病気ではないのに心臓が痛い場合は、心臓神経症が疑われます。
心臓神経症とは、ストレスによって生じる心臓の異常です。
それでは、なぜストレスを感じると心臓が痛いと感じるのでしょうか。
また、ストレスによる心臓の痛みには、どのようなケアが必要なのでしょうか。
本記事では、ストレスと心臓が痛い事柄について、以下の点を中心にご紹介します。
- 心臓の痛みはストレスが原因?
- ストレスで心臓が痛い場合の対処法
- 心臓が痛い心臓神経症以外の症状
ストレスと心臓が痛い事柄について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
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心臓が痛いのはストレスが原因?
※画像はイメージです
心臓の痛みを訴える人の中には、実際には心臓そのものに異常がなく、ストレスが原因で起こる心臓神経症を抱えているケースが少なくありません。
ここでは、ストレスによる心臓の痛みの可能性について掘り下げ、どのようにこれが発生するのかを詳しく説明します。
ストレスによって心臓神経症が生じるため
ストレスで心臓が痛いのは心臓神経症が生じるためです。
心臓神経症とは、心臓に器質的な異常がないにもかかわらず、痛み・動機などの症状が出ることです。
心臓神経症の原因・症状を詳しくみていきましょう。
心臓の痛みを感じる主な原因
心臓が痛いと感じるのには、主に3つの理由があります。
それぞれの内容をみていきましょう。
自律神経の乱れによる影響
心臓が痛いと感じるのは自律神経のバランスに原因があります。
自律神経とは全身の器官を調節する神経系です。
自律神経は交感神経と副交感神経から成り立ちます。
交感神経は、心拍増加・血圧上昇を促す神経系です。
対して副交感神経は、心拍・血圧を下げて心身をリラックスさせる作用があります。
ストレスを感じると、交感神経が活発化しやすくなります。
すると、本来は副交感神経が働くべき場面でも交感神経が優位になりやすくなります。
交感神経が過度に活性化すると、心臓が忙しなく働くようになります。
結果、動悸・息切れなどが起こりやすくなり、「心臓が痛い」という感覚につながりやすくなります。
血行不良による影響
心臓に十分な血液が行き渡らなくなると、痛いと感じることがあります。
心臓が血液不足になる原因の1つが、ストレスです。
ストレスを感じると心拍数が上昇して血流が促進されます。
しかし、もともと動脈硬化や血栓がある方は、心拍があがっても血流が追いつかないことがあります。
理由は、血管内部が狭くなることで血流スピードが落ちているためです。
つまり心臓から送り出される血液量は増えるものの、心臓に帰ってくる血液量が極端に少なくなるわけです。
結果、心臓が血液不足になるため強い痛みを生じます。
また、ストレスは心拍数をあげるだけでなく、動脈硬化や血栓の原因ともなります。
パニック障害による影響
心臓の痛みはパニック障害で起こることもあります。
パニック障害とは、突然、
- 激しい心臓の痛み
- 動機
- 息切れ
に襲われることです。
パニック障害では発作を繰り返すことが少なくありません。
発作の激しさから、「このまま死んでしまうのではないか」という不安に襲われることもしばしばです。
パニック障害の原因・メカニズムはハッキリ解明されていません。
ただし原因の1つとして、ストレスが挙げられています。
出典:厚生労働省【パニック障害・不安障害】
心臓が痛い時は何科を受診すれば良い?
心臓が痛い場合、診療科は以下が適当です。
- 循環器内科
- 心臓血管外科
- 心療内科
心療内科は、胸部の圧迫感や不快感がある場合が適しています。
なお、胸の痛みとあわせて息苦しさがある場合は、呼吸器内科も視野に入れてください。
自律神経についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてお読みください。
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心臓神経症の症状
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心臓神経症には、痛み以外の症状があらわれることもあります。
主な症状をみていきましょう。
安静時に痛みを感じる
心臓神経症は、安静時に心臓の痛みなどがあらわれるのが特徴です。
一般的に心臓の痛みとは、心拍があがったときにあらわれます。
たとえば激しい運動後などが代表的です。
しかし心臓神経症では、静かに横になっているときなどに痛みがあらわれます。
ただし、就寝中に痛みを感じることは稀です。
ストレスを感じると痛みが生じる
心臓神経症は、ストレス・不安を感じたときに痛みが強くなる傾向がみられます。
理由として、交感神経の活性化が挙げられます。
ストレスを感じると交感神経が優位になり、心拍や血圧を上昇させます。
結果、動悸を「痛み」として感じやすくなるわけです。
刺すような痛みを感じる
心臓神経症は、左胸の狭い範囲が刺すように痛みます。
ズキズキ・チクチクと表現されることもあります。
心臓に痛みを伴う疾患としては、狭心症が代表的です。
しかし狭心症による痛みは、心臓全体が締め付けられるような感覚です。
つまり心臓神経症と狭心症は、痛みの種類が少々異なります。
ズキズキした痛みを感じる場合は、心臓神経症が疑われます。
