薬剤師による服薬指導は、患者様の医薬品トラブルを予防するうえでとても重要です。
しかし、ただ薬の効果や注意事項を説明するだけでは、適切な服薬指導とはいえません。
服薬指導とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
また、服薬指導ではどのようなことに注意するべきでしょうか?
本記事では服薬指導について、以下の点を中心にご紹介します。
- 医薬品の服用トラブルを防ぐには
- 誤った医薬品の処方を防ぐには
- 服薬指導でおさえるべきポイント
服薬指導について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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服薬指導とは
服薬指導は、薬剤師が患者に対し、処方された医薬品の効果・副作用・服用方法を説明することです。
法律で定められており、薬剤師は必ず行わなければいけません。
服薬指導の目的
服薬指導の目的は、患者に医薬品を適切に服用してもらうことです。
具体的には、患者の自己判断での服薬や、量を間違って服用するのを防ぐために行います。
服薬指導をする理由
服薬指導をする理由は、医師が処方した薬が客観的に正しいか判断するためです。
薬剤師は医薬品を処方する際、服薬指導の一環として、患者に病状や検査結果を尋ねることがあります。
医薬品を処方する際には、患者の体重・年齢のほか、病歴や他の医薬品との飲み合わせを考慮しなければなりません。
医師が処方した医薬品が適切かどうか、薬剤師が確認することで、適切でない医薬品が処方されるのを防ぎます。
同じ理由から、同じ処方薬が長期間続く場合は、薬剤師が定期的なチェックを行います。
具体的には、医薬品を適切に服用しているか確認したり、季節・期間などにあわせた服薬指導を行ったりします。
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服薬指導のポイント
薬剤師が服薬指導する際何を意識すれば良いのでしょうか?
薬剤師が服薬指導を行う際に、意識すべきポイントを解説します。
患者様が分かる内容で話す
専門用語などはなるべく使わないようにしましょう。
患者様の多くは医学・薬学の知識を持っていません。
服薬指導を行う際の対象者は、専門用語・知識を知らないスタンスが原則です。
難しい単語は、分かりやすく具体的な言葉に言い換えすることが大切です。
たとえば、「低血糖症状はありますか?」のような聞き方はNG例です。
もっと具体的に、「手足の震え・めまいなどはありますか?」と質問しましょう。
たとえ患者様が低血糖という言葉を知らなくても、質問に正確に答えられます。
また、質問・説明は簡潔にすることも大切です。
また、服薬指導が長くなると、その分、対象の患者様や他の患者様の時間を奪うことにもなります。
服薬指導の長さは、患者様の年齢や理解度、処方薬のほか、他の患者様の待ち状況にあわせて柔軟に調整しましょう。
患者様に合わせて話し方を変える
服薬指導では、患者様にあわせて話し方を変えることも大切です。
例えば高齢の患者様に対しては、聞き取りやすいよう大きな声で、はっきり・ゆっくり話すことが大切です。
小さな子供に処方する際は、保護者を安心させるような口調・話し方を心がけましょう。
患者様・保護者を安心させるような話し方や、言葉選びには注意してください。
相手にかかわらず、服薬指導は、穏やかな口調・態度で行うのが基本です。
患者様の多くは自分の体調・病気などに不安を抱えています。
患者様を安心させ、信頼してもらえるような口調・態度を心がけましょう。
もし、自身の見た目などに威圧感があると感じる場合、より柔らかな物腰を意識してください。
たとえば大柄な男性の薬剤師などは、どうしても患者様が萎縮しやすい傾向があります。
患者様の疑問にも答える
服薬指導では、患者様とのコミュニケーションを大切にしましょう。
一方的に説明・指導するのではなく、患者様の話にも耳を傾けてください。
たとえば患者様の質問があれば、必ず回答しましょう。
質問がない場合でも、折々に「質問はございませんか」のような声掛けがおすすめです。
患者様が話しやすい環境を作ることで、隠された不安や悩みを聞き取りやすくなります。
とくに不安や相談事がなくても、患者様には「気遣われている」ということが伝わりやすくなります。
信頼関係を築き、より適切な服薬指導につなげるためにも、丁寧なヒアリングや質疑応答を心がけてください。
メモや付箋なども活用する
口頭だけの服薬指導は、情報が多すぎて覚えきれないこともあります。
体調の悪い方や高熱の方はなおさらです。
情報が多い場合は、メモや付箋などを活用するのがおすすめです。
手元にメモなどが残れば、帰宅後、患者様が改めて服用方法を確認できます。
あるいは、薬品メーカーが配布している「指導箋」の活用もおすすめです。
指導箋とは、医薬品の基本的な情報・服用方法などをまとめたメモです。
必要に応じて、マーカーやお薬カレンダーも併用しましょう。
患者様があとから見返して、すぐ内容が分かるような工夫をするのがポイントです。
ささいな気遣いが患者様の手助けになります。
