脳出血の発作が起こると、急に症状があらわれます。
脳出血の症状で、体の片麻痺が起こったりすることはよく知られています。
脳出血でみられる症状には、その他にどのようなものがあるでしょうか?
脳出血を発症する原因には、何があるでしょうか?
本記事では脳出血の症状について以下の点を中心にご紹介します。
- 脳出血でみられる症状について
- 脳出血の主な原因について
- 脳出血の治療法について
脳出血の症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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脳出血とは
脳出血は、脳梗塞、くも膜下出血と並ぶ脳卒中の症状の1つです。
脳出血は、脳内の血管が破れて出血し、以下のような状態になります。
- 血液があふれ出す
- 血液が固まって血腫になって周囲を圧迫する
脳内で出血することで、脳出血は脳細胞を破壊してさまざまな症状を引き起こします。
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脳出血でみられる症状
脳出血の症状は、出血の程度や場所によって異なります。
脳出血の典型的な症状は、以下のようになります。
頭痛 | めまい |
手足麻痺 | 言語障害 |
嘔吐 | 意識の混濁 |
それぞれの症状についてご紹介します。
頭痛
脳出血で起こる頭痛は、頭蓋内疾患による頭痛として分類されます。
脳出血の頭痛は、急性であること、また頭蓋内の圧が高まっていく特徴があります。
脳出血の原因に脳腫瘍がありますが、脳腫瘍の頭痛は明け方に頭痛が強い特徴があります。
脳出血の頭痛は多くの場合、
- 嘔吐
- 意識障害
- 神経症状
を伴います。
めまい
脳出血から起こるめまいは、耳鳴りや難聴などを伴いません。
脳出血から起こるめまいには、以下のような症状があらわれます。
- ものが二重に見える
- 顔や手足がしびれる
- 力が入らない
- 手がふるえる
また、脳出血が原因で起こるめまいは、通常2〜3時間、少なくとも20〜30分間続きます。
めまいの症状や程度は、出血の部位によって以下のように異なります。
- 脳幹の前庭神経核の障害の場合:強い回転性のめまい
- 大脳皮質の障害の場合:揺れるような比較的軽度のめまい
手足麻痺
体の片側の手足に麻痺が起こった場合は、脳出血に伴う脳血管障害の疑いがあります。
早急にMRIによる診断が必要です。
脳出血の場合、
- 体の片側の麻痺
- しびれ
- 脱力
- 頭痛
- めまい
- 嘔吐
などを伴う場合があります。
言語障害
言語障害のうち、言葉が出ない「失語症」という症状が出ると脳血管障害が疑われます。
脳出血などで大脳の言語領域が障害を負うと、失語の症状が起こるからです。
特に、失語の症状が急に現れた場合は、脳血管障害の可能性が高くなります。
嘔吐
脳出血が嘔吐の原因となる場合があります。
大脳皮質からの刺激が嘔吐中枢に作用して、嘔吐が起こります。
脳出血により頭蓋内の圧が高まる脳圧亢進が嘔吐中枢を刺激することで生じます。
意識の混濁
脳出血が起こり、出血が少量の場合は、軽い頭痛や吐き気があらわれます。
出血の量が多くなると、頭蓋内の圧が高まり意識障害を起こします。
さらに重篤になると意識混濁に至ります。
硬い頭蓋骨の中で脳がむくみ、脳幹を圧迫するためです。
脳幹は、
- 呼吸
- 心拍
- 消化
- 体温調節
など生命維持にとって、大変重要な働きをしているものです。
脳梗塞というと、突然倒れて意識を失うイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、それは脳梗塞の症状のほんの一部なのです。脳梗塞の原因や症状についてよく理解することで、もしもの時に適切な対応ができるようにしましょう。また、[…]
脳出血が起きた場所で症状は変わる
脳出血が起きた場所により、症状は変わります。
部位ごとの症状について、以下のようにご紹介します。
- 視床出血
- 被殻出血
- 小脳出血
- 脳幹出血
- 皮質下出血
視床出血
- 出血部位:大脳の最も深い部分の出血
- 原因となる疾患:多くが高血圧による
- 症状:手足の麻痺やしびれ(出血した場所と反対側の手足)
被殻出血
- 出血部位:大脳の深い部分の出血
- 原因となる疾患:多くが高血圧による
- 症状(1):麻痺やしびれ(出血した場所と反対側)
- 症状(2):言語障害(左側の出血の場合)
小脳出血
- 出血部位:小脳の出血
- 原因となる疾患:多くが高血圧による
- 症状(1):四肢のふらつき
- 症状(2):出血量が増えると脳幹を圧迫する危険がある
脳幹出血
