日本人の2人に1人が一生のうち1度はがんを発症するといわれています。
また、がんは生活習慣病のひとつでもあります。
なぜがんになるのでしょうか。
本記事ではがんと生活習慣病について以下の点を中心にご紹介します。
- がんの発症と関係する生活習慣とは
- がんを予防するために改善するべき生活習慣とは
- がん治療の種類とは
生活習慣病とがんについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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がんは生活習慣病?
がんは、脳卒中や心臓病と並ぶ3大生活習慣病といわれています。
たとえば、死因の1位である「肺がん」は、喫煙習慣が最大の原因である生活習慣病です。
毎日喫煙する方は、喫煙しない方の4.5倍以上の肺がん発生率といわれています。
胃がんは、東北地方に多くみられ、塩分を多くとるなど食習慣が関係する生活習慣病です。
がんの発症は、遺伝や環境などとも複雑に絡み合って、解明されていない部分もあります。
しかし、生活習慣を見直すことが予防につながることは確かです。
食の欧米化など、生活スタイルの変化に伴い、日本でも生活習慣病が問題になっています。生活習慣病は、誰しもがなってしまう病気であるため、正しい知識を身につけ予防していくことが大切です。生活習慣病とは、どのような病気なのでしょうか?[…]
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がんになるメカニズム
がんになるメカニズムは、徐々に解明されています。
がんが発生する主な原因は、遺伝子プログラムのエラーです。
何らかの原因で遺伝子が傷つき、その結果できた突然変異した細胞ががん細胞です。
原因のひとつが生活習慣です。
がんは「胃がん」「食道がん」「大腸がん」「乳がん」など、さまざまな場所で発生します。
特定の部位における病気だと思われがちですが、実は全身の病気です。
たまたま、その部位におけるがん発症がわかったというだけのことなのです。
正常な細胞は分裂の回数が一定ですが、がん細胞は無限に増殖します。
分裂の回数が、正常な細胞とがん細胞の大きな違いになります。
最近では「がん抑制遺伝子」ががん細胞の増殖を抑えていることがわかってきました。
がん細胞は常に発生し、消滅を繰り返しているのです。
生活習慣病になっているかもしれないと気になる方も多いのではないでしょうか。生活習慣病になってしまう原因がわかれば、予防ができます。本記事では生活習慣病の原因について以下の点を中心にご紹介します。 生活習慣病の原因とは 生活習[…]
がんの原因
がんの原因として考えられているのが「生活習慣」と「感染」です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
がんを促進する生活習慣
がんは、どのような生活習慣が原因となっているのでしょう。
原因がわかれば、具体的な予防策もわかってきます。
喫煙
たばこには200種類以上の有害物質が含まれます。
そのうちニコチン、タール、一酸化炭素といった物質はがんの発症率を大幅に上げます。
喫煙が生活習慣としてある方は、ない方に比べてがんのリスクが1.5倍も高まります。
喫煙は、周りの方々のがんのリスクも高めてしまいます。
とくに、腺がんである肺がんや乳がんは、受動喫煙においてもリスクが高まります。
飲酒
過度な飲酒はがんのリスクを高めます。
1日あたりの平均アルコール摂取量(純エタノール量換算)が23g未満の方に比べ、46g以上だと約40%、69g以上だと約60%、がんリスクが高まります。
出典:国立がん研究センター【科学的根拠に基づくがん予防】
とくに飲酒では食道がん、大腸がん、乳がんのリスクが高まることがわかっています。
男性よりも女性の方がアルコールへの耐性が低いので、飲み過ぎには注意が必要です。
塩分・塩蔵品の摂取
塩分や塩蔵品の摂取が多い場合、胃がんのリスクが高くなる傾向があります。
塩分を抑えることによって、がんだけでなく、生活習慣病である高血圧のリスクも低下します。
1日あたりの食塩摂取推奨量は、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満です。
高血圧の方は、とくに推奨以下の塩分摂取量が望ましいとされています。
出典:厚生労働省【日本人の食事摂取基準(2020)】
赤身・加工肉の摂取
赤身とは、牛肉、豚肉、羊肉などの赤い部分です。