【工夫例】
- 薬の袋に大きく「食前」「食後」などと書く
- 薬を飲む順番のメモを渡す
- 指導箋の重要なところにマーカーで印をつける
服薬指導の内容
服薬指導の内容例は以下の通りです。
効果・効能 | 服用量 |
服用のタイミング | 副作用 |
飲み合わせの注意点 | 薬の保管方法 |
飲み忘れた時の対応 | 薬が余った場合の対応 |
患者様が積極的に薬を使っているか(服用に際して不安はないか) | 処方薬の効果の確認・評価 |
一度にすべてを指導する必要はありません。
まずは優先度の高い情報を確実に伝えましょう。
残りの項目については、少しずつフォローしていきます。
メモやお薬手帳などを活用するのも良い方法です。
薬の副作用について知りたい方はこちらの記事もお読みください。
オンライン服薬指導における注意点
近年はオンライン服薬指導を採用する薬局も増えています。
オンライン服薬指導のメリットやデメリットを解説します。
オンライン服薬指導とは
オンライン服薬指導とは、インターネットを利用した服薬指導方法です。
パソコンやスマートフォンなどのビデオ電話機能を使って、指導・処方を行います。
オンライン服薬指導の大まかな流れは以下の通りです。
- 医師によるオンライン診療
- 保険証・お薬手帳などの情報登録
- 薬剤師によるオンライン服薬指導
- 処方薬が郵送で自宅に届く
受診から薬の受け取りまで一貫して行えます。
病院・薬局に行く必要がないため、介護・子育てで忙しい方や、離島・遠隔地域の方でも希望の医療機関で診療を受けられます。
【オンライン服薬指導のメリット】
自宅に薬が届く | 希望の時間に受診・服薬指導を受けやすい |
通院・移動の負担がない | 人目を気にせず、病気・薬の相談ができる |
クレジットカード決済できる | 病院内での感染症を予防できる |
オンライン服薬指導で注意すること
オンライン服薬指導にはデメリット・注意点もあります。
【オンライン服薬指導のデメリット】
条件が設けられており、誰でも利用できるわけではない | 通信環境が不安定な方には向かない |
対面と比べると、コミュニケーションが不足しやすい | 医薬品配達時の保管・取り扱いなどに不安がある |
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利用者との関係を作るために必要なこと
適切な服薬指導を行うには、患者様の心身・生活状況・病歴・ケガの既往歴などを把握することが大切です。
患者様のことをよく知るには、十分にコミュニケーションを取り、信頼関係を築かなければなりません。
それでは、患者様に信頼してもらうために、薬剤師はどのような配慮をすべきでしょうか。
厚生労働省の発表では、「あれば相談しやすい薬局の配慮」として、以下の項目が挙げられています。
【あれば相談しやすい薬局の配慮】
配慮 | 割合 |
他人に聞こえないような声の大きさで説明してくれる | 45.8% |
相談スペースと待合室の距離が離れている | 23.9% |
相談スペースがパーテーションなどで仕切られている | 27.7% |
相談スペースが個室になっている | 10.4% |
その他 | 8.2% |
出典:厚生労働省【患者のための薬局ビジョン実現のための 実態調査報告】
【その他】
その他の8.2%では以下のような内容が挙げらています。
薬の名前はなるべく口にしないこと | 名前を呼ばれるより病院のように番号札で呼ばれる方がいい |
内容によっては配慮してほしい | 無音ではどうしても聞こえてしまうのでテレビ、BGM等により配慮してほしい |
耳が遠いのでゆっくり大きな声で説明してくれること | 特に他の患者のいない時間を取ってくれて相談に乗ってくれること |
長い時間、話してくれること | 質問に対してきちんと返答があればよい |
前回話したことなどが続けて相談でき、覚えてくれているといい(メモしてある程度) | わかりやすい説明、飲み方へ助言、薬への飲み方、貼り方に対して注意してくれる |
出典:厚生労働省【患者のための薬局ビジョン実現のための 実態調査報告】
患者様は、処方薬の名前・内容などを他の人に知られたくないという傾向が強いです。
服薬指導を行うときは、プライバシーに配慮した口調・声の大きさなどを心がけましょう。
また、しっかり相談に乗ってくれることや、質問への的確な回答も求められています。
いずれにしろ、患者様のニーズに応えるには、まず患者様が求めているものを知ることが大切です。
まずは、コミュニケーションを通して患者様との信頼関係を築きましょう。
かかりつけ薬剤師について知りたい方はこちらの記事もお読みください。
服薬指導まとめ
ここまで、服薬指導についてお伝えしてきました。
服薬指導の要点を以下にまとめます
- 医薬品の服用トラブルを防ぐには、服薬指導で服用方法・副作用などを適切に指導することが大切
- 誤った医薬品の処方を防ぐには、医師が処方した医薬品の適切性を薬剤師が客観的に判断することが重要
- 服薬指導は、患者様とコミュニケーションを取り、簡潔かつ分かりやすい言葉で説明すること
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。