フェニルアラニンには、さまざまな健康効果が期待されています。
フェニルアラニンとは、一体どのような成分なのでしょうか。
また、どのような効果・効能を期待できるのでしょうか。
本記事では、フェニルアラニンについて、以下の点を中心にご紹介します。
- フェニルアラニンの主な効果
- フェニルアラニンが豊富な食品
- フェニルアラニンの副作用
フェニルアラニンについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
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フェニルアラニンとは
フェニルアラニンは必須アミノ酸の1種です。
必須アミノ酸は、アミノ酸のうち、人体で合成できない種類を指します。
フェニルアラニンなどの必須アミノ酸は、食品などから摂取する必要があります。
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フェニルアラニンの3つの効果
フェニルアラニンにはさまざまな効果があります。
代表的な効果を3つご紹介します。
脳の機能を高める
フェニルアラニンには脳の機能を高める効果があります。
より具体的には、フェニルアラニンは脳の神経伝達物質の原料として使用されます。
神経伝達物質とは、脳の指令を細胞に伝える物質です。
生き物が運動・思考できるのも、神経伝達物質によって脳の指令が正確に全身に伝わるためです。
体内に入ったフェニルアラニンは、肝臓で分解されてチロシンという物質に変化します。
チロシンは、神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンの原料です。
ノルアドレナリンやドーパミンは、脳に快感・興奮をもたらす神経伝達物質です。
脳が活性化しやすくなるため、集中力・意欲の向上などが期待できます。
うつ症状の軽減
フェニルアラニンはうつ症状の軽減に役立ちます。
フェニルアラニンは脳を活性化させる効果が高いためです。
体内に入ったフェニルアラニンは、最終的にノルアドレナリンやドーパミンなどに変換されます。
ノルアドレナリンやドーパミンは、脳を刺激して覚醒させるホルモンです。
脳が覚醒すると精神も高揚しやすくなるため、気分の落ち込み・憂鬱などのうつ症状が改善されやすくなります。
脳の活性化は、思考力・記憶力の向上にもつながります。
鎮痛効果
フェニルアラニンには、体の痛みを抑える効果があります。
実際に、人工的に作られたフェニルアラニン(DL-フェニルアラニン)は、鎮痛剤の成分として使用されています。
フェニルアラニンが鎮痛に役立つのは、エンドルフィンの生成・分泌を促進する作用があるためです。
エンドルフィンは脳内神経伝達物質の1つで、脳の幸福感・快楽を強めるホルモンです。
痛みを和らげる作用も高く、「脳内モルヒネ」「脳内麻薬」などとも呼ばれています。
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フェニルアラニンが豊富に含まれる食べ物
フェニルアラニンは人体内では合成されないため、食べ物から摂取する必要があります。
フェニルアラニンは、豆類・種実類・乳製品・卵類などに豊富です。
フェニルアラニンが豊富な食べ物の例をご紹介します。
大豆
フェニルアラニンは豆類に豊富です。
特に豊富なのが、大豆です。
大豆そのものを大量に摂るのが難しい場合は、大豆製品を食べましょう。
大豆と主な大豆製品のフェニルアラニンの含有量は、以下の通りです。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
黄大豆(国産・ゆで) | 860 |
きなこ(黄大豆・脱皮大豆) | 2100 |
木綿豆腐 | 400 |
油揚げ(生) | 1400 |
糸引き納豆 | 880 |
豆乳 | 200 |
湯葉(生) | 1300 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
小麦
小麦・小麦製品もフェニルアラニンを含みます。
うどん・パスタ・パンなどを食べると、フェニルアラニンを効率的に摂取できます。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
薄力粉(1等) | 450 |
中力粉(1等) | 470 |
強力粉(1等) | 650 |
強力粉(全粒粉) | (660) |
食パン | 440 |
ライ麦パン | 380 |
干しうどん(乾) | 460 |
そうめん・ひやむぎ(生) | 510 |
生パスタ(生) | 440 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
高野豆腐
フェニルアラニンは、大豆製品である高野豆腐にも豊富です。
高野豆腐の含有量は以下の通りです。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
高野豆腐 | 690 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
卵
卵は、フェニルアラニンがとても豊富です。
含有量は以下の通りです。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
鶏卵(全卵・生) | 660 |
鶏卵(全卵・ゆで) | 670 |