加工肉とは、ハムやベーコン、コンビーフなどのことを指します。
これらの食品を習慣的に多く摂取すると、直腸がん、結腸がんなどを発症しやすくなります。
日本人の食生活では気にしなくてもいいようですが、近年の西洋型食生活化では日本でもがんのリスクが高まるといえるでしょう。
肥満
肥満は、ほとんどの生活習慣病の原因となります。
がんとの関係では、男性の場合はむしろ痩せすぎの方の死亡率が高くなります。
女性では、とくに閉経後の肥満が乳がんのリスクを高めるため注意が必要です。
感染によるがん
がんは、生活習慣が原因とは限りません。
がん全体の約20%が感染によるがんと推計されています。
また、感染によるがんの発生は、女性では最も多く、男性でも第2位となっています。
感染によるがんには以下のような内容があります。
がんの種類 | 原因となるウイルスや細菌 |
子宮頸がん、膣がん、口腔がんなど | ヒトパピローマウイルス(HPV) |
胃がん | ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori) |
悪性リンパ腫や鼻咽頭がん | エプスタイン・バーウイルス(EBV) |
成人T細胞白血病/リンパ腫 | ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-1) |
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がんを予防する5つの健康習慣〈一次予防〉
がんは生活習慣が深く関係しています。
そのため、生活習慣を改善することでがんを予防することも可能です。
これは、がんにかからないようにするための「一次予防」とされています。
禁煙
喫煙は、肺がんだけでなく食道がん、すい臓がん、胃がん、大腸がんなどの原因となります。
さらに、受動喫煙によって腺がんリスクも高まります。
禁煙に何度もチャレンジしたけれど、挫折してしまったという方も多いでしょう。
禁煙は、自分ひとりでがんばろうとせず、専門医に相談することが成功への近道です。
ニコチンパッチなど禁煙補助薬を使ったプログラムで、禁煙に取り組みましょう。
節酒
飲酒は、適量であれば血行を良くし緊張をほぐしてくれます。
しかし、過度の飲酒は胃がん、肝臓がんなどのリスクを高めます。
適度な飲酒量は、純エタノールで23gとされています。具体的には、
- 日本酒は1合
- ビールは大瓶1本
- 焼酎は1合の2/3
- ウィスキー・ブランデーはダブル1杯
- ワインはボトル1/3程度
が1日あたりの適量といわれます。
毎日飲酒する方は、適量を意識して楽しみましょう。
食事の見直し
食事は生活習慣病に深くかかわっています。
食習慣の見直しで生活習慣病を予防するには、3つのポイントがあります。
- 減塩する
- 野菜や果物を多くとる
- 熱い飲み物や食べ物は冷ます
食塩摂取量が多いと、胃がんのリスクが高まります。
塩分を抑える食生活は、がんの予防だけでなく、高血圧などの生活習慣病も予防します。
また、野菜や果物を意識的に多くとることはがん予防の効果があります。
野菜や果物にはカリウムが多く含まれ、塩分を排出してくれます。
さらに、野菜や果物は食物繊維が豊富であることから、便通を改善し、腸内の老廃物を排出します。
なお、熱い飲み物や食べ物は、食道がんのリスクが高まるという報告があります。
できるだけ、熱いものは冷ましてから口の中に入れるようにしましょう。
活発な身体活動
普段から、仕事や運動などで身体活動が活発な方は、がんのリスクが低くなります。
活発な身体活動により、生活習慣病である肥満の予防にもなります。
活発な身体活動といっても、ハードに運動する必要はありません。
毎日60分程度、散歩しましょう。
そして、少し汗をかくくらいの運動を週に1回60分程行うように推奨されています。
今の身体活動量を少しでも増やすこと、運動習慣を持つことが大切です。
体型維持
肥満や痩せを表す指数として「BMI」が用いられます。
BMI=【体重(kg)】÷【身長(m)の2乗】で計算します。
がんを予防するためには、太りすぎず、痩せすぎずの適正体重が大切です。
男性のがんの死亡リスクは痩せている方が高く、女性では肥満の方が高くなっています。
がんのリスクを軽減し健康を保つためには、BMI値が男性で21〜27、女性で21〜25が適正値といえるでしょう。
出典:国立がん研究センター【科学的根拠に基づくがん予防】
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がんの治療
