ビタミンdは丈夫な骨づくりに欠かせない栄養です。
日本人には不足しやすい栄養素ですが、かといって摂りすぎても身体によくないことをご存知ですか。
本記事ではビタミンdについて、以下の点を中心にご紹介します。
- ビタミンdが不足すると骨粗しょう症になるのか
- ビタミンdの摂りすぎは身体に悪いのか
- ビタミンdの1日の摂取目安量と摂取状況
ビタミンdについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ビタミンdとは
ビタミンdの特徴や、不足・過剰摂取したときの症状を紹介します。
基本情報
ビタミンdは脂溶性ビタミンです。
d2~d7までの6種類がありますが、とくに人体に重要なのがビタミンd2とd3です。
ビタミンdは小腸で吸収されたのち、肝臓・腎臓で分解・吸収されます。
他のビタミンと異なり、肝臓には貯蔵されません。
余剰分は脂肪組織に蓄積されるか、血液に乗って全身を循環します。
ちなみに、ビタミンdは肝臓・腎臓で分解・吸収された後、活性型ビタミンdという物質に生まれ変わります。
活性型ビタミンdは、体内においてさまざまな働きをします。
とくに重要なのが、丈夫な骨づくりのサポートです。
具体的には、骨の原料となるリン・カルシウムの吸収を促進することで、骨が石灰化するのをサポートします。
そのほか、ビタミンdには免疫機能の調節やガン・生活習慣病の予防効果も知られています。
さまざまな健康効果があるビタミンdですが、過剰に摂取するとかえって健康を害することもあります。
そのため、過不足なく適度な量を摂取することが大切です。
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ビタミンdが不足するとどうなる?
ビタミンdが不足すると、身体にはさまざまな不調があらわれます。
たとえば以下のような症状があります。
【ビタミンd不足による症状】
- 骨軟化症・くる病
- 骨粗しょう症
- イライラ
- 動脈硬化
それぞれの内容を紹介します。
骨軟化症・くる病
骨軟化症・くる病の症状は以下の通りです。
- 骨折
- 骨痛(股関節・骨盤・背中の痛みなど)
- 筋力低下
- 歩行障害
- 脊椎の変形
- 身長が伸びない(小児の場合)
骨軟化症とは、その名のとおり骨が柔らかくなる症状です。
小児の場合はくる病と呼ばれます。
骨軟化症およびくる病では、骨の石灰化が妨げられます。
骨の石灰化とは、血中のカルシウム・リンを吸収して骨を固く丈夫にする仕組みです。
ビタミンdはカルシウム・リンを吸収し、骨を石灰化する働きがあります。
不足するとカルシウム・リンの吸収がうまくいかなくなるため、骨の石灰化にも支障が出てしまうのです。
石灰化できないと、骨には類骨という組織があらわれます。
類骨は柔らかい組織で、曲がったり折れたりしやすいのが特徴です。
すなわち骨が柔らかくなるため、骨折や変形のリスクが高まります。
小児の場合は骨格の発達そのものに支障が出ることもあります。
骨粗しょう症
骨粗しょう症は骨の密度が低くなり、骨の中がスカスカになる状態です。
とくに高齢者に多く見られます。
骨粗しょう症は、骨代謝のバランスが崩れることで起こります。
骨代謝とは、古い骨を壊し、新しい骨に作り替える仕組みのことです。
骨代謝が円滑に行われるには、十分なカルシウムとリンが必要です。
もしビタミンdが不足すると、カルシウム・リンの吸収がうまくいかなくなります。
すると不足分を補なおうとして、骨に蓄えられているカルシウム・リンが血中に流れ出します。
つまり中身が溶けだしてしまうため、結果として骨の中がスカスカになってしまうのです。
骨が脆くなるため、骨折などのリスクが高くなります。
イライラ
ビタミンdが不足すると、イライラしやすくなります。
原因として、脳の神経伝達のトラブルが挙げられます。
ビタミンdは脳神経細胞の保護などの役割もあります。
そのため、ビタミンdが不足すると脳神経細胞の働きに支障が出やすくなります。
脳の神経伝達の乱れは、情緒不安定を招くことがあります。
結果としてイライラなどの症状のほか、うつ症状などが出ることもあります。
動脈硬化
ビタミンd不足は動脈硬化のリスクを上昇させます。
理由は、血中のカルシウムが血管に付着してダメージを与えるためです。
ビタミンdは血中のカルシウム濃度を調節する働きがあります。
もしビタミンdが不足すると、血液中のカルシウムが増加しやすくなります。
血液中に余ったカルシウムは血管に蓄積し、血管を傷つけます。
具体的には血管が固く、もろくなるため、動脈硬化の状態に至ります。
また、カルシウムの血管への付着は高血圧を招くこともあります。
理由は血管の内部が狭くなるためです。
血流が悪化するため、心臓がより強い力で血液を送り出そうとした結果、血圧が上昇してしまうのです。
高血圧も動脈硬化の代表的な原因の1つです。
ビタミンdを過剰摂取するとどうなる?
