超高齢社会の日本において、年々増加する認知症。
認知症の症状は、数年かけて徐々に進行していきます。
進行段階ごとの症状を把握していない方も多いのではないでしょうか?
本記事では、中期段階の認知症について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症の進行段階
- 認知症の中期の具体的な症状
- 認知症の進行を遅らせる方法
- 中期の認知症の方のサポート方法
認知症と向き合っていくためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症の進行段階
※画像はイメージです
認知症は、種類によって症状や原因が異なります。
いずれの認知症も、本人の状態によって初期・中期・末期の3段階に分類できます。
今回は、認知症の中でも代表的なアルツハイマー型認知症の進行段階についてご紹介します。
初期
初期段階では、進行性の記憶障害がみられます。
加えて、無気力や物盗られ妄想などの周辺症状があらわれることもあります。
症状の程度には個人差があるものの、日常生活に大きな支障はありません。
そのため、認知症と気づかないケースもよく起こります。
末期
自力で身体を動かすことが難しく、寝たきり状態になります。
筋肉の硬直があり、無表情や嚥下障害といった症状があらわれやすくなります。
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認知症の進行段階:中期
認知機能の低下や周辺症状など、認知症の症状が顕著にあらわれる段階です。
中期になると一人での着替え・食事・入浴・排泄が困難となります。
日常生活全般で誰かの支援を必要とします。
具体的な進行状態を、中核症状と周辺症状の2つに分けて解説します。
中核症状の悪化
中核症状は、認知症の発症者全員にあらわれる症状です。
中核症状は、脳神経細胞が減少し認知機能が低下することで起こります。
記憶障害
認知症における記憶障害の特徴は、「体験を丸ごと忘れる」「忘れたことを自覚できない」ことです。
とくに「忘れたこと自覚できない」点は、中期で顕著になります。
- 食事をしたあとに食事を要求する
- 数分前にした話をする
- 忘れないように書いたメモの存在を忘れる
見当識障害
見当識障害は、時間・場所・人の認識ができなくなる障害です。
中期では、「時間・場所」の見当識障害が目立ちます。
時間の見当識障害では、時間だけでなく日付や季節の認識も困難です。
場所の見当識障害では、自分がいる場所や目的地までの道のりが分からなくなります。
- 真夜中に仕事に出かけようとする
- 真冬に真夏の格好をする
- 近所で道がわからなくなり、家に帰られなくなる
- 自室からトイレにたどり着けない
実行機能障害
物事の計画を立て、計画通りに実行するのが難しくなります。
「実行機能障害」または「遂行機能障害」と呼ばれます。
- 料理の段取りができない
- 2つの家事を同時進行できない
- 予想外の出来事に対処できない
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周辺症状の悪化
周辺症状は、中核症状の進行に伴ってあらわれる副次的な障害です。
発症には、本人の性格や周囲の環境などが大きく影響します。
失語の症状が出る
失語とは声は出せるものの、意味のある言葉を発せない状態のことです。
稀に、声を出すこと自体にも障害が現れます。
何事にも億劫になる
無気力・無関心になる「アパシー」が起こり、自室に閉じこもりがちになります。
脳への血行不良によって起こる「抑うつ」が、原因となることもあります。
排泄の失敗
尿・便をトイレ以外でしてしまうことがあります。
中期では尿意のコントロールが難しくなり、排泄の失敗が常態化することも少なくありません。
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中核症状への対処法
※画像はイメージです
ここまで認知症の中期の症状について解説してきました。
では、認知症になると必ずあらわれる、中核症状に対してどのように対処すれば良いのでしょうか?
ここでは、中核症状の対処法についてそれぞれご紹介します。
記憶障害の対処法
記憶障害に適した対処法は、むやみに間違いを訂正しないことです。
上述したように、認知症の方には記憶障害の自覚がありません。
記憶違いを指摘されると、自分を否定されたような気になります。
さらに、もう一つの記憶障害の対処法として、記憶障害と折り合いをつけて生活することです。
「よく使うものは目につく場所に置く」など、生活しやすいように環境を整えましょう。
新しい情報を覚えるときは、何度も繰り返して覚える方法も有効です。
見当識障害の対処法
見当識障害に有効な対処法は、リアリティオリエンテーションです。
リアリティオリエンテーションでは時間・日付・今いる場所・人の名前など、日常生活に必要な情報を繰り返し質問します。
質問と回答を繰り返すことで、現実をより認識しやすくなります。
時間の見当識障害では、カレンダーや時計を利用するとよりよいでしょう。
一日に何度も日付や時間を確認することで、現実を認識しやすくなります。
一方、「自宅でトイレにたどり着けない」等の見当識障害では、家の中に道順を貼ったり、トイレのイラストを貼ったりすると効果的です。
実行機能障害の対処法
一つの行為が終わったら、次の行為をまた一つ指示しましょう。
指示の内容を具体的にすることが、ポイントです。
NG:「ここにある野菜を全部切って、炒めてください」
OK:「玉ねぎを切って」→「ニンジンを切って」→「ジャガイモを切って」→「切ったものを炒めてください」
認知症の進行を遅らせる方法
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認知症は完治できませんが、治療によって進行をある程度遅らせることができます。
治療法には、薬物療法と非薬物療法があります。
薬物療法
認知機能改善薬の治療によって、中核症状の進行緩和を期待できます。
大きく分けてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗剤があります。
一方、周辺症状の進行緩和には向精神薬、睡眠薬、漢方などを用います。
非薬物療法
リハビリや訓練、生活習慣の改善によって認知症の進行緩和を目指す方法です。
ときに、薬物療法以上の効果をもたらすことがあります。
副作用のリスクがないのもメリットです。
中期の認知症の方をサポートする方法
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認知症の中期からは、日常生活全般において周囲の支援が必要となります。
しかし、家族だけで介護を抱え込むと精神的・身体的に追い詰められてしまうこともあります。
認知症とは長い付き合いになるため、介護施設や介護サービスを上手に利用しましょう。
認知症中期で利用できる可能性のある介護施設は以下の通りです。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- ショートステイ
- グループホーム
認知症の中期のまとめ
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ここまで、中期段階の認知症についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症の進行段階は、初期・中期・末期に分類できる
- 認知症の中期では、中核症状や周辺症状が著しく悪化する
- 認知症の進行を遅らせるには、薬物療法と非薬物療法
- 中期の認知症の方のサポートでは、介護施設・サービスを活用する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。