超高齢社会の日本において、年々増加している認知症。
記憶障害や見当識障害の他にも、症状は多岐にわたります。
認知症症状の一つに頻尿があることをご存知ですか?
本記事では、認知症と頻尿の関係について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症の方の頻尿リスク
- 認知症の方が頻尿になる原因
- 認知症の方の頻尿対策
- 認知症の方による頻尿予防の注意点
認知症の症状の理解を深めるためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症かも?頻尿の症状の特徴
一般的な排尿回数は1日4〜6回で夜間は0〜1回と言われています。
頻尿は排泄回数が増加した状態です。頻尿になると1日に8〜10回以上、夜間に2回以上トイレに行くようになってしまいます。
頻尿といっても様々な原因があり、尿量が増えて頻尿になる場合と、尿量は変わらず回数が増える場合があります。前者は多飲や腎疾患、後者は膀胱炎などが原因の一つです。加齢によって出現するものもあります。
高齢者に多い頻尿について見ていきましょう。
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認知症の方の頻尿リスク
認知症の方の中には、夜にぐっすり眠れていない方がいます。
認知症の方が何度も起きてしまう原因の一つに頻尿が挙げられます。
以下で紹介しますが、認知症が頻尿を引き起こす原因はさまざまです。
認知症の方に強くあたってしまう介護者もいますが、本人だけではどうしようもありません。
認知症の症状であることを理解し、本人以上に向き合うことが大切です。
以下で紹介する原因や対策を把握し、できる限りサポートしましょう。
高齢者が頻尿になる原因
高齢者が頻尿になる原因はいくつかあります。
ここからは、「高齢者が頻尿になる原因」を三つご紹介します。
過活動膀胱
過活動膀胱とは、急に強い尿意が起こる病気です。
膀胱が活動しすぎることによって尿が十分に溜まっていない状態でも排尿筋が収縮し発症します。
過活動膀胱が起こる確かな原因はまだ分かっていません。
加齢や精神的ストレス、脳内の排尿を司る部位や自律神経の乱れなど様々なことが関係していると考えられます。
過活動膀胱は非常に強い尿意を催すため、我慢することは困難です。
1日の中でトイレに行く回数は多く、場合によってはトイレに間に合わず漏らしてしまうこともあります。
命を左右する病気ではありませんが、本人にとっては非常に辛い症状であり日常生活に支障をきたします。
トイレの不安のために外出を避けたり、尿意を我慢できず漏らしてしまう自分を情けなく感じるなど精神的負担も大きいです。
前立腺肥大
前立腺とは膀胱のすぐ下に位置しており、尿道を囲んでいる男性特有の臓器です。
前立腺が肥大することで尿道を圧迫し、膀胱に尿が溜まったり出にくくなるのが前立腺肥大の特徴です。
場合によっては、症状が進行することで尿が全く出なくなることもあります。
膀胱炎
膀胱炎とは、膀胱の中で細菌が増殖し粘膜に炎症が起こる病気です。
男性に比べ女性の尿道は短く細菌が膀胱に届きやすいため、女性の方に多いです。
大抵は尿と共に細菌も外へ流れ出ていきます。
しかし、トイレを我慢すると細菌が繁殖し膀胱炎を引き起こします。
膀胱炎の大半が「急性膀胱炎」であり、大腸菌などの細菌が尿道から入り込むことで起こります。
急性膀胱炎の主な症状は、「排尿痛」「頻尿」「尿の濁り」です。
排尿時に痛みを伴い、排尿の終わりに特に強い痛みを生じます。
そして、トイレに行く回数が増加したり、尿に濁りがみられます。
その他の症状には、前立腺肥大と同様の残尿感や血尿が起こる場合もあります。
夜間頻尿
頻尿が起こる原因にはいくつかの病気が関係している場合があるので、注意が必要です。
一方で認知症や何らかの病気が原因ではなく、その他の影響で頻尿が起こることも考えられます。
眠りが浅いことによる頻尿です。
高齢の方は若い方に比べ眠りが浅い傾向があります。
夜間にしっかり眠れないことで、気になってしまいトイレに行く回数が増えることも珍しくありません。
また、単純に水分を摂り過ぎていることが原因で頻尿が起こる場合もあります。
そうした場合は、摂取した水分の量やトイレに行った回数、尿がどれだけ出たかなどを記入しておくと良いでしょう。
認知症で頻尿になる理由は?
