年齢を重ねるにつれ、誰もが薬を飲む機会が増える傾向にあります。
複数の薬を服用する場合や、飲み合わせ、飲むタイミングなど自己管理が難しい場合も少なくありません。
そこで服薬管理が大切となってきます。
今回は、日常生活を続ける上で重要となる服薬管理について解説します。
- 服薬のタイミング
- 飲み忘れを防ぐための方法
- 飲み忘れてしまった場合の対処法
多種類の薬を常用する際の注意点も含めて解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
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服薬管理とは?
服薬管理とは、処方された薬の『量』『飲む時間』『回数』を正しく守り、それらを管理することをいいます。
飲む薬を間違えてしまった場合、時には命に関わる危険性もあります。
細心の注意を払って服薬管理する必要があります。
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服薬のタイミングはとても大切
処方薬を決められたタイミングを守って服用することは、正常な効果を発揮するために重要です。
薬は胃の内容物により吸収率に差が出ることもあります。
種類によっては胃が空になった状態で服用すると胃に負担がかかる薬もあります。
服薬を誤れば、体調を改善するどころか、新たな身体の不調を招いてしまう恐れもあります。
自分の身体を守る為に、服薬のタイミングを管理する事が大切です。
「服用」と「服薬」は、薬を飲むという意味は同じですが、それぞれ意味があります。
「服用」は薬を飲むことであり、「服薬」は薬を正しく飲むことです。
薬剤師の指示により正しく薬を飲むという場合は、「服薬」が主に使われます。
服薬のタイミングは、以下の8つに区別されています。
服薬時間 | 時間帯 | 薬の例 |
食直前 | 食事の直前 | 糖尿病の薬等 |
食前 | 食事前30分以内 | 食欲に関係する薬・胃薬等 |
食直後 | 食事の直後 | 胃腸障害を起こしやすい鎮痛剤等 |
食後 | 食事後30分以内 | 定期服用の薬等 |
食間 | 食事と食事の間(1度目の食事から2時間程度あける) | 胃の粘膜に直接吸収させたい修復薬等 |
起床時 | 起床後すぐ | 骨粗しょう症の薬等 |
就寝前 | 就寝30分前 | 睡眠に関係する薬等 |
頓服 | 高熱・痛み等の症状を一時的に和らげたい時 | 痛み止めの薬等 |
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確実な服薬のためにできる工夫
服薬管理は、薬の量が増えればその分複雑化するため、自己管理が難しくなります。
ここでは、確実に服薬管理するための方法を詳しくご紹介します。
一度に飲む薬はひとつにまとめる
薬局での調剤時に1回分の薬をまとめる方法です(一包化)。
薬を1つにまとめるという意味で『ワンドーズ』と呼ばれています。
朝・昼・夕など、同じタイミングで複数の薬を服用する場合に適した方法です。
基本的に、医師への相談・調剤指示が必要となります。
指示がない場合でも、実費負担であればほとんどの薬局で一包化が可能です。
一包化に対してのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
飲み間違いが減る | 服用途中で中止となる薬があった際、取り出しづらい |
紛失が減る | それぞれの薬の効果を確かめにくい |
包装の処理が簡単 | 点数加算がある(薬代が高くなる) |
湿気によって効果が薄れる薬もあるため、全ての薬を1つにまとめることが難しい場合もあります。
一包化を希望する場合は、かかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。
カレンダーなどの管理グッズを使う
ポケット付きのカレンダー等に、1日・1回分ずつの薬をあらかじめ入れておく方法です。
管理グッズは、「壁掛けカレンダータイプ」「シートタイプ」「ピルケースタイプ」が一般的です。
それぞれメリット、デメリットは以下の通りです。
グッズの種類 | メリット | デメリット |
壁掛けカレンダー | 複数の人が服薬状況を把握できる | 個人情報の取り扱いに注意 |
抗菌加工シート | 衛生面に優れている | 自分で分包し、シールでふたをする手間がある |
ピルケース | 携帯性・収納性を重視可能 | 自分で薬を入れ分ける必要がある |
管理グッズにより、1週間、2週間、1か月など対応期間は様々です。
自分の生活スタイルに合ったグッズを活用することで、服薬管理をスムーズに行えるようになります。
また、管理グッズを利用することで、在宅時と外出時の使い分けに利用することもできます。
服薬管理のスマホアプリも登場!
