認知症と聞いて、自分には関係のないことだと考えていませんか?
現在、認知症の方が増加している中、いつ自分や親族が認知症を発症してもおかしくありません。
この記事では
- 若年性認知症とは何か
- 若年性認知症になったらどうすればいいのか
- 若年性認知症は予防できるのか
などをご紹介します。
ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
若年性認知症とは?
若年性認知症とは65歳未満で発症する認知症を指します。
認知症は基本的には、ある程度歳を重ねた場合になる病気です。
歳をとっていない65歳未満でこの認知症が発覚した場合、若年性認知症と診断されます。
多くの方が認知症は高齢の方がなる病気と思われるかもしれません。
実際、2021年の65歳以上の6人に1人が認知症を発症するのに対して、65歳未満の方は10万人に約50人の割合で発症しています。
したがって、若年性認知症といわれてもどのようなものかわからない方が多いでしょう。
そんな若年性認知症についての特徴や原因、予防法などを見ていきましょう。
スポンサーリンク
若年性認知症の有病率
若年性認知症有病率を調査したデータがあります。
- 厚生労働省の調査
- 日本医療研究開発機構(AMED)の調査
調査概要は以下のとおりです。
【厚生労働省の調査(2006年~2008年)】
全国5県全域の保健・医療・福祉施設へのアンケートにて実施
【日本医療研究開発機構(AMED)の認知症研究開発事業の調査(2017年~2019年)】
全国12都道府県全域の1万6848か所の医療機関や介護・障害・福祉サービス事業所へ実施
調査結果は以下のとおりです。
2006年~2008年 | 2017年~2019年 | |
18歳~64歳人口10万人当たりの有病率 | 47.6人 | 50.9人 |
若年性認知症患者の総数 | 378万人 | 357万人 |
出典:厚生労働省【若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び 厚生労働省の若年性認知症対策について】
出典:日本医療研究開発機構【【若年性認知症の有病率・生活実態把握と多元的データ共有システム】
10年ほどの間に、有病率は若干増加がみられました。
総数が減少した理由としては、若い世代の人口減少が挙げられます。
若年性認知症の特徴
若年性認知症と診断された場合、脳内がどのような状態になっているか懸念している方もいるでしょう。
どのような作用が脳に起きているのか、また高齢者の認知症と何が違うのかをご紹介します。
若年性アルツハイマーとの違いについて
若年性アルツハイマーは認知症からなる症状の1つのことを指します。
認知症は複数ある症状全ての総称であり、その中の症状により病名が変わります。
アルツハイマーの発症率が認知症の中で最も高いため、若年性認知症を発症した際、若年性アルツハイマーが最初に疑われます。
若年性認知症と若年性アルツハイマーの違いは種類の違いということを覚えておきましょう。
高齢者の認知症との違いについて
認知症は誰がなっても怖い病気ですが、高齢者の認知症と若年者の認知症では何が違うのでしょうか。
若年性認知症は若いうちに起こる病気であり、男性の方が女性よりも発症しやすい傾向にあります。
また高齢者とは違い年齢が若いため仕事をしている方がほとんどです。
したがって、家庭を持っている、また子どもを養う必要があるといった方には大変厳しい状況を迫られることになります。
また、高齢者とは違い診断が難しいという特徴もあります。
年齢が若いため、ストレスやうつのような症状と間違われることが原因の一つです。
このように、別の症状と誤診を受けてしまうケースもあるため、認知症と確認されるまで期間が空いてしまい、症状が悪化するという状況も考えられます。
精神的ダメージについて
若年性認知症はかなりの負担を本人に負わせることになります。
なぜなら若いうちから認知症になったという現実を受け止めることができないからです。
また認知症になってしまったという状態に衝撃を受けるだけでなく、今後の人生設計も崩れてしまう恐れがあります。
若年性認知症になりやすい人の特徴
若年性認知症になりやすい方の特徴として、以下の事柄が挙げられます。
- 過度な飲酒・喫煙
- 睡眠不足など生活習慣の乱れ
それぞれ解説します。
過度な飲酒・喫煙
大量の飲酒は脳萎縮を起こす原因です。
アルコールを摂取すればするほど、脳萎縮が進行します。
その結果、若年性認知症発症のリスクが高くなるため注意が必要です。
また、喫煙も若年性認知症発症の原因因子です。
飲酒と同様に、吸えば吸うほど発症リスクが上がることが分かっています。
また、受動喫煙にもリスクがあるため、喫煙者本人の配慮も大切です。
睡眠不足など生活習慣の乱れ
夜更かしも、若年性認知症の原因の1つといわれています。
また、
- 乱れた食生活(糖質・塩分の過剰摂取)
- 運動不足
なども指摘されています。
認知症は現在根本的に完治する方法がありません。
したがって生活習慣を見直して、原因となる因子を減らしましょう。
規則正しい生活を送ることで、若年性認知症へのリスクを軽減することができます。
若年性認知症が起こる原因
若年性認知症の中でも症状により病名が分けられます。
ここでは若年性認知症でもなりやすいものの原因をご紹介します。
アルツハイマー型認知症