認知症で頻尿の症状が出る原因
認知症が軽度にも関わらず、頻尿を起こす場合があります。
その患者を調査した結果では、排尿過活動が見られました。認知症の原因疾患の中では、隠れ脳梗塞、レビー小体型認知症で多く、アルツハイマー型認知症でも中程度に見られ、膀胱抑制的に働く、前頭前野や大脳基底核に起きる異常が原因と推定されています。
認知症患者の頻尿の症状の特徴
尿意がなくてもトイレに行きたがる傾向があります。
これはトイレに行ったことを忘れてしまうことや、いつトイレに行ったかわからない不安によって引き起こされます。
また、認知症による見当識障害によって、昼夜の区別がつかず、夜間眠れないため頻繁に尿意を訴えることもあります。
出典:日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌「認知症患者さんの排泄障害」
認知症患者が頻尿を発症した時の対応
看護師
看護師としての対応では、頻尿の原因を把握する必要があります。
頻尿の原因は様々です。どのような症状があるか、症状はいつ頃からか聴取し、引き起こす疾患や手術歴、認知機能やADL低下などの有無を把握し、原因を絞り込みます。
排尿状態を確認するために、排尿日誌をつけることは重要です。
主な項目は排尿した時間、1回の排尿量、尿失禁の有無、摂取した水分量などです。
記録のテンプレートは日本排尿機能学会のホームページでダウンロードが可能です。
家族・介護者
認知症患者の頻尿の対応で大変なのは家族や介護者です。
発症した時の対応を見ていきましょう。
突然強い尿意に襲われる場合や我慢できずに漏らしてしまう場合は、おむつの利用がおすすめです。万が一漏らしてしまっても、ベッドや下着を汚してしまう心配がありません。
水分摂取はコーヒーやアルコールを避けるようにしましょう。カフェインを多く含むコーヒーやアルコールには利尿作用があります。飲み過ぎてしまうと頻尿を引き起こす可能性が高いです。また、水分を制限しすぎると脱水の可能性もあります。寝る3時間前までに常温の水や白湯を飲むことがおすすめです。ご家族の水分摂取量や時間帯に注意することが頻尿の対策になります。
トイレの回数が多く、夜間の頻繁な介助は介護者の睡眠不足につながり、体力的にも精神的にもつらくなってしまいます。どうしても大変な場合は夜間の訪問介護サービスを利用することも一つの手段として知っておきましょう。
認知症の方の頻尿対策
思うように排尿ができず、漏らしてしまうのは本人にとって非常に辛いことです。
また、家族にとっても認知症の方に頻尿が起こることは悩みやストレスの原因になるでしょう。
しっかりと頻尿対策をすることが重要です。
ここからは、「認知症の方の頻尿対策」を三つご紹介します。
オムツの利用
突然強い尿意に襲われる場合やトイレまで我慢できずに漏らしてしまう場合は、オムツを利用すると良いでしょう。
オムツを着用しておけば、万が一漏らしてしまったときでも下着やベッドなどを汚すことがありません。
オムツには、「パンツ型」「テープ型」「フラット型」など様々な種類があります。
また、尿漏れ防止機能がついたものや吸収量が高いオムツも多く販売されています。
初めてオムツを着用する場合やしっかりフィットしない場合は、不快感や違和感があるかもしれません。
認知症の方の体の大きさや使用時間、吸収量などを考慮した上で本人に合ったオムツを選びましょう。
膀胱トレーニング
膀胱トレーニングとは、尿意を感じてから5分程度トイレに行くのを我慢するという簡単な方法です。
1日に何度もトイレに行く習慣がついてしまうと排尿後に残尿感が残りやすく、少量の排尿を繰り返すなど悪循環に陥ります。
したがって、不安だからといって早めにトイレに行くことはせず、膀胱トレーニングを行ってみましょう。
最初は5分程度から始め、慣れてきたら10分、15分と時間を延ばしていきます。
最初から長時間行う必要はないので、無理のない範囲から挑戦することが大切です。
膀胱トレーニングに慣れてくると、次第に自分の意志で尿意をコントロールできるようになります。
コーヒー・アルコールを避ける
カフェインを多く含むコーヒーやアルコールには利尿作用があります。
したがって、飲みすぎることで頻尿を引き起こす可能性が高いです。
特に、就寝前のコーヒーやアルコールの摂取は控えましょう。
かといって水分を摂らないことを意識しすぎると脱水状態に陥ります。
寝る3時間前までに常温の水や白湯を飲むのがおすすめです。
日頃から摂取する水分の種類や量、時間帯などを意識することが頻尿対策になります。
頻尿治療はどう行う?