最近では、服薬管理ができるスマホアプリが多く登場しています。
スマホで服薬管理ができるため、紙製のお薬手帳ではつい忘れがちの方にも便利です。
例えば、旅先でも過去の服薬履歴をスムーズに確かめられます。
アプリによっては、薬局に行く前に処方箋のデータを撮影し、送信しておくことも可能です。
薬局での待ち時間が短縮され、時間の有効活用にもなります。
家族が定期的にチェックする
同居でない場合、服薬の時間に電話をかけてもらう方法です。
自分で管理することに不安がある場合、家族に協力してもらうことで解消できます。
また、テレビ電話を利用すれば直接顔を見ながら会話ができる為、さらに安心でしょう。
薬剤師に訪問してもらう
医療保険には在宅患者訪問薬剤管理指導という制度があります。
この制度は、かかりつけ医の指示に従って薬剤師が自宅訪問し、薬を届けます。
そして、適切な服薬管理ができているかを確かめ指導する制度です。
薬剤師による訪問結果は、かかりつけ医に伝えられてフォローアップもされます。
ただし、在宅患者訪問薬剤管理指導を利用できるのは、基本的に月4回という制限があります。
それ以上は、自己負担となるため注意が必要です。
かかりつけの薬局をつくる
かかりつけ薬局とは、いつも身近にあり相談ができる薬局のことです。
自分の体質や病歴を把握している薬局の存在は、治療意欲を維持する心強い味方となります。
かかりつけ薬局にできることとして、
- 服薬の効果に対する継続的な経過観察
- 薬による副作用の有無を確かめる
- 複数の医療機関から処方された薬が重複していないかチェックする
- 本人の状況に合った形状・味・服用タイミングであるか確かめる
等があります。
不安なことや困ったことを気軽に相談できる薬局をつくり、安心して薬を服用できる環境を作りましょう。
服薬介助について
服薬介助は、正しい服薬管理や服薬ができなくなった高齢者などの介助をすることです。
服薬介助について以下の2つを挙げます。
- 服薬介助の方法
- 服薬介助を行う上での注意点
それぞれの内容についてご紹介します。
服薬介助の方法
服薬介助の基本的な流れは以下のようになります。
- お薬カレンダー、薬、白湯を用意する
- 利用者の様子に変わりがないことや姿勢を確認する
- 薬の名前と利用者が一致しているか確認する
- 自立している方は薬を渡して服用を見守る
- 自分で飲めない方には薬を口に投入するなどの介助をする
- 薬は白湯で飲む(普段咳き込みがある方にはとろみを付けた水などを利用)
- 口の中を見せてもらい、正しく服薬ができたことを確認する
- 服薬の記録を残す
薬を服用してもらうときの以下のような工夫があります。
- 内服薬の服用の工夫
- 錠剤やカプセルは1つずつ舌の上にのせる
- 粉薬や権粒剤の量が多いとき、飲み込む力が弱いときはオブラートに包む
- 服用ゼリーの利用
- 舌下剤はかみ砕いたり飲み込んだりしないようあらかじめ注意する
- 液体の薬の場合は容器を振って中味を均一にしてから少しずつ飲む
- 飲み間違え防止の工夫
- 1度に服用する薬が多い場合は薬を一包化しておく
- 複数人の介助している場合でも、薬袋は1回に1人分だけ扱う
- お薬カレンダーやお薬ボックスで管理する
服薬介助を行う上での注意点
服薬介助を行う上で以下のような注意点があります。
薬を服用するときの姿勢
- ベッド上の介護の場合は挙上角度は30~90度に調整する
- 椅子や車いすの場合
- 椅子の場合、足を床にしっかりつけ、やや前傾姿勢であごを引く
- 車いすの場合も足は床におろし、姿勢は前傾であごを引く
水分の種類
- 基本的には水もしくは白湯
- 水に抵抗がある場合はお茶(麦茶や玄米茶がよい)も可能
- ジュースでの服用はやめる
薬の種類や数
誤薬を防ぐため利用者1回分の薬の一包化や服薬ボックスを利用する
飲み込み確認
薬が確実に飲み込めているか口を開けてもらい確認する
飲んだ後の変化の有無
- 高齢者の場合、服用後に副作用が起こる可能性があるので、体調に変化がないか様子を見る
- 体調に変化がある場合は安静な状態を保ち、かかり付け医や看護師に報告する
認知症高齢者の方の服薬介助には以下のようなことも加えて注意する必要があります。
- 認知症高齢者の方の認知機能低下の状態を把握し対応すること
- 服薬は納得していただいてから始める
- 服薬は利用者の方の生活のタイミングに合わせる
- 服薬と食事はできるだけ混用を避け、単独の服用をする
- 薬はゼリーやオブラートに包み服用する
薬を飲み忘れてしまったら…
万が一、薬を飲み忘れてしまった場合、まずは薬の特性を確かめることが大切です。
忘れてしまった回数の薬を一気に飲むことは望ましくありません。
では、その対処法を詳しく解説します。
決められた服用回数 | 対処方法 | 必要な時間間隔 |
1日3~4回 | 気づいた時に1回分飲む | 前回服用から4時間経過後 |
1日2回 | 気づいた時に1回分飲む | 前回服用から8時間経過後 |
1日1回 | 気づいた時に1回分飲む | 次回服用までの期間を医師・薬剤師に相談 |
