認知症介護を行ううえで気になる認知症治療。
早期発見が大切となる認知症ですが、どのような治療方法や効果があるのでしょうか?
今回、認知症の治療について以下の点を中心にご紹介します。
- アルツハイマー型認知症の治療方法
- 治る認知症といわれる正常圧水頭症について
- アルコール性認知症の治療で大切なこと
- 周辺症状との向き合い方
認知症への疑問を解消するためにも、参考にしていただけると幸いです。
是非最後までご覧ください。
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認知症とは
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認知症とは、記憶障害や認知機能障害によって日常生活に支障がある状態です。
一般的なもの忘れとは違い、人や物の名前、体験したこと自体を忘れてしまいます。
もの忘れは加齢による老化現象で、忘れてしまったことに対して自覚があります。
しかし認知症の場合、ほとんどの方に自覚がありません。
また、日本では時代の経過とともに認知症患者が増え続けているのも事実です。
認知症には種類があり、もっとも多いのがアルツハイマー型認知症です。
次いで脳梗塞や脳出血が原因となる血管性認知症や、レビー小体型認知症などがあります。
その他、正常圧水頭症やアルコール性認知症など、原因により認知症の種類、治療方法が異なります。
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認知症は治らない?
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残念ながら、認知症の根本的な治療方法はまだ見つかっていません。
手術で治る認知症も一部ありますが、基本的には症状の緩和や進行の抑制が認知症治療の目的となります。
治療方法として、薬物療法やリハビリ治療、食事療法などがあります。
アルツハイマー型認知症は治るのか
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三大認知症のひとつであるアルツハイマー型認知症ですが、一度発症すると完治することはありません。
しかし、適切な対処を行うことで、治ることはなくとも症状を遅らせることは可能です。
アルツハイマー病によって、日常生活を送るのも困難な高齢者の方がいます。もし、周りにアルツハイマー病で苦しんでいる方がいたら、どのように対処すべきなのでしょうか?今回はアルツハイマー病について、以下の項目を中心に解説します。アルツ[…]
症状
アルツハイマー型認知症は認知症の5~6割を占める代表的な認知症です。
新しい情報を記憶できない、思い出せないといった症状がみられます。
アルツハイマー型認知症は、緩やかに進行していくのが特徴です。
進行の過程で中核症状という症状がみられるようになります。
代表的な中核症状は以下の3つです。
- 記憶できなくなる記憶障害
- 時間、場所、人の認識ができなくなる見当識障害
- 計画だった行動ができなくなる実行機能障害
中核症状がみられると、日常生活に支障をきたすことも増えるため注意が必要です。
さらに、中核症状に本人の性格や感情、生活環境などが合わさることで、周辺症状が起こる場合もあります。
代表的な症状は、徘徊や暴言・暴力などです。
認知症を進行させないためには早期発見・早期対応が必要となります。
記憶力低下などの初期症状がみられた場合は、早期に病院を受診しましょう。
原因
アルツハイマー型認知症の原因は、アミロイドβ(ベータ)とタウというたんぱく質です。
アミロイドβとは、脳が活動する際に出る老廃物です。
私たちは、本来アミロイドβを分解する機能をもっていますが、加齢にともない分解機能が弱まることでアミロイドβが溜まってしまいます。
タウは脳の神経細胞を支える物質ですが、アミロイドβ同様に溜まっていきます。
アミロイドβやタウが毒素を出し、脳の神経細胞にダメージを与えることで認知症が発症します。
治療方法
認知症を適切に治療することで、病状を緩和させることができます。
効果を最大限高めるためにも、早期発見・早期治療が大切です。
ここでは、薬物療法や回想療法、音楽療法について解説します。
薬物療法
認知症治療において薬物療法はとても重要な役割を担っています。
現在、認知症自体を治せる薬はありません。
薬物療法では症状や進行を抑制させることが主な目的になります。
認知症治療薬は主に、アセチルコリンエクステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬があります。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、見当識障害や実行機能障害などの中核症状に対して処方されます。
代表される薬は、ドネペジル、レミニール、イクセロン、リバスタッチです。
NMDA受容体拮抗薬は、暴言・暴力などの行動・心理症状に対して処方されます。
代表される薬にメマリーがあります。
回想療法
回想療法は、アメリカの精神科医ロバート・バトラー氏によって提唱された心理療法です。
昔好きだった曲や思い出の品に触れることで、心の安定やコミュニケーションの促進を図ります。
アルツハイマー型認知症は、短期記憶の低下が著しく、長期記憶は比較的保たれているのが特徴です。
過去を振り返る中で、当時の感情を思い出すことが脳の活性化につながるといわれています。
また、自分の人生の振り返ることで、認知症の方が自己を再認識する機会にもなるでしょう。
音楽療法
音楽療法は周辺症状において効果を発揮する非薬物療法です。
音楽鑑賞を主とする受容的音楽療法と、認知症の方自身が歌唱、演奏する活動的音楽療法に分けられます。
リラックス効果があるだけでなく、メロディーやリズムを意識することで脳の活性化にもつながります。
音楽療法は非薬物療法としてだけでなく、認知症予防の側面においても効果的です。
しかし、音楽療法が逆効果になることもあります。
疲れているときに歌唱や演奏を強要された場合、かえってストレスとなることもあるでしょう。
認知症の方のペースに合わせることが大切です。
正常圧水頭症は治るのか
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正常圧水頭症は、手術を受けることで治る認知症です。
