超高齢化社会の日本において、年々増加する認知症。
実際、認知症について分からないことだらけではありませんか?
本記事では、認知症による行動について以下の項目を中心に解説していきます。
- 認知症の方に見られる行動について
- 認知症の症状が行動に出てしまう原因
- 認知症の方が同じことを繰り返す理由
認知症になったときに落ち着いて対処するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症とは
認知症とは、様々な原因により脳の神経細胞が減少して働きが悪くなり、記憶力や判断力に障害が起こった状態のことを言います。
人間の脳には、その人の全ての活動を担う「司令塔」の役割があります。
全ての活動とは、呼吸や睡眠のように無意識に行っている活動や、学んだり、運動したり、創造したりするような高度な活動のことです。
認知症になると、「食事したことを覚えていない」「自分が今いる場所がどこかわからない」など、当たり前にできていたことができなくなり、日常生活全般に支障が出てしまいます。
認知症にはいくつかの種類があり、日本人に最も多いのは「アルツハイマー型認知症」です。
その他に「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」などがあります。
認知症は、「痴呆(ちほう)」や「ぼけ」などと呼ばれていた時代がありました。
人格を無視したようなこの呼び方は、当事者(認知症患者)やその方の家族を苦しめ傷つけてきたのです。
このような事情から、恥ずかしい病気だと思い込んで症状を隠し、早期の発見・診断につながらないという傾向がありました。
厚生労働省でこの用語の見直しを検討した結果、2004年(平成16年)12月から「痴呆」に代わって「認知症」が用いられるようになりました。
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認知症による行動心理症状
ここでは認知症の方の様々な行動について詳しく解説していきます。
認知症の影響による代表的な行動は以下になります。
徘徊
徘徊とは、自分が今いる場所の居心地が悪いと感じこっそりと出かけることです。
周囲の人が止めようとすればするほど、何が何でも出かけようとしてしまいます。
よくある徘徊のケースを以下にまとめます。
- 退職した会社に出社しようとする
- 独り立ちした子どもの迎えに行こうとする
- 生まれ育った家に行こうとする
認知症による記憶障害では昔のことを鮮明に覚えており、最近のことから順に忘れていきます。
そのため、昔行っていた習慣を繰り返してしまうことがあります。
認知症の方は目的地を目指しているうちに途中で本来の目的を忘れる場合もあります。
知らないうちに遠くまで行ってしまうこともあるため注意が必要です。
無気力
認知症を発症すると、身の回りのことに関心を持たなくなる方がいます。
やる気が失われ、無気力になってしまうこともあります。
無気力な状態は「アパシー」とも呼ばれます。
アパシーは徘徊や暴力など目に付きやすい症状とは異なり周囲の人が気づきにくい症状です。
気付かぬ間に進行しないよう注意しましょう。
暴言・暴力
認知症の症状が進行すると、家族にひどい言葉を浴びせる場合があります。
物を壊したり、大声や奇声をあげ暴れたりすることもあります。
介護者の方が暴力・暴言を受けた際は、極力怒らず認知症の影響によるものだと受け入れましょう。
弄便(ろうべん)
弄便とは、便をいじることや部屋や衣服を便で汚してしまうことです。
便をいじると、介護者の方にとってはかなりのストレスになります。
介護者の方は日々の介護疲れもあり、怒鳴りつけてしまうこともあるでしょう。
暴言・暴力と同様に、まずは認知症の症状だということを受け入れましょう。
その上で本人と一緒に原因を探すことが大切です。
異食
異食とは、食べ物ではないものを食べてしまうことをいいます。
認知症が進行すると、食べ物かどうかを見分けることができません。
何でも口に入れてしまう方も多いです。
汚物や異質物であっても、目に付くものは口に入れてしまう恐れがあります。
使用済みのティッシュペーパーや服についているボタン、便までもが対象になり得ます。
危険物を口にした場合は、早急に救急車を呼びましょう。
認知症の方の周辺に危険物を置かない工夫が必要です。
妄想
妄想とは、実際には起こってないことを誤って真実だと確信してしまうことです。
被害妄想では、いじめられたと理不尽なことを主張します。
嫉妬妄想では、配偶者が浮気をしていると主張する方が多いです。
一番近くにいる介護者が責められることも多く、介護ストレスの原因にもなります。
不安・抑うつ
認知症になるとできないことが増え、抑うつ状態になることもあります。
抑うつ状態とは、うつ病とは言えないまでも心のエネルギーが低下している状態です。
軽い運動や趣味によって多少の改善が見込めます。
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症状が行動に出る原因
前述では、認知症患者の様々な行動について解説しました。
では、認知症患者はなぜ周囲の人が理解できないような行動をしてしまうのでしょうか?
認知症になると、ひどい物忘れが頻繁に起こったり、時間・場所・人が分からなくなったり、今までできていたことができなくなります。
これらは認知機能の低下が原因で起こり、認知症の「中核症状」と呼ばれます。
この中核症状に、当事者(認知症患者)の不安感や混乱が不随することが原因で、不可解な行動が起きてしまうのです。
この不可解な行動は「行動・心理症状」と呼ばれます。
行動・心理症状は、「BPSD(Behavioral and Psychological Symptom of Dementia)」や「周辺症状」とも言われます。
例えば「妄想」は、認知機能が低下していくことに不安や焦りを感じている中で、周囲への不満が募ったり、様々な感情が絡み合うことが原因で引き起こされます。
「徘徊」してしまう原因は、判断力が低下して場所や時間の感覚がわからないのに、とても心配で気がかりなことがあるから外に出てしまうと考えられます。
「暴言・暴力」の原因は、分からないことやできないことが増えて、不満やストレスがたまり、それが過剰反応となって表れるからです。
「弄便(ろうべん)」の原因で多いのが、下着やおむつの中で便をしてしまい、おしりが痒くなったり不快な気分になるためです。
不快な気分をなんとかしようと手を入れ、便に触れて汚れてしまうのです。
認知症の症状が行動となって表れてしまう根底には、「何とかしなくてはいけない」「どうしたらいいのかわからない」という気持ちが隠れています。
不安感や焦燥感を抱えながら、自分を守るために何とか対処しようとしているのでしょう。
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認知症の人が同じ行動を繰り返すのはなぜ?
認知症の症状に、「繰り返し行動」と呼ばれるものがあります。
「同じものばかり何度も買ってくる」「同じ場所に何度も行ってしまう」といった症状です。
繰り返し行動は、認知症による短期記憶障害が原因となって起こります。
繰り返し行動の症状が悪化している方には、ルーチン化療法がおすすめです。
日々の行動を習慣化・規則化することで改善が見込めます。
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認知症の方の行動のまとめ
ここまで認知症の方の行動についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症の方によく見られる行動は徘徊や弄便、異食
- 認知症の方は、妄想や不安によって症状が行動に現れる
- 認知症の方による繰り返し行動の原因は短期記憶障害
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。