認知症は、2025年には5人に1人がなるといわれています。
認知症になると軽いもの忘れからはじまり、じわじわとものごとの判断が出来なくなります。
今回、もしも自分の親が認知症になった場合の財産管理方法や、起こりうる問題についてご紹介します。
- 親が認知症になると起こる財産問題
- 認知症の親の代わりに預金を引き出せるのか
- 親が認知症になった場合の財産管理対策
親が認知症になり家族による財産管理が必要になった際の参考にしてください。
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親が認知症かもしれない?セルフチェック
認知症の初期症状は、原因となる認知症によって異なります。
しかし、親の様子がいつもと違うと感じた時は注意しましょう。
認知症の始まりが疑われる主な症状は次の通りです。
- 物忘れがひどくなる
- 判断力や理解力が悪くなる
- 日にちや場所がわからない
- 人格が変わった
- 好奇心・意欲が無くなる
物忘れは、老化現象として誰でも経験することで、人の名前が出てこない、今何をしようとしていたか忘れるなどは誰でもよくあることです。
しかし、認知症が原因の物忘れは、経験したこと自体を忘れてしまうというところに特徴があります。
料理の段取りができない、簡単な計算ができなくなったなどの判断力・理解力の衰えや自分の誕生日や年齢がわからなくなるという症状も認知症の症状としてよく知られるものです。
人によっては、急に怒りっぽくなったり、泣き出したりと、感情の起伏が激しくなる方もいます。
今までなら、趣味を楽しんでいたのに全く興味を示さなくなった場合も、注意が必要です。
これらの症状が複数出ている場合、もしくは今までの親とは明らかに様子が違うと感じた時には、専門家に診てもらいましょう。
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親が認知症だと判明したら|財産問題
将来、親が亡くなったり認知症になってしまった場合、残された財産をどのように管理したら良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。
いざ親が認知症になってしまってからでは、多くの問題をかかえてしまうこともあります。
将来、親が認知症になることを想定して、財産管理の仕方について対策を講じておくことは大事なことです。
親の財産管理の方法には、成年後見人制度や家族信託もありますのでこれらの対策方法についてもご説明します。
親が認知症で起こるお金の問題
親が認知症になって起こるお金の問題はさまざまです。
正常な理解ができずに無駄にお金を使い込んでしまったり、詐欺被害にあってしまう可能性もあります。
仮に認知症の親が入院した場合には、高額な医療費を請求されることもあります。
そんな時、親の口座からお金を引き落とせず家族が立て替えなければならなくなるかもしれません。
親が認知症になった場合、このようなトラブルが起きかねません。
お金に関するさまざまな問題への対処法を知っておく必要があります。
金融機関の利用
親が認知症になった場合は、銀行など金融機関の利用について考える必要があります。
認知症の方の場合、将来的に入院リスクが高まったり、介護施設への入所を検討しなくてはならないかもしれません。
しかし銀行は、本人が認知症であるとわかった場合に銀行口座を凍結します。
あくまでも不正な引き出しを防ぐ目的ではありますが、たとえ家族であってもお金を引き出すことができなくなってしまいます。
このように親が認知症になってしまうと、金融機関の利用に問題が生じてしまうため、事前の対策が必要となります。
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相続問題
相続問題もまた、大きな問題の一つです。
親が認知症になった後に遺言を作成したり、生前のうちに財産管理や処分の手続きをしておくことは不可能です。
本人の意向がわからないため、家族間での揉めごとに発展してしまうケースもあります。
また、不動産などが親の名義のままになっていれば手続きの必要性も出てきます。
さらに、家族が全く知らされていなかった借金が後々発覚して困ってしまうようなケースも考えられます。
相続に関して、遺言がなければ、相続方法などを決める遺産分割協議を行なう必要があります。
しかし、法律に基づいた手続きとなるので法定相続人に認知症の方がいる場合は参加が認められません。
法定相続人が1人でも欠けた場合には遺産分割協議を認められませんので、とても面倒な状況に陥りかねません。
不動産関連の問題
不動産関連に関する問題も忘れてはいけません。
親の認知症介護を行っていく中で、症状が進行すれば施設入所を検討するような場合もあるでしょう。
もし施設に入所した場合、住んでいた家を売却して施設入所費用の一部にしたいと考える人もいます。
しかし、本来不動産の売買は、名義者本人が行なう必要があります。
家族だからといって親名義の不動産を勝手に売買することはできません。
また、不動産の売買にあたっては本人の意思決定能力が非常に重視されます。
本人に意思決定を行う能力が無ければ、売買を行なうことが出来ないと同時に手続きを進めていても無効化されてしまいます。
このように本人が認知症になってしまったら、不動産手続きにも影響を及ぼすこともあります。
悪徳詐欺の問題
認知症の方の場合、自己決定能力や物事の判断能力が低下している場合もあります。
悲しいことに、世の中にはそんな認知症の方を狙った悪徳詐欺が横行していることも事実としてあります。
知らず知らずに商品を買わされていたり、相場を外れた価格で財産の売買をさせられていたりすることもあります。
オレオレ詐欺や、公的な職業を装って金銭を請求するような特殊詐欺の被害にあってしまうケースも少なくありません。
本人には騙されたという自覚がなかったりするので、発見が遅れてしまいどうすることも出来なくなってしまう場合もあります。
その他金銭関連の問題
その他の金銭問題として考えられるのは、認知症の症状のひとつでもある「もの盗られ妄想」です。
家庭によっては介護者が本人のお財布を管理していることも少なくないでしょう。
しかし、認知症による妄想症状が出現すると、そんな介護者に対して「お金を盗られた」と思い込んでしまうこともあるようです。
このような状態が続くと、本人も介護者もストレスを抱えてしまい家族関係が悪化してしまう可能性もあります。
認知症の親の財産管理は出来る?
