加齢によって身体機能や精神機能が低下している状態を、フレイルといいます。
フレイルを予防するために、適切な運動や活動をすることで健康に長生きできるのです。
ではフレイルという状態や、放置するリスクは何なのでしょうか。
本記事ではフレイルについて以下の点を中心にご紹介します。
- フレイルになる3つの要素とは
- フレイルになってしまう原因とは
- フレイルかチェックする方法とは
フレイルについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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フレイルとは何か?
フレイルとは、高齢になり身体的にも精神的にも衰えた状態です。
虚弱を意味する、Frailtyという英語から来ています。
フレイルになり状態が悪化していくと、介護量が増えて要介護者になることがあります。
しかし適切なリハビリや介入によって予防することができます。
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フレイルの症状の3つの要素
フレイルの症状には3つの要素があります。
- 身体の虚弱
- こころ/認知の虚弱
- 社会性の虚弱
それぞれ解説します。
身体の虚弱
身体の虚弱に該当する症状として
- サルコペニア
- ロコモティブシンドローム
の2つがあります。
サルコペニアとは、加齢などの原因で筋力が低下した状態です。
サルコペニアが進行すると、体を支えられずに転倒や骨折などをする恐れがあります。
ロコモティブシンドロームとは、骨や関節、筋肉などの運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態です。
ロコモティブシンドロームが進行すると、寝たきりや要介護の進行などの恐れがあります。
いずれも日常的に運動をしない方に起きやすい症状です。
こころ/認知の虚弱
こころや認知の虚弱に該当する症状として
- うつ
- 認知症
の2つがあります。
うつは大切な方の死別や、自分自身の身体能力の低下などで落ち込んで発症する恐れがあります。
社会的な孤立による不安から閉じこもりになり、身体機能が低下してしまいます。
認知症は脳血管性の認知症や、脳萎縮などの加齢によるもので発症する恐れがあります。
物事に対する関心が薄れてしまい、社会との繋がりや日常生活に影響が出ます。
社会性の虚弱
社会性の虚弱に該当する症状として
- 孤独
- 閉じこもり
の2つがあります。
孤独とは高齢になる事で社会参加がおっくうになり、人と話さなくなる症状です。
社会との接点が無くなると意欲が無くなり、閉じこもりや孤独からうつになる恐れがあるのです。
フレイルになる原因
フレイルになる原因として
- 加齢
- 服用している薬
- 筋肉の不使用
- 消耗性疾患や悪性腫瘍などの疾患
があります。
それぞれ解説します。
加齢
加齢によって筋力や体力、気力は低下してしまいます。
さらに筋力や体力、気力が低下していくと、日常的な動作にまで影響が出てしまうのです。
服用している薬
服用している薬が原因で、フレイルになってしまうことがあります。
降圧剤を服用している場合、日中の意欲低下やせん妄、転倒などのリスクがあるのです。
何気なく服用している薬も、フレイルになる恐れがあるため注意する必要があります。
出典:「高齢者の薬物療法:ポリファーマシーとフレイルへの配慮」
筋肉の不使用
運動せず、筋肉を使わないのもフレイルになる大きな原因です。
社会との繋がりがなく、外出がおっくうになると筋肉を使わなくなります。
まったく筋肉を使用しないと、ふらつきから転倒して骨折する恐れがあるのです。
糖尿病や高血圧、悪性腫瘍などの疾患
フレイルになる原因に、糖尿病や高血圧、悪性腫瘍などの疾患があります。
糖尿病や高血圧などの生活習慣病は悪性腫瘍とともに高齢で発症しやすいです。
これらの疾患は、慢性的な倦怠感や副作用の強い薬の服用を伴います。
従って、これらの疾患はフレイルに間接的に関わっています。
フレイルの症状を知ってフレイルチェックを
フレイルの症状を知る方法としてフレイルチェックがあります。
- フレイルチェックに使われる症状
- フレイルチェックに用いられないその他症状
についてそれぞれ解説します。
ここで解説したセルフチェックで該当する項目が多い場合、自分がフレイルなのではと心配されると思います。
しかし、フレイルかどうかは自分で決めつけず、最後は診察を受けて医師の判断を必ず聞くようにしてください。
フレイルチェックに使われる症状
フレイルチェックに用いられる5つの症状として
- 歩行速度の低下
- 疲れやすい
