便通とは、毎日あるのが健康な状態です。
便秘になると、腹痛や食事量が減るなどの症状が現れ、体調に悪影響を及ぼします。
特に、年齢が上がると便秘になる方が多く、女性だけでなく男性も便秘になる方が増えていきます。
そこで今回は、高齢者の便秘に良い食事を中心に便秘予防のポイントや習慣について解説していきます。
- 高齢者が便秘になる原因
- 高齢者の便秘に良い食事
- 便秘予防のポイントや習慣
高齢者の便秘改善や便秘予防に役立てたい方にも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ、最後までお読みください。
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高齢者の便秘とは
便秘とは、便通が3日以上なかったり、便が硬かったり、便が少なく残便感があったりする状態です。
高齢者の便秘は、
- 下腹部の不快感や膨れた感じ
- 腹痛や吐き気
などがあり、若年者と比べても症状に大きな違いはありません。
若年層では女性に多い便秘ですが、高齢者になると性別関係なく便秘に悩みを抱えている方が多くいます。
便秘を放置しておくと体に悪影響があるため、しっかりと対策していく必要があります。
まずは、高齢者の便秘の原因について解説していきます。
原因
高齢者の便秘の原因は主に以下の3つが挙げられます。
- 腸内細菌のバランスの変化
- 排便に関わる筋肉の衰え
- 食欲の変化
それぞれの原因について解説していきます。
腸内細菌のバランスの変化
人間の腸内には約1000種類以上の腸内細菌が存在します。
腸内細菌は以下の3つに分類されます。
善玉菌 | 身体に対して良い働きをする菌 |
悪玉菌 | 身体に対して悪い働きをする菌 |
日和菌 | どちらにもつかず、善玉菌・悪玉菌どちらか有意な方に働く菌 |
腸の働きは、この3つの菌のバランスによって変化します。
高齢者になると善玉菌が減少し、腸内は悪玉菌が優位となってしまう傾向があります。
腸内に悪玉菌が増えることで、腸内環境が悪化し便秘へと繋がります。
排便に関わる筋肉の衰え
高齢者になると、どうしても筋力は低下してしまいます。
排便時はお腹に力を入れると思いますが、高齢者になると腹部の筋力も低下してしまいます。
そのため、お腹に圧力をかけて便を押し出すことができず、スムーズに排便することが難しくなり便秘へと繋がってしまいます。
食欲の変化
高齢者の方は、義歯を使用されている方や病気などによって嚥下機能が低下している方がいます。
食べられるものが限られている場合があるため、食事量が減少してしまったり、食べる物が偏ってしまったりします。
それにより腸内環境が乱れてしまい便秘へと繋がってしまう可能性があります。
偏った食事により食物繊維が不足しないよう、食事内容を工夫し栄養面に気をつけることが大切です。
症状
毎日ある便通が、3日に1回などの不規則な排便ペースに変わっている時は、便秘になりつつあるかもしれません。
便秘になった場合、下記のような症状がみられる可能性があります。
腹痛 | 吐き気や嘔吐 | 排便時の痛み | 排便に時間がかかる |
頭痛などの神経症状 | 口臭や体臭がきつくなる | 膨満感 | げっぷが多くなる |
また、高齢者の便秘は一時的な便秘ではなく、慢性的になっている場合が多くあります。
普段からお腹の調子に対して注意することが必要です。
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高齢者の便秘に良い食事
便秘に良いとされている食事を5つご紹介します。
- 納豆やオクラ
- ヨーグルト
- バナナ
- りんご
- オリゴ糖
それぞれ詳しく解説していきます。
納豆・オクラなど
納豆には「納豆菌」といわれるものが含まれており、便秘に良いといわれています。
納豆菌は腸までしっかりと届き、善玉菌を増殖させたり、腐敗菌の増殖を防いでくれるなどの効果があります。
善玉菌が増え、腸内環境が整うことで、便秘が解消されることを期待できます。
オクラには水溶性食物繊維の「ペクチン」が多く含まれています。
このペクチンには、整腸作用があり便秘改善へと導いてくれます。
また、整腸作用以外に糖尿病を予防する効果や高血圧予防の効果もあります。
高齢者なら積極的に摂取しておく方が良い食材です。
ヨーグルト
ヨーグルトには、ビフィズス菌や乳酸菌が多く含まれています。
このビフィズス菌などは、善玉菌の栄養分になります。
ヨーグルトを食べることにより善玉菌が増加し、悪玉菌が減少します。
その結果、腸内環境のバランスが整い、便秘を解消していきます。
バナナ
バナナには、「マグネシウム」や「レジスタントスターチ」という成分が多く含まれています。
マグネシウムは腸の動きを活発にする効果があり、便通を促す働きがあります。
レジスタントターチは食物繊維の「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類の特徴を持っています。
そのため、便を柔らかくし便の体積を増やすことによって、排便を促す効果があります。
青みがかっているバナナの方が、レジスタントスターチを豊富に含みます。
便秘予防のために食べるのであれば、熟したバナナより、少し青いくらいのバナナを選ぶ方がいいでしょう。
りんご
りんごは水に溶けにくい「不溶性食物繊維」が多く含まれています。
不溶性食物繊維は水分を吸収することで何倍にも膨れ上がる特徴があります。
それにより、便の体積が増えることで腸壁を刺激します。
腸壁が刺激されると、蠕動(ぜんどう)運動が起き、便秘を改善していきます。
りんごの皮は、果肉部分よりも食物繊維やビタミンCが多く含まれています。
できるだけ皮ごと食べるようにすると、より便秘改善にいいでしょう。
オリゴ糖
オリゴ糖は善玉菌を増やす効果と悪玉菌の活動を抑える働きがあります。
善玉菌が増えることで腸内環境が整い、便秘改善へつながります。
