近年増加している多発性脳梗塞と認知症。
名前は聞き馴染みあるという方が多いと思います。
では、多発性脳梗塞と認知症が密接に関わっていることはご存知でしょうか?
認知症の中でも、特に血管性認知症との関わりを理解することが大切です。
本記事では、多発性脳梗塞と認知症の関係について以下の点を中心に解説します。
- 多発性脳梗塞と認知症
- 多発性脳梗塞による認知症の誘発
- 多発性脳梗塞によるうつ病の誘発
疑問を解消するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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多発性脳梗塞とは
多発性脳梗塞は、脳卒中の一種です。
脳卒中とは、脳の血管障害の総称として使われます。
症状
多発性脳梗塞の主な症状は、以下の通りです。
- 認知症
- パーキンソン症状
- 言語障害
- 麻痺
- 失禁
一般的には、脳梗塞の再発や発作が起きるたびに症状が段階的に悪化します。
下り坂状にゆるゆると進行するケースもあるため、進行の特徴を見極めることが大切です。
原因
多発性脳梗塞は、脳内深部の細い血管が多発的に詰まることで発症します。
より具体的に言えば、脳に小さな脳梗塞がたくさん生じることが原因です。
細い血管が詰まる理由には、高血圧や動脈硬化があります。
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血管性認知症とは
血管性認知症は、認知症の一種です。
認知症の中でも、アルツハイマー型認知症に次いで大きな割合を占めます。
症状
血管性認知症の主な症状は、以下の通りです。
- 記憶障害
- 歩行障害
- 言語障害
- 意欲の低下・抑うつ
- 感情失禁
血管性認知症は、症状が「まだら」にあらわれる点に特徴があります。
具体的には、「記憶力はないものの、判断力はしっかりしている」などのように、症状に大きな偏りがあります。
血管性認知症では、脳血管障害が起きる部位によって、あらわれる症状が異なるためです。
また、症状や体調の変動が大きく、情緒不安定になる「感情失禁」があらわれやすいのも、特徴の一つです。
原因
血管性認知症の原因は、脳血管の損傷です。
脳梗塞や脳出血といった「脳卒中」が代表的です。
あるいは、事故や転倒による頭部の強打も考えられます。
多発性脳梗塞から認知症に?
上述した通り、血管性認知症の原因は「脳卒中」などの脳血管障害です。
脳卒中には、多発性脳梗塞も含まれます。
多発性脳梗塞が血管性認知症を発症させる仕組みを以下でご紹介します。
多発性脳梗塞では、脳の深部にある細い血管が詰まります。
血管は、詰まると破れやすくなります。
血管が破れると脳出血が起こり、周辺の細胞には酸素が行き渡らなくなります。
酸素不足になった脳神経細胞は、次第に壊死します。
壊死した脳神経細胞の機能は失われるため、認知機能や運動機能が低下します。
すなわち、多発性脳梗塞から血管性認知症に至るメカニズムは、脳梗塞によって脳神経細胞が損傷し、認知機能が低下するというものです。
多発性脳梗塞は血管性認知症を悪化させる?
多発性脳梗塞後の血管性認知症は、悪化のリスクが高いです。
なぜなら多発性脳梗塞は、初期段階では自覚症状がないことが多く、疾患の発見が遅れやすいからです。
多発性脳梗塞は一つ一つの脳梗塞自体は小さいため、症状が出にくいのが特徴です。
実際に、脳梗塞を起こしているにも関わらず、自覚症状があらわれないケースもしばしば見られます。
しかし、自覚症状がないといっても、脳梗塞を放っておくと、状態はどんどん悪化します。
脳梗塞が多発するにつれ、脳血管の負担は大きくなるため、比例して血管性認知症のリスクが高まります。
そのため、気が付いたときにはすでに認知症を発症していたというケースも多いです。
あるいは、「認知症がかなり進んでいた」というケースも少なくありません。
多発性脳梗塞後の認知症を防ぐには、どうしたらよいのでしょうか?
すなわち、脳梗塞を早期発見することが大切です。
血管性認知症は、脳卒中などの発作が起きるたびに、症状が段階的に進行するのが特徴です。
一度発作が起こると、症状は一気に悪化し、その後はしばらく安定します。
次に症状が悪化するのは、次の発作が起きた時です。
発作の度に症状が進行するのは、発作によって脳血管や脳細胞が損傷するためです。
つまり、血管性認知症は、脳卒中の発症・再発によって進行する認知症です。
裏を返せば、脳梗塞の発症・再発を予防できれば、進行を食い止めることも可能です。
とくに多発性脳梗塞は、初期段階では自覚症状があらわれにくいため、定期的な脳画像検査などによって、早期発見するのが重要です。
すでに脳梗塞を発症している場合は、早期に治療し、認知症が悪化するのを防ぎましょう。
脳卒中の原因を根本から治療することで、認知症の発症や悪化防止を期待できます。
脳卒中によるうつ病の誘発
脳卒中後に、うつ病を発症することがあります。
脳卒中後うつ病と呼ばれる症状です。
うつ病の主な症状は、以下の通りです。
- 意欲・自発性の低下
- 情緒不安定・感情失禁
- 強い不安感や孤独感
- 注意力の低下
うつ病の症状は認知症とよく似ています。
誤診されることも多いため、家族が症状を観察しておくことが大切です。
多発性脳梗塞による混合型認知症とは
ここまで、多発性脳梗塞による血管性認知症の誘発についてお伝えしました。
実は、多発性脳梗塞はアルツハイマー型認知症のリスクを高める病気でもあります。
まず、血管性認知症とアルツハイマー型認知症の主な違いを解説します。
もっとも大きく異なるのは、発症原因です。
血管性認知症は、前述のとおり、脳血管障害によって発症します。
アルツハイマー型認知症は脳に異常物質が蓄積し、脳神経細胞を破壊することで発症します。
一口に「認知症」といっても、血管性認知症とアルツハイマー型認知症では、発症のメカニズムがまったく異なります。
しかし、血管性認知症とアルツハイマー型認知症の二つが併発することもあります。
異なる種類の認知症が併発している状態を混合型認知症といいます。
なぜ混合型認知症が起こるのかは解明されていません。
一説には、動脈硬化に原因があると指摘されています。
動脈硬化が起こると血管が脆くなり、脳梗塞や血管性認知症のリスクが高まります。
実際に脳梗塞によって脳の血管が損傷すると、脳の血流が悪くなります。
脳の血流不足は酸素不足を引き起こし、アルツハイマー型認知症の発症を早めると考えられています。
アメリカの調査では、アルツハイマー型認知症の方のうち、約30%の方に血管性認知症の症状がみられました。
血管性認知症は、アルツハイマー型認知症の発症に深く関わっている可能性があります。
血管性認知症の原因疾患である多発性脳梗塞は、アルツハイマー型認知症の発症にも関連があるといえます。
多発性脳梗塞と認知症のまとめ
ここまで、多発性脳梗塞と認知症の関係についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 多発性脳梗塞では、小さな脳梗塞がいくつも起こる
- 認知症は、認知機能が低下している状態
- 多発性脳梗塞は、認知症の中でも血管性認知症を引き起こす可能性が高い
- 多発性脳梗塞の発症後にうつ病を誘発する場合がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。