母乳に含まれるラクトフェリンは、乳幼児だけでなく、成人の健康維持にも欠かせない成分です。
ラクトフェリンは、どのように健康維持に関わるのでしょうか。
また、ラクトフェリンはどのように摂取したら良いのでしょうか。
本記事では、ラクトフェリンと免疫について、以下の点を中心にご紹介します。
- ラクトフェリンの効果とは
- なぜラクトフェリンは免疫機能の向上に役立つのか
- ラクトフェリンの摂取方法
ラクトフェリンと免疫について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
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ラクトフェリンとは
ラクトフェリンとは、主に乳類に含まれるタンパク質です。
特にヒトの初乳・母乳に豊富です。
鉄と結合しやすい性質があり、赤っぽい見た目をしていることが特徴です。
なお、赤色は結合した鉄分由来の色です。
主な作用としては、ウイルス等の感染防止・免疫向上などがあります。
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ラクトフェリンは免疫力を高める
ラクトフェリンの主な作用は免疫力の向上です。
具体的な内容をみていきましょう。
免疫細胞を活性化させる
ラクトフェリンが免疫力向上に役立つのは、免疫細胞を活性化させるためです。
具体的には、NK細胞と樹状細胞を活性化させる作用があります。
NK細胞の活性化
NK細胞はナチュラルキラー細胞とも呼ばれています。
その名の通り、体内では「殺し屋」のような働きをする細胞です。
具体的には、体内のがん細胞・ウイルスなどをいち早く攻撃することで、身体を病気から守ります。
NK細胞が多い・活性化しているほど、身体は病気にかかりにくくなります。
ラクトフェリンにはNK細胞の働きを促進したり、増殖させたりする効果があります。
つまり、身体を守る効果が期待できるわけです。
なお、ラクトフェリンは必要に応じてNK細胞の働きを抑える作用もあります。
NK細胞は身体を病原体から守る細胞ですが、かえって不調を引き起こすことがあります。
代表的なのが花粉症などのアレルギー症状です。
アレルギー症状は、NK細胞が異物と一緒に他の細胞まで攻撃することで起こります。
簡単にいえば、NK細胞の暴走が原因で引き起こされる症状です。
ラクトフェリンはNK細胞の活動を適度に抑える効果もあります。
つまり、アレルギー症状のリスク低減を期待できます。
森永が樹状細胞の活性化を新たに発見!
近年の研究で、ラクトフェリンは樹状細胞を活性化させることが分かってきました。
樹状細胞とは、体内の免疫細胞の司令塔のような存在です。
体内に異物が侵入すると、樹状細胞はその異物の特徴・弱点などを分析します。
樹状細胞が分析したデータは、リンパ球などの免疫細胞に渡されます。
免疫細胞は、樹状細胞の分析データをもとに異物を攻撃します。
樹状細胞が活性化するほど、分析データは大量・正確になります。
つまり免疫細胞が異物と有利に戦えるようになるのです。
ここからは、森永乳業株式会社の研究データを参照します。
森永の実験では、樹状細胞をラクトフェリンを添加したグループと、添加しないグループの2つに分けました。
ラクトフェリンを添加したグループでは、樹状細胞の活性化がみられました。
特に樹状細胞が活性化したのは、ウイルス由来の遺伝物質がある状況下です。
一方、ウイルス由来の遺伝物質がない状況下では、樹状細胞は活性化したものの、さほど劇的な変化はみられませんでした。
つまりラクトフェリンは、体内にウイルスが居るときにのみ、樹状細胞を活性化させていることが分かります。
簡単にいえば、必要に応じて免疫機能を調節しているわけです。
ラクトフェリンは樹状細胞をサポートすることで、リンパ球などの免疫細胞を間接的にコントロールしているといえます。
出典:森永乳業株式会社「ラクトフェリンが免疫細胞の一種である樹状細胞(pDC)を活性化することを確認 第15回国際ラクトフェリン会議での発表内容のご報告」
腸の表面に結合してバリアを形成する
ラクトフェリンは、腸表面にあるバリア機能を維持する作用も期待できます。
腸の表面には、ウイルス・異物の腸内への侵入を物理的に防ぐバリアがあります。
腸表面のバリアは、ストレスや生活習慣の乱れなどで穴が開きやすいのが難点です。
バリア機能に穴が開くと、当然ながらウイルス・異物は腸内に侵入してきます。
ラクトフェリンは、腸の表面で結合することで、バリアを維持します。
つまりウイルスの腸内への侵入を物理的に防げるわけです。
なお、ラクトフェリンは腸の働きを内側から強化する作用もあります。
ラクトフェリンは、腸内にある善玉菌のエサとなるためです。
腸内の善玉菌が増えるほど、身体の免疫力は向上します。
つまり、病気にかかりにくい身体ができるというわけです。
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ラクトフェリンは赤ちゃんを感染から守る
ラクトフェリンは特に初乳に豊富な成分です。
初乳とは、出産後数日目までの母乳を指します。
ラクトフェリンが初乳に豊富なのは、赤ちゃんを感染から守るためと考えられています。
ラクトフェリンには、腸内の善玉菌を増やす作用があります。
一方、生まれたばかりの赤ちゃんのお腹には、善玉菌はまだ存在しません。
しかし母乳を飲むことでラクトフェリンを摂取できるため、腸内には善玉菌が増えやすくなります。
腸内の善玉菌が増えると、ウイルスや細菌への耐性が強くなります。
つまり、病気にかかりにくくなるわけです。
一般的には、赤ちゃんにはなるべく母乳を飲ませたほうがよいと考えられています。
理由の1つとして、ラクトフェリンの摂取によって赤ちゃんを感染症から守ることが挙げられます。
