認知症の周辺症状の1つに「妄想」があります。
認知症の妄想にはいくつかの特徴があり、認知症の種類によっても起こりやすい症状が違うことを知っていますか?
今回は認知症の妄想の種類をご紹介した上で、認知症の種類別で起こりやすい症状や対応法をご紹介していきます。
- 認知症の妄想の種類
- 認知症の種類別で起こりやすい症状
- 妄想と幻覚、せん妄などの違い
- 認知症妄想の対応法
この記事をご覧いただき、認知症で起こる妄想をより理解するための参考にしてください。
ぜひ最後までご覧ください。
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認知症の妄想の種類について
認知症の症状の1つに作り話しをするなどの「妄想」がありますが、妄想にも種類があります。
ここからは、認知症の妄想の種類をご紹介します。
認知症で起こる妄想は以下の3種類です。
物盗られ妄想
物盗られ妄想とは、大事なものを盗られたと周囲に訴える症状です。
特に財布や通帳、現金などのお金に関するものを盗られたと思い込んでしまうことが多いです。
ただの物忘れであれば財布や通帳などを自分がどこかに置いた記憶があり、忘れたという自覚もあります。
しかし、認知症が進行すると記憶障害により自分が財布や通帳などを置いたこと自体を忘れてしまいます。
もちろん自分が忘れたという自覚もありません。
そのため、自分でよく探すこともせず、財布や通帳がないことを「盗まれた」と勝手に断定してしまうのです。
認知症の方が物盗られ妄想を起こすことで特に疑われやすいのは、家族や介護スタッフです。
身近な人ほど疑われやすいので、家族からすると疑われたことへのショックは計り知れません。
しかし、認知症の方はわざと困らせようとしているのではなく、本当に「盗まれた」と思い込んでいます。
ですので、疑いの目を向けられたときの対応はとても難しく、対応によっては余計に混乱状態に陥る可能性があります。
帰宅妄想
帰宅妄想は、たとえ自宅にいたとしても「家に帰りたい」と訴える症状です。
自宅以外では、病院や施設にいるときに帰宅を訴えることもあります。
帰宅妄想によって「家に帰りたい」と訴え始めると、実際に外へ出て行ってしまうことがあります。
帰宅妄想は認知症の症状の1つである見当識障害により、正確に場所の認識ができないことで起こります。
正確に場所が認識できないということは、自分が今どこにいるのか、なぜここにいるのかが分からなくなります。
そのため、自宅にいても「家に帰りたい」と訴えたり、過去に住んでいた家に帰ろうとするといった症状が現れます。
家族からすると、自宅にいるのにも関わらず突然「家に帰りたい」と言われればとても混乱するでしょう。
しかし、認知症の方が自分がどこにいるのかが分からなくなると、自宅を自宅と認識するのは困難になるということを覚えておきましょう。
被害妄想
被害妄想は、「悪口を言われている」「暴力を振るわれた」「夫(妻)が浮気をしている」と実際は起こっていない被害を訴える症状です。
先ほどご説明した「物盗られ妄想」も被害妄想の1つです。
被害妄想は、認知機能の低下により状況を正確に認識できないことが原因の1つです。
また、認知症による苦しみや不安、周囲の接し方に対しての不満などが影響して現れます。
家族や介護スタッフが「加害者」として訴えられることは、非常に辛いことです。
しかし、認知症の方は悪意があるわけではなく、「自分が被害者だ」と無意識に思い込んでしまいます。
認知症の症状により強い不安やストレスを感じていると考えると、周囲の対応がとても重要になります。
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種類別に起こりやすい妄想
妄想の中でも、認知症の種類によって起こりやすい症状に違いがあります。
ここからは、「アルツハイマー型認知症」と「レビー小体型認知症」で起こりやすい症状をご説明します。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症では被害妄想がよくみられます。
- 周囲の人が知らない話で盛り上がっていて、話についていけないことに対し「いじめられている」と感じる
- 以前は何でも話してくれた妻が、義理の息子にばかり話すようになり「浮気している」と疑う
- 大事なものを置いた場所や置いたこと自体を忘れ、「盗まれた」と思い込む
などが具体例として挙げられます。
特に身近な人を「加害者」として見ることが多く、無意識で「〇〇された」という被害者意識が働きます。
周囲の人の発言や行動によって引き起こされることが多いです。
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レビー小体型認知症
レビー小体型認知症では幻覚や見間違いが起こりやすいです。
- すでに亡くなっている人などの実際に存在しない人が見える
- ハンガーにかかっている衣類を人や動物だと見間違える
- 対象の物が実際の色とは異なった色に見える
などが具体例として挙げられます。
レビー小体型認知症の方に幻覚や見間違いが起こる頻度は多く、実際に目に入ったものと全く違う形で認識します。
また、物自体が曲がって見えたり、歪んで見えたりすることもあります。
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妄想と幻覚やせん妄との違いについて
