夜中に目が覚めることは珍しくありません。
しかし、たびたび繰り返す場合は中途覚醒の可能性があります。
中途覚醒は、放置すると重大な心身の不調につながるおそれがあります。
では、中途覚醒を気にしないでいると、具体的にどのような悪影響があるのでしょうか。
本記事では、中途覚醒を気にしないで放置すると起こり得る事柄について、以下の点を中心にご紹介します。
- 中途覚醒になる原因とは
- 中途覚醒を気にしない場合のリスク
- 中途覚醒を改善する方法
中途覚醒について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
中途覚醒について詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてお読みください。
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中途覚醒とは
そもそも中途覚醒とはどのような状態を指すのでしょうか。
まずは基本的な事項を確認していきましょう。
中途覚醒は不眠症のひとつ
中途覚醒は不眠症の1つです。
不眠症の中でも、眠りが浅く、睡眠中に何度も目が覚めるタイプにあてはまります。
具体的には、夜中に2回以上目が覚める場合は中途覚醒の可能性があります。
中途覚醒には、トイレで何度も起きたり、のどが渇いて目が覚めたりするケースも含まれます。
出典:厚生労働省【不眠症】
その他の不眠症タイプ
不眠症は、中途覚醒を含めて4つのタイプがあります。
中途覚醒以外の3タイプの特徴をご紹介します。
入眠障害
寝つきが悪いタイプです。
不眠症の中でも特に数が多いタイプと指摘されています。
横になっても30分〜1時間以上眠れない場合は、入眠障害が疑われます。
早朝覚醒
予定よりもかなり早い時間に目覚めるタイプです。
起床時刻より2時間以上前に目が覚める場合は、早朝覚醒の可能性があります。
1度目が覚めると、再び寝られないのが特徴です。
特に高齢の方に多くみられます。
熟眠障害
十分寝ているにもかかわらず、寝た気がしないというタイプです。
朝、疲れが残っていることも少なくありません。
睡眠中の呼吸状態や、手足の痙攣に原因があることが多いです。
出典:厚生労働省【不眠症】
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中途覚醒の原因
中途覚醒の原因は様々です。
代表的な原因をご紹介します。
加齢
一般的に、年を重ねるごとに眠りは浅くなります。
理由として、入眠・覚醒のリズムが変化することが挙げられます。
若いころと比べると眠りの質が変化するため、夜中に些細な物音がしたり、寝返りをうったりしただけで、目を覚ましやすくなります。
あるいは、早寝早起きになるケースも多いです。
加齢による中途覚醒は老化現象の1種であるため、さほど気にしないで放置してもかまいません。
ただし心身の不調などがある場合は、医療機関の受診がおすすめです。
無呼吸症候群
無呼吸症候群は、睡眠中に無意識に呼吸が止まることです。
原因は睡眠中に気管の内部が狭くなることです。
呼吸が止まると睡眠中に息苦しさを感じるため、夜中に目が覚めやすくなります。
傾向として、無呼吸症候群は肥満体型の方に多くみられます。
ストレス・うつ病
ストレスが多い方やうつ病の方は、脳が興奮しやすくなっています。
そのため、横になっても深い眠りを得られないことがしばしばです。
脳が興奮しやすくなるのは自律神経のバランスが崩れるためです。
具体的には交感神経の活性化が原因です。
交感神経が活性化すると、心拍や血圧が上昇します。
眠っても心身の緊張状態が続くため、眠りは自然と浅くなります。
生活習慣病
中途覚醒を誘発しやすいのは肥満・高血圧・糖尿病です。
血圧が高い方は交感神経が活性化されるため、脳が興奮しやすくなります。
結果、眠りが浅くなり、夜中に何度も目が覚めるというわけです。
ちなみに肥満・糖尿病は高血圧に発展しやすいため、同じく交感神経の活性化を招きます。
なお、糖尿病の方はのどが渇きやすいという特徴があります。
自然と水分摂取量が増えるため、夜中に何度もトイレに起きるというケースが少なくありません。
また、のどの渇きで目が覚めることもしばしばです。
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中途覚醒を気にしないで放置するのは危険!
