認知症の治療は薬物療法だけではなく、薬を使わず治療する「非薬物療法」があります。
非薬物療法の代表的な療法に「回想療法」があるのを知っていますか?
今回は認知症の回想法について、以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症の回想法のやり方と効果
- 回想法の準備と注意点
- 回想法以外の非薬物療法
認知症における非薬物療法の理解を深めるためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
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認知症の回想法とは?
認知症における回想法は、昔の写真や思い出の品などを見たり実際に触れたりしながら昔の経験や思い出などを語り合う心理療法の1つです。
認知症の方は近い出来事をすぐに忘れてしまいますが、幼少期や学生時代などの昔のことはよく覚えています。
回想療法は、上記のような認知症の特性を生かした非薬物療法です。
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認知症の回想法のやり方
認知症の回想法は個人でも、グループでも行うことができます。
ここからは、認知症の回想法のやり方をご紹介します。
個人でのやり方
個人での回想法には以下の2種類があります。
- 何気ない日常会話から自由に話をする
- あらかじめ決められたテーマについて1対1で話す
自宅にある昔の写真や思い出の品物を用意すればすぐに始めることができます。
また、1対1でのコミュニケーションはじっくり話を聞くことができるというのが最大のメリットです。
グループでのやり方
グループでの回想法は、1グループ10名前後の人数で行います。
グループで回想法を行うときは、事前に参加者の個人情報を調査しておきます。
また、参加者が話したくないと思われるような話題は避けて行う必要があります。
「子供の頃の遊び」や「旅行での思い出」など、参加者が話しやすいようなテーマを決め、1時間程行います。
回想法の効果
認知症の治療に取り入れられている回想法ですが、一体どのような効果があるのでしょうか。
ここからは、回想法の効果を3つご紹介します。
心に落ち着きを取り戻す
過去の出来事を思い出すことで懐かしさが蘇り、心を落ち着かせることができます。
昔の思い出に浸ったり、他者と思い出を共有し合うことは精神的な安定をもたらします。
グループでの回想法では共通の話題を仲間同士で語り合い、楽しむことで満足感が得られます。
今まで感じていた孤独や喪失感などが取り払われ、心のやすらぎへと繋がるのです。
コミュニケーションを深める
認知症の方は自力でできないことが増えると、意欲や関心が失われ、他者との交流を避けるようになります。
しかし、回想法を行うことで他者との関わりを持つことができ、コミュニケーションが深まります。
その結果、他者との関わりの中で失われていた意欲や関心が取り戻され、人と接することの楽しさや温かさを感じることができます。
閉鎖的になっていた心を開き、再び他者と繋がることができるというのが回想法のメリットだと言えます。
自分に自信を取り戻す
回想法を行い過去を振り返ることで、今まで歩んできた人生や自分自身の価値を再確認することができます。
また、自分の人生を人に話すことで傷ついた自尊心を回復させ、自分に自信を取り戻すことへと繋がります。
認知症の方々にとって過去の思い出を話したり、聞いたりすることは、とても楽しいものです。
そのため表情が明るくなり、認知症になる前のような生き生きとした姿を取り戻すことができるでしょう。
回想法の準備
回想法は認知症の方の思い出を振り返りながら話をするので、過去のことを思い出す懐かしいものを準備する必要があります。
代表的なものを以下にまとめます。
- 幼少期や学生時代の写真
- 読んでいた本や新聞
- 聞いていた音楽
- 使い込んだ生活用品
- 昔遊んでいたおもちゃ
また、回想法を行うときに認知症の方が生まれ育った地域の特産物をお茶菓子として出したり、好きだった花を飾るなども良いでしょう。
回想法における注意点は?
回想法を行うときの1つ目の注意点は、認知症の方を否定しないことです。
認知症の方が話す内容の中に間違いがあったり、以前話したときと話の内容が変わることがあります。
しかし、「話していることが違う」「間違っている」と否定したり、訂正しようとするのはやめましょう。
認知症の方の話を遮らず、最後まできちんと耳を傾けて聞くことが大切です。
また、認知症の方の個人情報を事前に調査し、本人の嫌な思い出を無理やり聞き出さないよう注意が必要です。
これまでの長い人生の中、必ずしも楽しいことや幸せなことばかりだったわけではないでしょう。
辛い経験が必ずあるはずなので、認知症の方が不快になるような話をしないためにも事前の調査をしっかり行いましょう。
回想法で役立つレクリエーション
回想法を取り入れた認知症の方のレクリエーションがあります。
たとえば、認知症の方に馴染みのあるおもちゃや日用品などの写真を見せてクイズ形式にしたり、自由に話し合ってもらうものです。
そこから、「これはどのように使うものですか?」「何歳のときに使っていたのですか?」などと昔の思い出を引き出す質問をします。
また、実際に昔遊んでいたおもちゃで遊んだり、懐かしの郷土料理やお菓子を作って食べるなどのレクリエーションもあります。
回想法を受けられる施設
回想法は認知症のアプローチとして以下のような施設で実施されています。
- 認知症専門病棟を設けている病院
- 認知症専用フロアを設けている病院
- 高齢者施設
- デイケア・デイサービス(一部)
その他、保健福祉の地域ケアとして、公民館や敬老館、博物館などでも行われるようになっています。
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回想法以外の非薬物療法は?
