認知症の方の介護をしていると、「最近表情が乏しくなったな」と思った経験はありませんか?
また、心なしか歳をとったように見えるといったこともあるかもしれません。
本記事では、認知症と無表情の関係性や、老けて見られやすい原因について解説します。
- 認知症と表情の関係とは
- 笑顔による認知症の予防効果とは
- 表情を豊かにするトレーニング方法とは
ぜひ本記事を最後までお読みください。
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認知症と表情の関係
※画像はイメージです
認知症の方の中には、前述したように表情が乏しくなってしまう方がいます。
ここでは、認知症の方の無表情になる2つの原因を紹介します。
精神的な原因
1つ目は、アパシーや抑うつといった精神的な原因です。
認知症では、比較的初期から、アパシーや抑うつ症状があらわれることがあります。
アパシーとは、感情の起伏が少なくなり、何事にも興味を示さない状態です。
身体機能に問題はなくとも、着替えや食事といった日常動作にさえ、意欲がわかず、表情もボンヤリして乏しくなります。
抑うつとは、やる気がでないなどの状態です。
加えて、憂鬱、不安、悲しみの感情が強く、気分が沈みがちになります。
アパシーと抑うつでは同様に、意欲や自発性が低下する症状があらわれます。
アパシーと抑うつの違いは、アパシーは無関心、抑うつは気にするという点です。
アパシーや抑うつ状態の方には、以下のような表情が見られます。
【アパシー・抑うつによる無表情の特徴】
・ぼんやりしている
・無表情
・無理に笑っている
・悲しそう、表情が暗い
・顔色が悪い
身体的な原因
2つ目は、パーキンソン症状のような身体的な原因です。
パーキンソン症状では、筋肉のこわばりや動作が遅くなるなどの運動症状があらわれます。
レビー小体型認知症では、中脳の黒質という部位が障害をうけます。
黒質は、ドパミンを分泌することで、筋肉の運動をコントロールする器官です。
レビー小体型認知症になると、ドパミンがうまく分泌されなくなるため、筋肉の運動に支障が出ます。
結果として、顔の表情筋を含め、全身の筋肉のコントロールが効かなくなります。
顔の筋肉の異常により、無表情のようになる症状を仮面様顔貌といいます。
仮面様顔貌とは、仮面をかぶったように、表情に変化がない状態です。
パーキンソン症状の無表情は、以下のような特徴があります。
【パーキンソン症状による無表情の特徴】
- まばたきが少ない
- 口が開いている
- 一点を見つめている
補足:認知症の方は老けて見える?
認知症の方には、実年齢より高く見られる方もいらっしゃるようです。
実際に、機械を使用した認知症患者の顔のスクリーニングでは、認知機能と見た目年齢に深い関わりがあるのではと指摘されています。
認知症の方は前述した通り、認知機能の低下に伴い、感情の起伏や思考力が次第に失われます。
ボンヤリした状態のため、表情にも生気が無くなることもあります。
生気のない表情が老けた印象を周囲に与えている一つの原因ではないでしょうか。
認知症について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
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笑顔が認知症に与える効果
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笑顔は心や体に様々な健康効果をもたらし、認知症とも深い関わりがあります。
実際にあまり笑わない人は、よく笑う人に比べて、認知機能の低下リスクが約2倍も高いというデータがあります。
笑顔が認知症に与える主な効果として、以下の3つを紹介します。
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ストレス軽減
笑うと、エンドルフィンという脳内物質が分泌されます。
エンドルフィンは幸福感をもたらすと同時に、気分を落ち着かせる効果があります。
不安感や痛みなどを取り除いてくれるため、ストレス軽減が期待できるでしょう。
笑うと、コルチゾール の分泌が抑制されます。
コルチゾールは、ストレスを受けると分泌されます。
ストレスホルモンと呼ばれており、長期的かつ大量に分泌されると、脳の萎縮を引き起こします。
脳の萎縮は認知症の原因になり得るため、認知症予防においてコルチゾールの量を減らすことは、非常に重要です。
血行促進
声を上げて笑うとき、呼吸は自然と深くなります。
腹式呼吸と同様の状態であるため、通常の呼吸より多くの酸素が体内に取り込まれます。
加えて、笑いには心拍数や血圧の上昇の効果もあります。