夜中に目が覚めること自体は珍しくありません。
そのため、中途覚醒をあまり気にしないという方もおられます。
しかし、何度も目が覚めると睡眠の質が低下しやすくなります。
睡眠が十分にとれない状態が長く続くと、心身に悪影響が出る可能性があります。
ときには重大な健康被害につながることもあります。
よって、中途覚醒を気にしないで放置するのは望ましくありません。
では、中途覚醒を気にしないで放置した場合のリスクについて具体的にみていきましょう。
うつのリスク
中途覚醒を気にしないで放置すると、うつ病のリスクが上昇します。
主な理由は2つあります。
1つ目は、睡眠不足が脳機能を低下させるためです。
うつ病は心の病気と思われがちですが、実は脳にも異常が生じています。
具体的には、脳の神経伝達物質の働きが悪くなり、うつ病になりやすくなります。
2つ目の原因はストレスです。
不眠状態が続くと、眠れないこと自体にストレスを感じやすくなります。
あるいは睡眠不足による倦怠感や集中力の低下なども、ストレスを誘発します。
ストレスはうつ病の代表的な原因です。
なぜストレスがうつ病を引き起こすのかというと、やはり原因は脳にあります。
ストレスが積み重なると、脳は疲れてしまいます。
結果、情報伝達物質の働きなどが低下するため、うつ病に至るというわけです。
ちなみに中途覚醒とうつ病は、相関関係にあります。
つまり中途覚醒の方はうつ病を発症しやすく、うつ病の方は中途覚醒が起こりやすくなります。
一方の症状が悪化したために、もう一方も重症化するケースも少なくありません。
悪循環に陥りやすいため、どちらか一方を発症した場合は放置せずに治療しましょう。
糖尿病や高血圧のリスク
中途覚醒を気にしない方は、糖尿病・高血圧のリスクが上昇します。
糖尿病のリスクが高くなるのは、インスリンの働きが低下するためです。
インスリンは血糖値を下げるホルモンです。
通常は、血糖値が高くなったときに膵臓から分泌されます。
中途覚醒によって睡眠の質が低下すると、インスリンの分泌に支障が出やすくなります。
結果、血糖値が下がりにくくなるため、糖尿病のリスクが増大します。
一方、高血圧のリスクが上昇するのは、交感神経が活性化しやすくなるためです。
夜中に何度も目が覚めると、眠りが浅くなるため、脳は十分な休息が取れなくなります。
簡単にいえば、身体は眠っていても脳は覚醒している状態になります。
脳が覚醒すると交感神経が活性化しやすくなります。
交感神経が活性化しすぎると、血圧が高い状態が慢性的に維持されます。
すなわち高血圧に至るというわけです。
高血圧状態は血管に負担がかかるため、動脈硬化のリスクを高めます。
動脈硬化は、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患を引き起こすことも少なくありません。
つまり中途覚醒を気にしないで放置するのは、間接的に命の危機を招きかねないのです。
出典:NHK【血糖値の調節】
他の病気が隠れている可能性も
不眠症を引き起こしやすい疾患には以下があります。
高血圧 | 頻尿 | 糖尿病 |
心臓病 | アレルギー・花粉症 | 脳卒中 |
呼吸器疾患(喘息・せき) | 関節リウマチ | 腎臓病 |
そのほかに代表的なのは、睡眠時無呼吸症候群や睡眠関連運動障害です。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に気道がふさがって呼吸が止まる状態です。
全身・脳が低酸素状態に陥るため、睡眠が浅くなり、結果として目が覚めやすくなります。
一方、睡眠関連運動障害とは、睡眠中に勝手に身体が動く状態です。
具体的には以下のような疾患が含まれます。
- むずむず脚症候群
- 周期性四肢運動障害
- 歯ぎしり
- こむら返り
むずむず脚症候群は、入眠時・睡眠中に脚がむずむずする疾患です。
具体的にはしびれ・かゆみ・虫が這いまわっているような感覚があります。
周期性四肢運動障害は睡眠中に脚が痙攣するというものです。
自覚していることもあれば、無自覚なケースもみられます。
いずれの疾患も睡眠の質を低下させます。
身体が動くことで、どうしても脳が覚醒しやすくなるためです。
睡眠の質の低下は、高血圧・動脈硬化・糖尿病などのリスクを高めます。
特に睡眠時無呼吸症候群は、高血圧・動脈硬化の発症率が高くなります。
全身の酸素が少なくなる分、心臓がより多くの血液を送り出そうとするためです。
心臓や血管に大きな負担がかかるため、高血圧・動脈硬化などが起こりやすくなります。
中途覚醒の原因が別の疾患にある場合は、まず疾患の治療を優先しましょう。
原因疾患が治癒すれば、中途覚醒も収まる可能性があります。
反対に気にしないでいると、中途覚醒・原因疾患ともに症状が進行するおそれがあります。
ときに命に危険を及ぼしかねないため、早めに治療することが大切です。
出典:厚生労働省【e-ヘルスネット(不眠症)】
夜中に何度も目が覚めてしまうことはないでしょうか。熟睡できずに疲れが取れないことが続くと、うつ病になるリスクがあります。中途覚醒などの不眠症とうつ病には、どのような関係があるのでしょう?中途覚醒やうつ病を発症しないためには、[…]
中途覚醒を改善するには?
