介護の現場で働く方にとって、仕事と入浴介助は切っても切れない関係です。
では、機械浴とは一体どんなものなのでしょうか。
本記事では機械浴について以下の点を中心にご紹介します。
- 機械浴の種類とその対象者について
- 機械浴のメリットとデメリットについて
- 機械浴で事故を起こさない為の注意点
機械浴について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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機械浴とは
機械浴とは、座った姿勢が保持できない方や寝たきりの方が使用するための浴槽です。
特別養護老人ホームや老人保健施設、介護付き有料老人ホームなどに多く設置されています。
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機械浴の種類
機械浴には大きく分けてチェアー浴とストレッチャー浴があります。
ここではそれぞれの内容について解説します。
チェアー浴
チェアー浴とは、キャスターが付いた専用の椅子に座った状態で入浴する方法です。
浴槽をまたぐ動作が困難であっても、背もたれがあれば座位を保持できる方が対象です。
浴槽の壁が開き、椅子ごと浴槽に入るタイプで、安定感があります。
また要介護者が周囲を見渡すことができるため、安心して入浴することが可能です。
要介護者が手を動かすことができれば、タオルやスポンジを持って手の届く範囲で身体を洗うことが出来るため、自立支援にもつながります。
ストレッチャー浴
ストレッチャー浴とは、ストレッチャーに寝たままの状態で入浴する方法です。
座位を保つことが困難な方や寝たきりの方などが対象です。
これは、ストレッチャーが昇降し担架部分をスライドさせるタイプです。
体を洗ったり、着替えを行うことができます。
このタイプは、要介護者の臀部や背部など普段見えにくい場所も細かくチェックできます。
そのため、傷や皮膚トラブルの発見などにもつながります。
機械浴を使う対象者
機械浴というのはどのような方が対象となるのでしょうか。
ここでは、どんな方が機械浴の対象者となるのかお伝えします。
座位保持が困難な方
一般の家庭で使われているような浴槽では、湯船に沈んでしまう方、一般の入浴用の椅子に座っていることが難しい方などが対象です。
浴槽をまたぐ動作が困難な方
足をあげて浴槽をまたぐことが難しい方などが対象です。
寝たきりの方
身体を自由に動かすことが出来ず、日中もベッドの上で過ごす方などが対象です。
骨折したばかりで身体を動かすことが困難な方
転倒して骨折したり、同じ姿勢を続けて圧迫骨折をしたりしたばかりで、安静を必要とする方などが対象です。
機械浴のメリットとデメリット
機械浴を使用することのメリットやデメリットはどのようなものでしょうか。
ここでは、機械浴を使用することによるメリットとデメリットについて解説します。
メリット
機械によって動くため、要介護者を持ち上げる必要がほとんどなく、介護者の腰などへの負担を軽減することができます。
また、装置にベルトが付属しているため、転落などの危険を防ぐことができます。
麻痺や拘縮などで身体が思うように動かなくなった方や、体重の重い方など幅広い範囲で対応することができます。
デメリット
普段とは異なる環境により要介護者に恐怖や不安を与えてしまう恐れがあります。
また、プライバシーへの配慮が保たれない可能性があります。
言葉を発せない方や感覚に麻痺がある方については、お湯の温度が高いと、知らないうちにやけどに繋がってしまう恐れがあります。
また、身体機能のさらなる低下を招く恐れがあります。
機械浴の注意点
ここでは、機械浴を使用する際の注意点について解説します。
要介護者が安全に入浴するためには、以下の全てのことに注意することが必要です。
機械の扱いに対しての注意点
- 機械浴の使用前に動作確認をし、物品が破損したり故障したりしていないか、清掃は行き届いているかなど確認しましょう。
- 機械浴で浴槽に入る際は身体が浮きやすくなります。必ずベルトで利用者の身体を安定させましょう。
- 事故を防ぐために機械浴の操作方法を確実に理解しましょう。
- 機械浴の使用に慣れているとしても細かいチェックを怠らないようにしましょう。
介助方法に対する注意点
- プライバシーに留意し、身体を隠す配慮をしましょう。
- やけどを防ぐために温度計を確認しましょう。
- 介護者が必ず浴槽内やシャワーのお湯の温度を手で確認しましょう。
- 椅子やストレッチャーのストッパーがかかっているか、要介護者の手足が巻き込まれる位置にないかなども確実に確認しましょう。
- ストレッチャー浴では要介護者が天井を向いたまま身体を洗います。そのため、顔や耳に水が入らないように注意しましょう。
要介護者に対しての注意点
- 要介護者の入浴前にバイタルサインを確認し、体調に異常をチェックしましょう。
- 入浴時には赤みや傷、褥瘡などの皮膚トラブルの有無も確認しましょう。
要介護者は皮膚が弱くなっているため、優しく身体を洗いましょう。
入浴中の事故を防ぐために行うこと
消費庁によると、高齢者の事故のうち「不慮の溺死及び溺水」による死亡者は、年々増加傾向にあるとしています。
浴槽においての死亡者数は、特に75歳以上の後期高齢者の死亡者数が多くなっています。
男女別に見ると、溺水事故の救急搬送者数は男性の方が多くなっています。
入浴中の事故は、突然発生する恐れがあります。
なお機械浴を利用する方は、身体障害があり内科的疾患も併発している場合が多いです。
また、機械浴では、スタッフがベルトを付け忘れて事故に繋がるケースがあります。
さらに、機械浴から介助浴に変更すると、想定外の行動を起こす可能性が高くなります。
リスクを理解し、「いつ起こってもおかしくない」という意識を持って常に事故の予防に目を向けることが大切です。
以下に、消費者庁が発表した「事故防止のための注意ポイント」まとめました。
入浴前に脱衣所や浴室を温めましょう
暖かい部屋から、温度の低い脱衣所、浴室内に入ることで急激に血圧が変化します。
この急激な血圧の変化を抑えるために、入浴前に脱衣所や浴室を暖めることが大切です。
浴室や脱衣所に暖房がある場合は利用し、入浴前に室温を上げておきましょう。
暖房設備がない場合は、湯を浴槽に入れるときにシャワーから給湯すると、蒸気で浴室の温度が上がります。
浴槽の蓋を外しておくことも良いでしょう。
また、脱衣所等で暖房器具を使用するときは火事ややけどに気を付けましょう。
湯温は 41 度以下、湯につかる時間は 10 分までを目安にしましょう
お湯につかる時間は 10 分までを目安にし、長時間の入浴は避けましょう。
また、目安として 41 度以下のお湯が推奨されています。
お湯はあまり熱くしないようにしましょう。
食後、飲酒後、服用後すぐの入浴は控えましょう
食後に血圧が下がりすぎる食後低血圧によって失神することがあるので、食後すぐの入浴は避けましょう。
また、飲酒後の入浴は、入浴中の事故発生に影響があると考えられます。
飲酒後、アルコールが抜けるまでは入浴しないようにしましょう。
体調の悪いときはもちろんのこと、精神安定剤、睡眠薬等の服用後も入浴は避けましょう。
出典:消費者庁「冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください! -11 月 26 日は「いい風呂」の日- みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故 ②」
機械浴についてのまとめ
ここまで機械浴についてお伝えしてきました。
機械浴の要点をまとめると以下の通りです。
- 機械浴には大きく分けてチェアー浴とストレッチャー浴がある。
- 機械浴のメリットは介護者の負担軽減や安全性などである。
- 機械浴のデメリットは要介護者への恐怖感、プライバシーの侵害などである。
- 機械浴で事故を起こさないためには細かなチェックが重要である。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。