在宅介護は、認知症の方にとって住み慣れた環境で生活できる点がメリットです。
しかし、在宅介護は想像以上に大変で、些細なミスが介護拒否につながることもあります。
本記事では、認知症の方の在宅介護に関して以下の点を中心に解説します。
- 認知症の方の在宅介護で気を付けるべきポイント
- 認知症の方の在宅介護で利用できる介護保険サービス
- 在宅介護に限界を感じた場合の対応法
在宅介護を行うときのためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ本記事を最後までお読みください。
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在宅介護とは
在宅介護とは、自宅でおこなう介護です。
対義語には、「施設介護」があります。
在宅介護は、家族による介護と、訪問・通所型の各種サービスを組み合わせることが一般的です。
一番のメリットとして、住み慣れた自宅・地域で生活できることが挙げられます。
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認知症の方の在宅介護でのポイント
認知症の方を在宅介護する際に、注意すべきポイントについて解説します。
自尊心を傷つけない
認知症の方を在宅介護するときは、人としての尊厳を尊重することを心がけましょう。
たとえば、会話を遮ったり着替えや入浴の際にいきなり服を脱がせたりする行為は、人としてのプライドを傷つけます。
認知症の方は少しずつ変化していく自分に、強いとまどいや悲しみを抱えています。
そこへ、周囲の方から心無い仕打ちが加わると、「大切にされていない」と感じ、悲しみや混乱はますます深まります。
介護の仕方を不愉快に感じると、介護拒否やコミュニケーションの拒否につながりかねません。
あるいは介護のストレスの蓄積により、認知症が悪化することもあります。
反対に人としての尊厳を大切にした介護を行えば、認知症の方が「自分は大切にされている」と感じられます。
介護を「する側」と「される側」に信頼関係が生まれると、スムーズな介護が実現します。
さらに、安心感やリラックスした気持ちは、認知症の症状を穏やかにする効果もあります。
コミュニケーションをとる
コミュニケーションは、介護をする側とされる側に、信頼関係を築きます。
すなわち、認知症の方に、「この人に介護を任せて大丈夫」という安心感を与えます。
認知症の方に信頼してもらえると、スムーズな介護を実現しやすくなります。
反対に、コミュニケーションが不足すると認知症の方は「この人に介護を任せるのは不安」と感じてしまいます。
信頼不足は、介護拒否や介護中に暴れるなどのトラブルの原因にもなります。
お互いを信頼し、円滑な在宅介護が続けられるよう積極的にコミュニケーションを取りましょう。
具体的には、「スキンシップ」や「アイコンタクト」「優しい笑顔」などが有効です。
認知症の方を理解する
在宅介護を成功させるコツは、認知症の方の世界を理解することです。
具体的には、認知症の方の言動にはなんらかの理由があることを心得ておきましょう。
ときには認知症の方の思いもよらない行動に振り回される場合もあります。
しかし、「認知症の方の行動には理由がある」ことを理解していれば、「なにか理由があるのだな」と余裕をもって受け止めることができます。
認知症の方の行動を冷静に観察できれば、原因や解決策も探しやすくなります。
また、認知症の方にとっても「理解されている」という安心感につながります。
反対に介護者が強く否定したり叱ったりするのは、良くありません。
認知症の方は強く否定されると不安になり、混乱してしまうからです。
信頼関係を築き円滑な在宅介護を行うためにも、相手を理解し受け入れる姿勢が大切です。
健康管理をする
在宅介護では、認知症の方の健康管理に気を配りましょう。
なぜなら認知症の方は自分の不調をうまく伝えられないからです。
些細な体調の変化の裏に、重大な疾患が隠れていることもあります。
健康管理をしっかり行うことで、疾患の発見や重症化の予防が期待できます。
反対に、健康管理がおろそかになると認知症の方の体調変化に気づきにくくなります。
知らない間に症状が進行し、「気づいたときには手遅れだった」ということになりかねません。
健康管理には服薬管理も含まれます。
認知症の方は、処方薬を適切に服用できない可能性があるからです。
「飲み忘れ」や「飲みすぎ」を防ぐためにも、処方薬の管理は家族も一緒に行いましょう。
在宅介護で利用できるサービス
在宅介護で利用できる介護サービスについて、「メリット」「デメリット」「費用目安」を解説します。
なお、費用は、介護保険の一割負担を想定しています。
デイサービス
デイサービスは、日帰りで各種施設に通うサービスです。
利用できるサービスは、「入浴」「食事」「機能訓練」などです。
デイサービスのメリットは、在宅介護では負担の大きい「入浴」や「食事」などをプロに任せられる点です。
日帰りで気軽に通える点や、認知症の方が同じ年代の方の友達を作りやすいのも魅力です。
デメリットとしては、施設やスタッフとの相性が悪いとストレスを感じる点があります。
また、サービスによっては、料金が予算オーバーするリスクもあります。
なお、デイサービスの利用料金は、サービス内容や要介護度に応じて変動します。
要介護度1~3であれば、3時間以上5時間未満の利用で、400円~500円前後が相場です。
要介護度4~5になると、3時間以上5時間未満の利用で、平均500円~700円程度です。
訪問介護
介護スタッフが、認知症の方の自宅を訪問してサービスを提供します。
主なサービスは、入浴・食事・排泄をサポートする身体介助と、家事代行を含む生活支援などです。
訪問介護のメリットは、住み慣れた環境で介護サービスを受けられることです。
