認知症の方とそうでない方の境目は曖昧です。
診断基準が分からないために、発見が遅れる場合もあります。
近年増加しているアルコール性認知症も、診断基準を把握している人はなかなかいません。
ご自身の症状が該当していないか、不安に思っている人も多いのではないでしょうか?
今回は、アルコール性認知症の診断基準について以下の点を中心にご紹介します。
- アルコール性認知症の診断基準
- アルコール性認知症の診断において大切なこと
- アルコール性認知症の診断の流れ
早期発見につなげるためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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アルコール性認知症とは
アルコールと認知症についてあまり結びついていない人も多いと思います。
以下で詳しく解説していきます。
アルコール性認知症の特徴
アルコールの過剰摂取が原因となり、脳が萎縮することで引き起こされる認知症のことです。
特に、脳の機能が低下しておりアルコールの影響を受けやすい高齢者の方が、アルコール性認知症にかかりやすいといわれています。
また、「定年退職をして時間がある」「配偶者を亡くしてさみしい」など、アルコールに依存しやすい状況は注意が必要です。
逆に言えば、断酒や治療によってアルコール性認知症は改善の可能性があるということです。
アルコール性認知症の症状
アルコール性認知症の代表的な症状は以下の通りです。
- 注意力や判断力の低下
- 作り話
- 感情をコントロールできない
- 場所や時間の見当識障害
また、歩行にふらつきが出たり、手が震えたりといった身体的な症状もあります。
通常、アルツハイマー型などの認知症はもの忘れがひどくなるといった初期症状から徐々に進行していきます。
しかし、アルコール性の場合は認知症の初期症状が見られないまま、突然症状が進んだ状態で発症することが少なくありません。
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アルコール性認知症の診断基準
上記でアルコール性認知症の特徴や症状について記載しました。
しかし、自分が実際にアルコール性認知症を発症しているかの判断は難しいです。
最初の流れとしては、まず認知症かどうかの診断を行います。
認知症であった場合、原因がアルコールの過剰摂取と認められたら「アルコール性認知症」であると診断されます。
アルコール性認知症の検査は、まず認知機能検査や脳の萎縮などを見るためにMRI、CTなどの画像検査、一般身体検査が行われます。
これらの検査で認知症と認められ、過去や現在の飲酒歴からアルコールが原因と考えられる場合にはアルコール性認知症とされます。
認知症らしき症状に不安を感じた場合、診断基準を知るためにも早期診断がおすすめです。
認知症に似た症状の他の病気だった場合でも、早期発見することで治療できる可能性が高まります。
受診する医療機関ですが、かかりつけ医がいるならば、そこで診てもらいましょう。
かかりつけ医は、認知症の診断内容や薬の処方を把握しているだけでなく、自分の詳しい病歴や身体の状態を把握しています。
特に認知症の場合は、自分の状態を一元管理している医師や薬局の存在が一層重要になってきます。
もしもかかりつけ医がいない場合は、精神科や心療内科、脳神経科などを受診してみてください。
多くの自治体では、認知症サポート医やもの忘れ相談医など、医療機関情報をリストにしています。
近隣の地域包括支援センターや、認知症介護の家族会での口コミでの情報も役立ちます。
不安を感じたらすぐに問い合わせることが大切です。
アルコール性認知症の診断の流れ
ここからは診察・診断の流れについてご説明します。
①面談
まず医師に、日頃の状態や病状、今までの傷病歴などを伝えます。
ただし、緊張してしまい正しい情報を伝えられないことも考えられます。
両者の認識を合わせるためにも、あらかじめ情報を記載しておいたメモを用意しておくことがおすすめです。
②一般的身体検査
血液検査、心電図検査、感染症検査、X線撮影などが行われます。
鑑別診断のため、この身体検査は長時間かかることがあります。
鑑別診断とは、可能性のある複数の病気の中から、データや状況を比較しながら合理的に絞り込み、病気を特定する診断です。
これによって認知症以外の可能性を調べます。
今後の医療方針を決めるためにも、この一般的身体検査は重要になります。
③認知症検査
問診による神経心理検査と脳画像検査を行います。
神経心理検査とは、簡単な質問や作業によって点数を出す検査です。
一定の点数を下回ると、認知症の疑いがあると診断されます。
一般的な神経心理検査の内容は以下の通りです。
- 今日の日付や記憶についての質問に答える
- 簡単な計算問題を解く
- 字を読む
- 図を書く
- 時刻を指定した時計の針を書く
