歩き方に違和感があったり、話しかけても返事が遅くなった気がすることがありませんか?
尿失禁も増えてきたけれど、どうしたら良いのと思っていませんか?
会話の違和感や歩きにくさ、尿失禁が起こると老化現象だから仕方がないと見過ごしてしまうケースもあります。
不安とともに、手間が増えて困っている家族は少なくありません。
このような症状は、「治る認知症」と呼ばれる特発性正常圧水頭症の可能性があります。
特発性正常圧水頭症について、次の項目を中心に解説いたします。
- 水頭症とは何か
- 水頭症の種類により症状は違うのか
- 特発性正常圧水頭症の特徴は何か
- 診察はどのように行うのか
- リハビリはどうしたら良いか
疾患の概要を知ることで、症状への理解や不安解消につながります。
ぜひ、最後までお読みください。
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水頭症とは
※画像はイメージです
水頭症とは、脳の中にある脳脊髄液という水分が溜まってしまう疾患です。
通常、脳脊髄液は産生と吸収が繰り返され循環しています。
しかし、なんらかの原因で水頭症になると循環がうまくいかず症状が現れます。
この水頭症による認知症は、認知症全体の5%~10%を占めるといわれています。
認知症原因疾患の90%を占めるのが、アルツハイマー型・レビー小体型認知症・血管性認知症などです。
これらの認知症を治すことは困難で、進行をとめる治療が行われています。
しかし、水頭症による認知症は「治る認知症」と呼ばれています。
水頭症による認知症は、治療により元の生活に戻れる可能性が十分に期待できる疾患です。
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水頭症の種類
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水頭症には、非交通性水頭症・交通性水頭症の2タイプあります。
さらに交通性水頭症は、正常圧水頭症(特発性または続発性)、その他の水頭症に分けられます。
交通性水頭症
髄液生産や髄液吸収の仕組みに問題があり、頭蓋内圧は正常であるタイプの水頭症です。
主な症状として、歩行障害・尿失禁・認知障害などがあります。
慢性的な症状が現れるため、発見が遅れたり他の病気と間違えられたりすることがあります。
また交通性水頭症の一つに正常圧水頭症があります。
正常圧水頭症は、「特発性正常圧水頭症」と「続発性正常圧水頭症」に分けられます。
非交通性水頭症
非交通性水頭症は、髄液の循環が悪くなり頭蓋内圧が高くなる事で起こります。
小児水頭症やその他の閉塞性水頭症があります。
主な症状として、頭痛・嘔吐・意識障害などがあります。
緊急性が高く命に関わることがあり、迅速な処置が必要です。
小児水頭症は、先天性の場合と、出生後の外傷などで発症する後天性の場合があります。
治る認知症(特発性定常圧水頭症)とは
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認知症には、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、レビー小体型認知症といったものがあります。
これらの認知症の治療法は、進行を遅らせるための投薬やリハビリが中心で元通りの生活に戻るほどの劇的な回復は望めません。
しかし、発症原因となった疾患の治療をすれば回復する認知症が存在します。
その代表例が「治る認知症」とも呼ばれる、特発性正常圧水頭症です。
特発性正常圧水頭症とは、原因が特定できない水頭症の1つで、頭蓋骨内に脳を守るための脳脊髄液が、異常に多く溜まってしまう疾患です。
歩行障害や排尿障害、認知症様症状が同時期に現れた場合に特発性正常圧水頭症が疑われます。
70代から80代に多い疾患です。
認知症患者の5%以上が、特発性正常圧水頭症が原因といわれています。
手術によって溜まった脳脊髄液を排出すれば回復が見込めます。
特発性正常圧水頭症の症状
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特発性正常圧水頭症の症状を以下でご説明します。
歩行障害
特発性正常圧水頭症における歩行障害には、次の特徴があります。
- 歩幅減少
- 挙上低下(足があがらなくなり、すり足で歩行)
- 開脚歩行
- 方向転換時のすくみ足(方向転換やせまい場所が歩きにくくなる)
- 歩幅変動
歩行障害が認知障害や排尿障害と同時期に現れた場合、特発性正常圧水頭症が疑われます。
また、パーキンソン病やレビー小体型認知症においても、歩行障害が起こります。
家族が見分けることは難しいので、いずれにしても早めの受診が必要です。
尿失禁
頻尿になったり、尿意を感じにくくなったりします。
尿意を感じてからトイレまで待たずに排尿が行われてしまいます。