1週間・1か月に1回 | 数日ずれるだけであればその時に飲む | 薬の種類によっては効果に関わるため医師・薬剤師に相談 |
頓服 | 1日に飲める回数を確かめる | 薬の種類によって前回服用からの時間が異なるため、医師・薬剤師に相談 |
抗生物質等の場合は、服用中断によって治療に支障をきたす可能性があります。
必ず最後まで飲み切りましょう。
また、薬によっては細かい時間指定があります。
薬を飲み忘れてしまい困った際は、自己判断せず医師・薬剤師に相談しましょう。
服薬管理の重要性
全国保険薬局の処方調査では、75歳以上の約25%が7種類以上、40%が5種類以上の薬の処方を受けているという結果があります。
また、厚生労働省のデータでは、服用する薬の数が増加(多剤服用)する場合、有害事象が増えることが明らかになっています。
高齢者の多剤服用は、以下のリスクが挙げられます。
- 薬を代謝する肝臓や、排出機能を担う腎臓が老化によって衰えるため、薬の成分が体に蓄積されやすくなる
- 薬の1つ1つの副作用は小さくても、多剤服用によって副作用が強く出る場合がある
多剤服用のリスクは高齢者だけの問題ではなく、誰にでも起こる可能性があります。
全年代の30%近くの方が、3〜4種類の薬を服用しているというデータもあります。
多剤服用によって、薬の効果(メリット)よりも副作用や経済的な負担(デメリット)の方が上回ってしまう状態のことを『ポリファーマシー』といいます。
ポリファーマシーに陥りやすい傾向として、複数の医療機関を受診していることが挙げられます。
その結果、
- 胃腸薬・下剤・睡眠剤等、同じような薬の重複処方
- 服用中の薬の副作用症状を抑えるために、別の医療機関で薬をもらう
といったことが起きます。
ただし、多剤服用が必要な病気もあります。
例えば、高血圧症や糖尿病等の治療が挙げられます。
これらの病気では、症状により薬を複数組み合わせて治療が行われる場合もあります。
服薬管理で正確な判断が難しい場合は、担当医師やかかりつけ薬局に相談して自己判断しないようにしましょう。
出典:厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)案」
服薬管理の看護計画O-P, T-P, E-Pについて
看護過程の一つに看護計画があります。
看護の対象が抱えるさまざまな問題を解決するためのものです。
看護計画は個別の看護問題に対し看護目標を達成するための計画を記載したものです。
看護計画の構成はO-P, T-P, E-Pからなります。
それぞれの内容について以下にご紹介します。
O-P(観察計画)
例えば以下のような看護問題で考えてみます。
- 看護問題:自力での薬の服用能力の低下がある
- 看護目標:高齢や認知機能に応じた日常生活の継続
O-P(観察計画)では以下のようなことを評価します。
- 高齢者の方が自分で薬の服用ができるかどうかの評価
- 服薬方法の説明が理解できているかどうかの評価
- 血液データで栄養状態、肝・腎機能データなど服用薬の効果
- 服薬拒否の理由が何なのか、嚥下機能の低下なのか、副作用かなどの評価
- 多剤服用による過剰投与や副作用、相互作用出現につながらないかの評価
O-P(観察計画)には以下のような項目が挙げられます。
- 視力・聴力
- 認知状態
- 手指の巧緻性
- 嚥下状態
- 服薬方法
- 血液データ
- 服薬拒否の有無
- 処方薬と服薬状況
T-P(ケア計画)
T-P(ケア計画)は、OーPで集めた情報から必要となる部分のケアを行います。
ケアは受ける方がどのようにすれば日常生活を継続していけるかを考えます。
T-P(ケア計画)には以下のような項目が挙げられます。
- 身体状況に応じた服薬の援助を行う
- 認知機能の低下の程度に応じた援助を行う
- 医師の指示に基づく薬剤の使用
E-P(教育計画)
E-P(教育計画)では、服薬管理の重要性を家族の方に理解してもらいます。
E-P(教育計画)では以下のような項目が挙げられます。
- 服薬管理の内容を家族の方に説明する
- 服薬後の症状の出現や体調に変化があれば伝えてもらうように説明する
- 認知機能の低下が進行する可能性を患者や家族に説明する
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服薬管理まとめ
ここまで、服薬管理の重要性や管理方法について解説してきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 服薬のタイミングを守ることで、薬の効果を最大限に得られる
- 薬の飲み忘れは、一包化・カレンダー管理・スマホアプリ・家族のサポート、かかりつけ薬局を作ることで防げる
- 服薬を忘れてしまった場合、忘れた分の回数を一気飲みせず、1日の服用回数・次の服用までの時間を確かめてから再開する
これらの情報が皆さまのお役に立つこごができれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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