がん治療は、がんが見つかった部位だけではありません。
心臓や呼吸、腎臓などさまざまな検査によって全身状態やがんの状態を把握し、最も有効ながん治療を選択します。
がん治療には、4つの治療法があります。
- 手術療法
- 放射線療法
- 化学療法
- 免疫療法
それぞれ詳しくみていきましょう。
手術療法
外科手術を行ってがんの病巣を取り除く治療方法です。
周辺に転移がみられた場合には、一緒に取り除きます。
手術により体にメスを入れるということは、それだけ負担をかけることになります。
最近では、腹腔鏡下手術など体への負担を少なくする手術の普及が進められています。
放射線療法
放射線を照射し、がん細胞の増殖を防ぐ治療方法です。
がん細胞は、正常細胞よりも放射線の影響を受けやすいという性質をもっています。
そのため、小分けにして何度も照射することで、正常細胞にダメージを与えずがん細胞の増殖を防げます。
化学療法
抗がん剤などの化学物質を使ってがん細胞を破壊する治療方法です。
抗がん剤は血液に入り、全身をくまなく巡ってがん細胞を攻撃します。
全身的ながんに対して効果を発揮します。
免疫療法
体の中に侵入した異物を排除しようとする力を「免疫力」といいます。
免疫療法は免疫力を強めることで、異物であるがん細胞を排除する治療方法です。
化学療法と同じように全身がんに効果が期待できます。
新たながん治療法として、注目されています。
主ながんの特徴と要因・予防法
主ながんの特徴や要因、予防法について、以下のようにまとめました。
世界保健機関(WHO)や国際がん研究機構(IARC)、世界がん研究基金(WCRF)、米国がん研究協会(AICR)などの評価を参考にしています。
胃がん
【主な症状】みぞおちの痛み、胸焼け、黒い色の便
【リスク要因(確実)】たばこ
【リスク要因(可能性大)】加工肉、塩蔵品、飲酒(女性)、肥満
【予防(可能性大)】きゅうりやピーマンなど非でんぷん野菜、にんにくやにらなどアリウム野菜、果物
胃がんは、ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の感染が主な原因だと考えられています。
大腸がん
【主な症状】血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、残便感、膨満感、腹痛、貧血
【リスク要因(確実)】赤身肉・加工肉、飲酒(男性)、肥満、高身長、喫煙
【リスク要因(可能性大)】飲酒(女性)
【予防(確実)】運動
【予防(可能性大)】食物繊維、果物、にんにく、カルシウムを含む食事
直系の親族に大腸がんの方がいる場合は、リスク要因となります。
食道がん
【主な症状】食道がしみる、つかえる、胸痛・背部痛、咳など
【リスク要因(確実)】喫煙、飲酒、肥満
【リスク要因(可能性大)】マテ茶、熱い飲食物
【予防(可能性大)】非でんぷん野菜、βカロテン、ビタミンC、果物
肺がん
【主な症状】治りにくい咳、胸痛、喘鳴、息切れ、血痰、声枯れ
【リスク要因(確実)】喫煙、受動喫煙、βカロテンのサプリメント、飲料水中のヒ素
【予防(可能性大)】果物、非でんぷん野菜
上記の他に、魚や大豆もリスクを下げる可能性があるものとして挙げられます。
肝臓がん
【主な症状】腹部のしこり、圧迫感、痛み、膨満感
【リスク要因(確実)】喫煙、アフラトキシン(カビ毒)、肥満
【リスク要因(可能性大)】飲酒
【予防(可能性大)】コーヒー
原発性肝がんの多くは、B型・C型肝炎ウイルスの感染が原因です。
B型肝炎ウイルスは、ワクチン接種により感染を予防できます。
すい臓がん
【主な症状】腹痛、背部痛、食欲不振、体重減少、皮膚や白目が黄色くなる黄疸
【リスク要因(確実)】喫煙、肥満、高身長
【リスク要因(可能性大)】内臓脂肪
【予防(可能性大)】食物に含まれる葉酸
前立腺がん
【主な症状】排尿困難、頻尿、残尿感、夜間多尿、尿意切迫、下腹部不快感
【リスク要因(可能性大)】肥満(進行)、高身長
【予防(可能性大)】大豆イソフラボン
年齢(高齢者)や前立腺がんの家族歴も、リスク要因となります。
乳がん
【主な症状】自分で注意深く触るとわかるしこり、えくぼのようなくぼみ、皮膚が赤くはれる、わきの下のリンパ節のしこり、うでのむくみやしびれ
【リスク要因(確実)】飲酒習慣(閉経後)、肥満(閉経後)、成人後の体重増加(閉経後)
【リスク要因(可能性大)】飲酒(閉経前)、重い出生時体重(閉経前)、喫煙
【予防(可能性大)】大豆イソフラボン、中~高強度の身体活動(閉経後)、高強度の身体活動(閉経前)、肥満(閉経前)、若年時のBMI30以上の肥満、授乳