認知症にはいくつかの症状がありますが、認知症の中で最も発症率が高いものがアルツハイマー型認知症になります。
アルツハイマー型認知症は不必要なタンパク質が脳に停滞することで脳内の神経細胞をむしばみ、破壊されることにより発症します。
またアルツハイマー型認知症は遺伝傾向もあります。
もし血の繋がりがある親族がアルツハイマー型認知症である場合、遺伝する恐れがあります。
そのため自身の置かれている状況を確かめることでアルツハイマー型認知症の早期発見に繋げることができます。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は脳にある血管が詰まったり、裂けたりすることにより脳細胞が壊れ、引き起こされる認知症です。
脳血管性認知症の場合は認知機能に衰えが出るだけでなく、脳梗塞や脳出血から引き起こされる手足の麻痺などの症状があります。
また言語機能にも問題が出ることが多く、認知症でも対応が難しいものとなります。
頭部外傷後遺症
頭部外傷後遺症は何らかの刺激が脳に加わることにより、症状として現れる病気になります。
例えば、交通事故や怪我などで脳に外傷として刺激がでた場合、認知症につながる恐れがあります。
事故や怪我などで認知症が現れるケースは多いです。
そのため、もし脳へのダメージが大きい事故や怪我をした場合はすぐに病院に行くことをおすすめします。
若年性認知症の症状
若年性認知症の症状には段階があります。
ここでは初期症状や中核症状についてご紹介します。
また中核症状がでてくることによる2次的な症状も合わせてご紹介します。
初期症状
若年性認知症の初期症状はわかりにくい場合が多いです。
例えば、物忘れや性格や言動の変化です。
物忘れ
物忘れの具体的なものは以下のものです。
- 鍵を閉め忘れた
- 晩御飯が思い出せない
- 人の名前を思い出せない
- 約束を忘れていた
性格や言動の変化
性格や言動の変化で代表的なものは以下のものです。
- 優しかったのに急に怒るようになった
- 頑固になった
- 金遣いが荒くなった
中核症状
認知症の症状が見られる大多数の人が中核症状に見舞われます。
どのような症状かぜひ参考にしてください。
記憶障害
アルツハイマー型認知症の方に最も見られる症状がこの記憶障害になります。
初期の症状では新しく経験したことを忘れてしまう傾向にあります。
しかし昔のことはしっかりと覚えており、こういったことが認知症の早期発見を遅らせてしまう原因でもあります。
また、症状が悪化し、重度になってくると何をしたかではなく、したこと自体を忘れてしまう傾向にあります。
見当識障害
見当識障害は時間、場所、人間関係などをつかさどる脳機能に障害がでてしまうことをいいます。
例えば、家にいるはずなのに自身の家ではないと思い込んでしまうなどがあげられます。
また朝なのに夜、昼なのに晩など時間感覚が狂ってしまうため、季節感覚もおかしいなどの特徴があります。
実行機能障害
実行機能障害は普段何気なくしている一連の作業や動作ができなくなるという状態です。
例えば、普段している料理の工程がわからず、食材を焦がしてしまうなどがあります。
また家電用品など少し複雑な工程のものになると操作ができないという状態に陥ります。
行動・心理症状
ここでは認知症の方の行動や心理症状についてご紹介します。
不安・抑うつ
認知症によりできなくなったことが気がかりになったり、焦り始めたりすることでさらに精神状態の悪化を招きます。
精神の不安定さが、不安や抑うつといった状態と連鎖し心身をむしばみます。
妄想・幻覚
何もない状態でいきなり怯えたり、急に怒鳴り出したりと幻覚が見えるようになります。
また自身がすでに捨てた物なのに、誰かに取られたなどの妄想にかられるケースもあります。
暴力・暴言
若年性認知症によるいくつもの不安要素や、今までできていたことができないなどの苛立ちが暴力や暴言となって現れてしまう状態です。
暴力や暴言は大変危険であるため、周囲の配慮や対策が必要になります。
予防方法について
若年性認知症を予防する、または進行を遅らせるために、日々の生活習慣を見直すことが大切です。
食生活
若年性認知症の予防には健康体であることが望ましいです。
そのため体にあまり良くない糖分や過度の塩分摂取はできるだけしないほうがいいでしょう。
栄養バランスの取れた食事をすることにより、若年性認知症の予防に繋がります。
運動
運動による効果を高めるために以下のポイントを意識しながら行ってみてください。
運動法
認知症予防に効果的なのは以下のような有酸素運動です。
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- エアロバイク
頻度や運動の強度
認知症予防に効果的な運動頻度や運動強度は以下になっています。
- 軽い強度の運動を行う
- 週に1回ではなく週に3〜4回行う
若年性認知症になると外での行動が危険になるため、室内での生活ばかりになるかもしれません。
しかし全く運動をしないことは心身ともに悪影響をもたらすため、適度な運動を日々することがおすすめです。
私たちの体には、食事から摂取する栄養が欠かせません。栄養バランスを考えた食事は体を動かすエネルギー源になると同時に、認知症予防にも効果的とされています。今回は、認知症の発症を防ぐ栄養素やそれを含む食物、予防に適した食事を紹介します。[…]
スポンサーリンク
若年性認知症は治るの?
