超高齢社会となった日本において、年々増加している認知症。
認知症の診断は、治療や施設の選定など将来を見据えるきっかけにもなります。
一方で、認知症と診断されると金融資産が凍結されるということはご存知でしょうか?
本記事では、認知症の方の資産凍結について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症になると資産凍結される理由
- 認知症によって資産凍結したときの解除法
- 金融資産が凍結されたことで起きるトラブル
金銭面の不安を解消するためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症と診断されると金融資産を凍結される理由
上述した通り、認知症と診断されると金融資産が凍結されます。
ここでは、その理由についてご紹介します。
認知症の方が増加する中で、判断力の低下による特殊詐欺の被害が増えています。
金融機関では、認知症の方を詐欺被害から守るために金融資産を凍結します。
本人の意思確認が取れない中でお金を動かすのは本人にとっても銀行側にとっても大きなリスクが伴います。
勝手に引き出した、勝手に振り込まれたと銀行が訴えられてしまうことも考えられます。
さらに、認知症になった親の子どもが預金を勝手に引き出し、乱費してしまうケースもあります。
金融機関は、資産凍結によって以上のようなリスクを避けることで、認知症の方をサポートしています。
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資産凍結の解除は可能?
認知症の方の資産凍結は、成年後見制度を利用することで解除が可能です。
ただし制度の利用開始までは、家庭裁判所への申し立てが必要となります。
利用できるまでに3~4ケ月かかる場合もあるため、前もって対策しておくことが大切です。
成年後見制度の仕組みやメリットについては、以下で詳しくご紹介します。
金融資産が凍結されないための対策
ここまで認知症の方が資産凍結される理由や解除方法をご紹介しました。
では、そもそも資産凍結を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか?
金融資産が凍結されないための対策として、成年後見制度と家族信託の2つの制度があります。
成年後見制度の利用
成年後見制度は、任意後見制度と法定後見制度の2つに分類できます。
任意後見制度
任意後見制度とは、本人の判断能力が不十分になったときのために前もって備えておく制度です。
任意後見人となる方や、委任する事務の内容を前もって公正証書による契約で定めておきます。
本人の判断能力が不十分になった後、任意後見人が委任された事務を本人に代わって行います。
本人の意思で委任者、委任内容を決めることができるため、本人にとっても安心の制度です。
法定後見制度
法定後見制度は、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所によって選任された成年後見人が本人を法律的に支援する制度です。
本人の判断能力に応じて「補助」「保佐」「後見」の3つが用意されており、分け方は以下の通りです。
- 補助:判断能力が不十分な方
- 保佐:判断能力が著しく不十分な方
- 後見:判断能力が全くない方
上述した通り、法定後見制度を利用すれば資産凍結の解除が可能です。
家族信託の利用
家族信託とは、高齢の方々が老後の生活を安心して送るための制度です。
以下のようなトラブルを防ぐことができます。
- 認知症の方の家が空き家になったのに売却できない
- 認知症の方の銀行預金が下ろせない
本人の意思がはっきりとわかる元気なときに契約を行います。
契約の際に決めることは、自分の財産を「誰に」「どのような目的で」「いつ渡すか」です。
そして、財産管理の権利を「信頼できる相手」に移し、将来その契約を確実に実行させていくことを決めておきます。
多くの場合、父や母の財産を、子どもや面倒を見ている姪や甥が受託者となり、財産を管理していきます。
成年後見制度や家族信託の問題点
成年後見制度や家族信託には、認知症と診断されても資産凍結されないというメリットがあります。
しかし、何の問題もなく全てがうまくいくわけではありません。
各制度のデメリットについて以下でご紹介します。
成年後見制度の問題点
成年後見制度の問題点は以下の通りです。
- 申し立ての費用と手間がかかる
- 積極的な資産運用ができなくなる
申し立ての際に鑑定が必要になると、5~10万円の鑑定費用がかかります。
そして申し立てを司法書士や弁護士に委任すると10~30万円程度の委任料がかかります。
また、本人の財産を保護するための制度なので、積極的な資産運用はできなくなります。
家族信託の問題点
家族信託の問題点は以下の通りです。
- 財産管理しかできない
- 長期にわたって契約の当事者を拘束する
- 精通した専門家がみつからない
管理できるのは財産だけであり、認知症の方に関わる法律行為(施設入所の契約や役所での書類申請など)は成年後見制度を利用しなければならない場合もあります。
また、家族信託の契約に際して、何世代にもわたり財産継承者を決定できる場合があります。
画期的な仕組みではある一方、数十年にわたって家族を束縛し不満や争いの原因になることもあります。
銀行口座以外の凍結される金融資産
凍結される金融資産は、銀行口座だけではありません。
銀行口座同様、以下の金融資産も凍結されます。
- 不動産
- 株式や証券口座
- 生命保険
ご自宅やアパートを所有されている方が認知症になると、売却やリフォーム、修繕、賃貸契約ができなくなります。
また、売買取引、株主としての議決権の行使が凍結され、保険金請求もできなくなります。
金融資産が凍結されたことで起こるトラブル
認知症の方の資産凍結が、トラブルに発展するケースも少なくありません。
一般的なトラブルの内容を以下でご紹介します。
トラブル①介護費用を銀行からおろせない
一旦口座が凍結してしまうと、家族がキャッシュカードを預かって預金を引き出すということはできません。
さらに、以下のような要求は本人以外の家族が窓口へ行ったとしても難しいです。
- まとまった金額を引き出す
- 定期預金を解約する
また、認知症と診断されると、治療や介護の費用負担が大きくなります。
銀行口座からお金を引き出せないために、介護費用を家族が負担するケースも多いです。
トラブル②実家を売ることができなくなる
認知症の症状が進行すると、施設への入居を検討する方も多いです。
その際に、もし預貯金が少なければ、空き家となる自宅を売却して介護費用や入居費用にあてることを考えます。
しかし、認知症になってしまうと不動産が凍結し、実家を売ることができなくなります。
実家を売ることができないため、経済的な負担が大きくなることも考えられます。
まとめ:認知症になると金融資産が凍結される
ここまで、認知症の方の資産凍結についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 金融機関は、認知症の方の資産を保護するために資産を凍結させる
- 法定後見制度を活用することで、資産凍結を解除できる
- 金融資産が凍結されると、介護費用が足りなくなることも考えられる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。