中でも、オランダには認知症の方が暮らす村として世界中から注目を集めている「認知症村」という福祉施設があります。
今回は認知症村の効果や特徴をご紹介したうえで、日本の介護施設との違いをご紹介します。
- 認知症村の概要
- 認知症村の効果
- 認知症村のメリット
- 認知症村と日本の介護施設の違い
この記事をご覧いただき、認知症村についての理解を深めるための参考にしてください。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症村とは?
認知症村はホグウェイといい、オランダのアムステルダム郊外にある認知症の方専用の老人ホームです。
認知症の方だけが暮らす村として、世界中から注目を集めています。
スーパーや映画館などの施設があり、生活に必要なものが揃った環境のもとで認知症の方が自由に生活できます。
約150人の入居者と約240人のスタッフが共に生活を送っており、スタッフは一人の住民として認知症の方に接します。
認知症村で働いているスタッフ全員は、認知症に関する専門的な知識を持っています。
そのため、様々な場面でフォローが可能です。
本来私たちは、人や社会との関わりを持ちながら生活しています。
一方で、認知症を発症すると以前できていたことができなくなり、人や社会との関わりが失われがちです。
しかし、認知症村では多くの人と関わり合い、本来あるべき姿のまま日常生活を送れるのです。
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認知症村の効果は?
認知症を発症すると活動量が減るほか、人との関わりが減ることで強い不安や孤独感を抱えることが多くなります。
そして、次第に社会から孤立し、自発性や活動性が失われていきます。
認知症村では不安や孤独感を抱えることはなく、社会的孤立も存在しません。
なぜなら、スーパーで買い物をしたり、様々なアクティビティをしたりなど、人との関わり合いを大切にしているからです。
人との関わりや活動を通して様々な楽しみを見つけ、生きがいを感じながら日々の生活を送れます。
また、認知症の方の精神的な安定にも繋がります。
また、村の中を自由に歩き回れるため、特別なリハビリがなくても日々の生活自体が運動になります。
認知症の方には転倒のリスクがありますが、日々村の中を歩くことが結果的に転倒予防に繋がるのです。
このように、認知症村で生活することは身体と心の両面に効果があります。
認知症村の特徴とは?
認知症村の大きな特徴として挙げられるのは、入居者のライフスタイルに合ったユニットを選べるということです。
認知症村のユニットタイプは7つに分類されているため、同じような価値観を持った人同士で生活できます。
7つのユニットタイプは以下の通りです。
- 都会派
- インドア派
- 文化派
- インドネシア
- 富裕層
- 伝統派
- クリスチャン
ユニットによって部屋のデザインや場所が異なり、入居者の年代や好みに合わせた住居環境になっています。
入居する際のヒアリングや家族と相談するほか、事前に家庭訪問などしたうえでユニットを決めます。
一つの住宅で約6〜7人の入居者と、ケアテイカー・ホームサポーターと呼ばれる介護スタッフが各一人ずつ生活しています。
ケアテイカーは入浴介護に加え、料理や洗濯などの家事も行います。
対してホームサポーターは、ケアテイカーよりもさらに家事に近い仕事をします。
認知症村の費用ですが、月額約70万円とされています。
認知症の村は閉鎖的?
認知症の村では、認知症を患っていても生活しやすいような仕組みにしたことで、あるデメリットがあります。
それは、地域住民との交流がなく閉鎖的に感じるということです。
認知症との交流では、一緒に出かけたり実家を尋ねるなどの交流が一般的です。
しかし、自立した生活が送りやすいため介助者や子どもたちとの交流が少ないようです。
認知症のサポートに加えて、定期的な交流の場を設けることが認知症と共生するために重要になっていくでしょう。
認知症村と日本の介護施設の違い
認知症村についてご紹介しましたが、日本の介護施設とはどのような違いがあるのでしょうか。
ここからは、認知症村と日本の介護施設の違いについてご紹介します。
施設の目的
特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、日本には様々な介護施設が存在します。
医療法人や社会福祉法人が運営する公的施設と、民間企業が運営する民間施設の2種類に分けられます。
自立することや在宅復帰など施設によって目的は異なります。
また、認知症の方だけではなく、家族の介護負担を軽減させることを目的としている施設も多くあります。
認知症村の一番の目的は、入居者に普通の生活を送ってもらうことです。
対して日本の介護施設の目的は自立や在宅復帰などであるため、目的に違いがあると言えます。
費用
日本の介護施設の費用は施設によって異なります。
公的施設と民間施設で比べた場合、民間施設の方が月額費用がやや高い傾向があります。
民間企業の場合は立地や医療体制などによって費用が変わるので、10万円ほどの施設があれば100万円以上の施設もあります。
そのため、公的施設より費用に差があるのが特徴です。
認知症村は月額約70万ですが、日本の介護施設ではさらに安く費用を抑えられる施設が多くあります。
日本にも認知症村が存在していた?
日本にも、認知症村と呼ばれる場所が存在します。
その村は紀伊半島にありますが、住民のプライバシーを考慮して村名は公表されていません。
紀伊半島特有の病名は紀伊ALS/PDCと呼ばれています。
ALSとは筋萎縮性側索硬化症であり、PDCとはパーキンソン病と認知症の複合です。
紀伊ALS/PDCを発症した方は、ALSやパーキンソン病のように体を動かせず歩行障害がみられるようになったり、記憶障害や意欲の低下など認知症の症状が現れたりすることもあります。
また、両方の症状が現れる場合もあります。
発症して数年後から十数年後に亡くなる方が多く、中には20代という若さで亡くなった方もいます。
そして、紀伊ALS/PDCの方の脳を調べた結果、タウという異常なたんぱく質が脳細胞に蓄積していることが分かったのです。
紀伊ALS/PDCを発症する原因には水や食べ物、遺伝子に関して様々な仮説が立てられてきましたが、原因は未だに分かっていません。
しかし、今までに多くの方が悩まされ、亡くなっているのが事実です。
村の住民は今も病に悩まされ、一刻も早い原因解明を望んでいます。
病気の原因が解明されれば村の住民の悩みが解消されるほか、ALSやパーキンソン病、認知症の今後の治療に役立つ可能性があります。
認知症村のまとめ
今回は、認知症村についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症村とは、認知症の方が普通の生活を送ることを目的としたオランダ発の福祉施設
- 村の中を自由に歩いたり人と関わりを持ったりすることで、認知症の方の心身に良い影響を与えている
- ユニットタイプは入居時のヒアリングや家族との相談のうえ、入居者のライフスタイルに合わせて選べる
- 認知症村と日本の介護施設には、目的や費用面で様々な違いがある
これらの情報が皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。