ご家族が認知症になり、今後どうすればよいかと不安に思っている人も多いと思います。
実は、認知症の方は専門病院に入院しリハビリや投薬による治療を受けることができます。
また、介護者は身体的、精神的な不安を抱え込まずに専門家に相談する機会も得られます。
ここでは認知症の方々の入院を考えた場合における下記のような疑問について解説します。
- 病院で受診してから入院までは何をするのか
- 認知症の家族が入院した場合にはどのような治療をするのか
- 認知症での入院費用は高額になった場合、経済的な支援はあるのか
- 認知症の方を入院させる方法
- 認知症の入院拒否について
疑問を解消することで患者さまと介護をする方々の負担を減らすことができれば幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
認知症の治療について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
認知症と診断された場合、さまざまな不安要素に頭を悩ませるかもしれません。また、認知症は治療できるの?と疑問に思う人も多いともいます。現在、例外を除いて認知症を完全に治す治療法は見つかっていません。しかし認知症は認知症治療薬の服用などによ[…]
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認知症とは
認知症にはアルツハイマー型認知症・脳血管性認知症・レビー小体型認知症の3種類あります。
また、認知症は、中核症状・周辺症状の2種類が合わさった症状の総称です。
それぞれの症状が互いの影響から、環境・人間関係・生活に悪影響を及ぼしていきます。
認知症の種類の1つのレビー小体型認知症や中核症状・周辺症状について詳しく解説します。
レビー小体型認知症とは
レビー小体型認知症とは認知症の種類の1つです。
レビー小体型認知症は脳の神経細胞が減少する変性性の認知症です。
レビー小体という物質が大脳皮質にたまることで、脳の神経細胞が減り、レビー小体型認知症となります。
レビー小体という物質が脳内に出現する原因は不明です。
レビー小体型認知症の症状として、物忘れ、幻視、パーキンソン症状などがあげられます。
中核症状
認知症の中核症状は、脳の神経細胞の問題により発生する初期の認知機能障害です。
脳細胞の死滅・脳の働きの低下により、
- 新しく勉強したことを覚えていない
- 今日の日程、場所がわからなくなる
- 要領よく物事がこなせない
など、記憶力・理解・判断力の低下・実行力が下がるような障害が起きることが特徴です。
周辺症状
認知症の周辺症状は、中核症状を起点として環境的要因・身体的要因・心理的要因などに影響を与えることで発症します。
なぜなら中核症状により、物事の認知・処理がうまくいかず環境に順応できなくなり行動性や精神に支障が出てくるからです。
具体的に現れる症状としては、「妄想、抑うつ、興奮、徘徊、不眠、幻覚、意欲の低下」などの精神症状や行動障害です。
認知症について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
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認知症の方は入院できる?
認知症の方が入院可能なのか、また入院可能な施設についてご紹介します。
認知症の方の入院について
認知症の方が入院することは可能です。
認知症の症状が進み、施設や自宅での介護が難しい場合には入院治療が行われます。
認知症になると記憶が失われたり自宅への道順を迷ったりするなどの症状が起きます。
さらに周辺症状と呼ばれる徘徊、暴力、介護拒否、不潔行為などの症状を発症していきます。
周辺症状が起きてしまうと、病院や施設から入院拒否される場合があります。
認知症の周辺症状がある際は、認知症専門医がいる病院に入院し治療を受けましょう。
また、介護者がリフレッシュをしたいという場合にも一時入院をすることができます。
介護者が介護疲れを起こした際には、病院の助けを借りて心の負担を減らしましょう。
認知症の方が入院できる病院や施設
認知症の方が入院できる病院として精神科の救急病院が挙げられます。
また、認知症専門の病院なども認知症の方が入院できる病院の1つです。
ここでは認知症の方が入院できる病院として、
- 精神科の救急病院
- 認知症専門の病院
をご紹介します。
精神科の救急病院
精神科の救急病院では、認知症の方に慣れた医師や看護師が対応します。
そのため、精神科の救急病院は、認知症の方が安心して入院できる病院の1つとなっています。
認知症専門の病院
認知症の方は、一般の病院では疾病や症状の重さによって入院拒否されることが考えられます。
まずは、認知症の方の入院を受け入れてくれる医療機関の候補を探すことが重要です。
認知症に特化した病院として、
- 精神科
- 認知症疾患医療センター
- 診療内科
などが挙げられます。
転院先で迷う場合は市町村・病院に設置されている認知症地域支援推進員に相談しましょう。