ラクトフェリンのその他の作用
ラクトフェリンには、免疫向上以外にもさまざまな効果があります。
- 貧血予防
- ドライアイの改善
- 胃潰瘍・胃がんの予防
- アンチエイジング
- ダイエット効果
- 骨粗しょう症の予防
ラクトフェリンの摂取
ラクトフェリンは免疫機能の維持に欠かせない成分です。
一方で、加齢とともに体内量が減少しやすいという特徴があります。
体内のラクトフェリンの量を一定に保つには、食品などから補給する必要があります。
ラクトフェリンの摂取方法をご紹介します。
免疫を高めるための摂取量の目安
ラクトフェリンの1日の摂取量の目安は明確に設けられていません。
なお、臨床ラクトフェリン研究会は、1日150g以上の摂取で効果を期待できると発表しています。
出典:臨床ラクトフェリン研究会「臨床ラクトフェリン研究会 臨床関連 Q&A 3. ラクトフェリン服用時の注意点、服用方法」
ラクトフェリンを多く含む食品
ラクトフェリンが豊富な食品には以下があります。
- 母乳
- 牛乳
- 乳性品(チーズ・ヨーグルト)
ラクトフェリンは、哺乳類の乳に含まれる成分です。
ヒトの母乳のほか、牛・羊・山羊などの乳・乳性品を摂ることで、ラクトフェリンの摂取につながります。
しかしラクトフェリンは、熱・衝撃に弱いという性質があります。
市販の乳性品の多くは加熱処理がなされているため、ラクトフェリンの含有量はさほど多くありません。
ラクトフェリンを摂取するには牛乳・乳性品の中でも、非加熱処理されたものを摂るのがおすすめです。
ラクトフェリン摂取にお勧めのサプリ
ラクトフェリンを効率的に摂取するには、サプリメントを利用するのも1つの方法です。
市販されているラクトフェリンのサプリには以下があります。
- ラクトフェリン(DHC)
- 森永ラクトフェリン(森永乳業)
- ルナリズム ラクトフェリン(ルナリズム)
ラクトフェリンのサプリを選ぶときは「腸に届く」かを重視しましょう。
ラクトフェリンは腸で作用するためです。
裏を返せば、腸に届かなければ摂取する意味はさほどありません。
しかし、ラクトフェリンは酸に弱いという性質があります。
つまり、そのまま摂ると胃酸で溶かされるため、腸には届かないわけです。
一方、サプリメントの中には、胃で溶けずに腸で溶けるよう設計されたものがあります。
つまり効率的にラクトフェリンを摂取できるため、高い効果を期待できるのです。
腸で溶けるサプリの多くは、「腸に届く」のようなキャッチコピーがあります。
あるいは「腸溶性」「耐酸性」などの表示も、サプリが腸で溶けることを示しています。
なお、ラクトフェリンのサプリは、食後1時間以降を目安に摂ることがおすすめです。
食後すぐは胃酸の分泌が盛んであるため、サプリメントが溶ける可能性があります。
ラクトフェリンの副作用はあるの?
ラクトフェリンは母乳由来の成分であるため、副作用が起こる可能性は低いです。
ただし可能性はゼロではないため、過剰摂取は控えましょう。
なお、ラクトフェリンのサプリメントの飲み始めなどに、お腹が緩くなることがあります。
お腹が緩くなる理由は、腸内環境の変化によって便通も変化しているためです。
ラクトフェリンは、継続して使用することで次第に腸内環境が整います。
具体的には、1週間以内に腸内環境・便通が改善することが多いです。
お腹が緩くなったとしても、1週間程度は服用を継続することがおすすめです。
出典:厚生労働省「ラクトフェリン」
出典:臨床ラクトフェリン研究会「臨床ラクトフェリン研究会 臨床関連 Q&A 3. ラクトフェリン服用時の注意点、服用方法」
ラクトフェリンは新型コロナにも効く可能性
ラクトフェリンは新型コロナ感染症の予防・改善に効果が示唆されています。
Campione博士の研究結果を参照します。
Campione博士は、新型コロナ感染症の患者を3つのグループに分けて、それぞれ異なる治療法を行いました。
3グループの内訳は、ラクトフェリン投与+通常の治療・通常の治療のみ・治療なしです。
ラクトフェリン投与+通常の治療のグループでは、患者の体内からコロナウイルスが消えるまでの期間は平均14.25日でした。
一方、通常の治療のみのグループは27.13日、治療なしのグループは32.61日でした。
Campione博士の研究から、ラクトフェリンは新型コロナ感染症の早期治癒に役立つと考えられています。
なお、「医薬基盤・健康・栄養研究所」は、現時点ではラクトフェリンと新型コロナ感染症の関係を示す科学的根拠は無いとしています。
出典:Campione博士「Lactoferrin as potential supplementary nutraceutical agent in COVID-19 patients: in vitro and in vivo preliminary evidences」
出典:女子栄養大学「ラクトフェリンの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)予防効果に対する新知見の紹介 | 女子栄養大学 栄養科学研究所」
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ラクトフェリンと免疫まとめ
ここまで、ラクトフェリンと免疫についてお伝えしてきました。
ラクトフェリンと免疫の要点を以下にまとめます。
- ラクトフェリンの主な効果は免疫機能向上のほか、腸内環境の改善・アンチエイジング・ドライアイの改善など
- ラクトフェリンが免疫機能の向上に役立つ理由は、免疫細胞を活性化させたり、腸のバリア機能を高めたりするため
- ラクトフェリンは牛乳などに豊富だが市販品にはあまり含まれないため、サプリメントを活用するのがおすすめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。