認知症の症状が悪化した場合、病院で入院治療を行うことがあります。
入院費用がどれくらいなのか不安に思ったことはありませんか?
ここでは、認知症の入院費用について以下の点を中心にお伝えします。
- 認知症の入院費用
- 認知症の入院費用の内訳
- 忘れられがちな認知症の必要費用
- 認知症の入院費用を支払えないときの対策
事前に不安を解消するためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
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そもそも入院できるのか
認知症の方が治療のために入院することは可能です。
では、どのような場合に入院治療が必要となるのでしょうか?
介護拒否や暴力など、施設や自宅で対応が難しい場合に入院することが多いです。
また、介護者が介護疲れを起こした際に病院の助けを借りることもできます。
入院する場合には認知症専門医がいる病院への入院をお勧めします。
各都道府県には認知症疾患医療センターに指定された認知症専門の病院があります。
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認知症の平均入院費用
2014年に厚生労働省と慶應義塾大学が認知症にかかる医療費を研究しました。
研究によると入院医療費は1人あたり月額34万4,300円と発表されています。
ただし、この入院医療費には保険適用外の差額ベッド室代、食事代は含まれていません。
入院費用の内訳
前述した1人あたり月額34万4,300円の入院費用は保険適用分のみです。
この入院費用以外に差額ベッド代や診断書代、衣類のレンタル代が必要です。
治療費用
下記のような治療費用には健康保険が適用され、一般的な世帯では自己負担は3割です。
- 入院費用(部屋代、 シーツ代、診察及び看護料)
- 治療費(投薬治療、注射、検査、リハビリにかかる費用)
食事
入院時の食事代は一食につき460円です。
つまり1日あたり1,380円を自己負担する必要があります。
なお、食事の費用は高額療養費の支給対象にはなりませんのでご注意ください。
これらは厚生労働省「平成28年4月1日から入院時の食費の負担額が変わり、新たに調理費の負担が追加されます」を参考にしています。
忘れられがちな必要費用
入院の際に必要になってくるお金は治療費だけではありません。
治療費以外では「おむつ代」「テレビカード代」「クリーニング代」などの日用品代がかかります
また、認知症は長期入院になるため日用品代が高額になってくることに留意しておきましょう。
厚生労働省の「平成29年患者調査」によると平均在院日数は29.3日とされています。
一方「血管性及び詳細不明の認知症」は349.2日、「アルツハイマー病」は252.1日です。
おむつ代
医療保険で入院している場合にはおむつ代が実費で請求されます。
金額は医療機関によりますが、1日1000円~1500円と比較的高額です。
要するに1日1,500円かかる場合には月30日だと4万5,000円かかります。
下記は1日に4回おむつを使用した場合で各病院の費用を計算したものです。
テレビカード代
テレビの使用は、本人の症状と介護者の有無によって変わってきます。
下記の例で計算すると、1日3時間使用した場合に30日で約5,600円です。
A病院 1,000円で1,000分(約16時間40分)
クリーニング代
日用品のレンタルを洗濯込みで行う業者と提携している病院が一般的です。
30日分で患者衣が約6,600円、タオル等が1日440円として月13,200円と計算できます。
下記は各病院が公表している患者衣やタオルのレンタル及びクリーニング代です。
A病院
日常生活サービス費 1日440円(税込)タオル、石鹸、おしぼり、洗濯付リース
私物洗濯サービス費 1回550円(税込)民間業者へ委託
B病院
患者衣 1日220円(税込)タオル 1日330円(税込)
介護者の有無や病院、業者によって料金は異なりますので目安としてご覧ください。
認知症は入院すべき?
認知症の治療は、本来入院の必要はなく投薬治療を中心とした通院でも対応可能です。
認知症の悪化や合併症により医療的治療をする場合に入院が必要となります。
体調を崩し救急病院に運ばれた場合、認知症以外が回復すると退院を促されることがあります。
救急病院や一般病院では緊急の方用に病床を確保する必要があるためです。
認知症の通院費用
前述した厚生労働省と慶應義塾大学の研究では通院費として月額3万9,600円です。
そして薬物治療を受けると別途で月額数百円から数千円程度かかると考えられています。
入院費が払えない時はどうすればいい?