特発性正常圧水頭症における排尿障害には、次の特徴があります。
- 過活動膀胱(尿漏れや尿失禁などが起こる)
- 頻尿 (過活動膀胱による尿意に加え、残尿が起こりやすくなるため頻尿になる)
認知障害
記憶力や理解力の低下が起こります。
特発性正常圧水頭症による脳機能低下は、老化による物忘れと区別が難しいといわれています。
また、思考や返答に時間がかかるのは、水頭症の影響で物事の処理能力が落ちるからです。
特発性正常圧水頭症における認知症様症状には、次の特徴があります。
- 無関心
- 抑うつ(ぼんやりする時間が増え、物事へのやる気が失われる)
- 不安
- 記憶力低下
特発性正常圧水頭症の診察
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特発性正常圧水頭症では、一般的に次の手法が用いられます。
症状観察
特発性正常圧水頭症の特徴は、歩行障害・尿失禁・認知障害の3つです。
医師は、本人への問診をとおして特徴的な症状や理解力、反応レベルを確認します。
家族への問診も診断に必要な要素です。
外出時の様子や自宅での様子を、家族から聞き取り、総合的にとらえます。
画像検査
不調の原因を絞るために、画像検査が行われます。
体の内側を撮影するCTスキャンやMRIという断層画像診断装置により、次の病変を把握します。
- 脳室拡大の兆候
- クモ膜下腔
- 脳萎縮
- 脳出血
- 脳梗塞
- 脳腫瘍
- 硬膜下血腫
など、不調の原因を観察します。
検査は、横になった状態で受けることが可能です。
足腰に不調があっても、負担なく検査を受けられます。
タップテスト
タップテストとは、髄液排除試験という安全な検査です。
溜まっている脳脊髄液を排出して、症状がどのくらい改善されるかを検査します。
このテスト結果により、手術が有効かどうか判断します。
特発性正常圧水頭症の治療法
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特発性正常圧水頭症の治療では、シャント術と呼ばれる手術が行われます。
管を体内に通して髄液を排出するための手術で、髄液循環を改善することが期待できます。
シャント術には腰椎から腹腔に管を通すL-Pシャント術と脳室から腹腔に管を通すV-Pシャント術があります。
手術方法は、より適切な方を選択します。
手術の効果は高く、60~80%の人に歩行障害改善がみられます。
認知障害改善は50~70%の人に、尿失禁改善は50%の人にみられます。
評価方法によりデータは異なるものの、高確率で主症状が改善されます。
水頭症のリハビリについて
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水頭症の手術後には医師・理学療法士と連携したリハビリが必要です。
次のリハビリ例があります。
- 有酸素運動(心身機能の向上を促すために1日30分ほど行う)
- 認知機能のリハビリテーション(日付の確認や日記などを続ける)
- 運動機能のリハビリテーション(筋肉トレーニングやバランス強化、歩行訓練などを続ける)
リハビリは、手術の効果をテストしながら行うことが重要です。
手術後には、脳脊髄液の排出量をコントロールするために定期的な通院が欠かせません。
排出量を適切にすることとリハビリの効果は連動します。
また、体内にシャントシステムを埋めているので、自己判断での激しい運動は避けなければなりません。
指導に沿って、無理なリハビリを行わないよう注意しましょう。
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高齢者の特発性正常圧水頭症の手術
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現時点では、明らかな効果が認められる治療はシャント術のみです。
全身麻酔により行う手術であり、高齢者の体への負担は否定できません。
また、発見が遅れ症状が重い場合、手術の効果が現れにくい可能性があります。
医師から十分な説明を受けましょう。
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水頭症のまとめ
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ここまで、治る認知症と呼ばれる特発性正常圧水頭症の症状や対策をお伝えしてきました。
本記事をまとめると、以下のようになります。
- 水頭症とは脳脊髄液の循環に障害がおこる疾患
- 特発性正常圧水頭症の特徴は、歩行障害・尿失禁・認知障害
- 診察内容は、症状の聞き取り・CT画像・MRI検査・タップテストといった内容
- 手術を行うと、歩行障害・尿失禁・認知障害それぞれに効果が現れる
これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。