脳梗塞は脳の血管が詰まる疾患です。
脳梗塞になると後遺症が残ることがあります。
脳梗塞の後遺症にはどのようなものがあるのでしょうか。
また後遺症を改善するためのリハビリにはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事では脳梗塞の後遺症について以下の点を中心にご紹介します。
- 脳梗塞の後遺症にはどのようなものがあるのか
- 脳梗塞の後遺症を軽減するための方法
- 脳梗塞を予防するためには
脳梗塞の後遺症について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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脳梗塞とは
脳梗塞とは脳の血管が詰まる疾患で、脳卒中の一種です。
2020年度における日本人の死因第4位である脳血管疾患に分類されます。
脳の血管が詰まることで脳に栄養や酸素が行き届かなくなります。
栄養や酸素が不足した部位の脳細胞はダメージを受けます。
脳梗塞の代表的な症状には以下のものがあります。
- 片側の麻痺
- 呂律が回らない
- 片側の手足が突然しびれる
- 視野が半分欠ける
脳梗塞は発症の原因によって3つのタイプに分類されます。
- ラクナ梗塞:細い血管が多く詰まる
- アテローム血栓性脳梗塞:動脈硬化などによって血管が詰まる
- 心原性脳塞栓症:心臓の不整脈によってできた血栓により血管が詰まる
出典:【令和2年(2020) 人口動態統計(確定数)の概況】
脳梗塞というと、突然倒れて意識を失うイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、それは脳梗塞の症状のほんの一部なのです。脳梗塞の原因や症状についてよく理解することで、もしもの時に適切な対応ができるようにしましょう。また、[…]
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脳梗塞の後遺症
脳梗塞の後遺症はダメージを受けた部位によって異なります。
それぞれの後遺症について説明していきます。
症状 | ダメージを受けた部位 | 特徴 | 日常で影響を受ける動作 注意点 |
運動麻痺 | 前頭葉 | ダメージを受けた脳の反対側に症状がでます。 手足が動かしにくくなったり、場合によっては全く動かないこともあります。ダメージの部位や程度によって、手と足の麻痺の程度に差がでる場合もあります。顔面にも麻痺が出ると片側のまぶたが下がったり、口角が下がります。 | ・移動動作(歩行) ・食事動作 ・更衣動作 ・手先を使う細かな動作 |
感覚障害 | 頭頂葉 | ダメージを受けた脳の反対側に症状がでます。 感覚障害では以下に記載する感覚が鈍くなったり、全く感じなくなったりします。 また突然しびれるなどの症状がでることもあります。触覚:ものに触れているか感じる感覚 痛覚:痛みを感じる感覚 温度覚:熱い・冷たいなどの温度を感じる感覚 位置覚:自分の手や足などがどのように動いているか感じる感覚 振動覚:振動していることがわかる感覚 | ・怪我していることに気づかない ・熱さがわからず、火傷や凍傷などをおこす ・目を閉じると真っ直ぐ立つことができない |
目の障害 | 後頭葉 | ・ものが二重に見える ・視野が狭くなる ・視野が半分欠けて見える(同名半盲) 同名半盲はダメージを受けた脳の反対側に症状がでます。 | ・二重に見えることで、ものを掴みにくくなったり取りにくくなる ・視野が狭くなることでものにぶつかることが多くなる ・同名半盲により障害側のものに気づかない【注意点】 目の障害は老齢によるものや目の病気と考えることも多い。 症状が軽度であると放置されることもあるので注意が必要。 |
構音障害 | 小脳 大脳基底核 | 舌や唇、喉などの発声器官に麻痺が起きます。 構音障害とは言葉をはっきり発音できない状態のことをさします。 | ・呂律が回らないため、聞き取りにくくなります。 【注意点】 |
嚥下障害 | 小脳 大脳基底核 | 食べ物を飲みこむ筋肉の連動がうまくいかないことで嚥下障害が起こります。 | ・誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。 【注意点】 |