認知症の治療は長期になるため入院や通院にかかる医療費が高額になります。
それゆえ以下のような制度を利用し経済的な負担を減らすことをお勧めします。
高額療養費制度
高額な医療費を払った場合に一定の金額を超えると高額療養費で払い戻しが受けられます。
適用条件
高額療養費制度は公的医療保険の制度で基本的に全ての人が利用できます。
利用するためには医療保険に対して高額療養費の支給申請を行います。
なお、この制度は保険適用外の入院時の食費や差額ベッド代などは含みません。
利用額
病院や薬局での同月分の自己負担額のうち、自己負担上限額を超えた金額が支給されます。
なお、自己負担上限額は年齢や所得によって異なります。
例として保険診療の自己負担が3割(標準報酬月額28万円~50万円)の被保険者がいます。
入院医療費の総額が100万円だとすると、窓口での支払いは30万円です。
そうすると30万円を一旦全額支払い、後日に自己負担上限額超過分が支給されます。
上記の例における自己負担上限額は一定の計算式により8万7,430円です。
そのため払い戻し金額は30万から8万7,430円を差し引いた21万2,570円となります。
限度額適用認定証
高額療養費制度で払い戻されるのは診療月から約3ヶ月後です。
ところが限度額適用認定証を利用すると支払い時点で自己負担上限額までで済みます。
適用条件
公的医療保険に加入し、限度額適用認定証を申請した全ての人に適用されます。
事前に限度額適用認定証の交付申請を行い、支払い時に窓口で提示してください。
利用額
窓口で医療費の法定自己負担上限額までを支払います。
ただし自己負担上限額は年齢や所得によって異なることにご留意ください。
高額医療費貸付制度
高額療養費制度で払い戻しされるまで医療費負担分の一部を無利子で貸し付ける制度です。
適用条件
公的医療保険に加入し高額療養費支給申請を行った方が対象です。
なお高額療養費制度による高額療養費の払い戻しには診療月から約3ヶ月かかります。
したがって、当座の医療費の支払いに充てる資金として利用できるでしょう。
利用額
高額療養費が支給されるまで高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸与します。
前述した高額療養費制度の例だと払い戻し金額は21万2,570円です。
高額医療費貸付制度では、21万2,570円の8割である17万円が貸付金額となります。
ちなみに1,000円未満は切り捨てで計算します。
これらの計算は全国健康保険協会の高額療養費のHPを参考にしています。
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入院の注意点
認知症の高齢者が入院する際にはいくつかの留意点があります。
ご家族や専門家と話し合い、ご本人のために最良の選択をしてください。
症状が進行する可能性がある
救急病院に搬送された高齢者が一時入院中に認知症を発症することは珍しくありません。
また、認知症の方が他の病気の入院中に認知症の症状が悪化することもあります。
認知症の方にとって環境の変化は大きなストレスとなります。
認知症の方が入院する場合は医師と相談して慎重に判断しましょう。
入院できない可能性がある
緊急性の高い患者の対応をする病院では、認知症の方の長期入院を断るかもしれません。
また、周辺症状の暴行や徘徊などがあると他の患者さまへの影響から断ることもあります。
そうした場合は一般病院ではなく認知症の専門病院への入院を検討しましょう。
また、寝たきりの患者さまが退院した後は介護療養型医療施設の利用も考えられます。
他にも介護保険で入所できる特別養護老人ホームや介護老人保健施設などもあるので、その人にあった施設が見つかるようしっかり検討しましょう。
強制退院させられる可能性がある
認知症の方は一般的に物忘れ外来や脳神経内科を受診します。
治療には身体的な合併症があると内科医が精神疾患があると精神科医が関わります。
認知症の方の中には、精神科で長期入院をしている方も多いです。
その際に周辺症状により認知症の方が他の患者にケガをさせることがあります。
このような場合には強制退院の対象となり、退院を求められることがあります。
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認知症の入院費用のまとめ
ここまで認知症の入院費用についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症の入院費用は月額34万3,400円(厚生労働省と慶應義塾大学の研究)
- 認知症の入院費用の内訳は、部屋代やシーツ代、治療代が含まれる
- 認知症の入院費用のうち、おむつ代やテレビカード代は忘れられやすい
- 認知症の入院費用が足りない場合は、高額療養制度や限度額適用認定証を利用する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。