パーキンソン病の高齢者も、一般的には問題なく老人ホームへの入居が可能です。
パーキンソン病で介護施設へ入居する場合の条件などはあるのでしょうか?
本記事では、パーキンソン病での介護施設の入居について以下の点を中心にご紹介します。
- パーキンソン病とはどんな病気なのか
- 介護施設へ入居する際のポイント
- パーキンソン病の方の支援制度
パーキンソン病で、介護施設に入居するための際にご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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パーキンソン病について
パーキンソン病は脳内のドーパミンという神経伝達物質が減少することで起こる病気です。
主な症状は
- 手足がふるえる(振戦)
- 体のこわばり(筋強剛)
- 動作が遅くなる(無動)
などがあります。
通常は、脳からの指令によって、食べ物を食べたり体を動かしたりします。
ところがドーパミンが減少することにより、脳からの指令がうまく伝わらなくなります。
運動症状の他に「便秘」「頻尿」「睡眠障害」などの神経症状がみられることもあります。
発症する原因は未だにはっきりとは解明されていません。
ドーパミンを作っている神経細胞に、特殊なたんぱく質があることはわかっています。
特殊なたんぱく質が蓄積することで、神経細胞が変形していくと考えられています。
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パーキンソン病の方の介護施設選びのポイント
パーキンソン病は病状が進行していきます。
病状の進行に伴い、さまざまな医療ケア・介護が必要になります。
また症状の軽い方では、現在の生活に近い介護施設を希望される方も多いかと思います。
症状が進行したら、24時間対応の看護師などがいる介護施設へ移ることもできます。
介護施設選びの主なポイントは、
- 介護施設内を安全に移動できるように手すりの設置や段差のない環境
- 本人のできることを尊重し、時間がかかっても見守ってくれる
- 薬の効果に合わせて、生活リズムをつくってもららえる
- パーキンソン病の病状をよく理解したスタッフがいる
- 運動療法を取り入れてリハビリをしている
- 24時間対応してくれる医療スタッフがいる
などがあります。
また、介護施設のスタッフが不足していないことも重要です。
介護スタッフが不足していると、必要なときに介助してもらえない可能性があります。
リハビリには、パーキンソン病の進行を遅らせる効果が期待できます。
適度に運動療法を取り入れている施設も介護施設選びのポイントになります。
パーキンソン病の症状などに合わせて、介護施設を選ぶことが大切です。
介護施設の選び方についてはこちらの記事もぜひ参考にしてください。
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パーキンソン病の方の介護施設の入居条件
パーキンソン病は、厚生労働省が指定する特定疾病に含まれます。
そのため、40歳以上〜65歳未満の方でも入居できます。
もちろん、65歳以上の高齢者は問題なく介護施設へ入居できます。
特定疾病とは、加齢に伴い心身の変化が要因で発症する病気のことです。
要介護状態または、要支援状態となる疾病をいいます。
以下の要件を満たしている方が対象です。
- 40歳以上から65歳未満の年齢層の方
- 加齢との関係がある疾病で、罹患率など医学的に定義できるもの
- 3~6ヶ月以上要介護状態、又は要支援状態となる割合が高い疾病
40歳〜65歳未満の男性が入居する場合は入居が難しい場合があります。
女性のスタッフが多い介護施設は、入居できない事があります。
対処法として、男性スタッフの比率が高い施設を選ぶとよいでしょう。
パーキンソン病の方の介護施設の入居時の注意
パーキンソン病の方には進行する疾病のため、さまざまな症状があらわれます。
食べ物や薬を飲みにくくなる嚥下障害になると、食事の度に介助が必要となります。
もし認知症になった場合に、介護が受けられるか確認することが大切です。
パーキンソン病の方の介護施設の支援制度
パーキンソン病の方の介護施設の支援制度には
- 難病医療費助成制度
- 介護保険制度
- 身体障害者福祉法
- 障害者総合支援法
- 医療保険制度・後期高齢者医療制度
- 成年後見制度
6つの支援制度があります。
それぞれ説明します。
難病医療費助成制度
パーキンソン病患者は、療養生活のなかで身体の障害や医療費の問題があります。
身体的、精神的、 社会的、経済的に自分だけでは解決が難しいこともあるでしょう。
問題解決するために、行政によってさまざまな支援制度が用意されています。
難病医療費助成制度は、パーキンソン病患者に医療費の負担を援助する制度です。
パーキンソン病の患者さんが受けられる支援制度はどんな種類があり、どういった場合に利用できるのかを解説します。
該当者は、ホーン・ヤールの重症度分類3度以上かつ生活機能障害度2度以上の方です。
要件を満たしていない方も助成対象となる場合があります。
医療費総額(10割)が33,330円を超える月が、年間に3回以上ある場合です。
1ヵ月の医療費自己負担上限額を超えた分が助成の対象となります。
また難病新法原則により、自己負担が3割だった方は2割となります。