- 活動性の低下
- 筋力低下
- 体重減少
があります。
5つのうち3つ以上に当てはまる場合、フレイルと判断します。
1つ以上に当てはまる場合は、プレフレイルとして注意が必要な状態です。
それぞれについて解説します。
歩行速度の低下
歩行速度の測定項目です。
5mほどの道を歩いてもらい、何秒で通過できるか測定します。
1m歩くのに1秒以上かかる場合、歩行速度が低下しているとみなされます。
疲れやすい
疲れやすさを測定する項目です。
2週間の間にわけもなく疲れたかどうかを確認します。
活動性の低下
活動性の低下があるかを測定する項目です。
1週間のうちに、軽い運動や体操を定期的に行っているか聞きます。
1週間のうちに1度もない場合、活動性の低下に該当します。
筋力低下
筋力低下があるかを測定する項目です。
利き手の握力を測定し、男性は26kg未満、女性は18kg未満か確認します。
体重減少
体重減少で測定する項目です。
6ヶ月のうちに体重を減らす目的が無いのに、体重が2〜3kg減ったか確認します。
出典:国立長寿医療センター「フレイルの進行に関わる要因に関する研究(25-11)」
フレイルチェックに用いられないその他症状
フレイルチェックには用いられない症状もあります。
- オーラルフレイル
- フレイルチェスト
- うつ
それぞれ解説します。
オーラルフレイル
オーラルフレイルとは、口腔に関するフレイルの評価です。
高齢になると歯が抜けて噛む力がなくなったり、飲み込みにくくなったりします。
噛む力や飲み込む力がなくなり始める初期段階を、オーラルフレイルといいます。
フレイルチェスト
フレイルチェストとは、怪我や事故などで肋骨が折れて呼吸がしにくくなった状態です。
肋骨は肺を守るようについていますが、肋骨が折れていると肺は十分に空気を取り込むことができません。
従って、フレイルチェストはフレイルチェックに用いられません。
うつ
うつはフレイルになる原因の1つです。
しかしフレイルチェックでは、社会との繋がりや物忘れなどで評価をします。
自分がうつの症状を疑う場合は、専門の医療機関で診断するのがよいです。
フレイルサイクルとは
フレイルサイクルとは、フレイルの様々な要因が重なり悪循環に陥ってしまうことです。
フレイルサイクルに陥る原因や、その悪影響について詳しく解説します。
フレイルサイクルはサルコペニアから生じる
フレイルサイクルは、サルコペニアから生じるといわれています。
サルコペニアとは、筋肉量が低下して歩行速度や日常生活に影響が出ている状態です。
サルコペニアの原因は
- 加齢による体力と筋力の低下
- 社会との繋がりが減って外出する回数の減少
- 病気による体力と筋力の低下
だといわれています。
フレイルサイクルがもたらす悪影響
フレイルサイクルがもたらす悪影響は以下の通りです。
- サルコペニアが原因で筋力や体力が低下する
- 身体機能が低下して代謝が落ちる
- 代謝が落ちて食事量が減る
- 食事量が減って慢性的な栄養不足が起きる
- 栄養不足で筋力や体力が落ちる
これらが負の連鎖として起きてしまうのです。
フレイルが悪化すると
フレイルが悪化した時の影響は、要介護状態になる恐れがあることです。
フレイルサイクルによって、体力や筋力が低下してしまいます。
体力や筋力が低下してしまうと、普段できていた買い物や外出がおっくうになります。
外出や社会的な繋がりが減れば、家で過ごすことが多くなり運動の機会が減ります。
さらに進行すると家で寝て過ごすようになり、更に筋力が低下してしまいます。
最終的には一人でできることがすくなくなり、介護が必要な状態になってしまうのです。
高齢者だけではない!?フレイル罹患時期
フレイルの罹患時期は高齢者だけとはかぎりません。
厚生労働省の令和元年国民生活基礎調査の結果の分析をもとに、表にまとめました。
年齢層 | フレイルが原因で要介護になった割合 |
65歳未満 | 11.7% |
65〜69歳 | 31.8% |
70〜74歳 | 29.0% |
75〜79歳 | 43.7% |
80〜84歳 | 53.8% |
85〜89歳 | 65.5% |
90歳以上 | 76.1% |
65歳未満の方でも、フレイルが原因で要介護になる場合があります。
従って、高齢者ではないからフレイルにならないとは限らないのです。
出典:「年齢階層別の要介護状態予防ー主にフレイルに着目してー」
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フレイルを予防するおすすめの方法
フレイルを予防するおすすめの方法として
- メタボ予防よりフレイル予防
- 筋力の衰えに注意し、運動する
- 早期発見を心がける
- 栄養バランスの良い食事などの規則正しい生活