高次機能障害
高次機能障害とは記憶障害や注意障害などをきたしている状態のことです。
障害によって日常生活や社会生活が困難になります。
高次機能障害をきたす原因は脳血管障害の中でも脳梗塞が1番多いといわれています。
高次機能障害の症状は多岐にわたります。
主なものを説明していきます。
障害 | 特徴 | 後遺症の例 |
記憶障害 | 物事を覚えられなくなったり、思い出せなくなります。 比較的新しい記憶が障害されます。 | ・物をどこに置いたか忘れる ・新しいことを覚えられない ・同じことを何度も繰り返して質問する |
注意障害 | 集中力が低下し、注意を適切に向けられなくなります。 また何に注意・集中してよいかがわからなくなります。 | ・小さな刺激で動作が中断される ・2つ以上の物事を同時に進行できない ・ぼんやりする ・間違いが多くなる |
遂行障害 | 遂行機能とは目標を決めて、計画を立て実行するといった一連の過程です。 実行するときに適切な調整を行なっていくことも遂行機能の一部です。 | ・計画をたてて物事を進められない ・計画的に買い物ができず浪費してしまう ・録画装置を操作し録画できない |
社会的行動障害 | 感情を適切にコントロールできず不適切な行動をとってしまうことです。 感情を抑えられず人間関係がうまくつくれなくなります。 | ・すぐカッとなり大声をだす ・興奮して暴力をふるう ・自己中心的になる |
病識欠落 | 自分が障害をもっていることを自覚できなくなることです。 障害がないように行動しようとしたり、他人に伝えます。 | ・麻痺があるのに他人には「動く」という ・麻痺を無視して動こうとする ・麻痺を無視するため転倒や転落といった危険性がある |
失語症 | 大脳の言語領域がダメージを受けることで起きます。 失語症では会話自体が成り立ちにくくなります。 | 運動性失語:理解はできるが、なかなか言葉で表せられない 感覚性失語:言葉はスムーズにでるが理解できず言い間違いが多い |
半側空間無視 | 片側にあるものが見えているのに無視してしまうことです。 片側の視野が見えなくなる同名半盲とは違い、ものを見ることはできます。多くの場合、右の大脳の障害による左半側空間無視でみられます。 同時に病識が欠落している場合が多いです。 | ・片側にあるものにぶつかりやすくなる ・片側にあるものだけ食べない ・病識も同時に欠落していると麻痺に気づかず行動する |
自発性障害 | 周囲の状況に無関心になり他者から指示されないと何もせず過ごしてしまいます。 意欲も低下しますが、うつ状態とは違います。 | ・自分から進んで行動や動作できなくなります。 |
出典:【高次脳機能障害全国実態調査報告】
脳梗塞自体が完治しても、記憶障害や思考力の低下などの後遺症が出ることがあります。それは、脳梗塞によって認知症を発症するケースがあるからです。脳梗塞を患い、不安に感じている人も多いのではないでしょうか?本記事では、脳梗塞か[…]
脳梗塞の後遺症を改善するリハビリ方法
脳梗塞の後遺症はリハビリすることで症状の改善が期待できます。
ただし、梗塞の程度や部位によって個人差があります。
リハビリはできるだけ早期から開始することで機能回復する可能性が高まります。
逆に、リハビリしないことで体力や筋力の低下、認知機能の低下を招きます。
体力・筋力の低下や認知機能の低下は廃用症候群につながります。
廃用症候群予防のためにもリハビリは重要です。
発症直後から維持期までそれぞれ具体的なリハビリを紹介し説明していきます。
急性期|脳梗塞発症直後から3ヶ月頃まで
発症してから3ヶ月までを急性期とよび、治療とともにリハビリが開始されます。
急性期ではほとんどの場合、入院が必要になります。
病院内で看護師やリハビリ療法士によるリハビリが実施されます。
急性期の間は回復の見込みが高い時期でもあります。
基本的に発症後48時間以内に開始することが望ましいとされています。
ただし、無理をしすぎると脳梗塞の症状が悪化する可能性もあります。
そのため、医師の指示に従うことが重要です。
急性期に行える訓練を5つご紹介します。
ADL訓練
ADLとは日常生活動作のことです。
ADLが高いほど自立した生活ができます。
ADLは以下の動作のことを指します。
- 起居動作
- 移乗・移動
- 食事
- 更衣
