ストレスが溜まると、身体にさまざまな悪影響が生じます。
漢方薬は、それらのストレスによる障害に対する改善効果があります。
そもそもストレスとはどういうものなのでしょうか?
ストレスに対する漢方の効果とはどういうものなのでしょうか?
本記事ではストレスに対する漢方について以下の点を中心にご紹介します。
- ストレスの仕組み
- ストレスに効く漢方とは
- 漢方薬の効果とは
ストレスに対する漢方について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ストレスとは
ストレスの詳しい内容を紹介します。
ストレスが発生する仕組み
ストレスとは、外部刺激を受けたときに発生する緊張状態を指します。
外部からの刺激には、次のものがあります。
- 気候や異臭などの環境的なもの
- 障害や病気などの身体的なもの
- 不安や焦りなど心理的なもの
- 人間関係や仕事などの社会的なもの
外部からの刺激の内容によって、ストレスの強さが変わります。
そして、同じストレスの強さでも、それぞれの感じ方でストレス反応が異なります。
心に起こる影響
感情的な反応として次のようなものがあらわれます。
不安症 | イライラ | うつ病 | 恐怖 | 落ち込み | 疎外感 |
緊張 | 怒り | 罪悪感 | 感情鈍麻 | 孤独感 | 無気力 |
精神的機能の反応として、以下のような障害があらわれます。
- 集中力低下
- 思考力低下
- 短期記憶の喪失
- 判断・決断力低下
身体に起こる影響
身体的な反応として以下のものが挙げられます。
ヒステリー球(喉の異物感) | 動悸 |
不整脈 | 頭痛 |
めまい | しびれ |
高血圧 | 喘息 |
胃痛 | 吐き気・嘔吐 |
腹痛 | 食欲不振 |
便秘 | 下痢 |
腰痛 | 更年期障害 |
不眠 | 胸の痛み |
のぼせ | 異常な発熱 |
ストレスについて詳しく知りたい方は、こちらも合わせてお読みください。
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ストレスに効く漢方薬の種類
漢方の考えでは、身体は次の3つの要素で構成されていると考えられています。
- 気(き)(活力、元気)
- 血(けつ)(栄養成分)
- 水(すい)(水分)
この3つのバランスが悪いと、さまざまな障害が生じやすくなると考えられています。
漢方では体質を、
- 気虚(ききょ)(活力不足、元気がない)
- 気滞(きたい)(気のめぐりが悪い)
- 血虚(けっきょ)(栄養不足)
- 瘀血(おけつ)(血液の循環不良)
- 陰虚(いんきょ)(水分不足)
- 水滞(すいたい)(むくみ、水が溜まる)
の6つに分けて、障害の原因をさぐります。
また、体質としての体力は5段階に分けられ、体力の多い順に
- 体力が充実
- 比較的体力がある
- 体力中等度(一般的な「普通」の体力)
- やや虚弱
- 体力虚弱
と定義されています。
桂枝加竜骨牡蛎湯
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は、不眠やイライラに対応する漢方薬です。
漢方では、気・血のバランスが悪いと、神経質の状態になると考えられています。
桂枝加竜骨牡蛎湯は、気・血を補って、不安定な精神を落ち着かせる作用があります。
体力中等度以下で疲れやすい方で、以下の症状に対して効果があります。
神経質 | 不眠症 | 子供の夜泣き |
夜尿症 | 眼精疲労 | 神経症 |
柴胡加竜骨牡蛎湯
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は精神不安定・寝つきの悪さに対応した漢方薬です。
漢方では、睡眠は「気」に関係し、疲労・ストレスは気の循環を悪くします。
気の循環が悪いと身体に熱がこもり、熱が頭に届いて寝苦しくなるという考えです。
柴胡加竜骨牡蛎湯は、気を循環させ体の熱を冷まし、精神を沈静化させる作用があります。
そして、脳の興奮による不眠を改善させる効果があります。
体力中等度以上で精神不安があり、次の症状がある方に適しています。
高血圧 | 動悸 | 不安 | 不眠 |
神経症 | 更年期神経症 | 子供の夜泣き | 便秘 |
半夏厚朴湯
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は、ストレスによる喉の異物感に対応した漢方薬です。
漢方では疲労・ストレスは、気の循環を阻害すると考えられています。
喉の部分に気が停滞すると、喉に異物感を感じるといわれています。
半夏厚朴湯は、気の循環を良くして、喉の異物感を改善する作用があります。
体力中等度で気分が塞いでいる方で、次の症状に効果があります。
喉の異物感 | 嘔気(吐き気) | 不安神経症 | 神経性胃炎 |
つわり | せき | しわがれ声 | 動悸 |
抑肝散
抑肝散(よくかんさん)は興奮を抑制し、筋肉のけいれんなどに対応した漢方薬です。
