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トップページ>認知症を学ぶ>認知症の症状>見当識障害ってなに?リハビリや対処法・予防法を徹底解説

見当識障害ってなに?リハビリや対処法・予防法を徹底解説

家族が認知症と診断され、どのように接したら良いか悩んでいる人も多いと思います。

毎日、わかりやすい言葉でコミュニケーションをとっているのに、どうしてわかってくれないのだろう?
食事や入浴の時間を伝えたはずなのに、どうして不満を言うのだろう?

など、不安や疑問が介護中にはたくさんあることと思います。
このような介護中の悩みは、症状を理解することで付き合い方が楽になる場合があります。
認知症の中核症状の一つである見当識障害と上手に付き合っていくための基本的な対策を、つぎの項目を中心に解説します。

  • 見当識障害になるとどんなことが起きるのか
  • 見当識障害と上手に付き合うポイント
  • 見当識障害を予防するためにできること
  • 見当識障害への専門的アプローチ

見当識障害への理解を深めて、付き合い方を楽にするための内容をまとめています。
ぜひ、最後までお読みください。

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見当識障害とは

見当識障害とは何かについて悩む男女

見当識障害とは、認知症になるとほとんどの人にあらわれる中核症状の1つです。
今ここで起きていることを正しく認識できなくなってしまいます。

見当識障害を起こすと、時間や場所、人物を正しく認識する機能が低下します。
状況に合った適切な行動がとれなくなることから、人間関係のトラブルや交通事故などに注意が必要です。

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見当識障害の症状

見当識障害の症状が出ている高齢者

時間の見当識障害から始まり、つぎに場所の見当識障害があらわれます。
最後にあらわれるのが人の見当識障害です。
具体的にそれぞれの症状をみてみましょう。

時間の見当識

時間を間違えるようになり、次第に何月何日なのかわからなくなっていきます。
進行すると、朝夕の区別や季節が認識できなくなります。

具体例

  • 病院の予約時間に合わせて準備することが困難になる
  • 何度も家を出る時間を確認しても外出準備にとりかかれない
  • 夜中に買い物や散歩に出かけようとする
  • 季節がわからず適切な服装ができなくなる

場所の見当識

慣れた道なのに、そこがどこなのか認識できなくなります
進行すると、自宅でも自分の部屋に帰れなくなったりします。

場所の見当識障害では「道順障害」と「街並失認」が起こります。
道順障害とは、目的地を理解していても、どの方角へ進んで良いかわからなくなることです。
街並失認とは、風景そのものを識別できなくなるために慣れた道でも迷ってしまうことです。

具体例

  • 方向がわからなくなり目的地に行けなくなる
  • すぐ近くの道路からの帰宅ができなくなる
  • 距離感がつかめないので長距離の移動をすることがある
  • 自宅内でトイレとお風呂を間違えたり自室に戻れなくなったりする

人の見当識

人の名前を間違えるようになります。
事実と異なる言動に周りが混乱することがあるので、前もって事情を伝えることが重要です。

進行すると、家族や介護者も認識できなくなります。

具体例

  • 目の前にいる人と自分との関係がわからなくなる
  • 介護者である自分の息子や娘を侵入者だと感じる
  • すでに亡くなっている親の名前を呼ぶ
  • 現実には存在しない架空の人物を自分の子供だと人に言う

見当識障害の対処法

見当識障害の対処法を知りたい高齢者

ここでは見当識障害への対処法について紹介します。

体調不良に気をつかう

季節感がわからない場合は、特に熱中症に気をつける必要があります。
不適切な服装をしている場合には、季節に合った服装を選んでもらいましょう。

その服はダメだという言い方をすると、スムーズに着替えてくれないかもしれません。
否定的な言い方「その服は暑いからだめ」
肯定的な言い方「涼しい服にしてはいかが?これはとても似合っています」

このように、できるだけ本人の気持ちを大切にした言い方をすると良いでしょう。
エアコンなどの設定は介護者がさりげなく行いましょう。
水分補給では介護者も同じタイミングで飲みながら促すとスムーズです。

簡単な質問をする

簡単な質問をして、脳の活性化を促します。
「今日は何時に病院に行くのでしたっけ?」
「桜がきれいでしたね、地区センターの庭だったかしら?病院の庭だったかしら?」
「明日はどなたと会う約束でしたっけ?」