- 排泄
- 入浴
- 整容
麻痺など症状が強いとはじめのうちは、なかなか上手くできません。
介助を受けながら、できるようにコツを掴むことが大切です。
摂食嚥下訓練
栄養や水分の摂取はとても重要になります。
しかし、嚥下障害があると食事や水分を摂るのが難しくなります。
入院中は点滴などで補助的に栄養や水分を補います。
その間に口から食事が摂れるように嚥下訓練を行います。
嚥下訓練では、まず嚥下機能の評価を行います。
嚥下機能の程度に合わせて、水分にとろみをつけるなどして食事形態を考えていきます。
他にも
- 嚥下体操:嚥下に関わる筋肉や器官のリハビリをする
- 口腔周囲のマッサージ
- 発音練習:嚥下と言葉を出す器官は同じであるため
- 咳嗽訓練:咳をする訓練
などを行います。
離床訓練
離床訓練は日中をベッドで過ごさず、生活の範囲を広げていく訓練です。
まずは椅子などに座る訓練からはじまります。
椅子に座れるようになれば、立つ動作なども取り入れていきます。
離床訓練には以下の効果があります。
- 筋力・体力の低下予防
- 心肺機能低下予防
- 消化器機能低下予防
- 精神機能低下予防
日中にベッドから離れて生活することで生活リズムを整えることにもつながります。
関節可動域訓練
関節可動域訓練は自分で体を動かせない方や動かしにくい方に行います。
関節を動かさずにいると拘縮や変形が起こります。
拘縮・変形を予防するためにも関節可動域訓練が必要になります。
自分で動かす「自動運動」と介助で動かす「他動運動」の2種類あります。
関節可動域に異常があるとADLなどにも影響がでます。
特に股関節や膝関節では歩行に影響がでます。
大きな関節だけでなく指などの関節も動かしていきましょう。
機能回復訓練
機能回復訓練は障害された機能を回復させて本来の力を取り戻すことが目標です。
運動麻痺や言語障害、高次機能障害などそれぞれに合わせた訓練を行います。
症状に合わせてリハビリの療法士がプログラムを考えます。
回復期|3~6ヶ月頃まで
回復期では急性期でのリハビリより、さらに生活動作を取り入れた訓練を行います。
急性期で入院していた病院からリハビリに特化した病院に転院することがあります。
または病院を変えずにリハビリに特化した病棟に移動することもあります。
入院せずに自宅や施設に退院する場合もあります。
症状や介護の状況によっては今後の生活場所が変わる場合があります。
生活場所が変わっても、できる限り残った機能を維持・向上させていくことが大切です。
回復期で行う訓練を5つご紹介します。
ボツリヌス療法で痙縮を抑える
痙縮とは後遺症の一つで、筋肉の過度な緊張で手足がつっぱった状態のことです。
ボツリヌス療法とはボツリヌス菌がつくる成分を使った治療法です。
ボツリヌス菌がボツリヌストキシンと呼ばれるタンパク質をつくります。
ボツリヌストキシンを筋肉内に注射することで筋肉の緊張を緩める治療法です。
筋肉の緊張を緩めることで筋肉が動かしやすくなりリハビリが行いやすくなります。
また、拘縮を予防することにもつながります。
磁気・電気刺激療法で筋肉を動かす
電気刺激は手足を動かす神経や筋肉を電気で刺激する方法です。
刺激するだけでなく、筋肉の動きを感知して手助けすることもできます。
磁気刺激は磁場によって無痛で連続して筋肉に刺激を与える方法です。
電気や磁気で筋肉を繰り返し刺激しながら動かすことで運動を学習させます。
筋肉に運動を覚えさせることで、筋萎縮の予防や痙縮抑制が期待できます。
ロボットリハビリ
ロボットを用いて筋肉の動きをサポートしリハビリを行う方法です。
主に歩行訓練の際に用いられます。
脚に装着したロボットが歩行する際にバランスを修正します。
また体を支えることで歩行訓練が可能になります。
ただし脳梗塞では保険適用にはなっていません。
失語症リハビリで失語を改善する
失語は適切な言葉が浮かばなかったり、理解できないといった状態です。
聞く・話す・読む・書くといったことを繰り返し行います。
リハビリではできるだけ短い文章や簡単な文章から始めます。
毎日短い日記をつけてもらうなど継続的に行い、失語を改善していきます。
他にも日常生活での場面を想定して言語やジェスチャー訓練を行います。
言語やジェスチャーで実用的にコミュニケーションをとれる訓練をしていきます。
嚥下訓練で食べる機能を回復させる
