嚥下食は、咀嚼・飲み込みやすいよう「とろみ・食感・形態」などを調整した食事です。
また、嚥下食は、咀嚼能力を試すものや、義歯でも、咽喉や舌を動かすだけで食べられる食品もあります。
嚥下食の食べやすさは、どのように分類されているのでしょうか?
そもそも、嚥下食は、自分で作れるのでしょうか?
本記事では「嚥下食の分類と作り方」についての解説をしていきます。
- 嚥下食について知りたい
- 嚥下障害がある人の介護をしている
- 嚥下食の分類について知りたい
嚥下食の分類と作り方について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ、最後までお読みください。
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嚥下食とは
咀嚼および飲み込む力が衰えている高齢者向けに、飲み込みやすいように「とろみ・食感・形態」などを調整した食事の名称です。
ここには、咀嚼能力を試すための訓練用の食品も含まれます。
歯がない人でも、咽喉や舌を動かすことで食べられるものや、流れ落ちるような比較的飲み込みやすいものなど、さまざまな食品があります。
また、食品の分類は、コード表記により把握しやすくなっていることも特徴です。
以下の記事では嚥下食について詳しく解説していすのでよろしければご覧ください。
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嚥下食の分類(コード)
「どんな風に、食品を区別しているの?」そんな疑問に対しては、食品はコードで分類されています。
嚥下食は、下記のようなコードで管理されています。
0j | 嚥下訓練食品 |
0t | 嚥下訓練食品 |
1j | 嚥下調整食 |
2 | 嚥下調整食2-1 |
嚥下調整食2-2 | |
3 | 嚥下調整食3 |
咀嚼能力の度合いに応じて、設定コードの食品を摂取してもらうようになっています。
それでは、1つずつ解説します。
0j:嚥下訓練食品
OJに分類される食品であり、ゼリー状のものです。
形態、目的・特色については以下のとおりです。
形態
均質でなめらかさがあり、べたつかず、やわらかさに配慮したゼリーで、スライス状にした食べ物です。
そのため、非常に飲み込みやすい作りになっています。
食べ物の例として、果汁ゼリー・お茶ゼリーなどが挙げられます。
目的・特色
重度の症状に対する評価・訓練用の食べ物です。
ゼリーをすくって、少量を飲み込めるかを確認できます。
特色は、ゼリー状で残留しても吸引がしやすく、たんぱく質は少量含まれています。
0t:嚥下訓練食品
Otに分類される食品は、飲み込みやすさに配慮しています。
形態、目的・特色については以下のとおりです。
形態
均質でまとまりがあり、べたつきがなく、とろりとした食べ物になります。
そのため、スプーンですくって、飲み込みやすいことが特徴です。
食べ物の例として、お茶・果汁などがあります。
目的・特色
重い症例に対する評価・訓練用の食べ物です。
少量ずつ、飲み込めるように訓練していきます。
特色として、ゼリーの丸飲みで、誤嚥・口内で溶ける場合は、たんぱく質が少ないことがわかります。
1j:嚥下調整食
Ijに分類される食品であり、複数の形状があります。
形態、目的・特色については以下のとおりです。
形態
均質でまとまりがよく、べたつかず、離水に配慮した柔らかいムース・ゼリー・プリン状の食べ物です。
口に含む前に、既に適切な食塊状になっていることが特徴です。
目的・特色
若干の食塊保持と、送り込む能力が必要な食品です。
食べ物を送り込む際には、意識的に口蓋に舌で押す必要があります。
そのため、食塊保持と、送り込みやすさに考慮した食品といえます。
2:嚥下調整食2-1
2に分類されるなかでも、なめらかさや均質な食品は2-1として分類されます。
形態、目的・特色については以下のとおりです。
形態
均質でべたつきの少ない、まとまりやすい食べ物です。
噛む力は、不要で咽喉の動きのみで食べやすくなっています。
そのため、義歯など歯がない方でも、食べやすく工夫されている食品です。
具体例として、ペースト状の重湯やお粥などがあります。
目的・特色
噛む力は不要なため、口のなかに入れたものを飲み込める程度の嚥下機能が必要です。
咽喉では、食べ物が残留、誤嚥しにくいように配慮されています。
3:嚥下調整食2-2
2-2は、軟質な粒を含み不均質なものが分類されています。
形態、目的・特色については以下のとおりです。
形態
ピューレ・ペースト・ミキサー食など、不均質な食品です。
口内の簡単な動きのみでも、食べやすく工夫されています。
具体例として、お粥、温泉卵などが挙げられます。
目的・特色
口内の簡単な動きで、食塊状になるもので、飲み込みやすさを重視しています。
咽喉では、食べ物が残留、誤嚥しにくいような作り方です。
4:嚥下調整食3
3は、やわらか食、ソフト食ともいわれています。
形態、目的・特色については以下のとおりです。
形態
コード3は、やわらか食、ソフト食ともいわれています。
形態的に、押しつぶし・食塊形成・口内でも移動が容易など、飲み込みやすさに配慮しています。
具体例は、煮込みハンバーグ・大根の煮物・卵料理などです。
目的・特色
歯や義歯がなくても、舌で押しつぶしができるものです。
コード2の対象よりも、広範囲の食事を誤嚥しない人が対象として作られています。
舌の操作と口腔操作のみで、摂取可能で、なおかつ誤嚥のリスクに配慮しています。
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嚥下食のとろみの分類