あくまでも正確な診断のための検査ですが、認知症の方がリラックスできず検査に協力してくれない可能性もあります。
本人を傷つけるものではなく、診断のために必要であるという意図を事前にしっかりと伝えておくことが大切です。
一方脳画像検査とは、脳を機器で撮影し、その画像を見て脳の萎縮具合や血流の状態から認知症を診断していきます。
脳画像検査に使われる機器は以下の通りです。
- CT:X線を使ったコンピューター断層撮影
- MRI:電磁気による画像検査
- SPECT:放射線検査薬を注射し、その体内動向により脳血流量をみる検査
- VSRAD:MRI画像を統計的鑑別法により解析する検査
もしも認知症と診断された場合、次はその原因を探します。
その原因がアルコールの過剰摂取であったと判断された場合、アルコール性認知症と診断されます。
ただし、アルコールを過剰摂取している人は、飲みすぎている自覚が無かったり、飲酒歴を少なめに伝えたりする場合もあるため、注意が必要です。
アルコール性認知症の診断において大切なこと
診断において大切なことは、診察や診断が過度の負担にならないようにすることです。
認知症家族の会などで事前に診断についての知識を共有してもらい、注意点などを事前に知っておくことで心の準備ができるでしょう。
認知症の方に診断を拒否された場合についても、工夫できることがあります。
例えば、他の家族から診断の必要性を説得してもらったり、地域の関連センターへ相談したりすることができます。
また、万が一認知症やアルコール性認知症の診断を受けたときはショック状態になることでしょう。
医師の診断を正常な判断で聞けないことも考えられます。
付き添いには複数人の家族で行く、いざというときの相談先を決めておくという手段で対応できるかもしれません。
認知症の診断基準に納得できない場合は、セカンドオピニオンという手もあります。
セカンドオピニオンは認知症の方や家族の方の権利なので、診断基準や気になる点が多い場合は検討するのもいいでしょう。
そして、診断を受けることは「終わりの宣告」ではなく、ここから対応できることを探すことが前提です。
認知症の診断はネガティブなことばかりではありません。
診断後に改善できるかもしれないという希望も持つことが大切です。
アルコールの適正量
種類にもよりますが、アルコールの摂取には適正量があります。
日頃のお酒の付き合いや、いきなりの断酒が難しい場合でも、適正な基準を知っておくことは大切です。
性別や体格、体質で個人差はありますが、国の健康施策「健康日本21」で適切とされている1日のアルコール量は、純アルコールでおよそ20グラムです。
アルコール度数5%のビールで500ミリリットル(中瓶1本)、ワインで180ミリリットル(グラス1.5杯)、日本酒で180ミリリットル(1合)に相当します。
飲酒量に比例して認知症のリスクが増加する?
ここまでアルコール性認知症について記載してきましたが、アルコールを一切摂取してはいけないわけではありません。
アルコールの過剰摂取は認知症のリスクがある一方で、少量ないし中等量の摂取は認知症のリスクを下げる可能性もあるといわれています。
ここで言う少量ないし中等量のアルコール摂取とは、1週間で350ミリリットルの缶ビールを1~6本程度です。
注意しなければならないのは、今まで飲酒習慣が無かった人が急に飲酒し始めても、認知症を予防するという証拠はないということです。
アルコール性認知症は若くても発症する?
認知症と聞くと、高齢者の方が抱えているというイメージがあるかもしれません。
しかし「若年性認知症」という言葉もあるように、若い方にとっても認知症は他人事ではありません。
その中でも比率が高いのがアルコール性認知症です。
先述したように、アルコール性認知症の原因は過剰なアルコールの摂取です。
そのため、高齢者だけでなく若者でも、アルコールを摂りすぎるとアルコール性認知症になるリスクは十分考えられます。
物忘れや見当識障害、性格変化、手の震え、歩行障害などアルコール依存症に類似した症状が出る場合もあります。
若いからといって油断せず、様子がおかしいと感じたら念のために医療機関へ相談することも大切です。
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アルコール性認知症の診断基準のまとめ
ここまでアルコール性認知症の特徴、症状、診断基準についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症の原因がアルコールの過剰摂取と認められた場合、アルコール性認知症となる
- アルコール性認知症は、面談、一般的身体検査、認知症検査の流れで診断される
- 診察や診断が過度な負担にならないようにすることが大切
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。