日本人がもっとも不足しやすいビタミンとして挙げられているのが、ビタミンB1です。
かつて日本で2大国民病とされた脚気(かっけ)も、ビタミンB1不足が原因とされます。
ビタミンB1が不足するとどうなるのでしょうか?
今回は、ビタミンB1の不足についてご紹介します。
- ビタミンB1が不足するとどんなことが起きるのか
- ビタミンB1不足に陥りやすいのはどのような人か
- ビタミンB1不足になる原因とは
ビタミンB1の不足について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読み下さい。
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ビタミンB1とは
ビタミンB1は、水溶性(水に溶けやすい)ビタミンのなかの1つです。
別名「チアミン」とも呼ばれています。
ビタミンB1の働き
ビタミンB1の働きは主に2つあります。
- 糖質に含まれるブドウ糖をエネルギーに変換する
- 脳の中枢神経・手足の末梢機能を正常に保つ
ビタミンB1が多く含まれている食べ物
ビタミンB1を含む食べ物は以下の通りです。
穀物(米・小麦等)の胚芽(未精製) | オートミール | 豚肉・赤身肉 |
カツオ | にんにく | 大豆 |
ビタミンB1には疲労回復の効果があります。
日々の生活で疲れが取れないと感じている人に摂取してほしい栄養素です。
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ビタミンB1が不足するとどうなる?
ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える役割を持ちます。
そのため、ビタミンB1不足の場合、エネルギーを作ることができなくなります。
また、ビタミンB1が不足すると以下のような症状が出ます。
- イライラする
- 集中力の低下
- 食欲不振
- 疲労感やだるさ
慢性的なビタミンB1不足は、脳の中枢神経・手足の末梢神経に障害を引き起こすことがあります。
脳の中枢神経に障害が起きた場合
ビタミンB1不足により脳の中枢神経に障害が起きた場合、ウェルニッケ脳症になる可能性があります。
妊娠初期のつわりの時期に発症する妊婦の方もいます。
ウェルニッケ脳症では、眼球の麻痺や意識障害が起こり、進行すると昏睡状態になる場合もあります。
ウェルニッケ脳症が重症化すると起こる可能性がある精神病
コルサコフ症はアルコール摂取量が多い人に起こりやすい症状です。
記憶障害や物忘れなど、記憶に関する症状が出ます。
手足の末梢神経に障害が起きた場合
手足の末梢神経に障害が起きた場合、脚気(ビタミンB1欠乏症)が起こる可能性があります。
脚気の初期症状として食欲不振・疲労感などがあります。
また、進行すると手足のしびれやむくみ等の症状も出ます。
さらに、重症化すると心不全で命を落とす可能性もあります。
膝の下を叩くと自然に足が跳ねる「膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)」が起こるかで発症の有無を確認することが多いです。
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ビタミンB1の過剰摂取について
ビタミンB1を摂取する方法として、
- 医師による指示のもとでのビタミンB1の点滴
- ビタミンB1を含む食材を意識してメニューに取り込む
- サプリメントで補給する
などがあります。
ビタミンB1では過剰摂取になることはありません。
ビタミンB1は以下のように体内で処理されます。
- 体内に取り込まれたビタミンB1は、肝臓に蓄積
- 肝臓に貯められる量が上限までいくと、血液中のビタミンB1の濃度が上がる
- 血液中の上限も達すると過剰分は尿内に排出される
体内で上記のように処理されるため過剰摂取は起こりません。
しかし、サプリメントでの過剰摂取は、頭痛や皮膚のかゆみなどの症状が現れる可能性があるので、1日の規定摂取量を守ることが大切です。
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ビタミンB1が不足する原因は?