子宮頸がん
【主な症状】不正出血、性行為の際の出血、おりものが増える
【リスク要因(可能性大)】妊娠・出産回数が多い、喫煙
【予防(可能性大)】魚
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主な原因です。
子宮頸がん予防ワクチンによって、一部のHPVの感染リスクを下げることが可能です。
子宮体がん
【主な症状】不正出血、排尿時の痛み、排尿困難、性交時痛、骨盤の痛み
【リスク要因(可能性大)】グリセミック負荷、肥満、糖尿病
【予防(可能性大)】コーヒー、中~高強度の身体活動
その他、閉経年齢が遅い方や出産歴がない方、不規則な月経、無月経や排卵異常の方が、子宮体がんにかかりやすいといわれています。
定期的な検査で早期発見を〈二次予防〉
生活習慣を見直すことを一次予防だとすると、がん検診は二次予防です。
がんは早期発見・早期治療することによって、患者の負担を軽減できます。
治癒率が高まり、死亡率が低くなり、さらに心身と家計の負担も少なくなります。
がんの早期発見・早期治療には定期的ながん検診が欠かせません。
体調が悪くなってからでは遅いのが、がんという病気なのです。
がんは、生活習慣病のひとつです。
そのため、知らないうちに発症する可能性が高い病気です。
定期的にがん検診を受診し、がんの早期発見・早期治療に努めましょう。
外部からの刺激に対する反応をストレスと呼びます。ストレスは、生活習慣病などの疾患にも関係しています。ストレスと生活習慣病は、どのような関係なのでしょうか。また、ストレスは一体どのように健康へ影響を及ぼすのでしょうか。本記[…]
推奨されるがん検診は5種類ある
がん検診にもがんの種類によって検査項目が違ってきます。
推奨されるがん検診についてみていきましょう。
種類 | 対象者 | 受診間隔 | 検査項目 |
胃がん検診 | 50歳以上 | 2年に1回 | 問診に加え、胃部X線検査または胃内視鏡検査のいずれか |
子宮頸がん検診 | 20歳以上 | 2年に1回 | 問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診 |
肺がん検診 | 40歳以上 | 年1回 | 問診、胸部X線検査および喀痰細胞診 |
乳がん検診 | 40歳以上 | 2年に1回 | 問診および乳房X線検査(マンモグラフィ) |
大腸がん検診 | 40歳以上 | 年1回 | 問診および便潜血検査 |
がん検診はどこで受けることができる?
がん検診は、お住まいの市区町村の自治体指定の医療機関などで受けることが可能です。ただし、いつでも健診が受けられるというわけにはいきません。
がん検診の対象となる年齢、実施時期、場所、費用などは各自治体で異なります。
広報やホームページなどでチェックしましょう。
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がんは死因の3割を占める
日本人の全死因のなかで、生活習慣病であるがんは1位となっています。
続く2位は、同じく生活習慣病である心疾患です。
がんは全死因のなかで約3割を占めています。
しかし、がんは生活習慣の改善や早期発見・早期治療によって、予防あるいは死亡率を軽減できる病気です。
ある調査によると、食塩摂取量の軽減や、野菜や食物繊維の多い食品の頻回摂取など食生活の改善により、約12%のがん予防が可能であると推計されています。
また、がん検診も有効です。
平成9年度には、約2,300万人が検診を受診し、2万人余りのがん患者が発見されています。
しかし、各がん検診の受診率は、胃がん13.3%、子宮がん15.2%にとどまっています。
がん検診の有効性では、胃がん検診で40〜60%もの死亡率減少効果が証明されています。
がんによる死亡を防ぐためにも、生活習慣の改善とがん検診が重要であることがわかります。
出典:厚生労働省【がん】
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生活習慣病とがんまとめ
ここまで生活習慣病とがんについて紹介してきました。
生活習慣病とがんの要点を以下にまとめます。
- 生活習慣病であるがんの原因は「喫煙」「飲酒」「塩分」「感染」など
- がんを予防する生活習慣は「禁煙」「節酒」「運動」「体型維持」など
- がん治療の種類は「手術療法」「放射線療法」「化学療法」「免疫療法」
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。