認知症の代表的な症状である記憶障害。
一口に記憶障害といっても、種類によって症状は異なります。
皆様はエピソード記憶障害についてご存知でしょうか?
本記事では、エピソード記憶障害について以下の点を中心に解説します。
- エピソード記憶障害の特徴
- エピソード記憶障害の原因
- その他の記憶障害
- 記憶障害とストレスの関係
記憶障害への不安を解消するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
エピソード記憶障害とは
![エピソード記憶障害とは](http://mcsg.co.jp/kentatsu/wp-content/uploads/2021/07/AdobeStock_234589503-1024x938.jpeg)
エピソード記憶障害はどのような障害なのでしょうか?
エピソード記憶障害について知るために、まずは記憶について解説していきます。
記憶と記憶障害
人間の脳には、覚える、維持する、思い出すの3つの働きがあります。
私たちは日々の出来事を意図せず覚えています。
記憶障害になると、新たなことを覚えられなくなります。
また、保存していた記憶も少しずつ抜け落ちていきます。
忘れたことに対して自覚がないという点が物忘れとの決定的な違いです。
エピソード記憶障害の特徴
記憶の中でも、体験した出来事に関する記憶をエピソード記憶と言います。
一般的な例を以下に示します。
- 昨日、家族と一緒に夕飯を食べた
- 1週間前に友達と遊園地に行った
エピソード記憶障害では、エピソードを全て忘れている場合、要所要所の記憶がない場合があります。
家族や友人との会話に違和感が生じるため、エピソード記憶障害によって認知症に気づくケースが多いです。
スポンサーリンク
エピソード記憶障害の原因
![エピソード記憶障害の原因](http://mcsg.co.jp/kentatsu/wp-content/uploads/2021/07/AdobeStock_234592601-1024x985.jpeg)
エピソード記憶障害の原因は、アルツハイマー型認知症、脳外傷、脳血管障害、その他に分類されます。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症の初期症状の一つにエピソード記憶障害があります。
今の自分と若い頃の自分を勘違いしている方に多いです。
最近の出来事を忘れ、症状が悪化すると若い頃の記憶の中で生きてしまいます。
脳外傷
脳外傷とは、交通事故や高所からの落下によって頭を強く打ち付ける事で起こります。
脳外傷により、脳が損傷して正しく記憶ができなくなることがあります。
記憶障害の種類は、脳が損傷を受ける領域によって異なります。
エピソード記憶に関連する領域は、海馬周辺と側頭葉内側部、間脳、前脳基底部などです。
これらの領域が損傷すると以下のような症状が現れます。
- 新しい出来事を覚えられない
- 過去の出来事を思い出せない
脳外傷の場合、年齢や重症度次第ですがリハビリなどの治療によって回復の可能性もあります。
脳血管障害
脳卒中を始めとし、血管が詰まったり破れたりして脳の一部が機能しなくなる病気です。
脳血管障害も脳外傷と同様に、障害される領域によって記憶障害の種類が異なります。
また、脳血管障害も回復の可能性があります。
その他
他にも、感染症や自己免疫疾患などでも記憶障害は起こり得ます。
エピソード記憶を含む記憶障害の原因は様々です。
原因によっては治療が可能な場合もあるため、発症後の対応が重要になってきます。
エピソード記憶障害への周囲の対応
![エピソード記憶障害の周囲の対応](http://mcsg.co.jp/kentatsu/wp-content/uploads/2021/07/adobe-1024x892.jpeg)
身近な人がエピソード記憶障害になったときの対応をご紹介します。
決してイライラせず、まずは症状について理解を深めることが大切です。
対応次第では、症状が改善する場合もあります。
本人に安心してもらう
まずは責めるのではなく、安心してもらえるように心がけてください。
エピソード記憶障害は本人に自覚症状がありません。
本人にとっては、体験そのものが抜け落ちてしまっています。
本人の認識と周囲の認識にズレが生じているのです。
周囲の方が本人に事実を伝えても、本人は嘘をつかれていると感じます。
話が噛み合わないことが増えると、周囲の人はイライラが募っていきます。
しかし、本人を責めてもどうしようもありません。
周囲からの訂正は、言動を否定して抑制されていると感じます。
加えて、否定ばかりされているとストレスも蓄積していくでしょう。
本人が安心できるよう、家族の工夫が大切です。
環境を整える
生きていく環境を整える事も重要です。
エピソード記憶障害を抱えている方は、出来事がすっぽり抜け落ちます。
そのため、環境が急に変化すると混乱してしまうことも多々あります。
全く知らない環境に急に連れていかれたと感じるのです。
本人が混乱してしまわないように、日用品の置き場所は固定しましょう。
使用後はすぐに定位置に戻してください。
また、規則正しい生活を送ることで混乱を避けることにも繋がります。
通院の曜日や時間の変更も混乱を招くので、出来るだけ変えないように注意しましょう。
繰り返して覚えてもらう
エピソード記憶障害を抱えている方は、新しい出来事を覚えることも苦手です。
新しい事を覚えるときは、一つずつを心掛けましょう。
一つの事を反復して繰り返し練習することが重要です。
エピソード記憶障害の進行具合と対策
![エピソード記憶障害の進行状況と対策](http://mcsg.co.jp/kentatsu/wp-content/uploads/2021/07/AdobeStock_193896882-1024x839.jpeg)
脳外傷などによる記憶障害は回復の可能性があります。
しかし、認知症などが原因の場合は症状が徐々に進行していきます。
短期記憶、エピソード記憶、手続き記憶、意味記憶の順に失われることが多いです。
では、記憶障害に対してはどのような対策がいいのでしょうか?