嚥下障害がある場合は回復期においても引き続き嚥下訓練を行います。
- 嚥下体操
- 口腔周囲のマッサージ
- 発音練習
- 咳嗽訓練
嚥下機能に応じて徐々に食事の形態を変更していきます。
できる限り元の食事形態に戻せるよう訓練していきます。
口腔内の観察も定期的に行い、義歯などの再調整なども必要になってきます。
維持期|6ヶ月以降
維持期になると生活場所は自宅や施設になります。
そのため、リハビリがしやすいような環境を整える必要があります。
生活の一部としてリハビリを取り入れることでリハビリを長期間続けることができます。
また脳梗塞再発の予防としても維持期のリハビリは必要です。
維持期で行うリハビリを4つ紹介します。
通院してリハビリを継続する
自宅や施設から病院に通ってリハビリを続けます。
今までのリハビリで改善した機能を維持し、さらに向上を目指します。
リハビリの療法士から引き続きリハビリ指導を受けます。
ストレッチ
ストレッチで筋肉をほぐしましょう。
痙縮予防や拘縮予防につながります。
またストレッチを行うことで血行もよくなり、脳梗塞再発予防につながります。
日常動作を行う
自宅や施設でもできる限りの日常生活を行うようにしましょう。
病院などでは看護師やリハビリ療法士からの指導があり、動くよう促されます。
しかし、自宅など退院すると動くことがめんどうになってしまうこともあります。
自宅で日常生活を積極的に行うことで生活に根付いた身体機能を使うことになります。
麻痺などが残っていたとしても体の使い方を覚えて充実した日々を送れるでしょう。
散歩などの軽い運動をする
軽い運動をすることはリハビリになります。
また適度に運動することで筋力がつき、肺や心臓の機能も改善します。
体を動かすことでストレス改善にもなり、肥満や動脈硬化の予防につながります。
リハビリだけでなく脳梗塞の再発予防のためにも適度な運動は必要です。
脳梗塞は脳の血管が詰まって起こる病気です。脳梗塞のリハビリは、発症後の期間別に適切な内容を行うと効果が高いといわれています。では、脳梗塞のリハビリとはどのようなものなのでしょうか?本記事では、脳梗塞のリハビリについて以下[…]
脳梗塞と脳梗塞の後遺症を予防する方法
脳梗塞は脳血管障害死亡数の半数以上を占めています。
また脳梗塞は再発しやすい疾患です。
発症してから1年で10%、5年で35%、10年では50%の方に再発リスクがあります。
脳梗塞が再発すると後遺症が悪化するだけではなく、他の後遺症が出る可能性があります。
脳卒中は介護が必要となる原因疾患の第2位になっています。
寝たきりにならないためにも再発を予防していくことは重要です。
脳梗塞や脳梗塞になっても後遺症悪化を予防するための方法を説明していきます。
生活習慣を見直す
脳梗塞の再発を予防するためには、生活習慣を見直すことが重要です。
生活習慣の中でもどのようなことを改善したら良いのか具体的に説明します。
禁煙する
喫煙は脳梗塞の危険因子です。
喫煙することで血管を傷つけて動脈硬化を進行させます。
喫煙本数が多いほど脳梗塞のリスクは高くなります。
また喫煙の期間が長いほど脳梗塞のリスクは高くなります。
喫煙していると脳梗塞のリスクが高くなるだけではありません。
脳梗塞になったあとの経過にも悪影響があり、後遺症が重くなるリスクが高まります。
過去に喫煙歴があっても5〜10年間の禁煙で脳梗塞のリスクは低減します。
早めに禁煙にチャレンジしてみましょう。
また受動喫煙も危険因子になります。
近くの方が喫煙されていたら、少し距離をとるように心がけてください。
食塩摂取量を抑える
塩分の過剰摂取は高血圧につながります。
高血圧は脳梗塞の危険因子です。
高血圧の状態が続くと血管に負担がかかり動脈硬化を起こします。
動脈硬化も脳梗塞の危険因子です。
そのため、塩分を減らして高血圧を予防することで脳梗塞予防につながります。
塩分摂取量の1日の目安量は男性では7.5g未満、女性では6.5g未満とされています。
日本高血圧学会ではすでに高血圧がある方は1日6.0g未満を推奨しています。
減塩のためには
- 漬物を控える
- 麺類の汁は残す
- 香辛料や香味野菜などを利用し味を整える
- 外食や加工食品を控える
などが必要です。
高血圧を予防し脳梗塞にならないためにも塩分を摂りすぎないようにしましょう。
