認知症の疑いを持って受診したところ、実は発達障害だったということがあります。
特に軽度認知障害の症状は非常に軽く、発達障害と区別するのは困難です。
本記事では、発達障害と認知症について以下の点を中心に解説します。
- 発達障害と認知症の違い
- 発達障害と認知症が誤診されやすい理由
- 発達障害と認知症を誤診したときの問題点
- 発達障害と併発しやすい認知症
皆さまの不安を解消するためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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発達障害と認知症の違い
発達障害と認知症の違いは進行性があるかどうかです。
発達障害は先天性の障害です。
幼少期から障害を持ち続け、症状は変化しますが進行性はありません。
一方、認知症は加齢や生活習慣による、認知機能の低下が原因です。
そのため、高齢で発症する方が多くいます。
いずれも根本的に完治させることはできません。
認知症はリハビリと薬物治療を行い、症状を緩和させ進行を遅らせます。
つまり、発達障害には進行性がなく、認知症は徐々に進行していく点が大きな違いです。
発達障害と記憶障害の違いについて知りたい方はこちらの記事も合わせてお読みください。
認知症について詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてお読みください。
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誤診されやすい理由
高齢者の発達障害と認知症はとても誤診されやすいです。
ここでは、3つの理由を解説します。
過去の発達障害に関する情報がない
軽度認知障害は50歳以降から物忘れなどを発症します。
それに対して、発達障害は先天性であり、幼少期の問診が必要になります。
未診断のまま社会生活を営んでいると、発達障害の自覚がないことが多いです。
したがって、発達障害が見逃され認知症のみの診断となる可能性があります。
認知症の方がすでに発達障害を持っている
60代以降になると、発達障害よりも認知症と診断されやすいです。
発達障害と認知症には共通の症状があり、認知機能テストでは判別が困難になります。
たとえ認知機能テストで高得点を取得しても、本人が記憶困難を訴えるかもしれません。
そのような場合はADHD(注意欠如・多動性障害)の可能性を疑いましょう。
しかし、ADHD の場合にはCT画像においても脳の萎縮は見られません。
そのため軽度認知障害と誤診してしまう場合があります。
症状が似ている
レビー小体型認知症とADHDは即時記憶が困難です。
また、レビー小体型認知症の場合、幻視・妄想といった症状も現れます。
その際にアスペルガー症候群のような衝動的な言動をみせます。
前頭側頭型認知症は反復行動などの行動障害が目立ちますが、初期では記憶障害は目立ちません。
また、自閉スペクトラム症が未診断である場合、反復行動や社会性の欠如などが同様に起きます。
以上のように、認知症と発達障害の症状は様々であり、共通する点が多いです、
誤診されたら困る理由
認知症と発達障害を誤診された場合にはどのような問題が起きるのでしょうか。
まず、処方される薬物で効果を得られず、更に副作用がおきるかもしれません。
また、複数の発達障害を持つと、精神疾患により記憶が困難になることがあります。
認知症の発見が遅れることにも繋がりかねません。
誤診によって精神的なストレスやショックを受ける方も多いです。
上記の点から専門医を早めに受診し正確な診断と早期の治療が大切であると言えます。
発達障害の特徴
発達障害とは、生まれつき自閉症や学習障害など脳機能の発達に関する障害です。
周囲の人々の理解や工夫により日常生活の困難を減らすことが大切です。
症状
発達障害とは、自閉症スペクトラム障害、学習障害、 ADHD( 注意欠如・多動性障害)の総称です。
自閉症スペクトラム障害は、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などを統合してできた診断名です。
自閉症スペクトラム障害の症状を以下にまとめます。
- 対人関係の構築困難
- 限定された行動、反復行動
- 感覚に関する過敏性や鈍感性
学習障害では知的発達に遅れはなく、聞く、話す、読む、書く、計算することが困難になります。
学習障害の症状を以下にまとめます。
- 文字が読めないのではなく、読むのが極端に遅い。
- 文字を書いたり文章を作ることが難しい。
- 計算や推論をすることが難しい 。
ADHD( 注意欠如・多動性障害)は症状に個人差が大きく見られます。