漢方では「肝」が興奮すると、怒りやイライラがあらわれると考えられています。
漢方での肝とは、肝臓とは全く別の働きをする臓器を指します。
抑肝散は「肝」の興奮を抑制し、本来は子供の疳(かん)の虫に使用されていた薬です。
現在は大人のさまざまな精神・神経疾患の補助薬としても使用されています。
体力中等度のイライラしやすい方で、以下の症状に効果があります。
子供の夜泣き | かんしゃく | 神経症 | 不眠症 | 歯ぎしり |
手足のふるえ | けいれん | 更年期障害 | 血の道症 | 神経過敏 |
血の道症とは、月経などによる女性ホルモンの変動によって生じる障害を指します。
抑肝散加陳皮半夏
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)は、神経の興奮によるイライラなどに対応した漢方薬です。
「肝が高ぶる」とは精神が興奮するということで、イライラなどがあらわれます。
また、「血」が不足する状態は、ストレス耐性が低下します。
そのため、少しのストレスでもイライラや怒りっぽいなどの症状があらわれます。
抑肝散加陳皮半夏は、抑肝散に「陳皮」と「半夏」を加えた漢方薬です。
肝の高ぶりを抑え、血を補い、気・血の循環を良くするという作用があります。
体力中等度のやや胃腸が弱くイライラしやすい方で、以下の症状に効果があります。
神経症 | 不眠症 | 小児夜泣き | 小児疳症 |
神経過敏 | 更年期障害 | 歯ぎしり | 血の道症 |
加味帰脾湯
加味帰脾湯(かみきひとう)は、精神疲労や不眠症に対応した漢方薬です。
漢方の考えでは、眠るときは気から発生する熱を鎮静化させて入眠します。
眠るときに血が不足すると、気を鎮静化できず、寝苦しい状態になります。
加味帰脾湯は胃腸の働きを助け、血を補い、気のめぐりを良くする作用があります。
体力中等度以下で心身が疲労した方で、次の症状に効果があります。
- 貧血
- 不眠症
- 精神不安
- 神経症
- 胃腸虚弱
加味逍遥散
加味逍遥散(かみしょうようさん)は加味逍遙散とも書きます。
加味逍遥散は女性特有の症状や、心身の不調の改善に効果のある漢方薬です。
漢方では、血の不足により気が溜まり、溜まった気が熱に変化します。
気が熱に変わると、暖かい空気のように、身体の上に上昇します。
変化した熱が体内でさまざまな障害を引き起こしていると考えられています。
加味逍遙散は、上昇した気を下に降ろして全身に循環させます。
そして、熱を冷やし、不足した血を補うことで、身体の不調を改善する効果があります。
体力中等度以下でのぼせ感がある方で、次の症状に効果があります。
肩こり | 疲れやすい | 不安症 | イライラ | 冷え性 | 便秘 |
虚弱体質 | 月経不順 | 月経困難 | 更年期障害 | 血の道症 | 不眠症 |
黄連解毒湯
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)はのぼせ気味、イライラに対応する漢方薬です。
また、炎症で肌が赤くなりやすい場合にも効果的です。
漢方では、炎症は体の上部に熱がこもることが原因と考えられています。
刺激物や油分、甘いものをとり過ぎると、余分な熱が発生し、体の上部に熱がこもります。
余分な熱は炎症の原因になり、赤みのある皮膚炎、口内炎になると考えられています。
黄連解毒湯は、熱を冷まし、皮膚のかゆみ・炎症を鎮める作用があります。
体力中等度以上で、のぼせ気味で顔が赤い方で、以下の症状に効果があります。
イライラ | 鼻血 | 不眠症 | 神経症 | 胃炎 |
二日酔 | 血の道症 | めまい | 動悸 | 更年期障害 |
湿疹 | 皮膚炎 | 皮膚のかゆみ | 口内炎 |
苓桂朮甘湯
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)は、めまいや立ちくらみに対応した漢方薬です。
漢方では、水が停滞して気の循環を阻害すると、めまいが起こると考えられています。
苓桂朮甘湯は、不足した気を補い、気の上昇を助け、余分な水を排出する作用があります。
また、心にも作用して動悸や息切れを改善します。
体力中等度以上でめまいがある方で、次の症状に効果があります。
ふらつき | のぼせ | 立ちくらみ | 頭痛 | 耳鳴り |
神経症 | 動悸 | 息切れ | 神経過敏 |
酸棗仁湯
酸棗仁湯(さんそうにんとう)は、心身疲労による不眠の改善に用いられる漢方薬です。
自律神経失調症による不眠の改善などにも効果があります。
心血が不足すると精神状態が不安定になり、不安感や不眠が生じやすくなります。
酸棗仁湯は、不足した心血を補うことで、不安や不眠を改善する作用があります。
体力中等度以下で心身疲労、不眠がある方で、以下の症状に効果があります。
- 精神不安
- 不眠症
- 神経症
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漢方と普通の薬に違いはあるの?