法的手続きなしに、認知症の親の財産管理を行なうことは容易ではありません。
たとえ家族であっても行なえない手続きや契約も少なくありません。
法律が絡む問題でもあり、時には司法書士などの専門家を通して行われる場合もあります。
できることできないことを事前に把握し、もしもの時に備えておくと良いでしょう。
銀行で利用できる機能に制限
認知症介護では、突然の入院や介護サービスの導入などで予期せぬ支出が増えることもあります。
有料老人ホームへの入所ともなれば一時金に数百万円かかってしまうこともあります。
大抵の方は、親の預金口座からお金を引き出して支払いをしようとイメージされると思いますがそう簡単な話ではありません。
たとえ、親を介護施設に入所させることになりお金が必要になったと申し出ても銀行は預金の引き落としを認めてはくれません。
それどころか、銀行は本人が認知症によって判断能力が欠如しているとわかった場合、悪用や不正取引などを防ぐために口座を凍結します。
そうなれば、たとえ家族であっても預金を引き出すことはできなくなってしまいます。
親が認知症になったら保険解約は難しい?
親が認知症を発症し、判断能力が低下すると、親が自分自身で保険の解約を行うことは難しくなります。
ただ認知症の初期で親に意思確認がしっかりと出来るようなら、保険解約が可能となる場合があります。
どちらにしても、保険解約をする場合には、出来るだけ早く行動してください。
保険解約はしたほうがいい?
そもそも親が認知症になったときは、保険の解約をする方が良いのでしょうか。
メリット
今のところ認知症は完治することはない病気です。
症状の進度に差はありますが、必ず症状は悪くなり、いずれは家族の誰かが面倒を見ることになるでしょう。
保険の解約をしておけば、これから親の介護に必要なお金が確保できるというメリットがあります。
また、余計な保険料を支払う必要もなくなります。
デメリット
認知症を発症すると、新たに保険の契約をすることは、ほとんど不可能です。
もし親が怪我をしたり、認知症以外の大病にかかったりしたときに、保険を解約していると、高額な費用を負担しなければなりません。
保険を解約するなら、契約内容を確認して、解約すべき保険と継続しておく保険を分けることをおすすめします。
解約手続きの流れ
保険解約の手続きは、原則として本人以外は不可能です。
家族が代わりに手続きをするためには、認知症の親に委任状を作成してもらう必要があります。
その上で、保険証や本人確認書類など、保険会社が指定する書類を揃えて解約の手続きに入ります。
ただ、親が自分で委任状をかける状態にない場合は、保険の解約ができません。
そんな時は、成年後見制度を利用しましょう。
利用できる制度
成年後見制度とは、認知症や重病などにより判断能力を失った方の代わりに、定められた成年後見人が適切な財産管理・契約管理などを行う制度です。
成年後見人は、まだ判断能力があるうちに親本人が指名して契約します。
すでに判断能力が不十分な場合には、家庭裁判所へ申し立て、成年後見人を選任してもらわなくてはなりません。
認知症の親の財産管理問題を解決するには?