ただし、発症原因によっては治療可能でない場合があります。
症状
正常圧水頭症に代表される3つの症状を解説します。
症状を把握し、早期発見に繋げることが大切です。
歩行障害
もっとも多く見られる症状で、小刻み歩行やすり足といった歩行障害を生じるようになります。
方向転換時のふらつきなどもあり転倒リスクが高く注意が必要です。
小刻み歩行はパーキンソン病の症状でも見られます。
正常圧水頭症の場合は、足を開いて歩く点がパーキンソン病との違いです。
尿失禁
排尿コントロールがうまくできなくなり、頻繁に尿意を感じるようになります。
急に尿意が襲ってくるため、失禁してしまうことも多いです。
軽度の認知症
短期記憶力、集中力の低下がみられるほか、興味や関心を喪失してしまうことがあります。
声かけに対する反応も悪くなり、ぼーっとした様子で過ごすことも増えるでしょう。
原因
正常圧水頭症は、脳室の肥大が原因となります。
脳室が肥大することにより、脳と脊髄の神経経路を圧迫されることで発症する病気です。
正常圧水頭症には、外傷や腫瘍などに続いて発症する続発性正常圧水頭症と、原因がわからない特発性正常圧水頭症があります。
治療方法
特発性正常圧水頭症は「治る認知症」と呼ばれており、手術によって治る見込みがあります。
代表的な手術方法は「シャント術」です。
体内に人工のカテーテル(シリコンの管)を挿入し、脳室内や脊髄腔内の髄液を他の部位に導く手術です。
脳室の除圧により症状が改善するため、治る認知症とわれています。
カテーテルをつなぐ部位は主に以下の3通りです。
- 脳室ー腹腔シャント(V-Pシャント)
- 脳室ー心房シャント(V-Aシャント)
- 腰椎ー腹腔シャント(L-Pシャント)
また、その他の手術方法に第3脳室底開窓術があります。
シャント術は比較的簡易的に行える手術ですが、カテーテルを体内に留置するため、感染の可能性や髄液が流れ過ぎる場合もあります。
第3脳室底開窓術では、神経内視鏡を用いて脳室の底に穴を開け、くも膜下へ髄液が流れるようにする手術です。
シャント術に比べ合併症が少ないですが、水頭症の原因によっては有効ではない場合もあります。
アルコール性認知症は治るのか
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アルコール性認知症は若い人でも起こりうる認知症の一つです。
アルコール依存症患者に多い認知症ですが、適切な治療法によって治る可能性があります。
認知症に様々な原因があることは知っている方も多いでしょう。しかし、アルコール性認知症という認知症をご存知ない方も多いと思います。アルコール性認知症の症状飲酒量との関係治療方法などに[…]
症状
アルコール性認知症では、歩行障害、記憶力や注意力の低下、時間や場所がわからなくなる見当識障害を引き起こす場合があります。
その他、感情のコントロールができなくなる症状が特徴的です。
原因
大量飲酒による脳の萎縮が原因となります。
特に高齢者の場合は、加齢による脳機能の低下があるため、アルコールによる影響をより受けやすいです。
しかし、若い人でもアルコール依存症となれば、前頭葉機能が障害を受ける可能性もあります。
アルコールを大量飲酒すると、アルコールを分解するためにビタミンB1(チアミン)が使われます。
その結果、脳内のビタミンB1が不足することで「ウェルニッケ脳症」を引き起こしてしまいます。
治療方法
アルコール性認知症は、アルコールの摂取をやめることで治る見込みのある認知症でもあります。
断酒
もっとも大切なことは飲酒をやめることです。
アルコールの過剰摂取は、アルコール性認知症の発症のみならず、肝硬変や糖尿病といった別の病気の発症原因にもつながります。
アルコール依存症であれば自らお酒を断つことは難しいかもしれません。
まずは専門医へ相談するほか、同じくアルコール依存症の方が集まる自助グループへ参加するといった方法があります。
薬物療法
薬物療法では、飲みたいという気持ちを抑制し、身体がアルコールを受けつけなくなる抗酒薬が処方されます。
まずは専門医に相談してみましょう。
食事療法
アルコール性認知症の場合、アルコールを断って適切な栄養管理を行えば、症状の改善が見込まれることもあります。
アルコールの分解過程で失われる、ビタミンB1、B2、B12、葉酸を含む食品を積極的に摂ると良いとされています。
生活習慣の改善
規則正しい生活習慣を送ることも大切な要素です。
アルコール依存症の方は、1日中自宅に引きこもがちです。
自宅にいることでお酒に対する欲求が増し、ついつい飲んでしまうケースもあります。
外出の機会を増やし、適度な運動、早寝早起きなど基本的な生活習慣をとり入れることで、アルコールと距離を置くことが大切です。
認知症の周辺症状は治るのか
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周辺症状は周囲の環境やストレスによって起こります。
代表的な症状は、幻覚や妄想、不穏や徘徊、暴言や暴力、抑うつなどです。
周辺症状には根本的な原因が生じている場合が多く、原因を解消することで緩和が見込めます。
たとえば、暴言・暴力がみられる場合には、何に対して怒っているのかに視点をあてることが重要です。
本人にとっては、嫌なことをされたと感じている可能性もあります。
認知症の方は、認知機能の低下から感情を上手く伝えることができません。
また、混乱することで、暴言・暴力につながっていることも考えられます。
叱ったり批判したりせず、原因に焦点をあて、気持ちに寄り添うことが重要です。
認知症は治るのかのまとめ
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ここまで、認知症の治療方法や効果などをお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- アルツハイマー型認知症は、完治できないが病状や進行の緩和が可能
- 正常圧水頭症は、シャント術や第3脳室底開窓術によって治る可能性がある
- アルコール性認知症の治療は、断酒や規則正しい生活習慣が中心
- 周辺症状との向き合い方は、原因を探り本人を理解することが大切
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。