認知症の方の入院の流れ
精神保健福祉法で定められた認知症患者を対象とした専門病院があります。
認知症専門の精神科医と身体合併症の治療を行う専属の内科医が診療にあたります。
受診から入院までの流れは下記のようになります。
①相談
認知症の専門病院には、物忘れに関する相談窓口を備えていることが多くあります。
精神保健福祉士、看護師などの専任スタッフが対応しています。
提供可能なサービスが説明され、医師の診察が必要な場合には調整等を行います。
②外来診療
患者さまにご家族が付き添って、医師の診察を受けます。
症状によって内科的検査、血液検査、MRIなどの画像検査、認知機能テスト等を行います。
患者さまの症状により、検査入院を勧められる場合もあります。
③入院手続き
精神保健指定医によって外来での治療が難しいと判断された場合に入院となります。
認知症専門治療病棟、精神科病棟など対応できる病棟で治療を受けることになります。
なお、入院にはいくつかの種類があります。
患者さまの希望や症状、ご家族の事情を考慮し指定医と相談して決定します。
【任意入院】
患者さまが入院を希望された場合
【医療保護入院】
患者さまは入院拒否しているが、ご家族などの同意を得て精神保健指定医が判断した場合
【措置入院】
指定医2人以上の診察で入院の必要があると判断された場合
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認知症の方の入院後の治療方法
認知症治療病棟などへの入院では、生活機能訓練を中心に治療を行います。
認知症の治療は、医師と多くの専門家によるチーム、そしてご家族との連携で実施されます。
認知症は根本的な治療法が見つかっていないため、進行を緩和するケアが中心です。
治療は薬物療法と非薬物療法に分けて行われます。
薬物療法
薬物療法ではどういった治療をするのか確認してみましょう。
中核症状に対する薬物療法
中核症状とは脳の認知機能が低下した場合に、誰にでも起こりうる症状のことです。
例えば、記憶障害や見当識障害、遂行障害などがあてはまります。
抗認知症薬には中核症状の進行をとめることは出来ませんが、進行を緩やかにすることができます。
抗認知症薬は大きく分けて、以下の2種類のものがあります。
【アセチルコリンエステラーゼ阻害薬】
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症に対して服用されています。
【NMDA受容体拮抗剤】
暴言などの攻撃性が出た場合に効果があると考えられています。
これらの機能がある薬は服用と同時に副作用が発症しますが、できるだけ早く服用を始めた方がいいと考えられています。
周辺症状に対する薬物療法
認知症の患者様には個人差がありますが、周辺症状が出てきます。
周辺症状とは幻覚や徘徊、暴力、せん妄、不潔行為、介護抵抗といった症状です。
日常生活や入院中にご本人がケガなどをせず落ち着いた生活をすることが大切です。
しかし、介護者の方々が患者さまの暴力などにより対応が困難になることがあります。
そのため、医師が適切な量を慎重に判断した上で下記のような薬を処方します。
【睡眠導入剤】
不眠を防ぎ、日中の認知機能を維持します。
また、夜間に徘徊をすることやふらつき、転倒を防ぐためにも睡眠を安定的に取れるようにします。
【抑肝散などの漢方薬】
イライラした気持ちを抑えたり、不安や妄想に効果があります。
【抗不安薬、抗精神薬】
異常な興奮や幻覚などの行動に対して使用されます。
患者さまの行動や心理状態は何か意味のある言動であると考えられます。
ご家族や専門家と協力し患者さまの体調を観察し、医師と適切な治療を話し合います。
非薬物療法
非薬物療法ではどのようなことをするのか確認してみましょう。
レクリエーション
歌や体操、ゲーム、園芸などの同じプログラムを集団で行います。
活動や運動をすることで、脳を活性化し身体機能と認知機能を維持していきます。
また、他の患者様との交流を通じて、人との触れ合いや会話の機会を持つことができます。
他にも集団での活動において、患者さまが役割を持つことで帰属感を得ることができます。
作業療法
調理や掃除などの家事、趣味の活動などの作業をリハビリの方法として行います。
日常生活における動作をスムーズにする目的があります。
起き上がる、立つ、座る、歩くといった基本的な動作を練習します。
また、認知症の方は慣れた作業を体が覚えており、作業をする懐かしさや喜びを感じます。
回想法
認知症の初期から中期では昔の記憶は失われにくい傾向があります。
過去の楽しい思い出や辛く大変な時期を乗り越えた話などを互いに語ります。
当時の写真や映像、音楽を用いることで昔の記憶を思い出すきっかけになります。
また、自分のかけがえのない人生経験を人に話し、聞いてもらえることで孤独感を減らせます。
同時に周りで聞いている認知症の患者さまも共感することが多く、仲間意識が出てきます。
入院して認知症が悪化すると
入院しても認知症が悪化することはあるのでしょうか?
