「脳卒中の可能性があると診断された。」「治療できるのか不安で情報を探している。」
「脳卒中は、治療できるの?」と疑問を持つことがあると思います。
しかし、脳卒中は、早期治療ができれば、病気及び、後遺症のリスクを軽減できる可能性があります。
今回は「脳卒中の治療方法」についての以下の点を中心に解説していきます。
- 脳卒中の治療方法には何があるのか
- 脳卒中の予防方法
- 脳卒中の治療費について
脳卒中の治療について理解していただくためにご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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脳卒中とは
脳卒中とは「脳にただち(卒)に中(あた)る」という意味で、脳の血管が破れる、詰まるなどが原因の疾患の総称です。
日本における死亡者は年間13万人にものぼり、死亡原因では第4位の位置付けの疾患といわれています。
脳卒中は、脳内で血流とともに運ばれていた酸素・栄養が脳細胞に届かず、時間の経過とともに脳細胞が死滅していく病気です。
また、細胞の死滅範囲により、脳の損傷の激しさがある程度わかるため、後遺症の重さが予測できます。
寝たきりになる前に早期発見することが大切です。
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脳卒中の治療方法
脳卒中は、脳で発症する病気の総称になるため、個々の治療が必要です。
ここからは、それぞれの脳疾患の治療法を詳しく説明していきます。
脳梗塞急性期の治療方法
脳梗塞は、脳内の血管の動脈硬化による血栓、心臓での血栓により脳が壊れる病気です。
脳梗塞急性期の治療方法については、下記のとおりです。
- t-PA治療
- 血管内治療
- 薬剤治療
いずれも、独自の手法で血栓を取り除く治療法であることが特徴です。
それでは、みていきましょう。
t-PA治療
t-PA(組織型プラスミノゲン・アクティベーター)という薬品を用いて、血栓を溶かし、脳の滞っている血流を改善する治療法です。
t-PAにより、生活面で自立できるようになった患者が多いと報告されています。
血管内治療
脳血管に詰まった血栓を、摘出していく治療法です。
MRIやCTなどの脳画像をとおして、血管内治療の内容を計画します。
そして「ステントリトリーバー、吸引カテーテルの器具」を用いて、体外に摘出します。
また、脳血管が太い患者様には、t-PAのみでは血栓に対処しきれないケースもあります。
その際にも血管内治療が活躍するでしょう。
薬剤治療
脳梗塞が発症後、48時間以内であれば血液が凝固する前に、薬による治療を実施します。
主に、薬剤治療に使われる薬は、以下のとおりです。
薬品名 | 薬の効果 |
フリーラジカルスカベンジャー | 脳を保護する |
抗血小板薬(注射) | 血小板の働きを抑える |
抗トロンビン薬 | トロンビンを抑制する |
抗凝固薬(注射) | 血液の凝固を抑える |
抗凝固薬(経口) | 血液の凝固を抑える |
抗血小板薬(経口) | 血小板の働きを抑制する |
デキストラン40製剤 | 血流改善 |
濃グリセリン・果糖製剤 | 脳浮腫を軽減させる |
また、「アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞」の場合は、血液をサラサラにする抗血小板薬を投与します。
脳出血の治療方法
脳出血は、文字通り、「脳内の出血」が原因の症状です。
脳の血管から血液があふれ出し「血腫」が増えて周囲を圧迫し脳細胞を破壊します。
脳出血の治療方法は、下記の3種類が挙げられます。
- 開頭血腫除去術(開頭手術)
- 内視鏡的血腫除去術
- 薬剤治療
それでは、それぞれみていきましょう。
開頭血腫除去術(開頭手術)
直径約10㎝ほどの、大きさで頭蓋骨を切り取り、脳内の血腫を取る手術です。
脳の一部を切開することで、脳内に溜まっている血腫を顕微鏡をとおして除去します。
手術の所要時間は、約3時間ほどになります。
内視鏡的血腫除去術
頭蓋骨を小さく開いて、内視鏡を使い脳への負担を減らす手術方法です。
10円玉程度の穴を頭蓋骨に開けて、そこから直径1cmほどのシース(筒)を脳内に挿入してから、血腫を除去する手術を行います。
所要時間は、約90分程度といわれています。
また、開頭血腫除去術と比較すると、手術後の傷が目立ちにくいため、患者に寄り添った手術方法といえるでしょう。
薬剤治療
脳出血の場合は、高血圧から来るものが多いので、血圧を下げる薬を使います。
血圧を下げる薬以外にも、出血を止める止血剤、出血による脳内のむくみをとるための薬(抗浮腫剤)が投与されることもあります。
出血多量で、命の危険が伴う場合は手術により、血栓を取り除くこともあるでしょう。
くも膜下出血の治療方法
