私たち人間の体のほとんどは水分でできており、生きていく上で欠かせないものです。
そんなとても大切な水分ですが、認知症と水分に深い関わりがあることを知っていますか?
今回は認知症と水分の関係についてご紹介した上で、認知症に水分補給が効果的な理由や水分補給の方法などをご紹介します。
- 認知症に水分補給が効果的な理由と水分補給の目安
- 認知症に効果的な水分補給の方法と注意点
この記事をご覧いただき、認知症と水分の関係について理解を深めるための参考にしてください。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症と水分の関係とは
私たち人間の体の半分以上が水で作られており、水によって生命を維持できると言っても過言ではありません。
しかし、加齢に伴い体内に溜め込める水分は不足していきます。
体内の水分が不足することで運動機能や体温調節機能が低下したり、ひどいときでは妄想や幻覚などが起こります。
体や脳の機能が低下し、老化していく最大の原因は水分不足なのです。
バランスの取れた食事や適度な運動など、生活習慣の改善は認知症にとても効果的です。
しかし、当たり前のようで忘れがちである水分補給も、認知症にとって重要な対策方法なのです。
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認知症に水分補給が効果的な理由
人間の体の半分以上が水分で作られているとお話ししました。
だからこそ、水分不足に陥ることはとても危険な状態だと言えます。
水分不足が心身にもたらす悪影響は、私たちの想像を絶するものです。
水分不足が原因で脳の障害を引き起こせば、間接的に認知症の進行を早めてしまう恐れもあります。
「たかが水分」と軽く考えるのではなく、水分補給がどれほど大切かをしっかり知っておく必要があります。
ここからは、認知症に水分補給が必要な理由をご紹介します。
脳の意識障害
多少の体のだるさや頭がボーッとする程度の脱水症状は、水分不足であると気付きにくいです。
そのような軽い脱水症状は一時的なものであり、しっかり水分を取ることで解消されます。
しかし、脱水症状だとは気付かないまま放置してしまうと脳の機能が低下し、次第に日常生活に支障をきたすようになります。
そして脱水状態が慢性化してしまうと、脳や体を動かさない日が続くことになります。
その結果、脳に大きな悪影響をもたらし、脳が衰えることで認知症になりやすくなってしまうのです。
脱水のリスク
体内で最も水分を蓄積できる部位は筋肉です。
しかし、加齢とともに筋肉量は減るので必然的に水分も減少してしまいます。
また、認知症に限らず高齢者は喉が渇きにくく、長時間水分を取らないままで過ごすことがあります。
その他にも、トイレに行くのが面倒くさいことを理由に水分を取らない場合があります。
直接水分を取る以外でも、食事を取ることで水分を摂取することができます。
しかし、高齢により食事量が減ることで摂取する水分も減ってしまいます。
このように、様々なことが原因となり水分を取らず、脱水のリスクが高くなってしまうので注意が必要です。
認知症の方は脱水症になりやすい?
認知症や認知機能の低下も脱水症の要因になります。
それは第一に、考える力が低下して、天候や気温に合わせた衣類の調節が難しくなるためです。
夏でも重ね着をしてしまい、体温を下げるために、衣類のなかは汗でびっしょりということがあります。
また、炎天下でも外出してしまうことがあり、それが発汗を招き、脱水症や熱中症につながります。
第二に水分摂取の必要性を認識できなくなる場合があるためです。
水を飲むという概念が失われてしまう場合もあります。
そうなると、脱水症を予防するために適宜、水分補給をするという対処行動を自ら行うことが難しくなります。
認知症の種類によって脱水症の症状に違いが見られます。
血管性認知症では嚥下障害を合併しやすく、円滑な水分摂取が難しくなることから、脱水症につながりやすくなります。
アルツハイマー型認知症では食事や水分摂取という概念が失われてしまうため、水分摂取を促しても拒否が見られることがあります。
レビー小体型認知症では、自律神経の低下が起こりやすく、発汗により体温を下げるという働きが弱くなります。
そうすると、体が熱さに負けてしまい、食欲が低下して、水分の摂取量が減り、脱水症につながりやすくなります。
認知症が脱水症状を悪化させることも
上記に述べたこと以外にも認知症が脱水症を悪化させてしまう原因になっていることがあります。
第一に、高齢者で喉が渇きにくくなるという機能低下は、認知症ではその傾向がさらに強まります。