認知症が悪化する場合や原因について解説します。
入院しても認知症は悪化するのか
入院しても認知症は悪化します。
入院したからといって必ず認知症が完治するわけではありません。
入院して周りの環境が変化することで、大声や暴力などの認知症の症状が悪化する場合があります。
また、認知症の方本人が入院拒否などをする場合もあります。
認知症の症状がさらに進行すると病院に入院する他の利用者の方の迷惑になることが考えられます。
そのため、病院から入院拒否される場合があります。
入院しても認知症が進行する原因
入院して認知症を根本的に治すことは難しく、認知症の症状は進行していきます。
しかし、認知症の症状の進行を遅らせることはできます。
入院しても認知症が進行する原因として、
- 考えるのをやめてしまう
- なんでも面倒を見てしまう
などが挙げられます。
面倒をみすぎて本人の自発的な行動の機会を奪ってしまうことで、入院していても認知症が進行します。
本人の自発的な行動の機会を奪うのではなく、無理のない範囲で自分で行動することが大切です。
認知症の入院の悪化について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
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入院して認知症が悪化した場合
認知症が入院中に、より悪化してきた場合は退院を促されるケースもあります。
対処ができなくなるケースとして、以下のような症状が挙げられます。
- 病院施設内の徘徊行為
- 病院の静かな時間帯に大声を上げる
- オムツ交換・点滴を行う際に興奮して暴力を振るう
このような、認知症から起きる行動により、看護師の対応が困難と判断されると退院を余儀なくされるため注意が必要です。
認知症の入院拒否について
一般の病院では、認知症以外の疾病がない場合には入院を断られる場合があります。
また、妄想、徘徊、暴力などの症状は他の患者さまに迷惑をかけることが予想されます。
そういった場合には、認知症以外の疾病が治ると早期の退院を促されるでしょう。
しかし、認知症疾患医療センターに指定された専門病院がありますので転院を検討してみましょう。
認知症の入院基準について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
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認知症の方の精神科での入院期間
認知症が重度な場合は、精神科を設置している病院での入院という選択肢も視野に入れる必要が出てきます。
精神科での入院期間は、認知症患者によって精神面・行動面に対する症状の度合いが異なるため、一定の期間を設けているわけではありません。
ただ、精神科病院での平均入院期間は平均144日といわれています。
出典:「介護されているご家族の方へ~認知症の精神症状、行動症状(BPSD)による入院治療~」
認知症入院の費用について
認知症の入院は長期になるため、入院費用は一般的に高額になります。
厚生労働省と慶應義塾大学の研究で、認知症の社会的費用(2014年)を計算しています。
入院費用は月額34万4,300円であると試算されています。
入院にかかる費用とは治療費用と食事費用を合算した金額です。
病室差額金やおむつ代、クリーニング代は含んでいません。
認知症の治療は高額なものであるため、高額療養費制度等の経済的な援助を受けられます。
そのため1ヶ月分の医療費の自己負担限度額を超えると超えた分については支給されます。
70歳以上(窓口負担額1割・2割の場合)では世帯ごとで月額5万円前後が上限になります。
一例ですので、患者さまの年齢や所得区分から自己負担上限額を確認し利用しましょう。
認知症の方の入院の費用について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
認知症の症状が悪化した場合、病院で入院治療を行うことがあります。入院費用がどれくらいなのか不安に思ったことはありませんか?ここでは、認知症の入院費用について以下の点を中心にお伝えします。認知症の入院費用認[…]
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認知症入院の経済的負担を減らす方法
働き盛りの年齢で認知症になると就労が困難になり、経済的な負担が大きくなります。
外来や入院、介護サービス利用料などは決して安価なものではありません。