ビタミンB1不足する原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
ビタミンB1が不足する原因と対処法をご紹介します。
ビタミンB1が不足する原因
ビタミンB1が不足する原因は主に4つあります。
- 水溶性のため、汗・尿から毎日排出される
- 糖質の多い食事の影響で通常以上にビタミンB1が使われる
- たばこや酒の過剰摂取
- 調理中に流出してしまう
人間の体はビタミンを自力で作り出すことができません。
したがって、ビタミンB1は食べ物によって補う必要があります。
普段の生活をしているだけで、ビタミンB1は体内で使われます。
また、体外に汗・尿として排出されます。
昔の日本人の主食は精白米ではなく玄米が主流だったため、ビタミンB1は意識せずとも毎日摂取できていました。
しかし、現代ではビタミンB1を豊富に含む米ぬかの部分がほとんど取り除かれた精白米が主流です。
お菓子・ジュースなどの清涼飲料水等の過剰摂取で、ビタミンB1不足になることも指摘されています。
ビタミンB1不足の改善方法
ビタミンB1不足の改善方法として、
- 無理なく続ける方法
- 調理方法を変える
ことをご紹介します。
無理なく続ける方法
ビタミンB1不足を改善する方法は以下の通りです。
- 糖質の多い食事を1日に1食はやめてみる
- 糖質が多い食事をしたら、意識してビタミンB1を含む食材を口にする
無理せず食べる方法を変えることから始めるのが大切です。
調理方法を変える
ビタミンB1は水に溶けやすく熱にも弱いという特徴を持ちます。
そのため、調理の過程で30~50%が失われるともいわれています。
調理方法を変え、効率よく摂取することが大切です。
ビタミンB1を効率よく摂取する方法は以下の通りです。
- 米を研ぐ時は研ぐ回数を控えめにする
- 小麦粉で作られたパンではなく全粒粉のパンを選ぶ
- ふりかけなどで種子類(ごま等)に含まれるビタミンB1を少量でも毎日摂取
- にんにく・にら・玉ねぎを有効活用する
「アリシン」という物質はにんにくの特有のにおいのもとです。
「アリシン」はにんにくの中にあるビタミンB1と結合して「アリチアミン」という物質になります。
アリチアミンは、ゆっくりビタミンB1とアリシンに分解されるため、通常であれば体外に排泄されるはずだったビタミンB1を血液中に留めることができます。
また、アリチアミンは熱に強いため、調理をしても失われにくいという特徴もあります。
にんにくだけでなく、にらや玉ねぎにもビタミンB1があるため、食事メニューに取り込むとより多くの効果が望めます。
ビタミンB1不足になりやすい人は?
ビタミンB1が不足しやすい人は以下の通りです。
お菓子やジュースを多く摂取する若者 | 糖質の多いインスタント食を常食としている人 |
常習的に飲酒をする人 | 多くのエネルギーを必要とするスポーツ選手 |
ビタミン吸収に障害が出やすい胃切除をした患者 | ビタミンが不足しやすい人工透析患者 |
インスタント食品の普及により、現代では手間をかけることなく手軽に空腹を満たすことができるようになりました。
学業や仕事が忙しく、コンビニ弁当やカップ麺等といった食事が多い人は注意が必要です。
また、体の状態によっても変化しますが、特に夏はビタミンB1の消費が多くなります。
夏は水分摂取量が増え、暑さの影響で体を維持するためのエネルギーを普段以上に消費するからです。
バランスのとれた食事を心がけ、飲酒や糖質の多い食事をした際は、意識的にビタミンB1を補給することが大切です。
必要な摂取量は?
ビタミンB1は、性別・年代によって必要摂取量が変わります。
厚生労働省が定めるビタミンB1の食事摂取基準は以下の通りです。
性別 | 男性 | 女性 | ||
年齢 | 推定必要量 | 推奨量 | 推定必要量 | 推奨量 |
3~5歳 | 0.6 | 0.7 | 0.6 | 0.7 |
8~9歳 | 0.8 | 1.0 | 0.8 | 1.0 |
15~17歳 | 1.2 | 1.5 | 1.0 | 1.2 |
18~49歳 | 1.2 | 1.4 | 0.9 | 1.1 |
50~74歳 | 1.1 | 1.3 | 0.9 | 1.1 |
75歳以上 | 1.0 | 1.2 | 0.8 | 0.9 |
(単位:mg/日)
出典:厚生労働省『食事摂取基準 一部抜粋』
上記必要量に加えて、妊婦・授乳婦は、女性推奨量の+0.2㎎の摂取が望ましいとされています。
男女ともに15-17歳が最大の推奨量で徐々に下降していきます。
成長期以降ビタミンB1の必要量が減少することから、ビタミンB1は子供の成長期に必要な栄養素の1つであるということが分かります。
ビタミンB1不足まとめ
今回はビタミンB1の不足についてご紹介しました。
ビタミンB1の不足についての要点は以下の通りです。
- ビタミンB1が不足すると、イライラ・集中力低下・手足のしびれ等の症状が現れる
- ビタミンB1不足に陥りやすいのは主に、エネルギーを多く使うスポーツ選手や食事の偏りがある人
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。