脳血管性認知症は、三大認知症の一つです。
しかし脳血管性認知症は、その他の認知症と異なり、予防が可能です。
予防するためにも、脳血管性認知症の特徴について、理解しておく必要があります。
本記事では、脳血管性認知症の症状や原因、その他の認知症との違いについて解説します。
- 脳血管性認知症の症状
- 脳血管性認知症の原因
- 脳血管性認知症と、その他の認知症の特徴の違い
- 脳血管性認知症の予防方法
ぜひ本記事を最後までお読みください。
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脳血管性認知症の症状
脳血管性認知症の症状には他にも
- 理解力・判断力の著しい低下
- 見当識障害(時間・場所・人の認識ができない)
- 失行(身体は動くが日常動作をおこなえない)
- 失認(ヒト・モノは認識できるが、内容・意味を理解できない)
- 失語(話せるが、言葉の意味を理解できない)
- 遂行機能障害(物事の計画を立てて遂行できない)
- 無気力・無関心
- 抑うつ
などがあります。
脳梗塞や脳出血など、脳の血管に障害が起こることで発症する脳血管性認知症。脳血管性認知症はどのような症状があるのかを知っていますか?今回は脳血管性認知症の原因や症状についてご紹介した上で、診断方法や治療法をご紹介します。[…]
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脳血管性認知症の原因
脳血管性認知症の原因は、脳卒中による脳神経細胞の壊死です。
脳卒中には、脳梗塞やくも膜下出血のほか、頭部への打撲による脳出血などがあります。
これらは多くの場合、生活習慣病が発症の引き金となります。
例として、脳出血が原因の認知症について解説します。
脳出血が起こると、脳機能の維持に必要な酸素・栄養が、脳に届かなくなります。
酸素不足に陥った脳神経細胞は、徐々に壊死し、結果として認知機能の低下につながるのです。
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他の認知症との特徴の違い
主な認知症には、脳血管性認知症のほかに、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症があります。
脳血管性認知症と、その他の認知症の特徴の違いについて解説します。
症状
脳血管性認知症とその他の認知症では、症状の内容よりも症状の現れ方に、大きな違いがあります。
脳血管性認知症では、症状がまだらに現れることが特徴です。
まだらに現われるというのは、突然症状が悪化する、1日のうちで体調・認知機能に大きな差がある、といった意味です。
また、記憶力は低下するのに判断力はしっかりしているというように、できることとできないことの差があるのも大きな特徴です。
一方、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、各症状はゆっくり進行していきます。
各症状は軽微な段階からはじまり、次第に重症化していきます。
また、特定の症状だけが現れることは、ほとんどありません。
脳血管性認知症とその他の認知症で、症状の現われ方が異なる理由は、発症原因です。
脳血管性認知症では、損傷を受けた脳の部位の機能は低下しますが、その他は健常に保たれます。
損傷した部位の機能は低下しても、その他の部位の機能は維持されるため、症状がまだらに現われるのです。
一方、その他の認知症では、脳機能は全体的に低下していきます。
したがって、脳血管性認知症のように、症状がまだらになることはありません。
原因
前述の通り、脳血管認知症は脳卒中が原因で発症します。
一方、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症はそれぞれ、脳にアミロイドβ、レビー小体が溜まることが原因で発症します。
アミロイドβもレビー小体も、異常たんぱくの1種で、脳に蓄積する理由については完全には解明されていません。
進行速度
脳血管性認知症の進行は、ある段階で一気に進むのが特徴です。
症状は一気に進行しますが、またある段階に達すると、その場で足踏みをします。
段階的に進行していき、進行速度は個人差が大きいのが特徴です。
脳血管性認知症の進行が段階的になる理由は、脳血管がダメージを受けるたびに症状が悪化するためです。
反対に、脳卒中を予防できれば、脳血管へのダメージが起きないため、症状の進行を抑えることが可能です。
一方、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症は、脳全体が萎縮することで起こります。
脳の萎縮を止めることはできないため、認知症は確実に進行していきます。
進行速度は個人差があるものの、10年ほどかけてゆっくり進行するのが一般的です。
すなわち症状は連続的に進行し、何かをきっかけに一気に進むことは稀です。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症は、治療によって進行の緩和は期待できますが、完治は見込めません。
脳血管性認知症の診断方法は?