社会的な援助は患者さまやご家族の経済的な負担を軽減できるため早めにご利用ください。
自立支援医療制度
一定の申請をした場合、認知症に関連する医療費の自己負担額が1割になります。
医療費には認知症に関する外来、投薬費用、デイケア、訪問看護の費用が含まれます。
高額療養費制度
同じ月の医療費が自己負担限度額を超えると、超えた分が後で払い戻されます。
自己負担限度額は所得状況及び年齢によって設定されています。
払い戻しまでは診療月から3ヶ月ほどかかります。
返金まで時間がかかるため、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸し付ける制度もあります。
限度額適用認定証
加入している医療保険に事前に申請すると「限度額適用認定証」が発行されます。
入院や外来療養にかかる医療費が高額になる場合には事前申請しておきましょう。
病院や薬局で支払いの段階において自己負担限度額までの支払いで済みます。
高額介護サービス費
1ヶ月間に支払った利用者負担額が負担限度額を超えた場合に超えた分が支給されます。
所得区分等で定められた上限額が定められており、超えた分は後日返金されます。
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認知症の方を入院させる方法
認知症の方から入院拒否された場合どのように対応すれば良いのでしょう?
認知症の方を入院させる方法をご紹介します。
認知症の方の気持ちを理解する
認知症の方の中には自分が認知症であることを認めたくないという方もいます。
認知症であることを認めない方にどれだけ入院を勧めても入院拒否されてしまいます。
まずは認知症の方の気持ちを理解し、本人の気持ちに寄り添うことが大切です。
また、家族の元を離れたくないという思いから入院拒否をする方もいます。
認知症の方の気持ちを尊重することが大切です。
気持ちを伝える
認知症の方に素直に気持ちを伝えることも大切です。
家族全員で話し合いをするなど、お互いの気持ちを素直に話すことで、入院に対する不安や恐怖を取り除くことが期待できます。
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認知症での退院について
認知症により入院している病院から「退院です。」と判断された場合の選択肢は、複数あります。
自宅での介護
病院の看護師に、どんな介護・対応が必要なのかを確認しましょう。
また、入院期間中に本人の介護を体験して方法を学んでおくことも有効です。
認知症専門病院へ転院
自宅介護が難しい場合は、認知症専門病院への転院を検討していきましょう。
なぜなら、元々認知専門の医師が多いため受け入れてもらえる可能性が高いからです。
そのため、早期での転院と認知症改善のために役立ちます。
認知症の在宅介護について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
在宅介護は、認知症の方にとって住み慣れた環境で生活できる点がメリットです。しかし、在宅介護は想像以上に大変で、些細なミスが介護拒否につながることもあります。本記事では、認知症の方の在宅介護に関して以下の点を中心に解説します。[…]
認知症の方は死ぬまで入院可能?
結論から言いますが、認知症の方は死ぬまで入院は可能です。
入院をストップし、自宅での看取りを選択することも、病院で看取ることも選択できます。
いずれにせよ、認知症の方が死ぬまで入院するかどうかは、ご家族の適切な判断が必要になるでしょう。
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認知症の入院のまとめ
ここまで認知症の方々が入院を考えた場合における疑問や不安についてを中心にお伝えしてきました。
認知症と入院についての要点を以下にまとめます。
- 認知症専門病院にて診察や画像検査等からの判断と、本人とご家族の希望を考慮して入院を決定する
- 認知症の患者さまは入院時に薬物療法とリハビリなどの非薬物療法を慎重に実施する
- 認知症の症状が重い場合には一般病院では入院を断られることがある
- 認知症での入院治療費用は高額だが、高額療養費制度等により負担を軽減できる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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