脳の血管にできた「こぶ」の破裂により出血するため、破裂した部位をふさぐ処置を施す必要があります。
治療方法は、下記の2つの方法です。
- 開頭クリッピング術
- 血管内コイル塞栓術(動脈瘤塞栓術)
開頭クリッピング術
頭の骨を外して、「こぶ」を根元からクリップで、はさんでふさぐ治療法です。
血管内コイル塞栓術(動脈瘤塞栓術)
「こぶ」の内部を細い金属のコイルを入れることで、ふさぐ治療法です。
細いストローのような、カテーテルを通して、「こぶ」までコイルを運搬してふさぎます。
そのため、頭の骨を外す手術が不要です。
脳梗塞というと、突然倒れて意識を失うイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、それは脳梗塞の症状のほんの一部なのです。脳梗塞の原因や症状についてよく理解することで、もしもの時に適切な対応ができるようにしましょう。また、[…]
脳卒中の予防となる治療手術
人間ドックなどの検査結果において、「脳卒中の疑いがある」「発症リスクが高い」と診断された場合は、手術を余儀なくされることがあります。
- 頸動脈ステント留置術
- 未破裂脳動脈瘤の手術
ここでは、発症を予防するための治療手術の方法を詳しく解説していきます。
頸動脈ステント留置術
大脳に血液を送る頸動脈が頸動脈狭窄症にかかると、血液が流れる通路が狭くなり血栓を形成してしまうリスクがあります。
頸動脈ステント留置術は、局所麻酔により、足の付け根の血管からカテーテルを通して、狭くなった部位を広げる治療法です。
頚動脈の狭まった部分に「ステント」と呼ばれる金属性の筒を留置します。
ステントにより血管を拡張させることで、脳への血液の巡りを改善できます。
未破裂脳動脈瘤の手術
医療機関での検査中に、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)が見つかる場合があります。
破裂するリスクがあるため、発生部位とサイズによりますが、手術を要するケースも存在しているので注意が必要です。
脳動脈瘤の治療には、開頭手術とカテーテル手術があります。
発生した部位と形状に合わせた確実な手術が実施されます。
脳卒中のリハビリ治療
脳卒中のリハビリ治療は、下記のようなリハビリ期間があります。
- 急性期
- 回復期
- 生活期
ここからは、それぞれの具体的なリハビリの内容を説明していきます。
急性期
急性期のリハビリは、発症直後から数週間くらいをいいます。
なぜなら、長期の寝たきりの回避や、回復期に向けての基礎体力の維持に必要だからです。
急性期では、具体的に下記の内容を実施します。
- ベッドの上で座位になる練習
- 意識して手足を動かす練習
- 関節可動域を保つ練習
など患様の、筋肉、関節の機能低下を防ぐとともに、ベッド上で関節を動かすなどがリハビリの最初の一歩になります。
回復期
入院中の病院および、専門のリハビリ施設などでリハビリが実施された結果、日常の動作や機能が回復するまでの期間を回復期と呼びます。
回復期間は、患者の状態により異なりますが、数週間から数ヶ月程度といわれています。
生活期
自宅に戻り、回復期の状態を保ちつつ自立した生活や社会復帰を目指す時期が生活期です。
退院後も、日常生活中にリハビリで実施された動作を取り入れることで、身体機能の維持に努めます。
脳卒中になった場合の入院期間
脳卒中になった場合の入院期間については、通常、発症から1ヶ月程度が治療・リハビリのためにかかるといわれています。
しかし、入院期間と治療期間は、「脳卒中の重度、患者の回復力、後遺症の有無」などに左右されるため個人差が出てくるでしょう。
脳卒中の治療費の目安相場
脳卒中の治療費の目安相場は、下記表のとおりです。
病気の名称 | 重症度 | 医療費 | 症例数 | |
1入院費用(円) | 1日単価(円) | (人) | ||
脳梗塞 | JCS0-1 | 1,507,141 | 64,896 | 934 |
JCS2-3 | 1,990,537 | 73,304 | 286 | |
JCS10-100 | 2,335,567 | 96,742 | 94 | |
JCS200-300 | 1,704,469 | 67,985 | 24 | |
全体 | 1,672,208 | 68,986 | 1,338 | |
脳出血 | JCS0-1 | 2,175,806 | 71,069 | 220 |
JCS2-3 | 2,158,336 | 66,820 | 92 | |
JCS10-100 | 3,109,942 | 102,051 | 90 | |
JCS200-300 | 1,947,245 | 120,171 | 61 | |
全体 | 2,323,803 | 82,716 | 463 |
ただし、あくまで治療費のデータであり、リハビリの費用は別途必要になりますのでご注意ください。