脳血管性認知症は、症状だけではアルツハイマー型認知症と判別が難しいです。
そのため、脳血管性認知症の診断には、MRI検査・CT検査の実施が欠かせません。
MRI検査・CI検査では、脳梗塞・脳出血など病変の有無を調べることができます。
また、脳の血流について検査できるMRAや、脳血流シンチグラフィーで検査し、診断することもあります。
さらに、認知症や脳卒中は生活習慣病と関わりの深い病気であることから、下記の一般的な検査も行われます。
- 血液検査(血糖値、肝機能等)
- 甲状腺機能検査
- 心電図検査 など
そのほかにも、認知機能検査を行うことも診断の前提となります。
HDS-R・MMSEといったスクリーニング検査を行い、記憶力や見当識能力の評価を行っていきます。
患者さんのご家族に対しても、「一緒に生活していて異変を感じたことはないか」など、日常生活に関する聞き取りを実施し、総合的に診断します。
ケースによっては、日々の様子を記録してもらうよう、ご家族に依頼することもあります。
脳血管性認知症を防ぐには
脳血管性認知症は、脳卒中によって発症します。
つまり脳卒中を防ぐことで、脳血管性認知症を予防できます。
脳卒中とは、脳の動脈硬化によっておこる脳血管障害の総称です。
具体的に、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などがあります。
脳卒中の原因である脳動脈硬化は、生活習慣の乱れによって起こります。
適切な食生活や運動を心がけるなど、生活習慣を見直すことが、脳卒中の予防に役立ちます。
生活習慣の見直しの例を紹介します。
- バランスの良い食事
- 塩分・糖分・脂質を控える
- 禁酒・禁煙
- 規則正しい生活
- 適度な運動
- 肥満の予防
- メタボリックシンドロームの予防
脳血管性認知症の治療法は?
脳血管性認知症は、治療を受けることで症状の改善が見込めると言われています。
では実際の医療場面では、どのような治療を受けることができるのでしょうか?
この項目では、脳血管性認知症の主な治療方法について解説していきます。
薬剤を用いた治療法とは?
脳梗塞の改善と再発予防を目的に、ワーファリンなどの血液凝固阻止剤、アスピリンといった抗血小板剤が用いられます。
脳出血に対しては、高すぎる血圧は禁忌であるため、降圧剤を服用し、血圧をコントロールしていくことが重要です。
また、血液検査の結果から、血糖値や中性脂肪値が高かった場合、糖尿病治療薬、脂質異常症治療薬も使用するケースもあります。
非薬剤の治療法は?
薬物治療のほかにも、リハビリテーションを行うことで、身体機能・認知機能の維持改善に努めていきます。
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳卒中など脳の病変が原因です。
そのため運動麻痺や高次脳機能障害といった、認知機能面以外の問題も抱えていることが多いです。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるリハビリを受けることで、身体機能だけでなく、脳機能に対する訓練も受けることができます。
ベッドの上で薬物治療を受けているだけでは、刺激が少なく認知症や廃用症候群が進行してしまうリスクが高いです。
大変ではありますが、身体を動かし他者との交流をすることは、認知症予防に効果的であるため、積極的にリハビリは受けるようにしましょう。
脳血管性認知症の特徴まとめ
ここまで、脳血管性認知症の特徴についてお伝えしてきました。
- 脳血管性認知症は、症状がまだらに現れ、できることとできないことの差があるのが特徴
- 脳血管性認知症の原因は、脳血管への物理的なダメージ
- 脳血管性認知症の進行は、ある段階で一気に進むのが特徴
- 脳血管性認知症は、生活習慣病や転倒に気をつければ、予防できる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。