回想法についてご紹介しましたが、認知症の非薬物療法は回想法だけではありません。
ここからは、回想法以外の非薬物療法をご紹介します。
心理療法
非薬物療法の心理療法はいくつかありますが、その中でも代表的なものはバリデーション療法です。
バリデーション療法は認知症の方の感情に焦点を置き、話を否定せずに傾聴し、共感するというものです。
認知症の方が抱えているマイナスな感情を表出させ、見ている世界を理解するよう努めます。
園芸療法
園芸療法は、花や野菜などの植物を通して心身の健康の回復を図ることを目的としています。
実際に植物を育てる中で成長を待ちわびる気持ちや、美しさなどを感じることで心に癒しをもたらします。
園芸作業では「立つ・座る」「水をやる」「耕す」などの様々な動作が必要になるため、運動能力や体力の維持・回復に繋がります。
音楽療法
音楽療法は認知症の方が好きな曲を聞いたり、実際に歌ったりして脳の活性化やストレス軽減を目指すものです。
また、聞く、歌うだけではなく、自分で楽器を演奏することもあります。
認知症の方が昔聞いていた曲を聞いたり、歌うことは過去を思い出すことに繋がるので、回想法にもなります。
認知症には、薬を使わずに治療する方法があるのはご存知でしょうか。代表的な非薬物療法に音楽療法という方法があります。音楽療法とは音楽を聴いたり楽器を演奏するなどして、音楽の持つ力を認知症の治療に使う療法です。今回は音楽療法について[…]
ペットセラピー
ペットセラピーは動物と触れ合うことで心の安定を取り戻したり、ストレスの緩和などの効果を目的として行います。
認知症を発症された方は、認知症の影響によって他社との交流が減り、あまり表情の変化がみられない方が多いです。
しかし、実際に動物と触れ合うことで癒され、自然と笑顔がこぼれるなどの効果があります。
その他の療法
その他の療法には、「芸術療法」や「アロマセラピー」などがあります。
芸術療法は絵を描いたり、塗り絵や折り紙などを行うことで脳を活性化させる効果があります。
アロマセラピーでは、リラックス作用があるアロマオイルを使用することで、興奮状態や睡眠障害の改善などの効果を期待できます。
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回想法をより深く理解するには?
回想法は、高齢者施設や介護施設など多くの施設で利用されています。
しかし、個人で行う場合、どのようなやり方が適切か分からないという方は少なくありません。
回想法のやり方が分からない方のために、各都道府県の自治体や市区町村で回想法に関する講座が開かれています。
「回想法のやり方を学びたい」「回想法についてもっと知りたい」という方は、地域の自治体のホームページを調べてみてください。
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回想法に役立つ資格や研修
回想法に役立つ以下のような資格や研修があります。
- 診療回想士
- パーミングセラピスト
- 認知症ライフパートナー
それぞれについてご紹介します。
診療回想士
診療回想療法でインタビューする人を診療回想士(レミニシャン)と呼び、インタビューされる人をレミニンと呼びます。
回想療法は認知症の方との心の交流をもっとも大切にするコミュニケーション療法です。
診療回想士は、通信教育講座(診療回想士認定講座)で回想法の技法を身につけることができます。
資格は診療回想士5級が通信教育講座の終了をもって取得できます。
パーミングセラピスト
パーミングは、回想療法の一部で、会話機能が低下気味の方へのコミュニケーション技術です。
外見的には手浴マッサージに似ていますが、違いは回想療法の一部ということです。
パーミングの基本は、ゆっくりとした動きと回想的なおしゃべりにあります。
パーミングの実施で、脳への刺激や身体的緊張をほぐし、気持ちを穏やかな状態にすることができます。
パーミングセラピストは通信教育講座の課題終了をもって資格が認定されます。
認知症ライフパートナー
認知症ライフパートナーは、認知症の方の生き方・価値観を尊重し、暮らしていけるよう寄り添いサポートする人です。
認知症の方は、コミュニケーション機能の低下により意向を汲み取ることが容易でないときがあります。
認知症ライフパートナーは、回想法や傾聴技術を使って認知症の方の意向を汲み取りながら寄り添っていきます。
2級、3級の検定試験があり、資格取得ができます。
認知症の回想法のまとめ
今回は、認知症における回想法についてご紹介しました。
認知症における回想法の要点を以下にまとめます。
- 回想法は、昔の写真や思い出の品物を見たり、実際に触れながら昔の経験や思い出を語り合う心理療法の1つ
- 回想法には「コミュニケーションを深める」「自信を取り戻す」などの効果が期待できる
- 回想法を行う際に注意すべきことは、「否定しない」「嫌がることを無理やり聞き出さない」
- 回想法以外の非薬物療法には、「園芸療法」や「ペットセラピー」などがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。