超高齢社会の日本で、認知症の発症者数は社会問題です。
その認知症ですが、種類によって症状や原因はさまざまです。
その中の1つに意味性認知症があります。
名前すら聞き馴染みがないという方も多いのではないでしょうか?
本記事では、意味性認知症について以下の点を中心にお伝えします。
- 意味性認知症の症状
- 意味性認知症の原因
- 意味性認知症の合併症
- 意味性認知症の治療法
これらの情報が皆さまの疑問や不安の解消に繋がれば幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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意味性認知症とは
意味性認知症は、前頭側頭葉変性症を3つに区分したうちの1つです。
脳が損害を受けた場所によって種類が分かれます。
他の認知症と同様に、根本的な治療法は見つかっていません。
意味性認知症は、平成27年から難病指定の対象となっています。
医療や介護サービスに関する費用の助成金がある場合もあります。
ご自身の状態と照らし合わせながら、かかりつけ医やケアマネージャーに相談してみましょう。
また、症例自体が少なく診断を受けにくいというのが現状です。
誤診にも注意しながら、不安があれば是非セカンドオピニオンを受けてみてください。
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意味性認知症の症状
意味性認知症になるとどのような症状が出てくるのでしょうか?
アルツハイマー型認知症のような記憶障害は少なく、行動や言語の障害が目立ちます。
誤診を防ぐためにも、下記のような症状を把握しておくことが大切です。
行動障害
行動障害として下記のような症状がみられます。
ほとんどが「行動異常型前頭側頭型認知症」と類似した症状です。
常同・固執行動
行動にこだわりがあり、決まった時間に決まった行動をとるといった症状があります。
被影響性の亢進(こうしん)
外的な刺激に対して反射的に反応し、他の人と同じ行動をとるといった模倣行動がみられます。
食行動の変化
甘いものを好んで食べるようになったり食事スピードが早くなったりします。
脱抑制
他の人からどう思われるかを気にしなくなり、自分本位な行動をとります。
言語障害
言語をつかさどる左側頭葉が冒されることで、言葉の意味が分からなくなります。
特徴的なものは、語想起と語理解に問題が生じる語義失語です。
「語想起の障害」は、線画や物品といった対象物をみせても名前を答えられません。
「語理解の障害」では、複数の線画の中から名前の対象を選択することができません。
この場合、語頭音(単語の最初の文字の読み方)を与えても答えられない現象は意味性認知症の特徴といえます。
アルツハイマー型認知症では、語頭音(単語の最初の文字の読み方)を与えると物の名前を思い出すことがあります。
一方、復唱は可能で「趣味は何か」に対して「趣味とは何か」と聞き返してくることがあります。
その後に、物の名前を教えても納得しない様子を見せます。
また「猿も木から」 と言われると「落ちる」と答える補完現象が困難になります。
不規則な読みをする漢字は、関わる頻度が低いものから読めなくなります。
「団子→だんし」「海老→かいろう」と読む表層性失読の症状があらわれます。
しかし、残される能力として会話は流暢に行い復唱も可能で文法的な誤りもありません。
知覚的スキルや非言語性の問題解決能力、数の処理も保存されます。
意味記憶障害
進行に伴って語義失語の「言語障害」から「意味記憶障害」に移行していきます。
同定障害という「人の顔を見ても声を聞いても 誰であるかわからない」ことがあります。
これは、外見や声からよく知っている人であっても同一のものと認識できない症状です。
よくある例として、身近な家族の相貌や声は同定できても、親戚や有名人は同定困難になることがあります。
意味性認知症では、相貌、物品、環境音といったあらゆることに対して何か分からないといった同定障害が起きます。
口唇傾向
その辺にあるものをなんでも口に入れてしまうという「口唇傾向」という症状がでます。
口唇傾向の行為として、食べ物でないものを飲み込むことがあるので注意が必要です。
認知症の末期にあらわれますので、環境の整備と症状の観察が重要です。
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意味性認知症の原因