- 出血部位:脳幹部の出血
- 原因となる疾患:多くが高血圧による
- 症状(1):出血量が少なくても意識障害を起こす
- 症状(2):出血量が増えると意識混濁に至る恐れあり
皮質下出血
- 出血部位:大脳の表面の出血
- 原因となる疾患:脳動静脈奇形など血管病変による
- 症状:出血の場所によりさまざまな症状をきたす
脳出血の主な原因
脳出血の主な原因に、以下の6つがあります。
高血圧性脳出血 | 血管腫 |
動静脈奇形 | 硬膜動静脈奇形 |
脳腫瘍 | 脳アミロイド血管症 |
それぞれの内容をご紹介します。
高血圧性脳出血
高血圧性脳出血は、高血圧によって血管が破れて脳出血を起こす症状です。
脳出血の中で、最も多い原因が高血圧性脳出血です。
血管は、動脈硬化を起こすと硬く柔軟性がなくなってしまいます。
硬く柔軟性がなくなっているところに、血圧が高くなることで脳出血をきたす可能性があります。
脳出血の発症部位は、
- 視床
- 被殻
- 小脳
- 脳幹
- 皮質下
にわたります。
特徴は、日中の活動時に起こることです。
発症すると急激に、
- 頭痛
- 嘔吐
- 体の片側麻痺
- 意識障害
- けいれん
の症状を起こします。
血管腫
海綿状血管腫は、血管奇形の病気です
20〜40歳代に発症することが多いとされています。
海綿状血管腫の多くは、大脳で発症し、内部で出血を繰り返し徐々に大きくなります。
症状は、無症状の場合もあれば、頭痛やけいれんなどさまざまです。
動静脈奇形
動静脈奇形は、胎児期から小児期にかけてできる脳の血管奇形です。
本来、動脈は毛細血管を介して静脈とつながります。
動静脈奇形は、異常な血管の塊(ナイダス)を介して、動脈と静脈がつながっている状態です。
動静脈奇形は、毛細血管を介さず動脈から血液が一気にナイダスから静脈へ流れこみます。
流れ込んだ血液でナイダスや静脈に負担がかかり、血管が破れて出血することがあります。
硬膜動静脈瘻
硬膜動静脈瘻は、頭蓋骨内の硬膜の動脈と静脈がつながってしまう、後天性の血管異常の病気です。
硬膜動静脈瘻の病変部には毛細血管がなく、動脈の血は瘻といわれる穴を通って一気に静脈へ流れ込みます。
一気に流れ込んだ部位の静脈の圧が上がると、逆流などの静脈還流障害を起こします。
静脈還流障害の逆流がひどくなると脳出血を引き起こし、意識障害になります。
脳腫瘍
非高血圧性の脳出血には、脳腫瘍を原因とするものもあります。
脳腫瘍には、
- 原発性脳腫瘍
- 転移性脳腫瘍
の2種類あります。
転移性脳腫瘍のほうが、原発性脳腫瘍よりも脳出血を伴いやすいといわれています。
脳出血を発症しやすい病気は、以下の通りです。
- 原発性脳腫瘍:膠芽腫
- 転移性脳腫瘍:肺がん、悪性黒色腫など
脳アミロイド血管症
脳アミロイド血管症は、脳出血の原因となります。
脳アミロイド血管症は、特に高齢者に多くみられ、再発性があり脳全体に起こりうる脳血管障害です。
多発性の出血とともに、高血圧がなくても脳出血を起こすことのある血管症です。
脳アミロイド血管症は、脳血管壁に繊維状の蛋白質(アミロイド)が沈着して起こります。
脳出血はアミロイド沈着が進むと、血管が脆弱になり破れることで起こります。
脳出血の診断方法
脳出血の診断方法には、以下の3つがあります。
- CTスキャン
- MRI
- 血管造影検査
それぞれの検査内容についてご紹介します。
CTスキャン
CTスキャンは、X腺撮影をコンピュータ解析します。
脳の断層像(輪切り)から脳卒中の有無や種類を判定します。
脳出血の場合は、発症後すぐに描画することができます。
脳梗塞の場合は、はっきり描画するためには、発症後24時間以上の経過が必要です。
MRI
MRIは、脳の断層像を描画する場合に、磁力を使います。
CTより鮮明な画像が得られることが特徴で、出血、梗塞部分ともにすぐに描画できます。
血管造影検査
カテーテルを静脈に通し造影剤を入れ、該当部のX腺撮影を行います。
血管の細部の状態がわかる検査です。
血管造影検査は、
- 動静脈奇形
- 動静脈瘻
が原因の出血の診断に有用です。
脳出血で用いる治療法
脳出血で用いる治療法に、以下の2つがあります。
- 投薬治療
- 手術治療
それぞれの治療法についてご紹介します。
投薬治療
手術が難しい場合や、軽症の場合は、薬事治療が行われます。
投薬治療には、以下の2つの目的があります。
- 出血の増大を防ぐ:血圧を下げると共に止血剤による出血を止める投薬治療
- 脳の腫れやむくみの軽減:出血部分以外の部分への影響を防ぐための投薬治療
手術治療
手術治療には、以下の2種類があります。
- 開頭血腫除去術
- 血腫吸引術
開頭血腫除去術
開頭血栓除去手術は、頭部を開き頭蓋骨を外して血腫を除去する手術です。