出典:公益社団法人全日本病院協会「医療費(重症度別)【第3四半期】」
脳卒中になった際に治療費を支払えない場合
脳卒中の際、治療費などを支払えなくなったときの対策もしておきましょう。
最後に、治療費の削減に活用できる制度をご紹介します。
高額療養費制度
高額療養費制度は、医療機関や薬局で支払った金額が、月初から終わりまでに、一定額を超過した場合に超えた分が支給される制度です。
支払いの限度額は、年齢・所得により設定されます。
高額療養費制度を申請したい場合は、加入している医療保険に申請書を提出して行います。
詳細は、医療保険の窓口に問い合わせてみましょう。
身体障害者手帳
身体障害者手帳は、病気によって日常生活に支障が生じた場合に発行される手帳です。
身体障害者手帳を取得することで、脳卒中の医療費を全額または、一部の助成が受けられます。
また、所得税・住民税の障害者控除や、車いす・装具の費用助成も受けることが可能です。
介護保険
脳卒中で、困難を抱えている場合でも、介護保険の公的支援を受けられます。
特定の病気を患っている65歳以上の方、および40〜64歳の方が対象です。
つまり、40歳以上で介護が必要であれば申請できます。
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脳卒中になっても働けるの?
脳卒中になると元の仕事に戻れるのか、今までどうり働けるのか心配になりますよね。
実際どうなのかを見ていきましょう。
脳卒中を発症しても復職してる人はいる
脳卒中になると働くのは難しいだろうと思い込んでいる方は多くいらっしゃると思います。
しかし、脳卒中を発症した労働者の復職する割合(復職率)は時間の経過とともに徐々に増えています。
発症から3〜6ヵ月頃、1年〜1年6ヵ月頃のタイミングで復職する方が多くみられます。
重症度、職場の環境、適切な配慮等によって異なりますが、脳卒中発症後の最終的な復職率は50〜60%と言われています。
すぐに仕事を辞めないのが重要
脳卒中と診断され治療に専念するため、すぐに仕事を辞めようと思ってしまいます。
また、長期入院や退院後も働けるか不安で職場に迷惑をかけたくないという思いから仕事を辞めようとも考えがちです。
しかし、脳卒中と診断されたからといってすぐに仕事を辞める必要はありません。
上司や職場に病気のことを伝えることで、職場の理解と協力を得て快く入院し、また同じ職場で働けるよう治療に専念しましょう。
まずは、主治医に相談し、病気とこれからの治療に向き合うことが大切です。
職場に報告・確認する
職場に病名を公表すべきか、公表しない方がいいのか多くの方が悩む事柄です。
それは病名を公表することで働きづらい状況を生じさせるかもしれないと不安に感じるからです。
しかし、病名を伝えなかった場合、かえって働きづらい状況を生じさせるかもしれません。
大切なのは病名を公表した場合、病名を公表しなかった場合に生じる良い点、つらく感じる点の両方の視点から検討することです。
また、職場には社員に対する※安全配慮義務があり、配慮が必要と感じる場合、今の状況を人事担当者や上司に具体的に伝える必要があります。
職場に報告する時期と内容については急性期・回復期、退院前、復職前、復職後の時期に分け、その時の病状、今後の見通しについて報告するといいでしょう。
以上より職場に病名や病状を公表する場合、自分のメリットになるように「誰に」「いつ」「何を」伝えるべきか事前に整理しておきましょう。
そうすると、実際お話するとき落ち着いて対応することができるでしょう。
※安全配慮義務とは
職場には、社員の生命、身体等の安全を確保しつつ仕事をすることが出来るように健康診 断の実施や、必要と認められた場合の就業上の配慮(配置転換や勤務時間短縮など)を行 う責任があります。こうした安全配慮義務の観点から、主治医に診断書を求めたり、産業 医の診断を仰いだりします。こういった背景も理解しつつ、職場の関係者とコミュニケー ションをとることも大切です。
出典:厚生労働省「脳卒中の治療と仕事の両立お役立ちノート」
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脳卒中の治療のまとめ
今回は、脳卒中の治療方法についてご紹介しました。
脳卒中の治療方法についての要点を以下にまとめます。
- 脳卒中の治療法は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の病名に応じて個々の治療を行う
- 脳卒中の発症の疑いがある場合は、「頸動脈ステント留置術、未破裂脳動脈瘤の手術」などで予防ができる
- 「高額療養費制度、身体障害者手帳、介護保険」の制度で医療費の助成が受けられる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。