生活習慣を見直してみましょう。
体重を減らす
肥満を改善することで脳梗塞予防につながります。
肥満、特にお腹の内臓に脂肪がたまる内臓肥満は以下のリスクを高めます。
- 高血圧
- 脂質異常症
- 糖尿病
肥満だけでも動脈硬化の危険因子であり脳梗塞のリスクを高めます。
肥満以外に、他の高血圧などが加わるとさらに脳梗塞のリスクを高めます。
脳梗塞後のリハビリにも影響が出やすいとされています。
肥満があると体重を支えきれずリハビリをすすめにくいという可能性があるためです。
今からでも肥満を改善していきましょう。
お酒を飲みすぎない
アルコールは飲みすぎないことが重要です。
適度なアルコールは血圧を一時的に下げます。
血流もよくなるため、脳梗塞にも保護的に働きます。
しかし、アルコールには利尿作用があるため脱水のリスクがあります。
脱水は脳梗塞の危険因子になるため、飲酒量には注意が必要です。
適度な1日の飲酒量とはアルコール20g程度です。
アルコール20gとは、ビール中瓶1本、日本酒1合に相当します。
ただし、アルコールの影響は体質や個人差があります。
麻痺がある方は飲酒によるふらつきで転倒のリスクが高くなることも考えられます。
また、脳梗塞をされた方は薬も服用しています。
医師と相談しながら、体調に合わせた飲酒を心がけてください。
適度な強度の運動を習慣的に行う
適度な運動は肥満予防や高血圧予防に効果があります。
ウォーキングなど体を動かすことで筋力低下予防にも効果があります。
過度な運動は血圧を上昇させるなどのリスクがあります。
適度な運動(30〜60分の運動)を週3回以上行うことが目安になります。
水分をこまめに補給する
脱水は脳梗塞のリスク因子の一つになっています。
水分が不足すると血液が濃縮されて血栓症のリスクを高めます。
水分をこまめにとることで脳梗塞や脳梗塞後の後遺症・再発を予防できます。
脱水予防として水分を摂るために意識するとよいタイミングがあります。
コップ1杯の水を
- 朝起きた時
- 寝る前
- 運動前
- 飲酒する時
に飲むことです。
その他にもできる限りこまめに水分をとるようにしましょう。
高齢者は口渇を感じにくくなっています。
さらに尿意が近くなるからと水分を控えてしまいます。
脱水を予防するために周囲の人からも水分摂取を促してください。
脳梗塞で嚥下障害がある場合でも、とろみをつけて、水分を摂りましょう。
体を気遣いメンテナンスを行う
脳梗塞の予防や後遺症を軽減させるためには、自分の体と向き合うことが大切です。
体に異常がないか、放置している疾患はないかなどチェックしていきましょう。
高血圧の治療を行う
高血圧は脳梗塞や脳出血の最大のリスク因子です。
収縮期血圧が140mmHg以上で脳梗塞発症のリスクが高くなります。
脳梗塞になった方でも再発を防ぐためには高血圧を予防することが大切です。
日本高血圧学会の2009年のガイドラインに目標値があります。
脳梗塞発症1か月以降の血圧目標値は140/90mmHg未満とされています。
公共の場でも血圧測定器が置いてあります。
日頃から血圧を測定する機会をつくりましょう。
また、健康診断などで指摘された場合は早めに病院受診して治療を行いましょう。
脂質異常症の治療を行う
脂質異常症も脳梗塞の危険因子です。
脂質異常症を放っておくと動脈硬化が進行します。
血液検査で脂質異常症を指摘された場合は早めに治療をしてください。
まずは食生活を見直しましょう。
脂っこいものを食べすぎていないか、野菜も摂取しているか見直してください。
また適度な運動をしているかも大切です。
脂質異常症だけではあまり症状がありません。
しかし脳梗塞など重大な病気になってからでは手遅れです。
後遺症が残るなど今後の生活にも影響が出ます。
早期から治療を行いましょう。
糖尿病の治療を行う
糖尿病は動脈硬化を進行させます。
また、脳梗塞のリスクを高めます。
糖尿病があると脳梗塞のリスクが2〜4倍高くなるといわれています。
また糖尿病があると脳梗塞の予後も悪くなります。
後遺症も強く出やすくなります。
糖尿病をしっかりと治療していきましょう。
心臓病の治療を行う
心臓に不整脈がある場合の脳梗塞は心原性脳塞栓症がほとんどです。
心房細動という不整脈により心臓内に血液の塊である血栓ができます。
心臓でできた血栓が血流にのって脳の血管を詰まらせます。