痛む部分を押さえると痛みがより強くなるのも心臓神経症の特徴です。
胸に不快感や圧迫感を感じる
痛むとまではいえないものの、胸の不快感や圧迫感があることもあります。
よりイメージしやすくいえば、胸全体が締め付けられるような感覚です。
あるいは、心臓周辺がモヤモヤするような違和感を感じることもあります。
理由として、ストレスによる自律神経の乱れが挙げられます。
心拍数などが上昇するため、締め付けられるような圧迫感や、モヤモヤした不快感を感じやすくなるわけです。
痛みが長く続く
心臓神経症の痛みは、数分~数時間続きます。
場合によっては、1日中痛みが持続することもあります。
ちなみに狭心症による痛みは15分前後で治まることが一般的です。
そのため心臓痛が長く続く場合は、心臓神経症が疑われます。
動くとすぐに動悸や息切れを感じる
些細な運動で動悸・息切れが起こりやすくなります。
たとえば重い荷物を持ったときや、階段の上り下りが代表的です。
理由は、運動時には交感神経が活発化するためです。
心臓神経症の方は特に交感神経が興奮しやすくなっています。
そのため、少し動いただけでも脈拍などが上がり、動悸や息切れを感じやすくなります。
精神疾患も伴う
心臓神経症では、心臓の痛みの他に、精神的な不調が起こることがしばしばです。
たとえば以下のような精神疾患が代表的です。
- 抑うつ・気分が塞ぎ込む
- 不安感
- 不眠
- 緊張
ストレスで起こる胸の痛みについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてお読みください。
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心臓神経症の検査方法
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胸の痛みがある場合は、検査によって原因を特定します。
心臓神経症が疑われる場合は、以下のような検査が行われます。
胸部レントゲン
放射線を利用して、心臓の形状・大きさなどを画像化する方法です。
器質的な異常が見られない場合は、心臓神経症の可能性が高いです。
心電図検査
心臓から出ている電波を測定することで、心臓の状態を検査します。
心電図検査には主に3つのタイプがあります。
安静時心電図 | 安静状態で心電図を測る検査 |
運動負荷心電図 | 運動しながら心電図を測る検査 |
ホルター型心電図 | 機器を装着して24時間心電図を測る検査 |
心臓超音波検査
心臓に超音波をあてることで、動きや異常を調べる方法です。
また、心臓の大きさや壁の厚さなども観察できます。
血液検査
採血し、血液の成分を調べます。
具体的には、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)という成分の濃度を測定します。
BNPは、心臓に負担がかかったときに分泌されるホルモンです。
濃度を調べることで、心不全の状況を判断できます。
運動負荷試験
運動負荷試験は、運動時の心肺機能を測定する方法です。
具体的には、運動中の心電図・血圧・呼吸などの状態を観察します。
運動内容には以下があります。
自転車エルゴメータ | 自転車こぎ運動 |
トレッドミル | 回転するベルトの上を歩行・走行 |
マスター負荷試験 | 階段の上り下り |
心臓神経症の治療方法
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心臓神経症の治療方法は大きく分けて2通りあります。
それぞれの内容をみていきましょう。
薬物・漢方薬療法
医薬品や漢方薬を用いて治療します。
精神的な不調がみられる場合は、精神薬が処方されることもあります。
【処方薬】
β遮断薬 | 交感神経を抑制して心臓の働きをゆるやかにする |
抗うつ薬 | 脳にアプローチして不安感などを軽減する |
抗不安薬 | 不安感を和らげて心を安定させる |
【漢方薬】
心脾顆粒 | ストレスを発散させ、緊張をやわらげる |
婦宝当帰膠 | 血液の生成をサポートして血流を改善 |
カウンセリング
心臓神経症の原因の多くはストレスです。
つまり治療には、根本原因であるストレスを解決する必要があります。
ストレス軽減の代表的な方法がカウンセリングです。
精神科医やカウンセラーとの対話を通して、悩み・不安の解決を目指します。
漢方薬の効果に興味のある方は、こちらの記事も合わせてお読みください。
心臓が痛い場合の対処法
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心臓が痛いのは交感神経の活性化が原因です。
痛みを軽減するには、交感神経を抑えて、副交感神経を優位にすることが大切です。
簡単にいえば、心身のリラックスが心臓痛の緩和につながります。
具体的には以下のような対処法があります。
楽な姿勢になる
痛みや息苦しさを感じるときは、楽な姿勢になりましょう。
息苦しさがある場合には、軽い前かがみ姿勢が有効とされます。
座っている場合は、机・膝などに肘をついてうつむいてみましょう。
仰向けに寝ている場合は、頭をやや高くし、膝を軽く曲げると、呼吸が楽になりやすいです。
温かい飲み物を飲む
温かい飲み物は交感神経の働きを抑える効果があります。
特におすすめなのは、ココアやホットミルクです。
ココアにはテオブロミンという成分が豊富です。
