嚥下障害とはうまく食べ物を飲み込めなくなる障害のことです。
加齢やうつ病、また薬剤などの影響で嚥下障害が起きることもあります。
では嚥下障害が疑われる場合、何科の病院へ受診するべきなのでしょうか?
本記事では嚥下障害について以下の点を中心にご紹介します。
- 嚥下障害は「何科」を受診したら良いのか
- 嚥下障害の症状とは
- 嚥下障害のおもな原因は
嚥下障害について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
嚥下障害とは
嚥下障害とは食べ物を飲み込み胃まで届ける過程に障害があることをいいます。
たとえば口に含んだ食べ物をうまく飲み込めなかったり、食事中にむせてしまう症状をさします。
嚥下障害についてより詳しく知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。
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嚥下障害は何科を受診したらいいの?
嚥下障害によって「誤嚥性肺炎」を引き起こし、最悪の場合は死に至ることがあります。
そのため食べ物が飲み込みづらいと感じたときは、できるだけ早い受診が必要です。
では嚥下障害は何科を受診したら良いのでしょうか?
まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。
嚥下障害の原因はさまざまですので必要に応じて、その他の専門医を受診します。
ここでは「歯科」「口腔外科」「消化器科」「リハビリテーション科」などが挙げられます。
嚥下障害を発症するのは高齢者が多いといわれます。
しかし年齢に関係なく「摂食」や「嚥下」に深く関わる神経・筋系が原因になることがあります。
これらは「精神発達遅滞筋」や「筋ジストロフィー」などの疾患をさします。
そのため「神経内科」や「リウマチ科」の受診が必要な場合があります。
リハビリをして嚥下障害の治療をするときは、リハビリテーション科を受診します。
嚥下に必要な筋肉をほぐし首周りをリラックスさせます。
「唇・舌・頬」など顔のトレーニングをしたり、関節などのこわばりをほぐすなどのリハビリを行います。
嚥下障害の治療について以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひご覧ください。
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子供の嚥下障害は何科を受診する?
では、子どもの嚥下障害の場合は「何科」を受診したら良いのでしょうか?
成長の時期や原因によって受診する科も異なります。
乳児期
新生児や乳幼児は「脳性まひ」の合併症による嚥下障害が最も多いといわれています。
ほかには低出生体重児や早産児など「成長の未熟性」も要因といえます。
出生直後の母乳やミルクを吸う機能が十分に発達していない場合、嘔吐や誤嚥を起こしやすくなります。
しかし成長によって、数か月程度で改善されるケースが多くみられます。
嚥下障害の症状が強く改善されない場合は、自分で栄養を摂ることができないため経管栄養を行います。
消化器官など体内へチューブを通して栄養を送り、経過観察をしていきます。
まずはかかりつけの新生児科や小児科で相談し、状況に応じて小児外科や耳鼻咽喉科を紹介してもらいます。
幼児期
幼児期は、離乳し本格的に食事を始める1歳頃〜就学前の6歳頃までをさします。
幼児期の嚥下障害は「発達障害」を伴うものが多いとされています。
幼児期では牛乳やスープ、ヨーグルトなどのそのまま飲み込める「流動物」によって嚥下障害を起こすケースが多いといわれます。
水を飲んだときに「むせる回数が多い」など普段の生活で気が付く場合もあるでしょう。
なにか異変を感じた場合は、かかりつけの小児科へ相談することをおすすめします。
小学生
嚥下障害は、生まれつきの奇形や脳神経の疾患が原因の場合が多いと前述しました。
しかし近年、問題視されているのが子供の「環境」や「食べ方」です。
現代の食卓には多くの加工食品が並び、あまり嚙まなくて良い軟らかいものを好む傾向にあります。
すると脳への伝達や咀嚼(そしゃく)機能が未発達で成長することになります。
そのため少し硬い食品が出てくると、うまく噛めず飲み込めなくなってしまうのです。
子供の嚥下障害によって考えられる悪影響は以下の通りです。
- 顎が未発達になり「顎関節症」の発症
- 歯並びが悪くなる
- 口呼吸になり、虫歯やウイルス感染の原因になる
- 栄養の偏りで虚弱体質になる
自宅ではできるだけ加工品は控えて、ある程度の大きさや硬さが残る調理で工夫することが大切です。
他にきのこ類や海藻類などの食物繊維も取り入れていき「よく噛む」ということに気をつける必要があります。
嚥下障害の検査内容
では「嚥下障害」の検査はどのような内容なのでしょうか?
