認知症の方は、「財布を盗まれた」「家に泥棒がいる」などといって、警察を呼ぶことがあります。
家族にとっては頭の痛い問題ですが、対処次第で通報をやめさせられます。
本記事では、以下の内容について解説します。
- 認知症の方が警察を呼ぶ場面
- 認知症の方が警察を呼ぶときの対処法
- 介護者のストレスを減らす方法
ぜひ本記事を最後までお読みください。
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認知症の方が警察を呼ぶ原因と場面
※画像はイメージです
どのような場面で警察を呼ぶかを知る前に、まずは警察を呼ぶ原因となる認知症の症状について知っておく必要があります。
認知症の方の症状
認知症の方が警察を呼ぶ原因となる症状について解説します。
被害妄想
被害妄想は、その名の通り、「被害を受けている」と錯覚することです。
たとえば物を盗まれる物盗られ妄想や、家族に邪険にされる見捨てられ妄想があります。
また、配偶者が異性と浮気する嫉妬妄想も、被害妄想の一種です。
妄想症状は、認知症の周辺症状です。
認知症には中核症状と周辺症状と呼ばれるものがあります。
中核症状とは、認知症によって細胞が死んだり、脳機能が低下したりすることが直接起因して現れる症状です。
対して周辺症状とは、中核症状が本人の性格や周囲の環境に影響して現れる症状です。
ちなみに多くの場合、妄想症状は認知症の自分への不安や、自信のなさが関係しています。
幻覚・幻視
現実には存在しないものが、実際に存在しているように見える症状です。
部屋に誰もいないにもかかわらず、「部屋に泥棒がいる」と訴え、恐怖や不安から、警察を呼んでしまうケースがあるのです。
幻覚・幻視は、認知症の周辺症状の1つです。
また、認知症の中でも、レビー小体型認知症の患者によくあらわれます。
認知症の方が警察を呼ぶ場面
認知症の方が警察を呼ぶ場面には、以下のようなものがあります。
- 留守番中に、監禁されていると思いこんで警察を呼ぶ
- 訪問介護やケアマネージャーを泥棒と思い、警察を呼ぶ
- 財布を置いた場所を忘れ、「盗まれた」といって警察を呼ぶ
いずれも、認知症の方が「不安」を感じている場面であることが分かります。
認知症の方は、判断力や理解力、記憶力が著しく低下するため、さまざまな場面で不安を感じやすいことが原因です。
例えば、留守番を任されても、留守番を任されたこと自体を忘れてしまいます。
知ってる相手を泥棒と思い込むのは、見当識障害によって相手を正しく認識できないからです。
理由もわからず家に一人で置き去りにされたり、知らない相手がいきなり自室に入ってきたりしたら、認知症の方が不安になるのも仕方ありません。
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認知症の方が警察を呼ぶときの対処法
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認知症の方が警察を呼ぶのは不安のためですが、頻繁に通報されると非常に大変ですよね。
もし警察への通報がやまない場合は、以下の方法で対処してみましょう。
介護施設を利用する
真夜中に警察を呼ぶ場合などは、24時間の見守り体制がある介護施設を利用しましょう。
スタッフが24時間常駐している介護施設であれば、真夜中の通報であっても、適切に対処してもらえます。
あるいは、通報に至る前に異変に気付き、警察を呼ぶ事態を回避できる場合もあります。
【24時間体制の介護施設の例】
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
- ケアハウス
- 高齢者住宅
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
前項の通り、認知症の方が警察を呼ぶのは、不安からです。
不安を解消できれば、警察を呼ぶことも少なくなります。
介護施設は、認知症の方の不安な気持ちをやわらげるのに役立つ場所です。
現在は、食事がおいしい介護施設や、眺望のよいところ、ホテルのような施設も少なくありません。
似たような境遇の方が入所しているため、友達ができやすいのもメリットです。
実際に、通報や暴力などの問題行動がある方が、入所後に穏やかになることがあります。
家族からすれば、介護施設に預けることに不安を感じるかもしれませんが、一時だけでもと割り切ることも、時には必要です。
本人の話を否定しない
認知症の方が、「財布を取られた」などの妄想を訴えたとしても、まずは本人の話を受け入れましょう。
否定されると、さらに状況が悪化することがあります。
言い分を受け入れられると、本人の気持ちは落ち着きます。
受け入れた後、一緒に財布を探すのがベストな方法です。
少し時間を置き、本人の気分が落ち着くのを待って、財布を探し当てるのも良い方法です。