ビタミンdを摂りすぎると、健康被害が出ることがあります。
そもそもビタミンdは、身体に比較的蓄積されやすい栄養素です。
理由は、脂に溶けやすく、水に溶けにくい性質であるためです。
つまり、尿と一緒に排出されにくいのです。
そのため摂取量が多すぎる場合は、体内に過剰に蓄積されるおそれがあります。
ビタミンdの摂りすぎによる症状は、高カルシウム血症が代表的です。
症状は以下の通りです。
- 疲れやすい・倦怠感
- イライラ
- 食欲不振
- 嘔吐
- 下痢
- 脱水
- 体重減少
- 動脈硬化
- 結石・腎不全
- 昏睡
高カルシウム血症は、血液中のカルシウム濃度が高すぎる状態です。
ビタミンdを摂りすぎると、その分、カルシウムの吸収率も高まります。
結果として血液中にカルシウムが増えすぎてしまい、さまざまな不調があらわれます。
軽度であれば自覚症状がないこともしばしばあります。
しかし重症化すると動脈硬化や腎臓の結石など、重篤な疾患に発展することもあります。
昏睡状態や死亡に至ることも少なくありません。
高カルシウム血症を防ぐためにも、ビタミンdの過剰摂取にはくれぐれも注意しましょう。
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ビタミンdの摂取目安量と平均摂取量
ビタミンdの1日の摂取目安量は以下の表の通りです。
男性 | 女性 | |||
目安量(μg) | 耐容上限量(μg) | 目安量(μg) | 耐容上限量(μg) | |
0~11カ月 | 5.0 | 25 | 5.0 | 25 |
1~2歳 | 3 | 20 | 3.5 | 20 |
3~5歳 | 3.5 | 30 | 4.0 | 30 |
6~7歳 | 4.5 | 30 | 5.0 | 30 |
8~9歳 | 5.0 | 40 | 6.0 | 40 |
10~11歳 | 6.5 | 60 | 8.5 | 60 |
12~14歳 | 8.0 | 80 | 9.5 | 80 |
15~17歳 | 9.0 | 90 | 8.5 | 90 |
18~75歳以上 | 8.5 | 100 | 8.5 | 100 |
妊婦 | – | – | 8.5 | – |
授乳婦 | – | – | 8.5 | – |
成人であれば、1日につき8.5μgの摂取が求められます。
しかし実際のところ、日本人の多くはビタミンdが不足しています。
日本人の男女・年代別のビタミンd摂取量は以下の通りです。
【栄養素等摂取量】
男性(μg) | 女性(μg) | |
1~6歳 | 4.4 | 3.9 |
7~14歳 | 5.4 | 5.2 |
15~19歳 | 6.9 | 4.1 |
20~29歳 | 5.5 | 5.2 |
30~39歳 | 5.8 | 5.6 |
40~49歳 | 6.2 | 4.8 |
50~59歳 | 7.0 | 6.5 |
60~69歳 | 8.6 | 7.5 |
70歳以上 | 8.3 | 7.8 |
18歳以降のほぼすべての年代では、目安量の8.5μgが摂取できていません。
つまり日本人の多くは、摂りすぎよりも不足を心配する必要があります。
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ビタミンdが多く含まれている食べ物は?