ADHDの症状は主に以下の3つです。
- 集中力がない
- じっとしていられない
- 衝動的に行動をする
発達障害には、グレーゾーンと呼ばれる診断基準に至らないほどの症状もあります。
また、発達障害とみなす症状は他にもあり、数値で見極めづらい障害です。
進行
発達障害は先天的な脳機能の障害であり、進行性ではありません。
アスペルガー症候群とADHDは大人になっても障害を持ち続けます。
また、本人が置かれた社会的な環境によって、発生する問題が異なってきます。
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軽度認知障害の特徴
軽度認知障害とは、認知症と診断される前の一歩前の段階です。
また、軽度認知障害はうつ病やその他の精神疾患ではないものとされています。
認知症と比べて症状が軽いため、発達障害との区別が困難です。
症状
軽度認知障害の症状は、物忘れや見当識障害などの認知機能の低下です。
例えば、同じ質問を繰り返す、家事がスムーズに行えない、道に迷うなどが挙げられます。
また本人もしくは家族によって物忘れが認識されている状態を指します。
全般的な認知機能に問題はないため日常生活は自立しています。
進行
軽度認知障害が認知症に移行する確率は年間10%~15%です。
何も対応しないと認知症への移行率が高くなるため、早期発見が重要です。
一方、認知症を発症せずそのまま健康な状態に回復する場合もあります。
発達障害と認知症の治療方法
発達障害と認知症は治療方法が異なります。
ただ、どちらも早期発見、早期治療が大切なことは変わりません。
ここでは、それぞれの治療方法を解説します。
発達障害
発達障害の治療は療育(発達支援)と薬による治療があります。
療育では個々の発達の状態や特性に合わせて、現在困っていることを解決します。
子供は発達のスピードに個人差があるため特性に合わせた支援が必要です。
症状によっては薬物による治療を必要とする場合があります。
発達障害を治すことではなく、症状を緩和させることが目的です。
認知症
認知症の根本的な治療方法はまだ見つかっていません。
早期に専門医の診察を受け、薬物療法と非薬物療法を必要に応じて行っていきます。
薬物療法では、認知機能の低下を防ぐために微量の抗認知症薬が処方されます。
また 非薬物療法としては、 認知機能訓練や日常生活動作の訓練が行われます。
薬物療法、非薬物療法はともに進行を緩和させることが目的です。
発達障害と併発しやすい認知症
発達障害と認知症は併発することがあります。
特に50代以上のADHDの方が認知症になりやすいと言われています。
発達障害と併発しやすい認知症のタイプは次の2つがあります。
レビー小体型認知症
発達障害とレビー小体型認知症がどのように併発するのかみてみましょう。
割合
レビー小体型認知症と ADHD の合併率は約半数である47.8%といわれています。
またレビー小体型認知症とアスペルガー症候群の併発も起こります。
特徴
レビー小体型認知症でうつ状態になると、幻覚や介護拒否の症状が見られます。
幻覚や介護拒否を起こした方には漢方薬が効果的です。
ただ、漢方薬が効かない場合はADHDを疑います。
ADHDにはアスペルガー症候群に似た「急に怒り出す」といった症状もあらわれます。
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アルツハイマー型認知症
次に発達障害とアルツハイマー型認知症がどのように併発するのかみてみましょう。
割合
アルツハイマー型認知症とADHDの合併率は15.2%と言われています。
特徴
脳の画像では海馬が萎縮しておりアルツハイマー型認知症の兆候があります。
そこで、「若い頃から整理整頓ができたのか」という問診が必要になるでしょう。
幼少期から整理整頓ができないと、アルツハイマー型認知症とADHDの合併と考えます。
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発達障害と認知症のまとめ
ここまで発達障害と認知症についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 発達障害に進行性はないが、認知症には進行性がある
- 幼少期の問診がない場合は誤診されやすい
- 誤診によって認知症の治療が遅れ、強い不安感が生じる
- レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症は発達障害と合併しやすい
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。