漢方と普通の薬には、自然物か人工物かという違いのほかに、さまざまな違いがあります。
漢方の特徴
漢方薬は、通常2つ以上の生薬を組み合わせた複合薬で、多くの成分が含まれます。
そのため、1つの処方でさまざまな症状に対応できます。
複数を組み合わせることで、効果を高めたり副作用を軽減したりすることができます。
普通の薬は人工的に作られ、強い効果の半面、副作用も強い場合があります。
漢方の効果や作用
漢方薬は身体が本来持っている回復力を補助するように作用します。
そして、副作用も少なく、身体にあまり負担をかけず症状が改善されていきます。
通常の薬は、長期間の服用での症例はまだ少ないのが現状です。
長期間服用していた薬に突然重篤な副作用が生じて、重い障害が残る可能性もあります。
漢方薬は二千年以上服用され、安全なものだけが残っているため比較的安全といえます。
飲むと良い人
漢方薬は、以下のような疾患や症状がある場合に、使用すると良いといわれています。
急性疾患として、
かぜ | 歯痛 | 頭痛 | めまい |
こむら返り | つわり | 子供の夜泣き | ひきつけ |
慢性疾患として、
慢性の胃腸障害 | 食欲不振 | 便秘 | 冷え性 |
更年期障害 | 不安神経症 | うつ | 腰痛 |
下肢痛 | 肩こり | 打撲 |
飲まない方が良い人
妊婦の方に
- 大黄
- 亡硝
- 桃仁
- 牡丹皮
- 紅花
- 牛膝
を含む漢方薬は早産や流産のリスクを高めます。
ほかに、下記に該当する場合は副作用が生じやすく注意が必要です。
漢方薬を3種類以上併用して服用 | 飲み始めて3ヶ月経過していない |
50~80歳代の中高年 | 胃腸虚弱 |
女性(男性に比べ発現率が約2倍) | 利尿剤を飲んでいる |
糖尿病でインスリン治療をしている | 肝臓疾患で治療をしている |
健康診断などを1年以上受けていない | 副作用が起きた経験がある |
飲み方やタイミング
漢方薬は一般的には、食後ではなく食前や食間に飲むことが推奨されています。
効果が感じられなくても服用量を増やしたりせず、用法・用量を守ることが大切です。
飲み忘れた場合は2回分をまとめて服用せず、1回分だけを服用します。
効果があらわれる期間は、症状の度合いや生活習慣などでそれぞれ異なります。
1〜2ヶ月服用して効果が出ない場合は、薬剤師などの専門家に相談することも大切です。
漢方薬は気になる症状がなくなった時点で、服用を中止することが推奨されています。
複数の薬を併用した場合は、効果が薄れたり副作用が強まる場合があり注意が必要です。
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ストレスが溜まると気滞になりやすい!