血腫吸引術
血腫吸引術は、頭部に穴をあけて血腫を吸い取る手術です。
血腫の吸い取りには、特殊な器具を使います。
脳出血による後遺症
脳出血には、以下のような後遺症があります。
- 運動障害
- 嚥下障害
- 言語障害
- 高次脳機能障害
それぞれの障害についてご紹介します。
運動障害
運動障害は、
- 右上下肢
- 左上下肢
のどちらかが麻痺して動かなくなる症状です。
脳出血の場合は、急激に片麻痺症状があらわれます。
嚥下障害
嚥下障害は、食べ物を飲み込みにくくなる症状です。
出血の起こった部位によっては、回復が難しい場合があります。
言語障害
言語障害は、呂律が回らなくなる症状です。
回復が見込まれる場合と、症状が長期にわたる場合があります。
高次脳機能障害
高次脳機能障害は、脳の損傷によって、日常生活や社会生活が困難になる障害のことです。
高次脳機能障害は、以下のような症状があらわれる可能性があります。
- 注意障害
- 記憶障害
- 遂行機能障害
- 社会的行動障害
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脳出血を予防するには
脳出血の予防には、以下のような注意点があります。
- 高血圧
- 禁煙
- 飲酒
- 適度な運動
- 睡眠
それぞれの注意点についてご紹介します。
高血圧
脳出血の最大の危険因子は、高血圧です。
高血圧を防ぐためには、以下のようなことが必要です。
- 適正な血圧管理(130/85mmHG以下)
- 食事の塩分を控える
- 体重管理など適正な生活習慣を整える
禁煙
動脈硬化は、高血圧に次ぐ脳出血の重要因子です。
喫煙は、動脈硬化を促進し脳出血のリスクを上げます。
以下の方は、特に禁煙が求められます。
- 脳出血の既往のある方
- 生活習慣病の方
飲酒
過度な飲酒も動脈硬化につながります。
飲酒時は、つまみなどの塩分が多いものを摂取する場合が多いです。
適量のアルコール摂取に努めましょう。
適度な運動
運動習慣のある⽅ほど、⽣活習慣病にかかるリスクは、低減するといわれています。
有酸素運動などの適度な運動の習慣化には、以下のような効果があります。
- 肥満・⾼⾎圧・脂質異常症・糖尿病などの⽣活習慣病の予防
- 動脈硬化の予防
睡眠
睡眠不足や睡眠障害は、生活習慣病の発症に関わっています。
睡眠不足や睡眠障害は、高血圧症を誘引し脳出血の発症リスクを高めます。
良質な睡眠が、脳出血の予防につながります。
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脳卒中とてんかんの症状の違い
脳卒中は、てんかんの主な原因の一つだといわれています。
てんかんとは、体が硬直し強く力がはいる、手足が震えるなどのけいれん発作のことです。
けいれん発作を起こす際は、大きく分けて2パターンの場合があると考えられています。
1つめのパターンは、脳になんらかの異常がある場合です。
2つ目のパターンは、脳の異常によるものではない、発熱、ヒステリー、低血圧などの場合です。
脳卒中の患者さんがけいれん発作を起こす場合は、この1つ目のパターンに該当します。
この場合に起こすけいれん発作が、てんかんです。
脳卒中の発病を機に、脳組織の神経細胞が異常な働きをすることでてんかんを起こすのです。
脳卒中の患者さんは、発病から2年以内にてんかんを起こすことが多いといわれています。
しかし、まれに数年後にてんかんを起こすこともあります。
てんかんを起こした患者さんは、再発の頻度も高い傾向にあるため、予防のために抗てんかん薬の投与が行われます。
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脳出血の症状は時間とともに重くなる
脳出血の発作の症状は、初めは軽くても時間とともに進行します。
症状が軽いからといって何もせずにいると、意識の低下から昏睡に至る場合もあります。
発作が起こったときは、ためらわず救急車を呼ぶことが重要です。
1分1秒が命を左右することを肝に銘じましょう。
出典:日本生活習慣病予防協会【脳出血 – 日本生活習慣病予防協会】
脳出血の症状のまとめ
ここまで脳出血の症状についてお伝えしてきました。
脳出血の症状についての要点を以下にまとめます。
- 脳出血の症状は、頭痛、めまい、手足麻痺、言語障害、嘔吐、意識混濁などがあるが、生じた場所で変わる
- 脳出血最大の原因は、高血圧、その他にも血管腫、血管奇形、血管異常、脳腫瘍、脳アミロイド血管症がある
- 脳出血の治療法には、薬事治療と頭部の血腫除去のための外科手術治療がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。