ビタミンdが豊富な食品を動物性食品と植物性食品に分けて紹介します。
動物性食品
ビタミンdが豊富な動物性食品は魚介類です。
そのほか、卵や乳製品にもビタミンdは含まれます。
可食部100g当たりの含有量(μg) | |
あんきも(生) | 110.0 |
そうだがつお(生) | 22.0 |
鮭(からふとます・焼き) | 31.0 |
ぶり(焼き) | 5.4 |
牛乳 | 0.3 |
卵黄(生) | 12.0 |
植物性食品
ビタミンdが豊富な植物性食品はキノコ類です。
ビタミンといえば緑黄色野菜に含まれているイメージですが、意外にもビタミンdはほとんど含まれていません。
可食部100g当たりの含有量(μg) | |
干しシイタケ | 17.0 |
生シイタケ | 17.0 |
ぶなしめじ | 0.5 |
エリンギ | 1.2 |
ビタミンdは食べ物以外からも摂れる?
ビタミンdは体内でも合成されます。
体内で合成するためには、紫外線を皮膚に浴びることが大切です。
ビタミンdの合成に役立つのが日光浴です。
夏場なら木陰で30分程度、冬場なら1時間程度は日光浴しましょう。
なお、日焼け止めや長袖によって肌を保護すると、ビタミンdの合成が十分に行われないことがあります。
おなじく窓越しの日光浴もビタミンdの合成を阻害する要因です。
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他のビタミンの効果
ビタミンd以外のビタミンの効果や豊富な食品を紹介します。
脂溶性ビタミン
脂溶性ビタミンは、脂に溶けやすいビタミンです。
ビタミンd以外に、ビタミンa・k・eがあります。
種類 | 効果 | 豊富な食品 |
ビタミンa | ・皮膚・粘膜を正常に保つ ・視覚機能を正常に保つ | レバー・うなぎ・にんじん |
ビタミンk | ・血液を固める(止血) ・歯・骨を丈夫にする | 納豆・ほうれん草 |
ビタミンe | ・手足の血液循環を良くする ・ホルモン分泌を調節する | アーモンド・かぼちゃ |
水溶性ビタミン
水に溶けやすい性質のビタミンです。
ビタミンb群とビタミンcがあります。
種類 | 効果 | 豊富な食品 |
ビタミンb1 | ・糖質をエネルギーに変換する ・脳・神経細胞を正常に保つ | 豚肉・玄米 |
ビタミンb2 | ・脂質をエネルギーに変換する ・皮膚・爪・髪を健やかに保つ | 納豆・レバー |
ビタミンb6 | ・たんぱく質の代謝をサポート ・神経機能を正常に保つ | サンマ・バナナ |
ビタミンb12 | ・血液を作る ・神経機能を正常に保つ | レバー・牡蠣 |
ビタミンc | ・コラーゲンの生成をサポート ・肌の老化予防 ・免疫力アップ | レモン・ブロッコリー・じゃがいも |
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ビタミンdが不足しやすい人
ビタミンdが不足しやすい方の特徴を解説します。
以下に心当たりのある方はサプリメントなどを活用して、ビタミンdの積極的な摂取を心がけましょう。
母乳で育てられている乳児
母乳に含まれるビタミンdはさほど多くありません。
そのため、完全母乳で育てられている乳児はビタミンdが不足しやすいです。
乳児・小児のビタミンd不足は、くる病などの骨格の発達障害を招くおそれがあります。
粉ミルクやサプリメントなどを活用しながら、ビタミンdの補給を心がけましょう。
高齢者
年齢が上がるほど、体内でのビタミンdの合成能力は低下します。
そのため高齢者の方は、ビタミンdが不足しやすい傾向があります。
また、外出不足もビタミンd不足の原因の1つです。
高齢者の方は、若年層に比べると外出の頻度が少なくなりがちです。
つまり太陽の光を浴びる時間が少なくなるため、ビタミンdの合成が行われず、結果ビタミンd不足に至ります。
日照暴露時間が限られている人
直射日光が皮膚に当たる時間が短い方は、ビタミンdが十分に合成されません。
たとえば以下のような方は、日光浴不足からビタミンd不足になりがちです。
- 室内で過ごす時間が長い
- 日焼け止めを使用している
- 宗教上の理由などから、ベールや長袖などで肌を覆っている
肌色が濃い人