うこっけい卵(全卵・生) | (640) |
うずら卵(全卵・生) | 670 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
チーズ
フェニルアラニンは乳製品にも多く含まれます。
中でもチーズ類は成分が凝縮しているため、効率的にフェニルアラニンを摂取できます。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
カマンベール | 980 |
クリーム | 420 |
チェダー | 1400 |
プロセスチーズ | 1200 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
アーモンド
アーモンドにはフェニルアラニンが豊富です。
含有量は以下の通りです。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
アーモンド(乾) | 1000 |
アーモンド(フライ・味付け) | 1300 |
アーモンド(いり・無塩) | 580 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
落花生
落花生はフェニルアラニンを1000mg以上含みます。
具体的な含有量は以下の通りです。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
らっかせい(大粒種・乾燥) | 1500 |
らっかせい(大粒種・いり) | 1500 |
らっかせい(小粒種・乾燥) | (1500) |
らっかせい(小粒種・いり) | (1600) |
らっかせい(バターピーナッツ) | 1400 |
らっかせい(ピーナッツバター) | 1200 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
かぼちゃ
フェニルアラニンを摂るには、かぼちゃを食べるのも良い方法です。
かぼちゃのフェニルアラニンの含有量は以下の通りです。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
日本かぼちゃ(生) | 58 |
日本かぼちゃ(ゆで) | (68) |
西洋かぼちゃ(生) | 81 |
西洋かぼちゃ(ゆで) | (68) |
ズッキーニ(生) | (38) |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
じゃがいも
じゃがいもは、加熱調理したほうがフェニルアラニンの含有量が増えます。
具体的な含有量は以下の通りです。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
塊茎(皮なし・生) | 64 |
塊茎(皮つき・生) | 67 |
塊茎(皮なし・蒸し) | 73 |
塊茎(皮なし・水煮) | 66 |
塊茎(皮つき・フライドポテト) | 96 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
ごま
ごまにもフェニルアラニンは豊富です。
ごまそのものを大量に食べるのは難しいため、薬味などとして取り入れると、フェニルアラニンを効率的な摂取につながります。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
ごま(乾) | 1000 |
ごま(いり) | 1100 |
ごま(むき) | 1000 |
ごま(ねり) | 990 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
肉類
フェニルアラニンは、肉類の中でも脂身の少ない部位に多く含まれます。
特に含有量が多いのは肝臓です。
代表的な部位とフェニルアラニンの含有量は以下の通りです。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
うし(もも・皮下脂肪なし・生) | 830 |
うし(サーロイン・脂身つき・生) | (660) |
うし(肝臓・生) | 1100 |
うし(ビーフジャーキー) | 2200 |
ぶた(もも・皮下脂肪なし・生) | 850 |
ぶた(もも・赤肉・生) | (870) |
ぶた(肝臓・生) | 1100 |
若どり(むね・皮つき・生) | 790 |
若どり(もも・皮つき・生) | 770 |
若どり(肝臓・生) | 920 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
魚介類
フェニルアラニンは魚介類にも豊富です。
代表的な魚介類とフェニルアラニンの含有量を以下にまとめました。
食品名 | 含有量(mg/100gあたり) |
うるめいわし(生) | 890 |
かたくちいわし(生) | 750 |
まいわし(生) | 800 |
たたみいわし | (3000) |
かつお節 | 3000 |
しろさけ(生) | 8900 |
しろさけ(イクラ) | (1700) |
まさば(生) | 840 |
ごまさば(さば節) | 3000 |
かずのこ(塩蔵・水戻し) | (850) |
まぐろ(きはだ・生) | 910 |
出典:文部科学省【食品成分データベース】
フェニルアラニンの目安摂取量
フェニルアラニンの1日の摂取量の目安として、厚生労働省の「日本人の食品摂取基準(2020年)」を参照します。