視覚的アプローチ
記憶は、言語だけよりも視覚情報を組み合わせた方が脳に留まりやすいです。
「鍵をタンスにしまうね」と言うよりも、「この鍵をこのタンスにしまうからね」と鍵を見せながら説明します。
より厚い記憶となり、記憶が抜け落ちにくくなります。
忘れがちなことはメモにして貼っておくことも効果的です。
反復学習
新しいことを覚える時は、反復学習によって記憶を保持しやすくなります。
五感を使いながら、同じ環境下でくり返すことが重要です。
周りの環境が違う場合、同じ物事でも混乱してしまうこともあります。
同じ環境下で五感を使いながら反復学習をすることでより効果を高めることができます。
若い人も記憶障害に
厚生労働省が2020年に発表した調査によると、若年性認知症の患者数は人口10万人当たり50.9人です。
認知症の種類としてはアルツハイマー型認知症が最も多く、割合は約半数です。
働き盛りの現役世代での認知症発症は、会社や社会生活において多大な影響を及ぼします。
しかし若年者のもの忘れやミスは、なかなか認知症として疑われません。
そのため、想像以上に進行していたということも起こり得ます。
また、養育費や介護による収入減少など、経済的問題が多く発生することも若年性認知症の特徴です。
参考:認知症介護情報ネットワーク(DCnet)>若年性認知症について>高齢者の認知症との違い
エピソード記憶障害以外の記憶障害
![記憶障害の種類](http://mcsg.co.jp/kentatsu/wp-content/uploads/2021/07/AdobeStock_296241405-1024x768.jpeg)
記憶障害にはエピソード記憶以外にも様々な種類が存在します。
短期記憶障害や長期記憶障害、手続き記憶障害、意味記憶障害などです。
それぞれについて簡単にご説明します。
短期記憶障害
短期記憶とは、数十秒から1分程度の短い記憶能力です。
短期記憶が障害された状態が短期記憶障害になります。
具体的には、「今日の日付」や「物を置いた場所」がわからなくなるといった症状です。
認知症初期の方に多く見られ、直近の記憶から失われていきます。
また、短期記憶障害について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
認知症の中核症状である記憶障害。記憶障害にもいくつか種類があり、障害を起こす記憶はさまざまです。記憶障害の中でも、初期に現れる短期記憶障害をご存知でしょうか?本記事では、短期記憶障害について以下の点を中心にご紹介します。[…]
長期記憶障害
長期記憶は、数分から数日間以上の記憶能力です。
長期記憶が障害されると、「祝日の名前」や「自分の職業」などを忘れてしまうこともあります。
認知症が進行し、家族の名前や顔を忘れてしまう場合も長期記憶障害に当たります。
手続き記憶障害
手続き記憶とは、本人が繰り返し学習や練習によって身に着けた技術です。
自転車に乗る、ピアノを弾くなどの技術が手続き記憶に当たります。
手続き記憶の場合、脳というよりも体で覚えています。
脳機能が低下する認知症になっても、手続き記憶は残りやすいです。
意味記憶障害
意味記憶とは、ものや言葉の意味に関する記憶能力です。
意味記憶の能力が障害されてしまうと、「あれ」や「それ」などの指示語が多くなります。
症状が悪化すると、意思疎通が難しくなる場合もあります。
記憶障害はストレスも関係する?
![記憶障害とストレス](http://mcsg.co.jp/kentatsu/wp-content/uploads/2021/07/AdobeStock_385232737-1024x768.jpeg)
記憶障害はトラウマやストレスによって引き起こされることもあります。
トラウマやストレスによって発症する記憶障害を解離性健忘と呼びます。
自分の名前などの自分にとって大切な事が分からなくなります。
外傷的体験やストレスとなる出来事の直後には現れないことが多いです。
数日後やそれ以上の期間を開けて症状が出る場合もあります。
解離性健忘の多くは、記憶の一つ以上に空白期間が見られます。
空白期間の長さは、通常は数分から数時間、数十年や過去の人生全てを忘れることもあります。
患者の大半は解離性健忘によって、人間関係の構築や維持に困難が生じます。
スポンサーリンク
エピソード記憶障害のまとめ
![エピソード記憶障害のまとめ](http://mcsg.co.jp/kentatsu/wp-content/uploads/2021/07/AdobeStock_282979729-1024x768.jpeg)
ここまで、エピソード記憶障害について以下の点を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- エピソード記憶とは、出来事そのものが抜け落ちてしまう記憶障害
- エピソード記憶障害の原因は、アルツハイマー型認知症、脳外傷、脳血管障害など
- エピソード記憶障害の他にも、長期記憶障害や意味記憶障害がある
- ストレスやトラウマが原因となる記憶障害は「解離性健忘」
これらの情報が少しでもあなたのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。