嚥下食のとろみの分類は、おおまかに3種類に分けられています。
ここからは、見た目および、飲み込んだときの性状について解説していきます。
薄いとろみ
薄いとろみの嚥下食は「drink」という表現が適しているレベルです。
文字通りで、飲み込みやすさに配慮した作りです。
食べ物の性状については、以下のとおりになります。
見た目の性状
見た目の性状は以下のとおりです。
- 食器から、とろとろと流れ落ちる
- フォークの歯の間からも、早く流れ落ちる
- カップの底に、うっすらと跡が残る程度の付着
食器から流れ落ちるような形が特徴的です。
飲み込んだ時の性状
飲み込んだときの性状については、下記のとおりです。
- 飲み込むときに大きな力を必要としない
- ストローで簡単に吸いやすいやわらかさ
- 液体の種類によっては、とろみが気にならない
小さい吸引力で、容易に飲み込みやすいことが特徴です。
中間のとろみ
中間のとろみは、「drink」という表現が適切で、明らかなとろとろ感を感じるものです。
前者との違いは、「明らかなとろとろ感がある」ことになります。
食べ物の性状については、以下のとおりになります。
見た目の性状
見た目の性状は以下のとおりです。
- 飲み込みやすいとろみである
- 口内での広がり方は、ゆっくりで、すぐに広がらない
- 舌の上で、まとまりやすい
- ストローで吸う際は、抵抗がある
薄いとろみと比較すると、吸引時には力が必要で、べたつきが強いことがわかります。
飲み込んだ時の性状
飲み込んだときの性状については、以下のとおりです。
- とろとろと流れ落ちる感覚なので、飲み込みやすい
- フォークの歯の間からは、ゆっくり流れ落ちる
- カップの底に、コーディングしたように付着する
食器から、流れ落ちるスピードはゆっくりで、付着しやすい粘度の食品になっています。
濃いとろみ
濃いとろみは、「eat」という表現が適しており、まとまりがあるものになります。
流し込むというよりも、まとまりのある形態の食品を摂取するタイプです。
そのため、咽喉に送り込むにはある程度の力が必要です。
食べ物の性状については、以下のとおりになります。
見た目の性状
見た目の性状については、以下のとおりです。
- まとまりがある食品
- 口内で送り込むには、力が必要になる
- ストローで吸うことが困難な食べ物
まとまりのある食品で、「吸う、飲み込む」というよりも、食べる感覚に近いです。
そのため、ある程度の咀嚼力が必要になります。
飲み込んだ時の性状
飲み込んだときの性状は、以下のとおりです。
- 比較的、形状が保たれやすい
- 流れにくく、フォークの歯の間からも流れ出ない
- カップを傾けても、流れ出ない
このように、フォークの歯の間からも流れ落ちないくらい形状が保たれています。
嚥下食の作り方
「嚥下食の分類方法は、わかったけど自分で作れるの?」そのような疑問には、下記の2つの作り方が参考になります。
- ゼリー状
- ピューレ状
1つずつ解説していきます。
ゼリー状
まずは、「重湯ゼリー」の作り方を例に解説していきます。
- 少量の重湯に粉ゼラチンを入れて火にかけます
- ゼラチンが溶けたら残りの重湯とともに、器に移しましょう
- 冷蔵庫で冷やして、固まったら完成です
ただし、ゼラチンを沸騰させると凝固しにくいので、注意が必要です。
「おかず(粥)ゼリー」では、おかずとだし汁とゼラチンを混ぜてミキサーをかけます。
鍋に火をかけて、焦げないように煮ていきしょう。
そして、型に流し込み冷やして固めることができれば、完成です。
ピューレ状
次に、ピューレ状のお茶(液状のもの)の作り方です。
- 増粘剤でお茶にとろみをつけます。
- 増粘剤の表記に従い、量を調整しつつ、適した粘度にしていきます。
おかずピューレの場合は、おかずとだし汁をミキサーにかけてペースト状にして、増粘剤を調整してとろみを加える流れです。
嚥下食を作る際の注意点
実際に嚥下食を作る際の注意点については、下記のとおりです。
- 食材は、舌でつぶせるくらいのやわらかさにする
- 咽頭期に障害がある場合は、とろみのあるペースト状がよい
- 咽喉への送り込みが困難な場合は、とろみを調整する
- 食べやすさ・食欲をそそる盛り付け、匂いを意識して調理する
- 飲み込みやすさに配慮して、ゼラチン・片栗粉などで微調整する
ポイントは、「粘着剤での調整、飲み込みやすさ、食欲をそそる」などになります。
嚥下食の分類は必ずしも病態の重症度と一致しない
全症例において、食品の分類が病態の状態と一致するとは限りません。
通常は、コード0、1、2、3、4と嚥下機能が回復するとともに摂取できるものが増えます。
一方で、老化・認知症・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・パーキンソン病などの進行性の病態は、コード数は減少する方向で食事を提供します。
そのため、食形態・量・栄養分の選択は、必ず一定となるものではありません。
くれぐれも、形態分類のみに固執せずに、病態に合わせることも理解しておきましょう。
嚥下食の分類のまとめ
今回は、嚥下食の分類と作り方についてご紹介しました。
嚥下食の分類と作り方についての要点を以下にまとめます。
- 嚥下機能に合わせて、とろみ・食感・形態などを調整した食事を指す
- 嚥下食の分類を参考に、とろみや食形態を意識することが大切になる
- 嚥下食は、咀嚼・飲み込み能力に合わせてコード管理されている
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。