中途覚醒の改善方法をご紹介します。
夜中に目が覚めやすい方は、ぜひお試しください。
出典:厚生労働省【不眠症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)】
起床時間・就寝時間を一定にする
毎日同じ時間に起床・就寝すると、睡眠リズムが整いやすくなります。
具体的には、朝は決まった時間に目が覚め、夜も同じ時間に眠気を催しやすくなります。
睡眠リズムが整うのは、体内時計が整えられるためです。
反対に起床・就寝時間が不規則な場合は、体内時計が狂いやすくなります。
体内時計を一定に保つためにも、睡眠リズムは一定に保ちましょう。
休日もできる限りリズムを乱さないことが大切です。
寝る前の飲酒を避ける
寝酒という言葉があるように、一般的にお酒は睡眠を助けるイメージがあります。
しかし実は、お酒は安眠を妨げる原因です。
酔っぱらうと寝つきはよくなるものの、眠り自体は浅くなります。
理由は、アルコール分解のために、睡眠中も肝臓がフル稼働するためです。
また、アルコールの利尿作用によって、夜中に尿意を感じやすいのも中途覚醒の原因の1つです。
ぐっすり眠るには、就寝前のお酒は控えるのがベストです。
具体的には、お酒は就寝の2時間前までに飲み終わりましょう。
就寝前にスマホやPCを見ない
就寝前は、スマホやPCの使用は控えましょう。
理由は、各機器が発するブルーライトにあります。
ブルーライトは、可視光線の中で最も波長が短く、かつエネルギーが強い光です。
長時間見続けると、脳が興奮しやすくなります。
つまり就寝前にブルーライトを使用すると、脳が興奮して眠りが浅くなります。
結果、中途覚醒のリスクが高まるというわけです。
寝る前は、ブルーライトを発する機器の使用は避けましょう。
少なくとも、スマホ・PC使用は就寝1時間前に終わらせることが望ましいです。
日中に体を動かす
日中に体を動かすと、適度に疲労します。
そのため、夜はぐっすり眠りやすくなります。
また、運動は自律神経のバランスを整える作用もあります。
筋肉の緊張をほぐすことで、交感神経の働きが抑制されるためです。
なお、自律神経を整えるためには、日光の下での運動がおすすめです。
特に朝日は、体内時計と自律神経を整えるのに役立ちます。
眠りが浅いという方は、早朝の散歩やストレッチなどを習慣にするのも良い方法です。
出典:厚生労働省【e-ヘルスネット(快眠と生活習慣病)】
夜に目が覚めてなかなか寝付けないという方は、中途覚醒の可能性があります。中途覚醒は、放置すると大きな病気に発展するリスクがあるため、早めの対策が必要です。中途覚醒を改善するには、どのように対策すればよいでしょうか?この記事で[…]
5人に1人が「睡眠途中に目が覚めて困る」
日本人の多くが不眠症だと指摘されます。
実際に厚生労働省は、日本人の5人に1人は睡眠に何らかのトラブルを抱えていると発表しています。
具体的なトラブルは以下の通りです。
- 夜間、睡眠途中に目が覚めて困った
- 睡眠時間が足りなかった
- 日中、眠気を感じた
中途覚醒などで睡眠が不足すると、脳や身体が十分な休息をとれません。
すると仕事中などに眠気を感じたり、集中力・注意力が低下したりします。
結果、居眠りや重大なミス・事故の可能性が高まります。
居眠りやミスが重なれば、仕事をクビになる可能性も否定できません。
また、睡眠不足は体調不良やストレスなどを引き起こすこともあります。
ときには命にかかわる重大な疾患に発展しかねません。
仕事や健康に悪影響を及ぼさないためにも、十分な睡眠を確保することが大切です。
より具体的には、睡眠の質を上げましょう。
たとえ睡眠時間が十分でも、眠りが浅ければ睡眠が足りているとはいえません。
反対に睡眠時間が短くても、十分に寝たと感じるなら不眠症にはあたりません。
眠りの質をあげるには、まず生活習慣を見直すことが大切です。
具体的には、起床・就寝時間を一定に保ったり、就寝前のアルコール・ブルーライト使用を控えたりしてください。
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中途覚醒は気にしないで大丈夫?まとめ
ここまで中途覚醒を気にしないで放置すると起こり得る事柄についてお伝えしてきました。
中途覚醒に関する要点を以下にまとめます。
- 中途覚醒の主な原因は、老化・無呼吸症候群・ストレス・生活習慣病など
- 中途覚醒を気にしないで放置すると、うつ病・生活習慣病などのリスクが上昇する
- 中途覚醒を改善する方法は、睡眠リズムを一定に保ったり、寝る前のお酒・ブルーライト使用を控えたりすることが大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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