オリゴ糖はごぼうや玉ねぎなどに多く含まれています。
血糖値の上昇にほとんど影響しないため、糖尿病を持っている方でも問題なく摂取することが可能です。
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高齢者が便秘を予防する食事のポイント
高齢者が便秘を予防するための食事には、注意すべきポイントがあります。
- 規則正しく食べる
- 食物繊維を摂る
- 水分補給をこまめにする
- 発酵食品を食べる
- 良質な油を摂取する
- 偏食しない
それぞれのポイントを詳しく解説していきます。
規則正しく食べる
食事は規則正しく食べることが大切です。
可能であれば、毎日3食を同じ時間帯に食事するようにしましょう。
食事の時間を固定することで腸の動きにもリズムができます。
また、朝食を食べることによって胃腸のスイッチが入り、朝から腸の動きを促すことができます。
1日を元気に過ごすという意味も含めて、朝食はしっかりと食べるようにしましょう。
食物繊維を摂る
便秘を改善するために、食物繊維を積極的に摂取しましょう。
水溶性食物繊維は水分を保持し、便を柔らかくすることで排便を促してくれます。
また、不溶性食物繊維は腸の蠕動運動を活発化させ、便の体積を増やす働きをします。
どちらか一方だけ多く摂取するのではなく、2種類の食物繊維をバランス良く摂取しましょう。
水分補給をこまめにする
トイレが近くなるからという理由で水分をあまり取らない高齢者が多いです。
この理由から、高齢者は特に水分不足になりやすく、便秘を悪化させてしまいます。
水分が少ないと便が固くなってしまい、腸内に溜まってしまいます。
そのため、小まめに水分を摂取することをオススメします。
発酵食品を食べる
納豆やキムチ、ヨーグルトなどの発酵食品を積極的に摂るようにしましょう。
発酵食品を食べることで、体内で「短鎖脂肪酸」というものが作られます。
この短鎖脂肪酸がつくられることで、腸内は酸性の状態に傾きます。
悪玉菌は酸性に弱いという特徴があります。
そのため、腸内では悪玉菌が減り、善玉菌が優位となり腸内環境が整います。
1日1品でも発酵食品を食べるように意識し、継続して摂取することで、便秘改善につながります。
良質な油を摂取する
良質な油を摂るようにしましょう。
例えば、オリーブオイルは良質な油の1つです。
オリーブオイルには「オレイン酸」というものが豊富に含まれています。
このオレイン酸は、小腸で吸収されにくい性質を持っています。
大腸まで成分が届くことで、腸を刺激し蠕動運動が活発化します。
また、硬い便を柔らかくする作用もあり、溜まっていた便を排便しやすくしてくれます。
偏食をしない
高齢者になると体の衰えなどから、簡単な食事で済ませてしまうこともあるでしょう。
また、自分の好きなものばかり食べると、栄養バランスが偏り便秘へと繋がります。
偏った食事になると、腸内の悪玉菌が増殖し腸内環境が悪化してしまいます。
毎日、食事を作ることが難しい場合は、宅配弁当などのサービスもあるため、利用してみるのもいいでしょう。
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高齢者が便秘にならない為の習慣
便秘にならないために食事面で大切なことをお伝えしました。
食事以外にも
- 排便習慣
- 適度な運動
の2つについても気をつけておきましょう。
排便習慣
トイレに行って座る習慣を付けることはとても大切です。
便秘を予防する意味でも排便習慣を身につけていきましょう。
排便をしたくなくても、食事をした後など決まった時間にトイレに行くようにしましょう。
最初は排便ができなくても、毎日行うことで体が習慣を覚え、腸の動きが変化していきます。
まずは、決まった時間にトイレに行くようにしてみましょう。
適度な運動
便秘を予防するためには、適度な運動も必要です。
ただし、激しい運動を行う必要はありません。
高齢者でもできるような散歩やグランドゴルフなど、継続してできるような運動が良いでしょう。
寝たきりで体を自由に動かすことができない場合は、横向きにしたり仰向けにしたり体位変換することも意味があるので行ってあげましょう。
便秘は年齢とともに増加する?
便秘は、高齢者になるにつれて増加していきます。
男性 | 女性 | |
9歳未満 | 5.8 | 45.7 |
10~19歳 | 4.6 | 6.6 |
20~29歳 | 6.5 | 14.5 |
30~39歳 | 9.0 | 35.2 |
40~49歳 | 10.4 | 34.8 |
50~59歳 | 13.8 | 38.3 |
60~69歳 | 27.2 | 45.6 |
70~79歳 | 67.1 | 82.2 |
80歳以上 | 107.6 | 108.3 |
(単位:人口千対{年間の件数/人口×1000})
平成28年の国民生活基礎調査によれば、20~60 歳までは圧倒的に女性が多いですが、60歳以降になると男女関係なく多くの方が、便秘の自覚症状が増加しています。
そして、80歳以上の高齢者では男女差がなくなると報告されています。
高齢者では、男女関係なく便秘で悩んでいる方は多くいます。
便秘症状がなくても健康管理するうえで、日頃から便通に関して確認しておく必要があります。
高齢者の便秘に良い食事のまとめ
ここまで、高齢者の便秘についてや便秘の原因、やるべき習慣などについて解説しました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 高齢者が便秘になる原因として、食事のバランスや筋肉の衰えなどがある
- 食物繊維が多く含まれている食品を食べることや規則正しく食べ、偏食をしないことが大切
- 排便習慣をつけ、適度な運動を行うことも便秘の改善に繋がる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。