見当識障害は、時間・場所・人が分からなくなる障害です。
見当識障害が起こると、日常生活のさまざまな場面で、大きな支障があらわれます。
ときには、命の危険に直結することもあります。
本記事では、見当識障害が原因で起こりうる問題について、解説します。
- 見当識障害が原因で起こりやすい問題
- 見当識障害の内容
- 見当識障害の対処法
ぜひ本記事を最後までお読みください。
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見当識障害が原因で起こる問題とは
見当識障害が原因で起こりうる問題には、「徘徊」「脱水症状」「失禁」などがあります。
徘徊
徘徊とは、絶えず歩き回る状態です。
徘徊症状が起こると、屋内だけでなく、屋外を長時間歩き回ることも多いです。
徘徊が原因で起こる問題は、主に3つあります。
1つ目は、「行方不明」です。
見当識障害があらわれると、認知症の方は、自分の現在地や、どこに行けばいいのかが分からなくなります。
たとえば買い物が目的で外出しても、店への道順が分からなくなってしまうなどがみられます。
そのため、全く違う道筋をたどり、思いのほか遠方まで行くこともあります。
また、帰り道が分からなくなると、自力での帰宅は困難です。
そのため、認知症の方は徘徊によって行方不明になることが多いのです。
徘徊が原因で起こる問題の2つ目は、「事故」です。
具体的には、転倒や交通事故があります。
事故や転倒といったリスクは、外出時間が長引くほど高くなります。
実際に高齢の認知症の方が、徘徊の末、転倒して骨折したり、交通事故に遭ったりするケースが多発しています。
徘徊が原因で起こる問題の3つ目は、「認知症の方の家族の精神的・肉体的ストレス」です。
徘徊症状が起こると、家族は、認知症の方から一瞬も目を離せなくなります。
実際に徘徊が起こると、家族は、迎えに行ったり探し回ったりせねばならず、体力や気力が削られます。
さらに、認知症の方は徘徊中に、他人の敷地に勝手に入り込んだり、警察に保護されたりすることも多々あります。
謝罪などの機会が増えると、やはり家族には大きなストレスがかかります。
脱水症状
見当識障害による脱水症状の原因は、主に2つあります。
1つ目の原因は、季節に合った服装の調節ができなくなるからです。
たとえば、真夏に真冬の格好をするケースがあります。
体温や発汗の調節ができないことは、脱水症状を起こす恐れに直結します。
2つ目の原因は、徘徊です。
長時間屋外を出歩くと、汗を大量にかくため、脱水症状を起こしやすくなります。
とくに高齢の認知症の方は、咽喉の渇きを感じにくい傾向があります。
そのため、咽喉が渇いたと感じた時は、すでに脱水症状が始まっていることも多いです。
一方で、理解力が低下していることから、自身での適切な水分補給は難しいです。
長時間水分を摂らないでいると、深刻な脱水症状につながりかねません。
脱水症状の初期症状は、皮膚や口腔内の乾燥です。
症状が進行すると、頭痛や吐き気のほか、最悪の場合には命を落とすこともあります。
失禁
見当識障害が起こると、トイレを失敗することが多くなります。
原因は、トイレの場所が分からなくなるからです。
たとえば自室を出てトイレに行こうとしても、道に迷い、なかなかたどり着けないということがあります。
すると、尿意を我慢できなくなり、トイレに着く前に排泄に至る場合があります。
あるいは、トイレをトイレと認識できず、別の場所で排泄するケースも見られます。
失禁が頻発すると、家族には片付けのストレスがかかります。
なによりも、失禁は認知症の方のプライドを傷つけます。
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見当識障害とは
見当識障害は、認知症の中核症状です。
中核症状とは、認知症を発症すれば、必ずあらわれる症状です。
見当識障害の種類は、「時間」「場所」「人」の3つがあります。
3つの見当識障害は、上記の順番で進行します。
時間の見当識
今日の日付や季節感が認識できなくなります。
健常者の方でも、今日の日付を度忘れすることはあります。
しかし、なにかヒントがあれば、すぐに正しい日付を思い出せます。
一方、見当識障害では、ヒントをもらっても今日の日付や季節が分からないことが多くあります。
症状が進行するにつれ、自分の年齢や誕生日が分からなくなるのも、時間の見当識障害の特徴です。
場所の見当識
通いなれた道順や、自宅の場所が分からなくなります。
そのため、外出先で道に迷い、徘徊や行方不明になることもしばしばです。
あるいは、今いる場所の認識が難しくなるケースもあります。
たとえばスーパーに買い物にきたものの、今いる場所がスーパーだと認識できなくなることが挙げられます。
人の見当識
人の顔と名前が一致しなくなります。
家族や身近な相手であっても同様です。
たとえば、配偶者を親と間違うケースがあります。
あるいは、家族を他人と思い込む場合もあります。
相手をまったく覚えていないわけではなく、見知ってはいるものの、名前や続柄を思い出せないことが多いです。
見当識障害の対処法
見当識障害への対処法を解説します。
まず基本的なスタンスとして、認知症の方が安心できる環境を整えましょう。
見当識障害が起こると、認知症の方は、自分の認識と現実がかみ合わなくなるため、孤独感を抱えやすいです。
そのため、介護者がなるべくそばに付き添い、安心させることが大切です。
また、見当識障害では、適切な服装調節や水分補給が、自力では行えなくなります。
服装や水分補給の管理は家族が行い、認知症の方の脱水症状や風邪を予防しましょう。
認知症の方の行動を制限するのは、かえって認知症を進行させる原因になります。
行動を制限されると、刺激が減るため、脳の働きが低下するからです。
介護者は、なるべく認知症の方のペースに任せつつ、危険がないように見守りましょう。
見当識障害が原因で起こる問題を防ぐために
見当識障害が原因で起こる問題を防ぐための方法を解説します。
カレンダーや時計を利用
時間の見当識障害には、カレンダーや時計を活用しましょう。
なるべく大きくて見やすいものを、目立つ場所に貼るのがポイントです。
理由は、時間や日付を何度も反復すると、「今」が「いつなのか」を認識しやすくなるからです。
具体的には、一日ずつ日付に印をつける方法があります。
また、一日のうち、何度も時計を確認するのも良い方法です。
カレンダーや時計を確認するときは、家族が積極的に声をかけることも大切です。
「もうすぐ12時だからお昼の時間ですね」「そろそろ夏も終わりですね」のように、時間や季節を印象付ける声掛けを行いましょう。
散歩
徘徊やトラブルをおそれて、外出を制限するのは、かえって症状悪化の原因となります。
反対に、適度な散歩や運動は、脳を刺激するため、認知症の進行を緩やかにする効果があります。
とくに散歩は、「季節の移り変わり」や「風景の変化」を強く印象付けられるため、見当識障害の改善を期待できます。
さらに、心地よい疲れは安眠につながるため、夜間の徘徊の防止にも役立ちます。
認知症の方が外出する際は、誰かが付き添ったり、万が一の行方不明に備えて電話番号などの連絡先を携帯するといった事前対策を行いましょう。
まとめ:見当識障害が原因で起こる問題
ここまで、見当識障害が原因で起こりうる事柄についてお伝えしてきました。
- 見当識障害が原因で起こりやすい問題は、「徘徊による事故や行方不明」「脱水症状」「失禁」など
- 見当識障害では、時間・場所・人間関係を正しく認識できなくなる
- 見当識障害の対処法は、認知症の方に付き添い、安心させることが大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。