一方、牛乳などの乳製品にはトリプトファンという成分が含まれます。
テオブロミンとトリプトファンは、いずれもセロトニンをサポートする作用があります。
セロトニンはホルモンの1種で、脳をリラックスさせるのに役立ちます。
深呼吸をする
深い呼吸は副交感神経を優位にする作用があります。
具体的には腹式呼吸がおすすめです。
- 背筋を伸ばす
- お腹をふくらませるように鼻から息を吸う
- お腹の中の空気を出し切るイメージで、口から息を吐く
上記を5~10回程度繰り返しましょう。
吸う時間より吐く時間を長めにするのがポイントです。
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心臓が痛い心臓神経症以外の症状
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心臓の痛みは心臓神経症以外の疾患でも起こります。
代表的な疾患をご紹介します。
大動脈解離
大動脈解離は、大動脈が裂けることです。
裂け目から血管壁に血液が流れ込むため、血管とは別の血の通り道ができあがります。
結果、胸などに強烈な痛みがあらわれます。
大動脈解離による痛みは、胸だけでなく背中にあらわれることも多いです。
肋間神経痛
肋間周辺の神経の異常によって痛みが出る疾患です。
原因として、変形脊椎症・脊椎腫瘍・帯状疱疹などが挙げられます。
肋間神経痛は、心臓というより、胸全体の広い範囲が痛むのが特徴です。
痛みの種類は様々で、強烈で鋭い痛みもあれば、シクシクと痛むこともあります。
不整脈
不整脈は脈拍のリズムが不規則になることです。
脈が乱れることで、心臓の痛み・動悸・息切れなどが起こりやすくなります。
原因は動脈硬化が代表的です。
あるいは、運動や心理的な興奮によって突発的に起こることもあります。
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狭心症
狭心症とは、心臓の筋肉が一時的に酸素不足になることです。
原因は、血流悪化によって心臓に血液が届かなくなることです。
狭心症による痛みは、胸が締め付けられるように痛むのが特徴です。
多くの場合、症状は15分程度で治まります。
心筋梗塞
心筋梗塞は、心臓への血流が完全にストップしてしまい、心臓が血液不足になる状態です。
心臓の筋肉が酸素不足になるため、強烈な痛みがあらわれます。
心筋梗塞を放置すると、血液不足のために心臓の細胞が壊死し始めます。
結果、心臓が動かなくなるため死に至ります。
心筋梗塞は心筋症とよく似ています。
しかし心筋症は発作が短時間で治まるのに対し、心筋梗塞は長時間持続します。
心筋炎
心筋炎は、心臓の筋肉が炎症を起こすことです。
多くの場合、原因は心臓の筋肉がウイルスに感染することです。
心臓の痛みのほか、呼吸困難や疲れやすいなどの症状があらわれます。
悪性腫瘍
心臓悪性腫瘍も心臓の痛みを伴います。
簡単にいえば、心臓のがんです。
心臓悪性腫瘍は、多くの場合、他の部位からの転移によって起こります。
ただし最初から心臓に発生する悪性腫瘍もあります。
心臓からがん細胞の増殖が始まる場合は、原発性心臓腫瘍と呼ばれています。
虚血性心疾患と不整脈の患者数
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虚血性心疾患・不整脈による死亡者は増加傾向が見られます。
たとえば2000年では、虚血性心疾患による死亡者数は2万4298人でした。
しかし2018年には3万6575人にまで増加しています。
不整脈による死亡者数は、2000年は1万5097人、2018年には3万885人でした。
虚血性心疾患や不整脈の原因は様々ですが、代表的なものにストレスが挙げられます。
現代はストレス社会と呼ばれるほど、ストレスが多い時代です。
ストレスが多くなれば、そのぶん心疾患のリスクは高まります。
心臓病を防ぐには、ストレス解消や十分な休息をとるなどの対策が必要です。
出典:厚生労働省【第7表 死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)】
出典:厚生労働省【人口動態調査 人口動態統計 確定数 死亡上巻 5-28 心疾患による主な死因(死因簡単分類)別にみた性・年次別死亡数・百分率・死亡率(人口10万対)及び年齢調整死亡率(人口10万対) | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口】
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ストレスと心臓が痛いことのまとめ
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ここまでストレスと心臓が痛い事柄についてお伝えしてきました。
ストレスと心臓が痛い事柄の要点を以下にまとめます。
- ストレスによって心臓が痛くなるのは、交感神経が過度に活性化して心拍数が増加するため
- ストレスで心臓が痛い場合は、深呼吸や楽な姿勢をとるなどしてリラックスすることが大切
- 心臓の痛みは、大動脈解離、肋間神経痛、不整脈、狭心症、心筋梗塞、心筋炎、悪性腫瘍など、様々な重篤な疾患の可能性がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。