現代の医療では認知症を完治させることはできませんが、昔の記憶を利用した「回想法」がリハビリの一環として使われています。
そこで今回の記事では昔の記憶がどのような影響を受けるのかご紹介していきます。
- 認知症と昔の記憶の関係
- 昔の記憶を使った回想法の効果
- 回想法の実施方法
認知症による記憶障害で悩んでいる方のお役に立てれば幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症の方と昔の記憶の関係について
認知症を発症すると代表的な症状として記憶障害が起こります。
認知症の影響で起こる記憶障害は昔の記憶ではなく、比較的最近の記憶が多いとされています。
そのため、認知症の方は最近のことは忘れてしまっても昔の記憶は残っていることが多いです。
認知症の方が何十年も前のことを忘れずにいるのは、認知症の方が昔の記憶を保持しているからです。
反対に最近のことを忘れてしまうのは、認知症により脳の海馬の働きが弱まっている影響で、物事を覚えにくくなるからです。
つまり幼い時や若い時にあった昔の出来事は記憶されているため、認知症になってもある時期までは思い出すことができます。
認知症の方が昔の記憶を話すとき、懐かしい話や楽しかったことは心が穏やかになり、幸せな気持ちになる方が多いと思います。
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記憶障害の進行
一般的に、認知症の影響による記憶障害には忘れていく順番があります。
ここでは、忘れられていく記憶の種類を順番ごとにご紹介させていただきます。
即時記憶
即時記憶とは、保持時間が短い記憶のことです。
電話番号、日付、ものを置いた場所などが当てはまります。
近時記憶
即時記憶より保持時間が長い記憶です。
保持時間に明確な定義はありませんが、少し前の記憶、数分から数日程度と言われています。
一旦意識から消えたもの、今日の朝ごはんや昨日の晩御飯などが近時記憶に当たります。
遠隔記憶
近時記憶より更に保持時間が長い記憶です。
数日から年単位の記憶ですがこちらも明確な定義はありません。
冠婚葬祭や旅行などの、記憶してから思い出すまでの時間が長いものが遠隔記憶に当たります。
エピソード記憶
出来事とそれに付随する状況などです。
旅行に誰と行ったか、どんな状況だったか、その時の気持ちなどのことを意味します。
意味記憶
言葉の意味や数式などについての記憶です。
文字の読み書きなどは、意味記憶として保存されます。
手続き記憶
同じ経験を繰り返し行うことで得られた記憶です。
自転車に乗ること、水泳や楽器の演奏などは手続き記憶になります。
昔の記憶を使った回想法の効果
回想法とは、自分の過去のことを話すことで精神を安定させ、認知機能の改善も期待できる心理療法のことです。
以下で効果をいくつか具体的に解説します。
心の安定をもたらす
昔の記憶を思い出し、誰かに話すことにより、懐かしさや楽しさを感じることで心の安定を得ることができます。
また、聞き手が聞いてくれることも大きな安心につながります。
特に回想法をグループで行うと、昔の風習や生活など、昔の記憶を共有することで不安感や孤独感などを和らげ安心につながることがあります。
自信につながる
昔の記憶を誰かに話すことで、安心感や満足感を感じます。
また自分自身で昔の記憶をたくさん話すことにより、自信にもつながります。
自信がつくと自己肯定感も上がるので、症状を和らげることも期待できます。
認知症の進行を遅らせる
人に話をすることは脳に大きな刺激を与えるため、認知症の進行を遅らせると言われています。
国立長寿医療研究センターの研究結果によると、昔の記憶を話すと脳の血流が増えるようです。
認知症の治療は薬物療法だけではなく、薬を使わず治療する「非薬物療法」があります。非薬物療法の代表的な療法に「回想療法」があるのを知っていますか?今回は認知症の回想法について、以下の点を中心にご紹介します。認知[…]
回想法の実施方法
ここまで回想法の効果についてご紹介してきました。
ここからは回想法の方法についてご紹介していきます。
個人回想法
個人回想法は1対1で行い、何気ない会話から昔の記憶を呼び起こしていくように始める場合と、あらかじめテーマを決めて行う方法があります。
個性を尊重してしっかりと傾聴することができるため、深い所まで掘り下げて行うことができます。
グループ回想法
グループ回想法は6~10名ほどのグループで行います。
スタッフの中からリーダーとサブリーダーを立てます。
参加者が触れられたくないことなどを事前に調査し、昔の遊びや若い頃行った旅行などの昔の記憶を呼び起こし、気軽に話してもらいます。
コミュニケーションがとれるので、孤立しがちな認知症の方の社会性を呼び起こすことも期待できます。
認知症の方が昔の話ばかりするのはなぜ?
認知症の方が昔の記憶ばかりを話すのは、ついさっき話した内容を忘れてしまうからです。
何度も同じ話をしても、話したこと自体を忘れてしまうのでまた同じ話を繰り返してしまいます。
最近の話は忘れてしまうことが多いので、自分の覚えている昔の話をしては忘れてしまい、また同じ話をするということになります。
聞いている方が「また同じ話をしている」と言っても、本人は話したことを覚えていないのです。
認知症と昔の記憶のまとめ
ここまで認知症と昔の記憶についてを中心に解説してきました。
- 記憶障害の進行には順番があり、即時記憶・近時記憶・遠隔記憶・エピソード記憶・意味記憶・手続き記憶の順で忘れていく
- 昔の記憶を使った回想法は、認知症の進行を遅らせることが期待できる
- 回想法の実施方法としては、個人回想法と、グループ回想法の2種類がある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てると幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。