このように、日常のなかで思い出すきっかけを作ると良いです。
ただし、話しかけても反応しないことがあるかもしれません。
話し方のポイントがあります。

  • 正面から目線の高さを合わせる
  • 落ち着きのあるトーンを心がける
  • ゆっくり話しける

など、聴力に配慮しながらよりよい方法を探しましょう。
また、質問をしただけで怒り出してしまうことがあり、介護者が落ち込んでしまうこともあるかと思います。

介護者の気持ちに余裕のある時にしましょう。

外に出て歩く

外の空気を吸い、体を動かすことは脳にとって良い刺激です。
草花の様子を眺めることで、季節感を思い出すきっかけを作りましょう。

自室で過ごすことが多い被介護者にとって、外出は気分を穏やかにする効果があります。
介護者の無理のない範囲で外出してみましょう。

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見当識障害の方に対する看護

見当識障害については、対症的な看護しかなく気をやすめることが難しい症状です。
見当識障害の「時間⇒場所⇒人」のどれに該当するかを観察し、下記の方法を実施していきましょう。

時間の見当識障害については

  • 時計を持ち歩いてもらい「お昼ですね」「寝る時間ですよ」と声掛けする
  • 朝日を浴びて、生活リズムを定着させる

など、朝・昼・夜なのかを認識させて時間感覚を養います。

場所の見当識障害については「病院内や近辺を散歩しながら、目を離さずに一緒についてあげる」と良いでしょう。

人の見当識障害は、患者自身も思いどおりにいかないことに不安や苦しみを感じています。

目の前に起きている、患者の発言と状況がどうあれ

  • 本人を決して否定しない
  • 怒ったり、怒鳴り責めない

 など、自尊心を傷付けること・人格を否定しないように気を付けましょう。

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見当識障害の予防法

見当識障害の予防法について知りたい女性

ここでは見当識障害にならないための予防法について紹介します。

十分な睡眠

脳の働きを良くするために、睡眠はとても重要です。
眠っているあいだに成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や疲労の回復が促されます。

質の良い睡眠をとるためには、メラトニンホルモンの分泌が必要です。
起床後に朝日を浴びることで、そのメラトニンホルモンの分泌が促されます。
30分ほどの短い昼寝の習慣は脳に良いとされていますが、長時間の昼寝は夜の睡眠を妨害するので逆効果です。 

  • 朝日を浴びて脳を目覚めさせましょう
  • 夕食後はカフェインを控えましょう
  • 就寝前は携帯電話やテレビを避けましょう

バランスの良い食事

認知症のリスクとなる高血圧を防ぐために、塩分に気を付けた食事内容を意識してください。
血糖値の上昇は脳への負担になるので、血糖値上昇を抑える効果のある食物繊維を採りましょう。

また、しっかりと顎を使って咀嚼することは脳の活性化を促します。
ゆっくりと食事をすることは、食べすぎを防ぎ高血糖や高血圧の予防につながります。

  • よく噛んでゆっくり食べましょう
  • 塩分は控えめにしましょう
  • 食物繊維は積極的にとりましょう

人との交流・趣味

人間は社会的な動物です。
相手の表情や話し方などから感情を読み取るなど、会話中に脳は高度な処理を行っています。

外出するための洋服を選んだり、時間に間に合うように段取りを考えたりといった行動は、脳にとって良い刺激です。
また、人との交流は脳を刺激しアルツハイマー型認知症リスクを低下させることがわかっています。

友人同士の会話では、相手の気持ちを考えたり、気遣いある発言をしようとしたり、脳の働きが活性化します。
積極的に地域の活動や近所の付き合いを増やすと良いでしょう。
退職するまで地域の交流がなかった人は趣味を通した活動から始めると良いです。

  • 地域センターに行きサークル活動などがあるか聞いてみましょう
  • 近所の人に会ったら自分から挨拶をしましょう
  • 友人と一緒に散歩や食事をする機会を増やしましょう
薬の使い方

見当識障害の原因と考えられる病気

見当識障害の原因と考えられる病気について知る医者と看護師

ここでは見当識障害の原因と考えられる病気について解説します。

認知症

認知症とは、なんらかの原因で脳の神経細胞が壊れてしまったり、減ってしまったりすることで日常生活に支障が出る状態を言います。
認知症には次の種類があります。

  • アルツハイマー型認知症・・・脳神経変性や外傷、血管障害など原因は多種多様
  • 脳血管性認知症・・・脳梗塞・脳出血などが原因の認知症
  • レビー小体型認知症・・・特殊タンパク質のレビー小体が原因の認知症
  • 前頭側頭型認知症・・・前頭葉・側頭葉の萎縮などが原因の認知症
  • その他・・・正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、甲状腺疾患などによる認知症

このうち、もっとも多いのがアルツハイマー型認知症です。

劇症肝炎

劇症肝炎とは、肝炎(肝臓の炎症)を気づかず放置したときに発症する命に関わる病気です。
肝炎は、ウイルスやアルコール、薬剤などなんらかの原因により起こります。

劇症肝炎を発症すると、肝性脳症という症状があらわれます。
肝機能の低下により、有毒な物質が脳に流れてしまうからです。
この時に、見当識障害が起きることがあります。