過活動膀胱
膀胱が過敏になって収縮しやすくなるもので、急に強い尿意が起こって頻尿になることが特徴です。男女共に加齢と共に増加します。
治療法は抗コリン薬(ベシケアなど)を使用します。これは過活動膀胱や神経因性膀胱の治療薬として知られています。
排尿にはアセチルコリンが関わっています。膀胱に多く存在するムスカリン受容体に働きかけることによって、膀胱が収縮し尿意が起こります。このムスカリン受容体にくっつくことでアセチルコリンの働きを鈍くさせて、膀胱の収縮を抑え、頻尿を改善するというものです。
副作用で喉の渇きなどが起こると言われています。
前立腺肥大
膀胱の下の尿道を囲む位置にある前立腺が熟年以降に肥大して尿道を圧迫するものを言います。時に前立腺癌が原因となっていることがあります。
前立腺癌は血液検査でPSA(前立腺特異抗原の略)を測定することで早期発見が可能です。
膀胱炎
膀胱炎には抗生剤の服用が効果的です。内服すると1〜2日で症状の改善がみられます。
中途半端な治療では、慢性化してしまうことがあります。処方された日数分はしっかりと内服するようにしましょう。
夜間頻尿
抗コリン薬を使用した膀胱収縮の改善、β3刺激薬(ベニタスなど)を使用した膀胱貯蓄能力の改善、平滑筋弛緩薬を使用して膀胱の筋肉の収縮を抑制することで膀胱の容量を増やすなどの治療を併用します。
どれも効果がない場合は、睡眠薬等を使用して眠ってもらうことで尿の回数を減らすこともあります。
認知症
治療としては、薬物による認知症・パーキンソン症候群の改善と共に、時間排泄(行動療法)を促します。やむを得ない場合はオムツなどの着用をおこないます。
また、認知症が軽度にもかかわらず、頻尿や尿失禁が出現する場合、過活動膀胱の可能性も考えられます。その場合は上述した抗コリン薬での治療と併せてなります。
出典:日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌「認知症患者さんの排泄障害」
第74回日本自律神経学会総会「排尿排便障害」
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頻尿予防の注意点
頻尿予防は重要ですが、注意すべきことがあります。
ここからは、「頻尿予防の注意点」を二つご紹介します。
脱水症
頻尿予防のために水分摂取を控えすぎると、脱水症を招く危険性があります。
脱水症を引き起こすとめまいや立ちくらみ、吐き気など様々な不調が体に現れます。
また、最悪の場合には命の危険にさらされることもあります。
そのため、過度に水分を控えるのではなく、適切に水分摂取を行いましょう。
利尿作用のあるカフェインなどは控え、常温の水やお湯などをこまめに摂取すると良いです。
腎機能障害
腎臓には体内の水分量を調節する働きがあります。
そのため、水分摂取を怠ると腎臓の機能が低下してしまいます。
腎臓に負担をかけないためにも、適度な水分補給が重要です。
水分は食事からも摂取できるため、食事と水分補給のバランスを取った生活を送りましょう。
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まとめ:認知症の方の頻尿
ここまで、認知症の方の頻尿についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症の方の頻尿は、介護者のサポートが大切
- 認知症の方が頻尿になる原因は、「過活動膀胱」「前立腺肥大」など
- 認知症の方の頻尿対策は、「オムツの利用」「膀胱トレーニング」などが効果的
- 頻尿予防のために水分摂取を怠ると、脱水症を引き起こす可能性がある
これらの情報が皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。