喉が渇いているかどうかの自覚が難しくなり、水分摂取が進まなくなります。
第二に、認知症の症状と脱水症が負の連鎖の状態になっていることがあります。
一例として、脱水症は、認知症によるせん妄のリスク要因の1つです。
せん妄とは落ち着きがなくなる、興奮する、幻視がみられるなどの症状を示すことです。
せん妄の状態では水分摂取が難しくなるため、脱水症を引き起こしやすくなるという関係があります。
負の連鎖と言っているのは、せん妄と脱水症の双方が互いのリスク要因になっているためです。
また、血管性認知症による嚥下障害は脱水症のリスク要因となりますが、十分な水分摂取ができないことが血管性認知症の悪化のリスク要因となるという負の連鎖もあります。
認知症に効果的な水分補給の目安
体格や活動量により違いがありますが、一日に必要な水分補給の目安は1.5リットルです。
では、なぜ1.5リットルも水分を摂取する必要があるのかを説明します。
私たち人間は、日常生活の中で汗や尿などの水分を体内から2.5リットルも排出しています。
そのため、最低でも1日2.5リットルは水分を摂取する必要があります。
しかし、水分補給の方法は直接水を飲むことだけではありません。
料理に使われている肉や魚には水分が含まれており、1日3食きちんと食べていれば食事からも水分を摂取することができます。
食事で摂取できる水分量は1日で約1リットル程です。
そのため、1日1.5リットル水分を摂取すれば排出された分をしっかり補うことができ、水分不足に陥ることはありません。
認知症に効果的な水分補給の方法
認知症の方が脱水症状に陥らないために水分を取るよう伝えたとしても、拒否される場合があります。
そこで無理矢理飲ませようとするのは逆効果です。
機械的に水分を促すのではなく、会話の流れで自然と「お茶を飲みたい」と思ってもらえるような間接的なアプローチが大事です。
「一緒にお茶を飲みながら話せる友達が欲しい」「このお菓子がお茶に合いますよ」などと伝えるのも1つの方法です。
認知症の方の水分補給の注意点
認知症の方が水分補給をする際、注意しなければいけないことがあります。
ここからは、認知症の方の水分補給の注意点を2つご紹介します。
周囲のサポート
加齢とともに喉が渇きにくくなったり、トイレに行くことが面倒という理由などから脱水のリスクがあるとお伝えしました。
水分不足に陥ると認知機能の低下に繋がり、認知症が悪化する恐れがあります。
しかし、いくら水分補給が大切だと伝えても、認知症の方だけではきちんと水分補給を行うことは困難です。
なので、きちんと水分補給をしてもらうためには周囲のサポートが必要です。
そこで必要になるのが、先ほどお伝えした間接的なアプローチです。
無理矢理飲ませようとするのではなく、認知症の方が飲みたいと思えるような伝え方をしましょう。
過剰摂取
ここまで認知症に対して水分補給が効果的な理由をお伝えしてきましたが、過剰摂取は逆効果です。
どれだけ体に良くて必要なものでも、限度を超えるとかえって悪影響になる可能性があります。
水分の過剰摂取は水中毒を引き起こしかねません。
また、心臓や肝臓にまで負担がかかる可能性もあります。
その日の気温や活動状態によって個人差はありますが、1.5リットルを最低ラインとするのであれば、上限は2倍の3リットルと覚えておきましょう。
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水分補給はお茶でもいい?
水分補給は必ずしも水でなければいけないわけではありません。
飲まないよりは飲むことが大事なので、認知症の方本人が好きな飲み物を飲んでもらうことが大切です。
しかし、腎臓に疾患がある認知症の方はお茶に含まれるカリウムに注意する必要があります。
お茶を飲むのであれば、カリウムの少ない烏龍茶や麦茶がおすすめです。
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認知症と水分のまとめ
今回は認知症と水分についてご紹介しました。
認知症と水分についての要点を以下にまとめます。
- 水分不足は脳の意識障害を引き起こし、認知症の進行を早める危険性がある
- 一日に必要な水分補給の目安は1.5リットル
- 認知症の方が水分補給を拒否した場合、間接的なアプローチが大切
- 認知症の方の水分補給には周囲のサポートが重要だが、過剰摂取には注意が必要
- 腎臓に疾患がある認知症の方は、カリウムが含まれるお茶に注意が必要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。