皮膚の色が濃い方はビタミンdの合成能力が十分でありません。
たとえば黒人は白人と比べると、ビタミンdの合成能力が低いと指摘されています。
脂肪の吸収を制限する必要がある人
脂質をあまり摂らない方は、ビタミンdの吸収率が低くなります。
理由は、ビタミンdが脂溶性の栄養素であるためです。
ビタミンdは脂に溶けやすいため、脂質と一緒に摂取することで吸収率が高まります。
反対に脂質の摂取量が少ないと、比例してビタミンdの吸収率も低下します。
脂質を摂ったとしても、脂肪の吸収が円滑に行われなければ、やはりビタミンdの吸収に支障が出ることがあります。
たとえば以下のような疾患の方は、脂肪の吸収に問題があることが多いです。
- 肝臓病
- 嚢胞性線維症
- セリアック病
- クローン病
- 潰瘍性大腸炎
上記の疾患がある方は、医師の指導などによって脂質の摂取そのものを制限されることもあります。
結果、脂質が不足しやすいため、ビタミンdの摂取にも支障が出やすくなります。
肥満の方、胃のバイパス手術を受けたことがある人
脂肪は組織内にビタミンdを閉じ込める性質があります。
そのため脂肪が多い方=肥満の方ほど、ビタミンdの吸収が妨げられます。
胃のバイパス手術を受けた方も、ビタミンdの吸収率が低くなる傾向があります。
理由は、ビタミンdを吸収する部位を切除してしまうためです。
ビタミンdは主に上部小腸で吸収されます。
胃のバイパス手術では上部小腸を切除することが多いため、伴ってビタミンdの吸収能力も低下します。
ビタミンDは丈夫な骨を作るのに欠かせないビタミンです。くわえてビタミンDは、免疫機能向上や赤ちゃんの育成においても重要であることをご存知ですか。本記事ではビタミンDと免疫について、以下の点を中心にご紹介します。 ビタミ[…]
ビタミンdサプリメントの医薬品との相互作用
ビタミンdは一部の医薬品と相互作用を起こすことがあります。
たとえばビタミンdの吸収率の低下や、高カルシウム血症のリスク上昇などの悪影響があります。
ビタミンdとの相互作用が知られている医薬品を4つご紹介します。
オルリスタット
ダイエット用の医薬品です。
脂肪の分解能力を高めることで、脂肪の吸収率を下げる作用があります。
脂肪の吸収率が下がるため、脂溶性であるビタミンdも体内に吸収されにくくなります。
スタチン
脂質異常症の治療薬です。
血中のコレステロール値を下げる作用があります。
紫外線による体内でのビタミンdの合成にはコレステロールがかかわります。
そのためコレステロールが減少しすぎると、ビタミンdの体内合成に支障をきたすことがあります。
ステロイド
ステロイドは身体の炎症を鎮める医薬品です。
皮膚炎などの治療によく用いられます。
ステロイドにはビタミンdの吸収や分解を妨げる作用があります。
とくに内服薬を服用している方にはビタミンdの不足傾向がみられます。
チアザイド系利尿薬
排尿を促す医薬品です。
主に高血圧などの治療に用いられます。
チアザイド系利尿薬は、尿にカルシウムが流れ出るのを妨ぎます。
つまり体内に蓄積されるカルシウム量が増えるため、高カルシウム血症を招くおそれがあります。
とくに高齢者の方や腎臓機能に障害のある方は、ビタミンdのサプリメントとの併用は控えましょう。
生活習慣病の1つでもあるのが脂質異常症です。ヨーグルトは健康食品として多くの人々に親しまれており、日常の食生活に取り入れることで健康維持に役立つと言われています。しかし、脂質異常症の人々にとって、ヨーグルトは本当に安全で健康的なので[…]
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ビタミンdの効果まとめ
ここまでビタミンdについてお伝えしてきました。
ビタミンdの要点を以下にまとめます。
- ビタミンdは骨の形成にかかわるため、不足すると骨軟化症や骨粗しょう症のリスクが高まる
- ビタミンdを摂りすぎると血中のカルシウムが増えすぎるため、高カルシウム血症のリスクなどがある
- ビタミンdの1日の摂取目安量は成人で8.5μgだが、日本人の多くは不足気味である
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。