【たんぱく質必要量に対する不可欠アミノ酸の必要量(男女共通)】
年齢(歳) | 芳香族アミノ酸(mg/kg 体重/日) |
0.5 | 59 |
1~2 | 40 |
3~10 | 30 |
11~14 | 30 |
15~17 | 28 |
18 以上 | 25 |
出典:厚生労働省【1―2 たんぱく質】
フェニルアラニンの1日の摂取量は、成人で2.2gが目安とされています。
フェニルアラニンの効果を高める摂取方法
フェニルアラニンの効果を高めるには、以下のような栄養素と一緒に摂取するのがおすすめです。
- ビタミンB6
- 葉酸
ビタミンB6や葉酸は、アミノ酸の分解・吸収を助ける作用があります。
より具体的には、フェニルアラニンが体内で効率的に利用されるのをサポートしてくれます。
フェニルアラニンは、できれば1日数回に分けてこまめに摂るのがおすすめです。
具体的には、朝・昼・夜の食事にそれぞれフェニルアラニンが豊富な食品を摂り入れましょう。
数回に分けてこまめに摂ることで、体内のフェニルアラニンの量が一定に保たれやすくなります。
食品からの摂取が難しい場合は、サプリメントを活用するのもおすすめです。
ただし、抗うつ薬を服用している方はフェニルアラニンのサプリメント服用は控えてください。
抗うつ薬とフェニルアラニンのサプリメントを併用すると、相互作用を起こすことがあるためです。
おなじくフェニルアラニンとの併用を避けたいのは、BCAA含有量が高いサプリメント・プロテインなどです。
BCAAとは、必須アミノ酸のバリン・ロイシン・イソロイシンを指します。
BCAAとフェニルアラニンを同時摂取すると、フェニルアラニンの脳の覚醒効果が下がるおそれがあります。
もしフェニルアラニンとBCAAのサプリメントを併用するときは、2時間ほど間を開けるのがおすすめです。
フェニルアラニンの副作用
フェニルアラニンのサプリメントなどを過剰摂取すると、副作用が起こることがあります。
代表的な副作用は以下の通りです。
- 高血圧
- 心疾患
フェニルアラニンは血圧を上昇させる効果があります。
そのため過剰摂取すると、高血圧や心疾患のリスクが高まります。
フェニルアラニンの過剰摂取は、セロトニンの合成を阻害する可能性も指摘されています。
セロトニンとは脳内神経伝達物質の1つで、幸福感を高める作用があります。
セロトニンが不足すると、うつ病のリスクが高まります。
そのため、うつ症状がある方などは、フェニルアラニンを摂りすぎないことが大切です。
以下のような方もフェニルアラニンの摂取が制限されています。
- フェニルケトン尿症の方
- 妊娠中・授乳中の方
- 皮膚がん患者の方
フェニルケトン尿症は、先天的にフェニルアラニンのチロシン変換能力が弱い病気です。
多くの場合、知能・精神障害を伴います。
フェニルケトン症の方は体内に過剰なフェニルアラニンが蓄積されやすいです。
そのため、フェニルケトン尿症の方はフェニルアラニンの摂取を控える必要があります。
妊娠中・授乳中の方もフェニルアラニンの摂取は控えてください。
フェニルケトン尿症の胎児・乳幼児にフェニルアラニンを与えると、知能障害が悪化しやすいためです。
フェニルケトン尿症は、子供がある程度成長するまで発見されないこともあります。
気づかないうちに胎児・乳児の知能障害を悪化させないためにも、できれば妊娠・授乳中の女性はフェニルアラニンの摂取は控えるのが無難です。
メラノーマ患者の方もフェニルアラニンの摂取が制限されています。
メラノーマとは皮膚がんの1種です。
原因は皮膚にあるメラノサイトという細胞が異常増殖(がん化)することです。
メラノサイトは、メラニンという「シミの素」を作る細胞です。
メラニンは、メラノサイトの中にあるチロシンが変化することで発生します。
よって皮膚がんの方は、チロシンの前駆体であるフェニルアラニンの摂取を控える必要があります。
遺伝子組換えを用いたフェニルアラニンの安全性
フェニルアラニンを遺伝子組み換えして合成された成分は「L-フェニルアラニン」と呼ばれています。
日本では当初、L-フェニルアラニンの安全性は確認されていませんでした。
そのため、L-フェニルアラニン添加の食品・サプリメントなどは流通が規制されました。
平成24年5月に、食品安全委員会によってL-フェニルアラニンの安全性が確認されました。
現在、L-フェニルアラニンは食品として広く流通しています。
代表的な食品はサプリメントです。
L-フェニルアラニンは人工甘味料「アステルパーム」の原料としても使用されています。
L-フェニルアラニンの主な作用は、フェニルアラニンと同様、脳を覚醒させて意欲・集中力を向上させることです。
出典:厚生労働省【食品衛生法に基づく安全性審査を経ていなかった遺伝子組換え微生物を利用した添加物についての対応(第6報) |報道発表資料|】
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フェニルアラニンのまとめ
ここまで、フェニルアラニンについてお伝えしてきました。
フェニルアラニンの要点を以下にまとめます。
- フェニルアラニンの主な効果は、脳の活性化・うつ症状の軽減・鎮痛作用など
- フェニルアラニンが豊富な食品は、大豆・乳製品・卵類・種実類・肉類・魚類
- フェニルアラニンの主な副作用は高血圧や心疾患であり、特に摂取を制限すべきなのはフェニルケトン尿症や妊娠中の方
最後までお読みいただき、ありがとうございました。