財産管理問題を解決する為に、成年後見制度や家族信託といった制度について詳しく以下で解説します。
成年後見制度
成年後見制度は、意思決定能力が低下した本人(被後見人)の財産管理を、家庭裁判所が認めた家族や第三者が行うための制度です。
後見人になった者は、本人に代わって生活における財産管理全般を担います。
本人の生活に必要な財産管理として銀行からの引き出しも可能になります。
その他、入院や介護施設入所などに必要な契約手続きなどを担ってもらえるというメリットもあります。
その反面、後見人に身内以外を選出した場合は、月々の報酬を支払う必要があります。
このような第三者を後見人とする場合、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。
額は家庭裁判所に申告し決められますが、3~5万円が相場です。
後見人には、契約にもとづき指名した人物に託す「任意後見」と、申し立て後に裁判所が適任者を決める「法定後見」があります。
法定後見
すでに本人が意思決定能力を欠く状態にある場合には、「法定後見」が該当します。
後述する任意後見は、本人に意思決定能力がある時にしか手続きできませんので注意が必要です。
申請方法は、四親等内の親族による「家族申立」か、身寄りのいない方の場合には市町村長による「市町村長申立」が行われます。
いずれも家庭裁判所に、「後見開始申立」という形で手続きが行われます。
任意後見
意思決定が出来なくなる前に、家族や信頼のおける人物に後見契約を結んでおくことを「任意後見」といいます。
家族以外の人に依頼をする場合には、自分が亡くなった時のことも視野に入れておく必要があります。
任意後見契約を結ぶためには、公正証書による契約が必要です。
公正証書の作成は、お住まいの地域にある公証役場にて行うことができます。
家族信託
家族信託とは、自らが財産管理を行えない場合に自分に変わって家族が財産の管理や処分を代行して行うことのできる権利です。
家族内で財産管理ができるとして近年では注目されている財産管理方法の一つです。
事前に信託契約を結んでおくことで、自分が認知症になっても権利を与えた受託者に財産管理を引き継いでもらえるので安心です。
また、認知症になる前からでも受託者に財産管理を任せることも可能です。
同じく財産管理を委託する「任意後見制度」は、本人の意思決定能力が欠如しない限りは財産管理をすることは認められない点が異なります。
また、任意後見制度の場合には事業継承もできないため、事業継承の必要がある場合には家族信託が良いといえます。
資産継承信託
資産継承信託は、財産を信託銀行へ預けて管理してもらう方法です。
家族ではなく銀行に資産管理をしてもらうことができるため、安心感を得られるのが特徴です。
財産分配の方法をあらかじめ決めておくことで、自分が亡くなった際に葬式代を円滑に引き出せるようになります。
また、残された家族に分配する財産を決めておくことも可能になります。
そのほか、財産を少しずつ分配することが可能です。
たとえば、残された配偶者に年金のような形で、毎月決まった額を分配することも可能です。
代理人指名手続き
口座名義人が事前に銀行窓口で代理人指名手続きをすることで、名義人本人が足を運ばなくても預金を引き出せるようにする手続きです。
代理人には窓口での取引だけではなく、ATMでの取引を可能にする代理人キャッシュカードが発行されます。
ただし、手続きは代理人ではなく名義人本人が行う必要がありますので、先々を見越して元気なうちに手続することが必要です。
親が認知症になる前にやるべきこと
さまざまなトラブルを避けるために親が認知症になる前に家族と共にできること、準備することはあるのでしょうか。
遺言書
遺言書は、遺族への財産分与について明確にするために作成されます。
家族にとっても、遺言書があることで、余計なトラブルに巻き込まれる恐れが無くなります。
遺言書が用意されていないと、親の介護をしていた家族、それ以外の家族などとの財産争いが起こる可能性もあります。
穏やかな死後と遺族の無駄な争いを避けるためにも、遺言書は準備しておきましょう。
生前贈与
生前贈与とは、親が生きているうちに家族へ財産分与することです。
生前贈与をすることで、相続税の節約にもなります。
家族にとっても、親の介護に必要なお金を準備できるというメリットもあります。
親の財産が多い場合には、生前贈与をしておかないと、多額の相続税がかかってしまうこともありますので、計画的に贈与することを考えた方が良いでしょう。
エンディングノート
近年では、終活の一環としてエンディングノートを書いておく方が増えています。
エンディングノートは、本人の資産状況や交友関係、財産分与などの他、葬儀の希望や形見分けなど、多くの記載ができるようになっています。
認知症になったとき、介護は誰にしてほしいか、施設入居への親の気持ちや希望なども書いておけば、介護をする家族の参考になります。
エンディングノートを準備しておかないと、親本人の希望や思いは、家族に届かないかもしれません。
親が穏やかな老後を過ごし、死後も家族が仲良く過ごすためにも、せめてエンディングノートは準備しておきましょう。
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認知症患者の家族による預金引き出しが簡単になる?
2020年3月に全国銀行協会によって、「認知症患者の預金引き出しに関しての方針」が出されました。
各銀行が認知症患者の家族が預金を引き出せるように対応を図っていくことになりました。
ただし、引き出しには条件があります。
- 戸籍抄本で家族関係が証明できる
- 施設や病院の請求書によってお金の使い道がわかること
あくまでも、医療費、介護費といった本人の利益が明らかな用途での引き出ししか行うことができません。
しかし、現時点ではまだ実務的なレベルにはなく、あくまでも先々の話になります。
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認知症の親についてのまとめ
ここまで親が認知症になった際の財産管理に関する問題や対策方法などを中心にお伝えしてきました。
- 親が認知症になると財産問題は、銀行口座凍結、相続問題、不動産問題、詐欺被害などが起こりうる
- 認知症の親の代わりに預金を引き出すには、代理人指名続きが必要で、手続きしていなければ家族でも引き出せない
- 親が認知症になった場合の財産管理対策は、成年後見制度、家族信託や資産承継信託の利用があげられる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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