

※画像はイメージです

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ここまで解説したように、高齢者虐待は誰でも身近に起こりうる問題です。
近所に気になる高齢者を見かけたり聞いたりしたら、迷わず通報してください。

あなたの勇気ある通報が虐待の深刻化を防ぐきっかけになります。
少しでも気になる事があれば、気軽に相談しましょう。

ここでは、虐待を通報したあとの流れを解説します。

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高齢者の安全確認・情報収集

相談の連絡を受けると地域包括支援センターの職員は対象者の安全確認を行います
この時、相談者の個人情報は一切公表されず、秘密厳守で行われます。

個別ケース会議

安全確認の様子や、集めた情報を元に関係者が関連機関と会議を行います。
ここで具体的にどんな介入が必要か話し合われます

支援を実施

支援の内容は様々です。
虐待の被害者だけでなく、介護者に対しても支援が行われます

定期的な訪問

虐待はいったん収まったように見えても、繰り返す場合があります。
介入後に状態が改善しているかも含め、定期的な訪問が行われます。

場合によっては介護者も苦しむことに

場合によっては介護者も苦しむことに

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認知症患者の介護は、大きなストレスを抱えるため、虐待する以外にも「介護うつ」になってしまうケースも考えられます。
ここからは、介護うつを中心に解説していきます。

介護うつとは?

介護うつとは、身内を自宅介護中に肉体、精神疲労が蓄積して発症するうつ病です。
うつの症状は、自覚症状がないまま発症するため症状のサインを知っておきましょう。

介護うつの症状は?

介護うつを患うと、さまざまな症状を引き起こします。
うつから発症する症状は、以下のとおりです。 

  • 食欲不振
  • 睡眠障害
  • 疲労感
  • 焦燥感
  • 思考障害

 これらの症状が2週間以上継続している場合は、介護うつの可能性を疑いましょう。

介護うつの原因は何がある?

介護うつになる原因は、以下の要因が挙げられます。

  • 経済的負担:介護費用での生活の圧迫、休職・離職によるストレス
  • 肉体的負担:トイレ・入浴といった生活全般をサポートするときのストレス
  • 精神的負担:介護の長期化により、不安・孤独感を感じる

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認知症と虐待のまとめ

認知症と虐待のまとめ

※画像はイメージです

ここまで認知症の方への虐待の特徴や背景を解説しました。
要点を以下にまとめます。

  • 近年、介護者である家族からの虐待が増加している
  • 介護疲れや介護のストレスが高齢者虐待へとつながっていく
  • 介護施設の人手不足や教育不足も虐待の要因
  • 不安に思ったら些細な事でも周囲に相談する
  • 虐待を感じたら高齢者虐待相談窓口へ相談

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
  • 小規模多機能型居宅介護
  • その他介護事業所運営
  • 食事管理
  • 栄養提供
  • 福祉用具販売
  • 障がい者雇用

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