動悸が頻回に起こる場合は心臓の検査をすることが必要です。
定期的に血液検査結果をチェックする
脂質異常症や糖尿病を早期に発見するためにも定期的に血液検査をしましょう。
検査をするだけでなく異常が見つかれば治療を始めるようにしてください。
放置することが一番、脳梗塞のリスクを高めていく原因となります。
薬を服用する
高血圧や糖尿病の治療が始まり薬が処方されたら、適切に服用しましょう。
脳梗塞になったあとも再発予防のために薬は必要です。
また、適切に高血圧などの薬を服用しておくことで後遺症も低減できます。
降圧薬を飲んで血圧を下げる
脳梗塞の最大の原因は高血圧です。
血圧を下げるためにも降圧薬を服用して血圧を下げましょう。
毎日、決まった時間に血圧を測定しノートにつけることも大切です。
服用している薬で効果がでているのかを考えるためです。
血圧をつけたノートは病院受診する際に持参しましょう。
医師に見てもらい薬の追加や変更が必要ないか考えてもらう材料になります。
心臓が原因の場合は抗凝固薬を飲む
心臓が原因となる脳梗塞は心原性脳塞栓症とよばれます。
不整脈の一つである心房細動が主な原因です。
心房細動では心臓の中で血液が滞り、血栓ができます。
血流が遅い部位での血栓には抗凝固薬が使用されます。
抗凝固薬の例として
- ワーファリン
- プラザキサカプセル
- イグザレルト
- エリキュース
などがあります。
脳梗塞を発症した方は再発の可能性があります。
そのため、長期的に抗凝固薬を服用する必要があります。
心臓以外が原因の場合は抗血小板薬を飲む
心臓以外が原因となる脳梗塞にはアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞があります。
主に動脈硬化が原因となります。
動脈に血栓が形成されることで脳梗塞を発症します。
動脈は血流が速い血管です。
血流の速い部位の血栓症には抗血小板薬が使用されます。
抗血小板薬の例として
- クロピドグレル
- シロスタゾール
- アスピリン
などがあります。
脳梗塞発症後も再発しないよう抗血小板薬を長期的に飲む必要があります。
出典:【脳卒中の 治療と仕事の両立 お役立ちノート】
出典:【2017年2月3日 第2回脳卒中に係るワーキンググループ 議事録】
脳梗塞とは、脳の血管が詰まってしまい脳がダメージを負ってしまうものです。血管が詰まってしまう原因や詰まる血管の太さによって3種類に分類されます。そもそも脳梗塞とは、どのような人が罹りやすい病気なのでしょうか?脳梗塞を予防する[…]
脳梗塞の後遺症がない確率は?
脳梗塞は血栓溶解療法や血栓改修療法など医学の進歩により、治療を受けることで後遺症を残さずに退院できる症例も増えてきました。
一般的に、脳梗塞を発症するとほぼ完治する人が約20%、約70%の方は何らかの後遺症を残すと言われています。特に20歳から39歳の若い世代では、70%の人がほぼ介助が必要ない状態まで回復しています。
脳梗塞を発症しても復職することが可能となってきております。職場の環境にもよりますが、脳梗塞が発症した後の最終的な復職率は50%から60%となっています。脳梗塞の症状を改善するためにリハビリテーションが重要です。
発症後1〜2ヶ月間の急性期や3〜6ヶ月間の回復期のリハビリテーションにより症状の改善が期待できます。
発症から復職は3ヶ月から6ヶ月頃と、1年から1年半のタイミングで復職する人が多いです。復職する人の15%は発症から1年後以降に復職しています。
出典:厚生労働省「脳卒中に関する留意事項」
脳梗塞の後遺症まとめ
ここまで脳梗塞の後遺症についてお伝えしてきました。
脳梗塞の後遺症の要点を以下にまとめます。
- 脳梗塞の後遺症は運動麻痺や言語障害など多岐にわたる
- 後遺症軽減のためには急性期から維持期にかけてリハビリを継続的に行うこと
- 脳梗塞の予防のためには定期的に健康診断を受け、生活習慣を見直すこと
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
脳梗塞はよく知られた疾患ですが、いざ症状があらわれたときに、受診をためらう方は少なくありません。脳梗塞は発症から治療開始までが短いほど、予後が良くなります。そもそも、脳梗塞にはどのような症状があるのでしょうか?適切な治療を受[…]