心拍数や血圧が上昇すると、血行が促進され、血液が全身の隅々まで行き渡りやすくなります。
認知症の原因の一つは、脳の酸素・血行不足による脳の萎縮です。
笑いによって血行が促進されると、脳にも血液や酸素が届きやすくなり、萎縮も改善される可能性があります。
笑顔には認知症リスクを下げる効果が期待できるのです。
脳の活性化
笑いは海馬を活性化させます。
海馬は脳機能の中でも、記憶を司る器官です。
海馬が活性化することで、記憶機能の向上が期待できます。
さらに笑いは、脳内のα波を増大させます。
α波には脳をリラックスさせ、血行を促進する効果があります。
血行が促進されることで、脳全体が活性化するため、同じく記憶機能や認知機能の向上が見込めます。
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表情筋トレーニング
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認知症予防においては、表情筋をトレーニングし、笑顔を作りやすくすることが大切です。
認知症の方は、次第に表情が乏しくなります。
パーキンソン症状で表情筋がこわばるため、ますます表情が動きにくくなります。
表情筋のトレーニングに有効な脳活顔ヨガと笑いヨガについて解説します。
脳活顔ヨガ
脳活顔ヨガは、手指体操と顔ヨガを組み合わせたトレーニングです。
加齢・加齢制御医学を専門とする白澤氏と、顔ヨガ講師である間々田氏によって考案されました。
指と脳は多くの神経と繋がっており、 第2の脳と呼ばれています。
表情をコントロールする領域は、指先と同じく脳の中でも大きな割合を占めます。
指先をたくさん使い表情を動かすことで、脳の活性化を期待できるでしょう。
くちゃぱーグーパー運動
脳活顔ヨガには、「くちゃぱーグーパー運動」があります。
やり方は以下の通りです。
- 両手を小指から握ってグーにし、顔のパーツを中心に集める
- 両手を親指から開き、あわせて顔を外側に開いていく
以上をワンセットとし、7回繰り返します。
必ず、両手を小指から握る、親指から開くことがポイントです。
顔パーツを中心に集めるときは、おもいきり「くちゃっ」としかめましょう。
おいしいウサギとカメ体操
脳活顔ヨガには、「おいしいウサギとカメ体操」があります。
「おいしいウサギとカメ体操」では、以下の3つの動作を同時に行います。
やり方は以下の通りです。
- 黒目を右・左と動かす
- 舌先を上げた状態で、右・左と動かす
- 目の動きに合わせ、片方の親指と、片方の小指を交互に立てる
以上の動作を3往復おこないます。
笑いヨガ
笑いヨガは、笑いとヨガの呼吸法を組み合わせた運動です。
笑いたい気分でなくても、運動のための作り笑いで構いません。
笑いヨガでは、細く息をつき、「はっはっは」とお腹から声を出すのが、基本的な笑い方です。
最初は10分を目安に行い、徐々に時間を伸ばしていき、1日30分程度を目安に行いましょう。
ここでは、4つのエクササイズを紹介します。
挨拶笑い
1対1で行うエクササイズです。
パートナーと向き合い、ナマステポーズをとります。
ナマステという代わりに、パートナーと一緒に大きな声で笑い合います。
喧嘩笑い
口喧嘩しつつ、笑い合うエクササイズです。
パートナーと指をさし合い、相手を責めつつ、お互いに笑い合います。
楽しい気持ちで行うのがポイントです。
自転車こぎ笑い
自転車をこぐ運動に笑いを取り入れたエクササイズです。
自転車のハンドルを握り、ペダルを踏む動作をしながら、大きな声で笑います。
電気ショック笑い
まず1対1で、握手をします。
手が触れた瞬間に、静電気が走ったかのようにびっくりし、お互いに離れながら、笑い合います。
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AIが認知症の顔を判断できる?
近年AIによって、認知症の方の顔写真をスクリーニングする研究が進められています。
あらかじめ AIに認知症の方の顔データを記憶させ、写真の人が認知症かどうかを判断させるというものです。
実験では高確率で、認知症患者を判別することに成功しています。
実用化されれば、認知症の早期発見が期待できるでしょう。
認知症と表情のまとめ
ここまで、認知症と表情に関する事柄についてお伝えしてきました。
認知症と表情についての要点を以下にまとめます。
- アパシーやパーキンソン症状によって無表情になりやすい
- 無表情、生気のない表情が老けて見える理由の一つと考えられる
- ストレス軽減、血行促進、脳の活性化によって、認知症の予防効果が期待される
- 表情トレーニングには、脳活顔ヨガや笑いヨガがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。