漢方では、ストレスは気のめぐりを悪くするといわれています。
気滞の概要
気滞とは「気」のめぐりが悪くなり、気が滞っている状態を指します。
漢方では気は、以下の役割があると考えられています。
- 活力や元気の源である
- 精神を安定させた、精神を調節する
- 身体の全ての動きを制御する機能
そのため、気が滞ると、身体のさまざまな場所に障害が生じやすくなります。
気滞の症状
気滞になると以下の症状があらわれます。
おなら | お腹の張り | 生理不順 | 喉の違和感 | 緊張 |
発汗 | みぞおちの張り | のぼせ | 冷え | やる気が出ない |
憂うつ | 睡眠障害 | 食欲不振 | 過食症 | パニック障害 |
上記の症状のある方は注意が必要です。
ストレスで咳がでるときも漢方で対策
ストレスによる咳に適した漢方薬は、次のものになります。
- 神秘湯
- 麦門冬湯
神秘湯
神秘湯(しんぴとう)は、気管支を広げて痰を出しやすくし、呼吸を安定させます。
痰の少ない咳、喘息、呼吸困難などに効果があるとされています。
うつ病などの精神神経症状をともなう場合もあります。
体力中等度以上で、胃腸が比較的丈夫な人に適した漢方薬です。
麦門冬湯
麦門冬湯(ばくもんどうとう)は、喉が乾燥して、切れにくい痰を伴う咳、空咳などに用いられます。
気管支炎、気管支喘息などの疾患の治療として用いられることもあります。
体力中等度以下で、痰が切れにくく喉が乾燥している方の、以下の症状に効果があります。
- 空咳
- 気管支炎
- 気管支ぜんそく
- 咽頭炎
- しわがれ声
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- 防風通聖散
- 大柴胡湯
- 防已黄耆湯
防風通聖散
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、お腹周りの肥満解消に適した漢方薬です。
刺激物や塩分や脂質を過剰摂取した場合、胃腸の働きが活発になり熱が生じます。
発生した熱は、さらに食欲を増幅させるという悪循環におちいります。
防風通聖散は、食欲を抑え排便を促し、脂肪燃焼を促進する作用があります。
大柴胡湯
大柴胡湯(だいさいことう)は、脂質代謝の改善に効果のある漢方薬です。
歳を重ねることで、脂質代謝が低下して体に脂肪が蓄積されます。
大柴胡湯はストレスによる肥満や脂質代謝の低下による肥満に効果があります。
防已黄耆湯
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)は、肥満や多汗の症状に適した漢方薬です。
過食でなくても胃腸が弱く、脂肪が代謝できず蓄積されることがあります。
また、水分が排出できず水分バランスが乱れることで、むくみや発汗異常が生じます。
防已黄耆湯は胃腸を助け、水太りや多汗の症状を改善させる効果があります。
ストレス解消には日々の過ごし方も大切
養生法は4つに分けられ、
- 心養生法(心)(常にプラス思考)
- 食養生法(身体)(食べ物で身体はつくられる)
- 動養生法(運動)(運動で自律神経を調整)
- 休養生法(休養)(心身を鎮めてリラックス)
があり、これらをあわせて生活養生法と呼びます。
具体的には以下のようなものになります。
- (心)ネガティブ・神経質にならないように気を付ける
- (体)1日3食、栄養バランスのとれた食事を摂る
- (運動)スポーツなどで溜まったストレスを発散する
- (休養)入浴や睡眠などで心と体の疲労回復に努める
ストレスの対処法について詳しく知りたい方は、こちらをお読みください。
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50〜60代の方は特に早めの対処を!
厚生労働省の令和2年度の調査では、とくに50〜60代がストレスを感じる割合が多いとされています。
内容としては、収入や仕事、家族の介護に関するストレスが主です。
とくに自分の健康についての悩みが、ストレスの原因となっています。
医療機関での受診が、毎月1〜3回程度の頻度で受診している方も多いです。
自身の健康に対するストレスが、自身の健康を害することもあります。
自分のストレスの度合いを確認して、早期に対処することも大切です。
出典:厚生労働省「令和2年度健康実態調査結果の報告」
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ストレスに対する漢方の効果のまとめ
ここまでストレスに対する漢方についてお伝えしてきました。
ストレスに対する漢方の要点をまとめると以下の通りです。
- ストレスとは、外部刺激に対する緊張状態
- ストレスに効く漢方は、ストレス反応などの種類により多岐にわたる
- 漢方薬の効果とは、自然本来の回復力を利用するため、即効性はあまりない
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。