大まかに分けて嚥下障害検査は「スクリーニング検査」と「嚥下内視鏡」、「嚥下造影検査」の3つがあります。
検査の流れや検査の目的、注意点などをまとめていきます。
スクリーニング検査
まず嚥下障害は「摂食場面」の観察が重要になります。
【反復唾液嚥下テスト】
30秒の間に、何回唾液を飲み込めるかを計ります。
指で喉ぼとけを軽く押さえて、その動きをみてカウントします。
このテストで3回未満の場合は嚥下障害の可能性が高くなり、より精密なテストを行います。
【水飲みテスト】
少量の冷水を口に含み、嚥下動作を観察します。
- むせ込みの有無
- 呼吸の状態
- 声の変化
などをみていきます。
【フードテスト】
お粥や液状の食品、プリンなどの半固形の食品をティースプーン1杯ほどの量を食べてもらい観察します。
- 食べ物の取り込み
- むせ込みの有無
- 呼吸の状態
- 食後に痰がからむような湿声嗄声(しっせいさせい)になっていないか
などをみて評価します。
嚥下内視鏡検査
嚥下障害の検査では機材を用いて行う「内視鏡検査」があります。
鼻咽腔ファイバーといわれる管を鼻から挿入し、嚥下の状態を観察する方法です。
内視鏡の先端を食道の入り口の手前で留め、その状態で食べ物を摂取してもらい食道の動きをみていきます。
内視鏡検査のメリットは、喉の粘膜を直視して唾液や分泌物の状態を観察できることです。
また普段から食べているものや食べたいもので検査し評価できる点です。
さらに機材の持ち運びが可能で、在宅などの往診でも対応でき患者への負担が少ないことが利点です。
デメリットは内視鏡を挿入する際の患者の違和感があることや、舌の動き、咀嚼の状況をみることが出来ない点です。
嚥下造影検査
嚥下造影検査では、バリウムを飲むところを造影剤を使い撮影をしながら検査を行います。
ほかにとろみのある液体やゼリーなど食物の形態によって嚥下運動の違いをみていきます。
口腔・咽頭部がどのように動いて飲み込むのか、食道を通過する過程を評価します。
この検査では喉の形状や、飲み込み方など嚥下障害の問題点をみつけていく目的があります。
造影検査のメリットは「口腔・咽頭・食道」など広い範囲の嚥下運動を観察できることです。
喉に食べ物が残っていないか、また誤嚥していないかを確認することもできます。
しかし機械が大きく検査場所が限られることや、被爆のリスクがデメリットといえます。
嚥下障害の症状
年齢を重ねるごとに筋力が低下し、嚥下障害が発症しやすくなるといわれています。
「むせやすいのは歳だから…」と放置せずに、周りの家族や介護者が気が付くことが大切です。
むせる頻度が多い
食事中はお茶や汁物の水分で、むせやすくなります。
食道ではなく気管に誤って入り込み、排出させようとむせてしまうのです。
また何も食べていなくても、自分の唾液が気管に入りむせることがあります。
口の中に食べ物が残る
口の中に食べ物が残っていたり、喉に食べ物が引っかかっている感じがします。
つねに食べ物のかすが口の中に残ると口腔環境が悪くなり、歯垢や口臭の原因になります。
食事内容が噛まなくていいものに変わる
食べ物が硬かったり大きいものは、何度も噛む必要があります。
うまく飲み込めなくなると、軟らかいものや麺類などの食べやすい食品を好んで食べるようになります。
そうした状況が続くと栄養が偏り、栄養不足のため体調を崩しやすくなります。
食べ方・姿勢が変わる
食べ物の飲み込みづらさから、今までとちがう食べ方をするようになります。
たとえば上を向いた姿勢で食べたり、汁物で流し込むように食べたりします。
口からこぼれやすくなるのも嚥下障害の特徴です。
食事に時間がかかり、最後まで食べきれない
時間をかけてよく嚙まないと飲み込むことができません。
そのため固形物など少し硬い食べ物はより時間がかかり、残してしまうこともあります。
こうして食べられるものが限られ、楽しみだった食事が苦痛になり意欲の低下につながります。
食後に声がガラガラになる
食べ物を飲み込んだあとに、声質が変わる症状がみられます。
口の中に食べ物が残り、痰が絡みやすくなることからガラガラ声やかすれ声になったりします。
嚥下障害の主な原因
嚥下障害のおもな原因はどのようなものがあるのでしょうか。
年代別にまとめていきます。
嚥下障害|子供
新生児の嚥下障害の原因はおもに「脳性まひ」によるものが多いと前述しました。
ほかには先天性の奇形、食道閉鎖や喉頭軟化症といわれる疾患も嚥下障害を発症します。
さらに成長がすすむと「発達障害」によって嚥下障害が起こりやすくなります。