認知症の症状には妄想以外に、幻覚やせん妄があります。
ここからは妄想と幻覚、そしてせん妄との違いが分かるようにそれぞれご説明していきます。
妄想
妄想は実際には起こりえないことや、起こってもいないことを信じ込むことです。
「いじめられている」「監視されている」「盗まれた」などの被害妄想が代表的です。
認知症になる前はとてもしっかりしていて、周囲の人から頼られていた人によくみられる症状です。
実際には起こっていないことでも、不安や孤独感から身近な人を加害者とし、自分を被害者だと信じ込みます。
幻覚
幻覚は、実際は目の前にないものをあるように感じることです。
視覚や聴覚、嗅覚など様々な感覚で現れます。
実際には存在してはいないものの、存在しているかのようなはっきりとした感覚があるということです。
もちろん周囲の人には見えたり聞こえたりすることはありませんが、認知症の方ははっきりと感じます。
人によって見えるものや聞こえるものは違いますが、一般的に動物や人物などが幻覚で現れやすいです。
せん妄
せん妄は、周囲の状況が理解できず混乱状態に陥っている状態です。
興奮して急に落ち着きがなくなったり、つじつまの合わないことを言うなどの症状が現われます。
昼間よりも夜間に起こりやすく、夜間に起こるせん妄を「夜間せん妄」と言います。
夜は暗さや静かさから、日中よりも状況を判断しづらくなります。
その結果、過度に不安や恐怖を感じることに繋がります。
認知症の方は不安や恐怖を感じやすいので、特に夜間はせん妄を引き起こしやすいのです。
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認知症の妄想の対応法について
認知症の妄想に直面したときに適切な対応をとらなければ、余計に悪化させる可能性があります。
認知症の妄想に直面したときの周囲の対応はとても重要です。
ここからは、認知症の妄想に周囲がとるべき対応法をご紹介します。
物盗られ妄想
いくら認知症の症状だと分かっていても、「あなたが盗んだ」と疑いの目を向けられるのは腹が立つかもしれません。
しかし、そこで「私は盗ってない」と否定したり、怒ることは良い対応とは言えません。
まずは話を聞き、「それは大変ですね」「一緒に探しましょう」などと前向きな言葉をかけることが大切です。
一緒に探し見つけた際には、「ここにありましたよ」「見つかって良かったですね」と声をかけましょう。
また、物盗られ妄想が起きたときは認知症の方が興奮状態に陥っていることが多いです。
ですので、認知症の方が好きなことについての話題を振り、意識を別の方に向けるのも1つの方法です。
帰宅妄想
帰宅妄想が起きたときはしっかり話を聞き、決して否定しないことが大切です。
認知症の方が「帰りたい」と訴えるのには理由があります。
きちんと理由を聞かなかったり、否定すると余計に不安を募らせてしまいます。
話を聞き、理由が分かったら不安を取り除くような言葉をかけましょう。
たとえば、認知症の方が「戸締りをしたいから帰りたい」と訴えたら、「戸締りはできてます」と伝えましょう。
帰らなくても問題はないことを伝えてあげることで、不安は解消されます。
また、認知症の方が好きなことや興味のある話題を振り、話すことに意識を向けることも1つの方法です。
曖昧な返事をしたり、無理に家を出ていくのを止めることだけは避けましょう。
どうしても家を出ていこうとするときは、一緒に外を歩くと良いです。
被害妄想
たとえ自分が被害妄想の対象になっていたとしても、まずは話を聞いてあげることが大切です。
認知症の方からすると自分が被害を受けたことが事実であり、ただ事実を伝えているだけです。
そのため、否定をすると感情が抑えきれなくなり、より強い妄想が現われる可能性があります。
「それは大変ですね」「辛いですね」と話に共感し、真剣に聞きましょう。
じっくり話に耳を傾ければ、「この人なら分かってくれる」「信用できる」という安心感が生まれます。
しかし、それでも自分が加害者として疑われることがあれば心は痛みます。
認知症の方の被害妄想によって体調を崩したり、心が疲弊するのはもってのほかです。
認知症の方を介護する身近な人たちが、心身ともに健康でいることが大切です。
なので、無理をせず早めに担当医やケアマネージャーなどに相談をすることも1つの方法です。
薬で治療できるのか
レビー小体型認知症の幻覚や妄想は、「非定型抗精神薬」という薬で改善する場合があります。
非定型抗精神薬は、従来の抗精神薬と比較し、以下の副作用が出にくいといわれています。
- 錐体外路症状(ふるえ、動きの緩慢さ、体のかたさなど)
- 高プロラクチン血症(乳汁分泌、月経不順、不妊、勃起障害など)
しかし、非定型抗精神薬そのものに、以下の副作用が認められる場合があります。
- 激しい喉の渇き
- 頻尿
- 糖尿
- 昏睡
そのため、幻覚や妄想の改善具合と、副作用の症状の双方を注意深く観察し、薬のコントロールをすることが重要です。
認知症の妄想についてまとめ
今回は、認知症の妄想についてご説明してきました。
認知症の妄想についての要点を以下にまとめます。
- 認知症の妄想には、「物盗られ妄想」「帰宅妄想」「被害妄想」などがある
- アルツハイマー型認知症では被害妄想が多くみられ、レビー小体型認知症では幻覚が多くみられる
- 認知症の妄想が起きたときは否定せず、しっかり話を聞くことが大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。