家族にとっては負担の大きい介護を肩代わりしてもらえる点が大きな魅力です。
注意点は、認知症の方が、他人を家に入れるのを嫌がる可能性がある点です。
また、在宅介護に適したバリアフリー工事を求められることもあります。
利用料金は、サービス内容や利用時間によって異なります。
一時間程度の利用であれば、身体介助は600円程度、生活支援は300円前後が相場です。
ショートステイ
ショートステイは、施設に短期間だけ入所する介護サービスです。
サービス内容によって、「短期入所生活介護」「短期入所療養介護」「介護保険適用外ショートステイ」の3つに分類されます。
メリットは、家族が病気などになっても認知症の方が介護を受けられる点で、1日単位で利用できるので家族や認知症の方の気分転換にも利用できます。
さらに、将来的に施設の入所を考えている方にとっては、「お試し体験」できる点もショートステイのメリットの一つです。
注意点は人気の施設は予約が取りづらく、滞在日数が制限されていることもある点です。
施設になじむ前に退去しなければならないケースもあります。
ショートステイの利用料金は施設やサービス内容によって異なります。
基本料金は、500円~1,000円程度です。
ただし食費や送迎費が加算されるため、1泊2日で4,000円~1万円程度が相場です。
在宅介護に限界を感じやすい場面
在宅介護は、いつ終わるとも知れません。
長い介護生活の中で、多くの方が「もう限界だ」と感じていらっしゃいます。
以下で、在宅介護に限界を感じやすいタイミングをご紹介します。
わがままに耐えられない
認知症の方は、暴言やわがままが出やすい傾向があります。
理由は、脳機能の低下により、理性のブレーキが効きにくいためです。
わがままの原因が認知症だとわかっていても、四六時中振り回されると、疲労困憊してしまう家族も多いです。
【具体例】
- 食事をとらない
- 介護を拒否する
- 暴言を吐く
- 理不尽な八つ当たりをする
離職しなければならなかった
仕事を辞めれば、当然ながら生活が成り立たなくなります。
介護サービスの利用にも料金はかかるため、介護に専念するどころか、反対に介護の質が低下することもあり得ます。
【具体例】
- 経済的に困窮した
- 介護保険サービス料金が払えず、介護者の介護負担が増した
- 復職しようとしても、就職先がみつからない
肉体的な限界
歩行障害や寝たきりになると、認知症の方を「支える」「抱える」などの動作が増えます。
介護者の中には、膝や腰を痛める方も少なくありません。
【具体例】
- 腰や膝が痛くて、自身の風呂やトイレに難儀する
- 夜間の対応で睡眠不足になる
- 疲れ果てて寝込む
精神的な限界
在宅介護では、つねに認知症の方に気を配る必要があります。
息をつく間もない日々が続けば、精神的に疲労します。
【具体例】
- 終わりのない介護生活に、絶望を感じる
- つねに介護のことが頭から離れない
- 自分の時間がない
- 趣味や好きなことを楽しめなくなった
在宅介護のストレス軽減方法
在宅介護のストレスを減らす方法を解説します。
悩みを相談する
悩みは一人で抱え込まず、誰かに吐き出しましょう。
家族や介護仲間は良い相談相手になってくれます。
誰かに話を聞いてもらうだけで、精神的に楽になることは多いです。
また、他人の目を通すことで意外なアドバイスをもらえることもあります。
ケアプランの見直し
在宅介護に無理が生じている場合、ケアプランが適切でない可能性があります。
ケアプランの見直しは、こまめに行いましょう。
ケアプランの見直しは、ケアマネージャーと一緒に行います。
適切なケアプランを立てるために、家族や認知症の方の現状を率直に話しましょう。
専門家に相談
医師やケアマネージャーに相談するのも良い方法です。
介護の知識が豊富な専門家であれば、的確なアドバイスをもらうことができます。
また、介護の専門家は介護者のケアの知識もあります。
精神的に追い詰められる前に、専門家の手を借りることは大切です。
施設入居を検討
在宅介護に限界を感じている方は、施設入居も視野に入れましょう。
施設への入居は決して悪いことではありません。
限界を超えたまま在宅介護を続けると、介護者も介護される側も悲しい思いをしてしまうからです。
施設への入居は家族に介護からの解放をもたらし、認知症の方は質の高い介護を受けることができます。
要介護認定とは?
介護保険サービスを利用するには、「要介護認定」を受ける必要があります。
要介護認定は、認知症の方の状態に応じて、受けるべき介護を段階的に表したものです。
要介護認定を取得するには、まず自治体の窓口に申請し次に審査を受けます。
具体的な流れは以下の通りです。
【要介護認定の取得の流れ】
- 行政窓口や地域包括支援センターに申請する
- 行政職員またはケアマネージャーによる聞き取り調査
- 主治医に意見書を作成してもらう
- 一次判定(コンピュータ判定)
- 二次判定(一次判定の結果をもとに審議)
- 認定・通知
要介護認定は、1~5段階に分かれます。
各レベルの決定基準は、認知症の方の認知機能や身体機能です。
認知症と在宅介護のまとめ
ここまで、認知症と在宅介護に関する事柄についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症の方の在宅介護では「人格の尊重」「相手への理解」「コミュニケーション」「スキンシップ」を大切にする
- 認知症の方の在宅介護で利用できる介護保険サービスは「通所介護」「訪問介護」「ショートステイ」など
- 在宅介護に限界を感じた場合は、「家族や専門家への相談」「ケアプランの見直し」「施設への入居」を検討する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。