ただし、助成の対象になるのは医療費用のみです。
入院した際の差額ベッド代、食事費用、診断書の費用などは助成の対象となりません。
申請方法は
- 都道府県から指定を受けた難病指定医が作成する診断書(臨床調査個人票)を作成
- 他に必要な書類をそろえる
- 都道府県・指定都市の申請窓口へ提出
有効期限は原則1年となります。
出典:厚生労働省【難病対策】
介護保険制度
高齢者に対して介護のさまざまな医療サービスを受けられる制度です。
対象となるのは、
- 40~65歳未満でパーキンソン病の治療に介護が必要と認定された方(第2号被保険者)
- 65歳以上の方(第1号被保険者)
パーキンソン病は、介護保険制度の「特定疾病」に指定されています。
40〜65歳未満のパーキンソン病の方は、介護保険認定の申請ができます。
判定された要支援・要介護度に応じて、介護サービスを受けられます。
介護保険の申請方法は
- 申請書にかかりつけ医の氏名、病院名などの必要事項を記入し各市区町村の窓口へ
- 申請後、自宅へ訪問し、病状などの調査
- 調査の結果やかかりつけ医による意見書などを参考に審査
- 要支援1~2、要介護1~5いずれかに認定
要支援・要介護認定された場合に1割か2割の費用負担で受けられる介護サービス
訪問介護 | 訪問看護 |
薬の管理指導 | 訪問入浴 |
通所介護 | 訪問リハビリテーション |
短期入所 | 有料老人ホームへの入居 |
ケアマネージャーによる居宅介護支援 | 福祉用具貸与、住宅改修 |
要介護認定された場合のみに受けられる主なサービスは、
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)への入居
- 介護老人保健施設(老人保健施設)への入居
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護など
などがあります。
要介護度に応じて、1ヵ月に利用できる限度額が決まっています。
限度額を超えた分は、全額自己負担となります。
身体障害者福祉法
身体障害者福祉法に定められた障害に認定された方は支援を受けられます。
対象となるのは、
- 18歳以上で身体障害者福祉法に定められて障害に認定された方
- パーキンソン病の場合は、肢体不自由な方
ただし、身体障害者の認定は、原則障害が固定していることです。
パーキンソン病の場合は、症状が変わるため認定にならないこともあります。
申請方法は、
- 申請書、診断書、証明写真などを準備
- 書類を市区町村の担当窓口へ提出
となっています。
主な支援の内容は、
- 医療費の助成(重度心身障害者医療費助成制度)
- 経済的支援(特別障害者手当、障害基礎年金)
- 税金の減免、公共交通機関に関する補助
- 映画館などの割引、NHK放送受信料の減免
などがあります。
その他、自治体により受けられるサービスが異なる場合があります。
障害者総合支援法
障害のある方の日常生活や社会生活を総合的に支援するための法律です。
パーキンソン病の方は、ホーン・ヤールの重症度にかかわらずサービス利用の対象です。
また、介護保険制度の対象となっている65歳以上の方は介護保険制度が優先されます。
サービスの利用にあたっては、障害支援区分の認定が必要です。
申請は、申請書と身体障害者手帳のコピーなどを市区町村の担当窓口へ提出します。
主な支援内容は、
- 介護給付
- 訓練等給付、補装具、自立支援医療の「自立支援給付」
- 理解促進研修・啓発
- 自発的活動支援、相談支援などの「地域生活支援事業」
などがあります。
医療保険制度・後期高齢者医療制度
医療保険・後期高齢者医療制度とは
健康保険証を提示することで、医療費の負担額が減額される制度です。
対象となるのは、医療保険に加入している75歳未満の方、75歳以上の方です。
70〜75歳未満の方は、自己負担割合が2割または3割負担になります。
75歳以上の方は、75歳の誕生日を迎えると自動的に後期高齢者医療制度に加入されます。
また、自己負担割合は1割または3割です。
1ヶ月の医療費が高額になった場合には、「高額療養費」の制度を利用できます。
高額療養費とは
1ヶ月の自己負担が限度額を超えたら、超えた分の医療費が戻ってくる制度です。
あるいは、窓口での支払いを限度額までにできます。
1割の方の1ヶ月の自己負担限度額は、以下の表の通りです。
自己負担限度額 | ||
所得区分 | 外来(個人) | 外来+入院(世帯) |
一般 | 18,000円(年間上限144,000円) | 57,600円(多数回該当は44,400円) |
住民税非課税等で区分Ⅱ (住民税非課税世帯であり、区分Ⅰに該当しない方) | 8,000円 | 24,600円 |
住民税非課税等で区分Ⅰ (住民税非課税世帯であり、世帯全員が年金収入80万円以下で、その他の所得がない方。または住民税非課税世帯であり、老齢福祉年金を受給している方。) | 8,000円 | 15,000円 |
3割の方の1ヶ月の自己負担限度額は、以下の表の通りです。
自己負担限度額 | |
所得区分 | 外来+入院(世帯) |
現役並み所得Ⅲ(課税所得690万円以上) | 252,600円+(10割分の医療費-842,000円)×1%(多数回該当は140,100円) |