残念なことに今のところ若年性認知症を治すという方法は見つかっていません。
しかし若年性認知症の治療方法はありませんが、進行を食い止める方法はあります。
例えば若年性認知症に作用する医薬品を服用し、認知症の進行を遅らせることができます。
スポンサーリンク
若年性認知症と診断されたら?
若年性認知症と診断されたらすぐに取り組むべきことがいくつか存在します。
ここではどのようなことが推奨されるのかご紹介するので参考にしてください。
家族と相談する
若年性認知症の方には家族からの支援が必要不可欠になります。
ひとりで抱え込んでしまった場合、精神的に辛くなり、さらに若年性認知症の進行を早めてしまうこともあるかもしれません。
そのため家族としっかり協力をして若年性認知症に立ち向かうということが重要です。
職場の理解を得る
若年性認知症が発症した場合は、自身の仕事について考える必要があります。
認知症だからすぐに仕事をやめなければならないなんてことはありません。
若年性認知症を患った場合は会社に報告しましょう。
また会社によってはしっかりとしたサポートが得られる場合もあるでしょう。
会社からの援助があるかどうかも相談してみなくてはわかりません。
そのため自身のできる範囲の仕事はどのような物なのか、部署の交代は可能なのかなど聞けることは気兼ねなく聞きましょう。
免許を返納する
若年性認知症はいつどのような作用が働くかわかりません。
発症から日が浅く、まだ車の運転は可能だと思っても急に運転の仕方を忘れるなどのケースもあります。
運転の仕方だけでなく、標識を忘れる、道路上でのマナーを思い出せないということもあります。
そのため免許を所持している場合はできるだけ早く返納することをおすすめします。
もし車を使った仕事をしている場合は免許が必要のない職場に転職を考える必要があるでしょう。
また車がなければ生活ができないという場合は免許を必要としない場所に引っ越すことをおすすめします。
発症してから、今後どうしていくのか、どのようなライフプランを設計すればいいのか考えておくことが非常に大切です。
介護サービスの利用
若年性認知症とわかり次第、介護サービスを検討するのも1つの手段となります。
以下が利用できる介護サービスの代表的なものです。
- 訪問介護や訪問看護
- デイサービスやデイケア
- 福祉用具レンタル
- 住宅改修
また人によって好き嫌いは別れると思うので、自身にあったサービスを検討することをおすすめします。
スポンサーリンク
若年性認知症の方のご家族ができること
若年性認知症になった身内を見ると悲しい気持ちになるかもしれません。
しかし誰よりも不安で悲しいのは本人だということを心に留める必要があります。
家族ができるサポートに以下のようなものがあります。
- 物忘れが激しいため物の配置を固定する
- 普段からコミュニケーションをしっかりととり常に情報を共有しておく
- 重要なことはメモをとったり見えやすいところに貼っておく
- 服用しなければならない薬の時間を教えてあげる
家族は今まで一番長く生活を共有してきた関係にあります。
家族だからこそできる支援も数多くあるでしょう。
若年性認知症になっても家族一丸となって病気と戦っていく気持ちが、本人に勇気を与えることができるかもしれません。
若年性認知症のまとめ
ここまで若年性認知症の症状、予防法、診断された後にするべきことについて説明してきました。
若年性認知症の特徴は以下になります。
- 若年性認知症とは65歳未満で発症する認知症のこと
- 若年性認知症の症状は物忘れ、幻覚、性格・言動の変化
- 若年性認知症になったら、家族や職場と相談する
- 若年性認知症の進行を遅らせるには薬や日々の生活によって可能である
これらの情報が皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。