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見当識障害とせん妄

見当識障害とせん妄について知りたい高齢者

見当識障害に似た症状で「せん妄」というものがあります。
せん妄とは、軽度の意識障害のなかで幻覚・妄想・見当識障害・情緒不安定などがみられる状態をいいます。

認知症による見当識障害とせん妄は間違えやすい症状が多くあります。
相違点と共通点を確認しましょう。

見当識障害とせん妄の相違点

それぞれの症状について違う点を解説します。

見当識障害

  • 意識障害は起こらない
  • 記憶障害が中心
  • 気づかないうちに進行する
  • 脳神経や脳血管の障害・内分泌疾患などが原因
  • 一定して症状がみられる

せん妄

  • 意識障害が起こる
  • 興奮・幻覚・妄想が中心
  • 突然発症するが一過性
  • 頭部疾患・外傷・栄養障害・脱水などが原因
  • 日中変動がはげしく不定期に症状がみられる

共通点

認知症による見当識障害とせん妄には、共通の症状について解説します。

  • 今起きていることがわからなくなる
  • 注意力の低下
  • イライラして落ち着きがなくなる
  • 混乱や錯乱、興奮状態に陥る

などです。
原因は違っても介護は同様のアプローチで行います。

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見当識障害によるトラブル

見当識障害によるトラブルが起こってしまった高齢者

見当識障害によるトラブルについて具体的に紹介します。

時間の見当識によるトラブル

  • 季節がわからず適さない服装を身に着ける

→暑さでイライラしたり、熱中症や風邪をひく原因になったりします。

  • 朝昼夜がわからず食事や入浴を規則的に行うことが難しい

→食事や入浴など日常で行うことが本人の認識と現実がずれて、介護者に不満をぶつけたりします。

場所の見当識によるトラブル

  • いつもと同じ道でも道順に迷うようになる

→同じ曲がり角でも、その景色を正しく認識できないことがあります。

  • 自宅内でお風呂やトイレの場所がわからずに不安に陥る

→症状の進行にともない、日常生活にも影響が及びます。

人の見当識によるトラブル

  • 話している相手が誰なのかがわからなくなる

→相手との関係性や名前を思い出せなくなり、誰と話をしているのかわからなくなります。

  • 家族を認識できなくなる

→症状の進行にともない毎日会っている家族がわからなくなり、混乱をきたします。

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見当識障害のリハビリ

見当識障害のリハビリをする高齢者

見当識障害のリハビリテーションとしてリアリティオリエンテーションという方法があります。

リアリティオリエンテーションは、見当識障害へアプローチする”現実見当識訓練”という脳のリハビリです。
人との関わりや会話による刺激などの効果が期待され、医療機関や介護施設で取り入れられています。
主な効果は、

  • 見当識障害進行を遅らせること
  • 現在起きていることを整理し、混乱した心を解いて不安を軽減すること

などです。
次の2種類の方法があります。

24時間リアリティ・オリエンテーション

24時間リアリティ・オリエンテーションとは、見当識障害への1対1のアプローチです。
介護スタッフが日常のなかで時間・場所・人に関する情報をコミュニケーションに取り入れる手法です。
「今、何時なのか」
「今、どこにいるのか」
「今、誰と話しているのか」
といったように、目の前にある現実への認識を促す訓練です。
日常生活の流れのなかで、意図的にこのような質問を投げかけます。

例として以下のようなものがあります。

  • 散歩中・・・「あじさいが満開ですね、梅雨ですね。」
  • 食事前・・・「時計が12時を指していますね、お昼ごはんにしましょう。」
  • 睡眠前・・・「外は真っ暗です、夜の9時なので休みましょう。」

クラスルームリアリティ・オリエンテーション

クラスルームリアリティ・オリエンテーションとは、専門スタッフの進行で数人が一緒に課題に取り組む見当識障害への集団でのアプローチです。

他の人と一緒に取り組むことで、コミュニケーション能力の維持など病気の進行を遅らせることにつながります。
カレンダー・時計・名札などを使い、スタッフが見当識情報を題材にしてグループで会話を進める形式です。

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見当識障害についてのまとめ

見当識障害についてまとめる高齢者

この記事では、見当識障害の原因や症状、対策などの基本的な知識をお伝えしました。
以下でこの記事で紹介したことについてまとめます。

  • 見当識障害になると、今起きている現実がわからなくなり日常生活に支障がでる
  • 見当識障害と上手に付き合うには、障害の特徴を知り介護者のペースで対策する
  • 見当識障害を予防するために、良質な睡眠や食事をとり交友関係をもつ
  • 見当識障害への専門的アプローチには、リアリティ・オリエンテーションが期待されている

見当識障害への理解が深まり、日々の介護や予防にお役立ていただけたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
  • 小規模多機能型居宅介護
  • その他介護事業所運営
  • 食事管理
  • 栄養提供
  • 福祉用具販売
  • 障がい者雇用

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