現役並み所得Ⅱ(課税所得380万円以上) | 167,400円+(10割分の医療費-558,000円)×1%〈多数回該当は93,000円〉 |
現役並み所得Ⅰ(課税所得145万円以上) | 80,100円+(10割分の医療費-267,000円)×1%〈多数回該当は44,400円〉 |
同居している家族で合算できます。
申請は、市区町村の担当窓口へ書類を提出しましょう。
成年後見制度
成年後見制度とは、判断能力に不安のある方を法律的に支援する制度です。
対象となるのは、認知症、知的障害、精神障害などが要因で、判断能力が不十分な方です。
家庭裁判所によって成年後見人などが選ばれます。
支援の種類には「後見」「保佐」「補助」の3つがあります。
判断能力に応じて選べます。
以下の表に「後見」「保佐」「補助」について表しています。
後見 | 保佐 | 補助 | |
対象となる方 | 判断能力が全くない方 | 判断能力が著しく不十分な方 | 判断能力が不十分な方 |
申立てができる方 | 本人・配偶者・四親等内の親族、身寄りがいない方は市区町村長、弁護士、司法書士、検察官など |
申請は、申請書、診断書、戸籍謄本などを準備して、家庭裁判所に申請します。
成年後見人は、本人の思いを考慮します。
成年後見人が本人の思いを聞き、本人の代わりに財産の管理や契約などをします。
ただ、本人の食事の世話や介護は、支援の対象に含まれないので注意しましょう。
パーキンソン病の診断と治療法
パーキンソン病の診断は、診察時の症状や進行の仕方などで診断されます。
検査としてMRI、CTの検査や、自律神経の働きを調べる検査をする場合もあります。
パーキンソン病と区別できる治療可能な病気が他にないか、調べるために検査します。
「ホーン&ヤールの重症度分類」と「生活機能障害度」
パーキンソン病の診断は現在のところ、確実に診断する検査方法はないといわれています。
パーキンソン病は、症状を基準に総合的に診断します。
パーキンソン病は主に、運動症状や非運動症状を見て診断します。
また、薬の効果なども参考にしていきます。
パーキンソン病の症状では、運動障害が5段階あります。
「ホーン・ヤールの重症度分類」で表します。
他には日常生活機能障害を3段階で表す「生活機能障害度」があります。
【ホーン・ヤールの重症度分類】
1度:障害は身体の片側のみで、日常生活への影響はほとんどない
2度:障害が身体の両側にみられるが、日常生活に介助は不要
3度:明らかな歩行障害が現れ、バランスを崩し転倒しやすくなる
4度:日常生活の動作が自力では困難で、その多くに介助が必要
5度:車椅子またはベッド上で寝たきりで、日常生活では全面的な介助が必要
【生活機能障害度】
1度:日常生活、通院にほとんど介助がいらない
2度:日常生活、通院に部分的な介助が必要になる
3度:日常生活に全面的な介助が必要で、自分だけ歩いたり、立ち上がったりできない
パーキンソン病の治療は、継続していくことが大切です。
治療を継続することで、大きな障害なく過ごすことも可能になります。
パーキンソン病は、今の段階では根本的な治療法がありません。
しかし、リハビリや薬物治療で症状の緩和が期待できます。
安全に配慮した環境で、リハビリをすることが大切です。また嗅覚の検査や脳の超音波検査、レム睡眠期の異常行動の検査も参考になります。
パーキンソン病は、根本的に治療する方法はありません。
しかし、症状をかなり軽くすることは可能です。
治療することで、生活の質を高めることが期待できます。
治療法には、
- 内科的治療法(薬物治療)
- 理学療法
- 外科的治療法
以上の3つがあります。
それぞれ説明します。
【内科的治療法(薬物治療)】
パーキンソン病の治療は、薬物治療が基本となります。
症状に合わせて、薬の種類や組み合わせと量を調節します。
【理学療法】
適切な運動を、適切な量で継続して行います。
早い段階から行うことで、良い効果が期待できます。
理学療法士と相談しながら、運動メニューを作ってもらうのもいいでしょう。
【外科的治療法】
脳の神経細胞が集まった部分に電極を挿入し、刺激装置で刺激する方法です。
運動合併症を軽くする効果があります。
適切な薬の治療をしながら、理学療法することで身体能力を上げることが期待できます。
パーキンソン病には適切な治療と環境を
パーキンソン病は適切な治療をすることで、通常発症後10年は普通の生活ができます。
患者によって、進行の度合いは変わります。
症状に合わせて、薬物療法や理学療法をすることが大切です。
また入居する方の症状を介護施設側に、よく説明しておくことも大切です。
適切な医療ケアや、サポートを受けられるように相談しておきましょう。
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介護施設パーキンソン病まとめ
今回は、パーキンソン病の介護施設の情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- パーキンソン病は、ドーパミンという神経伝達物質が減少することで起こる病気
- 介護施設を選ぶポイントは病状を理解したスタッフがいる、リハビリできること
- 支援制度は難病医療費助成制度、介護保険制度、身体障害者福祉法などがある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。