認知症による周辺症状の一つでもある被害妄想。
介護者としては身に覚えのない疑いをかけられることもあります。
対応の仕方に戸惑ってしまうことも多いのではないでしょうか?
本記事では、認知症による被害妄想の対応について以下の点を中心に解説します。
- 被害妄想への基本的な対応
- 被害妄想への種類別の対応
- 被害妄想の終了
- 被害妄想に効果的な薬
介護の不安を解消するためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
認知症への対応方法を知りたい方は下記の記事をご参照ください。
一緒に過ごしてきた家族が認知症を発症することは、大きな不安や戸惑いを感じる出来事です。対応の仕方が分からず、怒ったり責めたりしてしまうかもしれません。今回は、認知症の方への対応方法をご紹介したうえで、介護にあたる際に大切なことを[…]
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認知症の被害妄想への基本的な対応
被害妄想への対応は、根本にある原因や気持ちの理解が重要です。
そのうえで本人の気持ちに寄り添うことや、自尊心を傷つけないような対応が求められます。
以下、被害妄想に対する基本的対応について説明いたします。
否定しない
被害妄想への対応においては、否定しないことが重要です。
事実ではないことで言いがかりをつけられたり、疑われたりするため、家族は納得できないことも多いかと思います。
しかし、認知症の方にとって妄想の内容は実際に起きているように感じています。
否定することで本人は混乱してしまうほか、怒りや反発心を助長させてしまい、さらに強い妄想へと発展する可能性も高いです。
被害妄想がみられた場合は否定をせず、まずは本人の話を聞くことが大切です。
共感する
共感は被害妄想に対して有効な対応となります。
本人がどんな感情を抱いているのかを汲み取り、寄り添いながら共感的態度で接することが重要です。
妄想などの周辺症状には、必ず原因があります。
話を聞いていくなかで、なぜ被害妄想が現れたのかが見えてくる場合もあります。
まずは本人の言葉に耳を傾け、共感をもって対応することが大切です。
距離をとる
妄想が強く表れ、介護者の身に危険が及ぶ場合や介護負担が大きい場合には距離を置くのも必要な対応方法です。
被害妄想は、より身近な相手を疑う傾向にあります。
家族や介護者が距離を置くことで気持ちを落ち着かせましょう。
要介護認定を受けている場合は、短期入所(ショートステイ)の利用も効果的です。
数カ月単位での預かりが必要な場合には、介護老人保健施設への入所も選択肢となります。
周囲への相談
被害妄想では、介護者が言いがかりを受けたり、犯人扱いされたりすることが多いです。
妄想だとわかっていてもストレスを溜め込んでしまうこともあります。
介護者一人で抱え込まずに、家族と相談しながら対応していくことが大切です。
また、担当のケアマネジャーへ相談することで、改善策を教えてもらえることもあります。
要介護認定を受けていない場合は、まずお住まいの地区の地域包括支援センターへ相談しましょう。
必要な対応やアドバイスを受けることができます。
自信を持ってもらう
被害妄想は、認知症によりできないことが増え、自尊心が傷つけられた場合にも起こります。
物事の対応をすべて介護者が行うのではなく、本人ができることは本人に任せましょう。
声かけなどで上手く誘導することも大切です。
元々の趣味や得意なことで本人が活躍できる場をつくることで、症状の改善が見込めます。
認知症について知りたい方は下記の記事をご参照ください。
出典:認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省
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認知症の被害妄想への種類別の対応
被害妄想は、症状の種類によって対応方法も変わります。
対応の仕方を間違えると、被害妄想を助長させてしまうことも考えられます。
以下、被害妄想への種類別の対応について説明いたします。
見捨てられ妄想
見捨てられ妄想は、他人に良く思われていない、嫌われているかもしれないと一方的に思い込んでしまう症状です。
自分の介護量が増えていることに負い目を感じ、見捨てられるのではないのか?と思ってしまいます。
特に介護施設で介護を受けている方にみられることが多いです。
介護を要することに自尊心が傷つき、自己肯定感が下がっている場合に起こります。
本人ができることも介護者が助けてしまっては逆効果です。
良かれと思った対応が自尊心を傷つけることもあります。
まずはしっかりと話を聞き、認知症の方の気持ちを受け入れることが大切です。
本人の得意なことを通して、自尊心を保てるようアプローチしましょう。
嫉妬妄想
嫉妬妄想とは、「配偶者が浮気をしている」など、自分は必要とされていないと思い込むことです。
きっかけは見捨てられ妄想と同様で、家族や介護者から嫌われているかもしれないという想いが被害妄想へと発展しています。
この場合も、まずは本人の気持ちをしっかり聞き受け入れることが大切になります。
単に介護者と介護される側の関係ではなく、家族としての存在意義を再認識できるような対応が必要です。
本人にも役割を与え、家族にとって必要な存在であるという自己認識を促しましょう。
幻覚
幻覚とは、見えないものが見えたり、無音の場所で人の声が聞こえたりするような症状です。
実際は何もなくても、本人にとっては事実として見えたり、聞こえたりしています。
したがって、真っ向から否定してしまうことは適切な対応とは言えません。
本人は幻覚に対して混乱したり動揺したりしている場合もあります。
幻覚に対する対応もまた、本人の気持ちに寄り添っていくことが重要です。
本人の話を聞きながら少しずつ話題をそらしていくことも効果的です。
いつの間にか気がそれて症状が落ちつくこともあります。
認知症の被害妄想症状は終わる?
認知症の被害妄想には終わりが来ることがあります。
しかし、被害妄想が終わるにはとても長い時間がかかります。
そのため、周囲の人々は大きな疲労感や不安感を持つことが多くなってしまいます。
介護サービスなどを活用して、ストレスを少なくするなどの工夫をすることが重要です。
認知症の被害妄想に終わりが来ることはありますが、終わりを待つよりも過ごしやすい環境づくりを作ることが大切です。
認知症の被害妄想に使われる治療薬
認知症による被害妄想に対する治療薬では、向精神薬が処方される場合があります。
被害妄想のほか、イライラ、不眠、徘徊、介護抵抗などにも、興奮を鎮める薬剤が使用されます。
抑制系薬剤の選択肢として、チアプリドやクロルプロマジン、漢方薬の抑肝散が処方されることがあります。
認知症による被害妄想への対応のまとめ
ここまで、認知症による被害妄想についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 被害妄想への対応は、周囲と相談しながら本人に自信を持たせることが大切
- 被害妄想への対応は、症状に関わらず本人の気持ちに寄り添うことが大切
- 被害妄想の終了に期待するのではなく、過ごしやすい環境づくりをすることが大切
- 被害妄想を緩和させるには、興奮を鎮める薬剤が処方される
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。