たとえば「探してくるから、お茶を飲んで待ってて」などの声掛けをしましょう。
妄想だからといって家族が否定したり、無視したりすると、自尊心が傷つき不安な気持ちがさらに増します。
警察を呼ぶのは不安の裏返しであるため、悪循環に陥ってしまうのです。
不安な気持ちにさせないために、まずは、本人の話を受け入れることが大切です。
また、家族が話を聞いてくれると安心できれば、なにか困り事があっても、警察ではなく、家族に相談するようになるでしょう。
自信やプライドを取り戻す
自分は家族に必要とされている存在だ、という自信を取り戻す工夫をしましょう。
存在意義の再認識は、被害妄想の緩和に役立ちます。
認知症の方は、家族や周囲のサポートなしでは生活することが難しく、負い目を感じる方がいます。
さらに、家族の会話の輪に入れなかったり、留守番させられたりすると、自分に自信が持てなくなり、「誰にも必要とされない」という妄想に陥ってしまうこともあります。
自信を取り戻すには、家族に大切にされているという安心感が必要です。
家族は、本人としっかりコミュニケーションを取ることを心がけましょう。
たとえ妄想を訴えたとしても、共感を示し、本人を安心させることが大切です。
会話がかみ合いにくいときは、スキンシップや、アイコンタクトが役立ちます。
優しい声掛けや明るい笑顔も、本人の安心感を高めてくれます。
また、本人に簡単な家事や作業をお願いするのも、良い方法です。
介護者のストレスを減らす方法
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認知症の介護はどうしてもストレスが溜まるものです。
しかし、溜まったストレスを本人にぶつけてはいけません。
ストレスをぶつけられても、本人は理由がわかりません。
家族に冷たくされたと思い、ますます不安になって問題行動が悪化することもあります。
そこで、介護者のストレスを減らす方法を4つ紹介します。
誰かに相談する
介護の悩みを誰かに相談するのは、良いストレス解消法です。
話を聞いてもらうだけでも、気分が晴れます。
一番の相談相手は、家族でしょう。
家族であれば介護の悩みを共有しやすいからです。
また、身近な人の支えや理解は、介護に前向きに取り組むパワーとなります。
家族に相談できない場合、ケアマネージャーや、地域包括支援センターのスタッフに話を聞いてもらいましょう。
ケアマネージャーや地域包括支援センタースタッフは、認知症の方を介護する仲間でもあるため、悩みを共有しやすい存在です。
同じ理由から、かかりつけ医や病院スタッフを頼るのもおすすめです。
悩みを一人で溜め込まず、誰かに話すことで、解決法が見つかることもあります。
介護保険サービス
家族だけでは介護の負担が重いときは、介護保険サービスを利用しましょう。
介護保険サービスは、大きく分けて通所型と訪問型の2種類です。
どちらを利用すべきかは、家庭によって異なります。
介護状況や家庭の事情に合わせてうまく組み合わせると、効率のよい介護が実現できます。
介護保険サービスを利用すると、介護の負担が減るだけでなく、家族も自分の時間を持つことができます。
趣味や気分転換をおこない、日ごろの介護のストレスを発散しましょう。
【介護保険サービスの例】
- 訪問介護
- 入浴介護
- 通所リハビリテーション
- デイサービス
- ショートステイ
介護保険外サービス
介護保険サービスの範囲外の日常生活援助が必要な場合は、介護保険外サービスを利用しましょう。
旅行の付き添いサービスや、民間の食事宅配サービスなどが該当します。
介護保険が適用されないため、料金は原則として自己負担です。
介護保険サービスよりは高額になりがちですが、うまく利用すれば家族の介護負担を大幅に減らせます。
料金とサービスを見合わせながら、柔軟に取り入れてみましょう。
行政サービス
自治体によっては、独自の介護支援サービスを提供しているところもあります。
提供サービスは、各自治体のホームページや、地域包括支援センターで調べられます。
国の制度である高額介護サービス費・医療費の負担緩和制度を利用するのもおすすめです。
【行政サービスの例】
- 紙おむつ助成
- 理髪・美容サービス
- 介護手当
- 高額介護サービス費・高額医療費などの負担緩和制度(国)
認知症の方が警察を呼ぶことのまとめ
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ここまで、認知症の方が警察を呼ぶ場合の対処法や原因についてお伝えしてきました。
- 認知症の方が警察を呼ぶのは、被害妄想や幻覚・幻聴による不安が原因
- 警察を呼ぶ場合の対処法は介護施設に預ける、本人を否定しない、自信を取り戻す工夫など
- 介護者のストレスを減らすには、介護保険サービスや行政サービスなどの活用が大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。