をそれぞれ解説します。
メタボ予防よりフレイル予防
メタボ予防として食事量の制限をする方がいます。
体重が増えすぎないようにするのもよいですが、注意も必要です。
BMIが基準値以下になると、低栄養からフレイルになる恐れがあります。
医師から減量を勧められていない方は、基準値よりも少し高めにしてフレイル予防にするとよいです。
筋力の衰えに注意し、運動する
外出しないで家で過ごすことが増えると、筋力は衰えてしまいます。
1日5千歩以上を歩くと、筋力を維持できます。
筋力を維持するためにも、社会的な繋がりや散歩などの目的を作るとよいです。
早期発見を心がける
筋力や精神的な衰えを早期発見することで、フレイルを予防できます。
フレイルになると気づくことで、意識的に行動できるのです。
フレイルチェックを活用して、自分の状態を把握しておくことが大切です。
栄養バランスの良い食事などの規則正しい生活
栄養バランスが偏ってしまうと、体力の低下を招く恐れがあります。
たんぱく質が足りなくなると、筋力が弱ってしまうのです。
肉や魚、卵などからたんぱく質を摂取することを心がけましょう。
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フレイルの年齢別の予防方法
フレイルの予防方法は年齢・世代により少し異なります。
具体的には以下の通りです。
50~64歳の方
50~64歳の方はまだ仕事や子育てなど社会参加に従事している方が多い世代です。
フレイルの予防方法として、健康管理が重要となります。
メタボリックシンドロームや高血圧など生活習慣病の予防に努めましょう。
また退職後、子育て終了後などセカンドライフを意識する時期になります。
人生設計を見直し、セカンドライフを有意義に過ごせるよう計画しましょう。
65~74歳の方
65~74歳の方はセカンドライフに移行していく方が多い世代です。
加齢などの影響で生活習慣病や慢性疾患を発症し持病を抱える方が増えてきます。
健康面において持病をコントロールしてフレイル予防をすることが重要となります。
定期的な通院、食事管理、適切な運動、口腔内の健康は持病管理につながります。
特に筋力や体力低下を予防するために十分なタンパク質摂取を心がけましょう
また社会参加を通じて人とのつながりを作ることでフレイルの予防が期待できます。
75歳以上の方
75歳以上は後期高齢者と呼ばれる世代です。
健康的に過ごされる方がいる反面、筋力や体力低下が著しくなる方もいます。
フレイルの予防方法として、日々の健康管理と健康づくりが重要となります。
食事管理、適切な運動、人とのつながりづくり、口腔内の健康に気を付けましょう。
フレイル予防はいつから始めても構いません。
自身の健康や体調に合わせて少しずつフレイル予防に取り組みましょう。
出典:東京都福祉保健局「年齢別のフレイル予防」
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医療・看護団体のフレイル患者との向き合い
医療や看護団体で、フレイル患者と向き合う取り組みがあります。
フレイル外来というもので、最近歩く速度が遅くなったなどの悩みに対応するのです。
相談を受けた医療団体は、フレイルに関する診断をします。
実際に診断をした結果、どのように手術やケアをすれば要介護にならずに済むか判断してくれるのです。
初診であれば、外来で診察をした後にフレイル外来を紹介する仕組みになっています。
持病などの病気でも相談できますので、確認することをおすすめします。
悪化する前に気づくことが大切!
フレイルが悪化してしまう前に気づくことが大切です。
65歳以上の高齢者のうち、フレイル予備群は32.8%もいます。
従って、3人に1人は予備群で要介護になる恐れがあるのです。
自己肯定感が低い方も注意が必要です。
自己肯定感が低いと意欲が低下してしまい、社会参加が減って閉じこもりのリスクがあります。
精神的なフレイルとなってしまう恐れがあるので、注意が必要です。
出典:厚生労働省「後期高齢者の健康ーフレイル対策を中心とした保健事業についてー」
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フレイルまとめ
今回はフレイルについて解説してきました。
フレイルのポイントをおさらいすると以下の通りです。
- フレイルとは身体、こころ/認知、社会性の虚弱
- フレイルになる原因は、加齢や服薬している薬、筋肉の不使用や持病など
- フレイルチェックを紹介、心配であれば医療機関に相談
フレイルの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。