髄膜炎などの感染症や頭部外傷、交通事故による脳挫傷などによっても嚥下障害を引き起こす原因になります。
また、近年15歳未満で障害がないのにうまく飲み込めないといった子供が増えています。
これは「口腔機能発達不全症」という病気の可能性があります。
あごの筋力が未発達で、口の機能に何らかの問題が生じてしまうのです。
本人や家族も気付かないケースが多いようですが患者数は非常に多いといわれます。
子供の食事の仕方で気になることがある場合は、小児歯科へご相談されてはいかがでしょうか。
嚥下障害|若者
乳幼児期に問題なく食事をしていても、10〜20代で嚥下障害が発症することがあります。
原因として脳梗塞の後遺症、筋ジストロフィー症、多発性硬化症などの神経や筋肉障害が考えられます。
ほかには肥大した甲状腺や心臓、腫瘍が食道を圧迫し、嚥下障害を引き起こしていることもあります。
そのほかに若者のストレートネックが増えていることも原因のひとつです。
パソコンやスマートフォンの長時間の使用で、姿勢が悪く猫背になり首が突き出た形になります。
こうして首の角度が悪くなり、喉の奥の機能が低下してむせやすくなるのです。
ストレートネックが疑われる場合はまず整形外科を受診します。
口腔や咽頭部に違和感がある場合は、口腔外科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。
嚥下障害|高齢者
高齢者は加齢による筋肉低下で嚥下障害を起こしやすくなります。
そのほかに食べ物を飲み込む器官の炎症や腫瘍で食道が塞がれているなど病気が原因となる場合もあります。
嚥下障害になると誤嚥性肺炎や、栄養不足で体調を崩してしまうリスクがあります。
まずはかかりつけの病院で相談し、耳鼻咽喉科を紹介してもらいましょう。
また脳卒中や脳出血などの脳血管障害やパーキンソン病などで嚥下障害を発症しやすくなります。
その場合は病気の治療をしている科で、嚥下障害のリハビリについても相談されてはいかがでしょうか。
嚥下障害|心因性
心因性の嚥下障害は、喉に違和感があるものの食事摂取のときは嚥下に問題はありません。
しかし唾を飲み込むときに喉のつまりのような異物感が強く出るといった特徴があります。
心因性嚥下障害の原因は、摂食障害やうつ病、咽頭異常症などの精神的な疾患が挙げられます。
さらに安定剤などの向精神薬によって嚥下機能が低下し、喉の違和感や吐き気などの症状が出ることがあります。
もともと心療内科にかかっている場合は、薬物療法やカウンセリングで経過観察をします。
嚥下障害の治療法は「何科」に受診するかによって異なります。
嚥下障害ではじめて受診する場合は「耳鼻咽喉科」や「歯科」が良いでしょう。
嚥下障害の原因について詳しく知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。
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嚥下障害も原因のひとつ|誤嚥性肺炎の割合
肺炎は日本人の死因第3位で、現代病のひとつで年間11万人が亡くなっています。
また高齢者の肺炎患者のうち、その大半が「誤嚥性肺炎」といわれています。
この誤嚥性肺炎は、嚥下障害が引き金になることが大いに考えられます。
嚥下障害により口腔内の雑菌が、食べ物や唾液とともに気管や肺に入り込み炎症を起こしてしまうためです。
肺炎の入院患者における誤嚥性肺炎の年齢別の割合は以下の通りです。
【誤嚥性肺炎の年齢別割合】
年齢(歳) | 誤嚥性肺炎の割合(%) |
40~49 | 0 |
50~59 | 約25% |
60~69 | 約50% |
70~79 | 約73% |
80~89 | 約90% |
90以上 | 約96% |
出典:第54回日本老年医学会学術集【超高齢社会における誤嚥性肺炎の現状】
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嚥下障害は何科を受診するのかのまとめ
ここまで嚥下障害について何科を受診すべきなのか?についてお伝えしてきました。
嚥下障害について要点をまとめると以下の通りです。
- 嚥下障害はまず耳鼻咽喉科を受診し必要に応じて他の科を紹介してもらう
- 嚥下障害の症状は、むせる頻度が多くなり口からこぼれたり声質が変わる
- 嚥下障害のおもな原因は加齢や先天性の疾患、心因性などさまざまである
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。