意味性認知症は、脳の側頭葉前方部に神経変性をきたします。
側頭葉に限局した神経細胞の脱落がみられ限定的な萎縮を伴うことによる障害です。
原因としては、TDP-43というタンパク質が残存神経細胞に蓄積することとされています。
また脳画像検査では頭部 MRI 検査において側頭葉前部の萎縮が顕著にみられます。
あるいは SPECT/PETの検査で側頭葉前部の血流低下または代謝低下がみられます。
症状のあらわれ方は病変の場所によって異なってきます。
「右側頭葉前部」のタンパク異常症による脳の萎縮では、主な症状は相貌失認です。
相貌失認では、人の表情の識別が付かなくなり誰か分からなくなってしまいます。
また「左側頭葉部」に萎縮がみられると、言語障害や意味記憶障害の症状があらわれるようになります。
意味性認知症の合併症
ここまで意味記憶障害の症状や原因をお伝えしました。
しかし、上記のこと以外にも注意する必要があります。
意味性認知症が引き起こす合併症のリスクです。
以下で比較的可能性が高い合併症をご紹介します。
発症を未然に防ぐためにも、ご参考いただけますと幸いです。
嚥下性肺炎(誤嚥性肺炎)
加齢や認知症により脳神経や筋肉の障害が出ると、嚥下(えんげ)の機能に問題が出てきます。
食べ物を噛むことや唾液をうまく飲み込むことが難しくなります。
そのため誤嚥に繋がり、それに伴う嚥下性肺炎になる危険があります。
進行性の病気であるため、治ることはなく何度も繰り返してしまいます。
そういった場合は、言語聴覚士の方から誤嚥を防止するアドバイスをもらうこともおすすめです。
ご本人の生活の質を維持するためにも食事介護を工夫して下さい。
窒息
中期には、口唇傾向と被影響性の亢進によりよく噛まずに食事を口に詰め込みます。
また食行動の変化から過食になり、濃厚な味付けのものを好み一気に食べます。
一皿ずつ流し込むように口に詰め込み、一皿分を終了するとすぐ次を食べます。
数分で食べ終わってしまうため窒息の恐れがあり大変危険です。
自分のペースで食事をすることにこだわるため、止めようとしても拒否をします。
そのため、窒息の危険が少ない形状の食材を使い、量を考えて出すよう配慮をして下さい。
精神症状
脱抑制や衝動性、抑うつ状態といった精神症状があらわれる場合があります。
このような場合、介護者が困難を感じるため薬物療法により症状を緩和させます。
効果がみられるものとして抗精神病薬や睡眠薬の投与などがあります。
しかし、これらは高齢者が服用することで、ふらつきやめまいなどの副作用があります。
その際に転倒などでケガをしないように、介護者は注意する必要があります。
服薬の管理は医師と相談し、治療の効果をあげるよう適切に情報交換を行うことを推奨します。
意味性認知症の治療法
意味性認知症はまだ十分に解明されていないため根本的な治療薬はありません。
しかし薬物療法として、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の様な向精神薬は症状の抑制などに有効であると考えられています。
また、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬も効果が見込まれます。
非薬物療法については確立された方法はありません。
語彙(ごい)が減ることに備え「語彙再獲得訓練」にも集中して取り組むことができます。
以上のリハビリは、意味性認知症の方の自尊心を維持し、生活の質を改善させる可能性が高いと思われます。
一方、語彙が衰えた場合に備えカードやタブレットなどで意思疎通を図る練習をします。
失われた機能ではなく保たれた機能を利用して代替行動の訓練を行います。
コミュニケーションを図れる段階で、日常生活の活動性を維持することが大切です。
意味性認知症のまとめ
ここまで意味性認知症についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 意味性認知症の症状は、言語障害や意味記憶障害、行動障害など
- 意味性認知症の原因は、側頭葉の神経細胞の脱落による限定的な萎縮
- 意味性認知症は、嚥下性肺炎や窒息を合併する可能性がある
- 意味性認知症は、記憶障害が少ないのでリハビリの効果が高い
これらの情報が皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。