見当識障害は認知症の初期症状の一つです。
言葉は聞いたことあるけど、どのような症状でどのような看護をするのか、知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は見当識障害の看護について、以下の項目を中心に詳しく解説していきます。
- 見当識障害の看護
- 見当識障害の具体的な対応
- 見当識障害の症状
見当識障害のリハビリであるリアリティーオリエンテーションについても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
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見当識障害とは
見当識障害とは、認知症やアルツハイマー病などでみられる中核症状の一つで、時間・場所・人など、今自分のおかれている状況がわからなくなる状態です。
見当識障害になると、今日が何日なのか、場所はどこなのか、誰と話しているのかなどの状況が判断できなくなります。
見当識障害は記憶を司るどこかに障害があるといわれていますが、まだはっきりとした原因はわかっていません。
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見当識障害の看護
見当識障害には対処的な看護しかありません。
長期的に進行していくものであり、看護分野でもケア的側面が多いといわれています。
体調不良に気をつかう
見当識障害の人の中には、生活リズムが乱れ不眠になったり食欲不振になったりするなど、体調不良になる方もいます。
また、体調不良になっていてもうまく伝えられない場合もあります。
本人の言葉だけを全て鵜呑みにはせず、血圧や顔色など他覚的に判断をすることも重要です。
服装に注意する
季節感がなくなることにより、季節に合わせた服装を選択できないことがあります。
夏には脱水、冬には体の冷えが起こらないように注意する必要があります。
特に、夏場にも関わらず服を着込んでしまっている場合、話をしても脱いでもらえないこともあります。
無理やり脱がすことはせず、冷房をつけて室温を調整したり、こまめな水分補給をするといった対応が望ましいです。
環境を変える
外出をして道に迷ってしまうことを懸念してじっと部屋にこもっていると、脳への刺激が少なくなり、症状が進行してしまいます。
そのため、外に散歩に出かけるなどして環境を変えることは重要です。
景色をみたり季節感を感じ取ることで見当識の回復につながるといわれています。
冷静な対応
見当識障害になると約束を取り違えたり、人を間違えるなどの症状が出る場合があります。
想像以上の行動をとったり、家族や看護をする人に対して心を傷つけるような発言をするかもしれません。
症状をよく理解し、間違いなどに対して決して怒鳴ったり否定をせず、寛大な心で接することが大切です。
身体的苦痛の緩和
特にトイレの失敗は、つらい経験として記憶に深く残ります。
トイレが遠い部屋であれば、近くに部屋を移すなどの対応が必要です。
しかし部屋が変わったことによって混乱する場合があるため、本人の状況を見ながら行うと良いです。
精神的苦痛の緩和
焦ってしまうことによって、不安や混乱を招くことになります。
落ち着いて話を聞き、ゆっくり自分のペースで行動しても構わないことを伝えると安心できます。
見当識障害の具体的な対応
見当識障害は対処的な看護しかないため、日々の生活の中で進行を抑制することが大切です。
時計やカレンダーを使う
毎日の日課として見えやすい場所にカレンダーをおき、毎朝今日の日付に印をつけていくと良いといわれています。
このとき、日付を声に出して読むと頭に残りやすいといわれています。
また時計を何度も確認してもらい、「もうすぐお昼ご飯ですね」など時間がわかるような声かけをすることも大切であるといわれています。
気分転換に散歩する
散歩はリハビリになるほか、気分転換に有効的であるといわれています。
また散歩をすることにより、脳への刺激が入り病状の進行抑制につながります。
そのほか日光に当たることによって、昼夜の区別もつくようになります。
散歩をする際は、看護・介護に関わる人が目を離さず一緒につくようにすることが重要です。
トイレの声掛け
トイレを失敗してしまう時には、排泄のパターンを把握し、「そろそろトイレにいきませんか?」などと声掛けをして一緒についていくことが効果的であるといわれています。
またトイレの場所がわからなくなる場合もあるため、わかりやすく表示をするなどの環境設定も重要です。
見当識障害の症状
前述したように、見当識障害では時間・場所・人に関する認識に障害が現れます。
それぞれどのような症状が出るのか解説します。
時間の見当識
見当識障害の中でも初期から現れやすい症状です。
日付や曜日、時間や季節などを間違えることが多くなります。
そのため、約束を取り違えたり、季節にあった服装を選ぶことが難しくなったりします。
場所の見当識
時間の次に認識しにくくなるのが場所の見当識です。
通い慣れた場所に行けなくなる、自分がいる場所がわからなくなるなどの症状が出ます。
通常でも道に迷うことはありますが、見当識障害のポイントは「通い慣れた場所に行けなくなること」です。
人の見当識
症状が進むと人の見当識障害が出現し、人を間違えることが増えます。
家族や親戚、友人など見覚えがある顔でも認識できないようになります。
また、自分との関係性が思い出せなくなります。
リアリティーオリエンテーションの効果は?
リアリティーオリエンテーションとは現実見当識訓練と呼ばれるリハビリです。
日常会話の中で、名前や年齢、時間や日付などを繰り返し質問していくことで、現実の認識を高め症状の進行を抑制する効果があります。
またさまざまな人とコミュニケーションをとることで、対人関係や協調性を取り戻し、喜びを見出すことができます。
注意点は、「今日は何日?ここはどこ?」などの試すような質問を行わないことです。
思い出せず答えられないような質問だと、かえって不安やストレスになります。
見当識障害が生じると、不安を抱く方も多くいます。
看護や介護に関わる人が、日々の生活の中で見当識障害の状況を把握し修正をしていくことで、安心した生活が送ることができるといわれています。
見当識障害と看護のまとめ
ここまで見当識障害やその看護についてお伝えしてきました。
- 見当識障害とは、時間・場所・人の見当識が障害されることによって、今自分がおかれている状況が理解できなくなる症状
- 見当識障害の看護では、体調不良や服装に注意をし、適宜環境を変えたり、時には冷静な対応をし、身体的・精神的な苦痛を緩和していくことが重要
- 見当識障害の具体的な対応は、時計やカレンダーを使用したり、散歩をしたりすることで見当識障害の進行を抑制することができる
- 見当識障害の症状は、時間・場所・人の順で症状が進み、今日がいつなのかわからなくなる、通い慣れた道で迷う、見覚えのある顔でも関係性がわからなくなるなどさまざまな症状がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。